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『猫が鳴く』|洒落怖名作まとめ【長編】

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『猫が鳴く』|洒落怖名作まとめ【長編】 長編
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猫が鳴く

 

大学ではじめて一人暮らしをした時に借りたアパートの話。
俺は最初大学の寮に入ってたんだけど、共同生活がきつくなってきたので
親に許可貰って、寮を出ることにした。
ただ親から出された条件が
「家賃は寮の時と同じ金額しか出さない、それ以上は自分で出せ」だった。
今思えば、一人暮らしを諦めさせようとしてたんだろうな。
でも俺はどうしても寮から出たかったんで、講義とバイトの合間に
不動産巡りをして、理想的な物件を見つけた。
築年数は20年と少々古いものの、2DKに風呂とトイレもついてて、
家賃は諸々込みでなんと3万2千円。
この値段でユニットバスじゃない風呂トイレつきというところに惹かれ、
バイト増やさなくてもなんとかいける!と思い、即契約した。
あんまり安い物件だったから、友人からは曰くつきじゃね?と言われたが、
不動産業者から特に説明はなし。
入居の際に大家さんとも会って話したが、こっちからも何も言われなかった。
何よりこの頃の俺は「幽霊とかいるんだったらマジ見てみたいわwwwww」という
奴だったので、むしろwktkしながら入居した。

んで入居して1ヶ月近く経ってから、夜になるとやたらと猫の鳴き声が耳につくのに気がついた。
繁殖期ってわけでもないのに、だいたい真夜中をすぎたあたりから、窓の外でニャーニャーうるさい。
そのうち壁の向こうからも聞こえるようになって、こりゃ隣の部屋の住人がこっそり飼ってんなと思った。
ペット不可の物件だったけど、俺も動物は嫌いじゃなかったんで、まあ黙認した。
むしろ実家の猫懐かしいモフりてえwwとか和んでた。
んで時々、風呂場周辺がえっらい水浸しになったりしてたけど、
俺酔って身体拭かずに風呂からあがったっけ?とか、洗濯機のホース外れたっけ?
てな具合で、特に疑問も持たずに暮らしてた。
ただこぼれてる水はなんか臭くて、しかも錆が混じってるような濁った赤色で、
拭き掃除のたびにタオルやぞうきんを捨てないといけないのがちょっと憂鬱だった。

大家さんに水漏れしてるみたいですけど?と言ったこともあるんだが、
俺の上下の部屋に異常はなく、洗濯機の排水ホースを取り換えてみたりしたけどやっぱり時々水浸しになった。
そのうち友人が泊まりにくるようになったんだけど、不思議なことに
猫の鳴き声に反応する奴と、全く気にしない奴がいることがわかった。
しかも鳴き声に反応した奴は皆、次から泊まりに来なくなった。
理由聞いてもはっきり言わないし、それで付き合いが悪くなったわけでもないので、
これまたあんまり気にしなかった。

ある日仲のいい従姉から「部屋に泊めてほしい」という連絡がきた。
俺の住んでる地域で好きなバンドのコンサートがあって、チケットはなんとか取れたけど
日帰りは難しく、なのに泊まる場所を確保できなかったそうだ。
従姉が泊まる日は俺が友人の家に転がり込めばいいと思ったんで、宿泊OKした。
んでコンサートが終わってから、従姉が俺の部屋に来た。
結構遅い時間だったんで、俺も友人の家に行くのが面倒になって、結局そのまま部屋にいた。
まあ子供の頃から互いに知ってる相手だし、別に問題はない。
でも部屋に入った瞬間、従姉が「……ゴミ溜めてる?なんか臭いよ」とか言ったので、
さすがに恥ずかしいというか、微妙な気持ちになった。

そして真夜中を過ぎた頃、いつものように猫が鳴き始めた。
従姉は猫大好きで、従姉の実家にも常に数匹の猫がいる。
だから喜ぶかと思ったんだが、鳴き声を聞いているうちに従姉の顔色が少しずつ変わってきた。
「え……なんで赤ちゃんが泣いてるの?」
俺が住んでるのは単身者専用アパートで、学生が多い。赤ん坊なんているわけない。
従姉に言われて、それまで猫だと思ってた声が、急に赤ん坊の泣き声に聞こえてきた。

近所の赤ん坊じゃね?と言ったんだけど、従姉は納得しなかった。
それどころか壁に耳をつけて泣き声がどこから聞こえるのか、確認しはじめた。
その結果「両隣じゃない……」だと。
「ねえこれ、どう考えてもこの部屋から聞こえてくるんだけど」
……え?

やだなー何言ってんだよーつって笑ったけど、正直ひきつった。
マジでなんで今まで気がつかなかったのかわからない。
猫みたいだけど猫じゃない声は確かに、よくよく気をつければこの部屋の中から
聞こえてた。赤ん坊なんて思いもしなかったし、猫が鳴いているという思いこみが、
今まで状況を不自然に思わせなかったわけだ。
泣き声は正確には、部屋というよりは風呂場のあたりから聞こえてくるような気がする。
気は進まなかったけど、従姉が怖くて風呂に入れないっていうので、見に行った。
するとやっぱりというか、風呂の脱衣所が水浸しになってた。
しかも水が濁ってる。赤い。おまけに生臭い。
思わず「ひえっ」なんて声が出て、俺のその声に、従姉が様子を見にやってきた。
「何これ……錆?血?」
床に広がる赤い水溜まりを見た従姉が呟いた。泣き声はいつの間にか止んでる。
従姉が「床拭かないと。要らないタオルとかある?」とか言いながら、脱衣所に入ってきた。
そしたら閉めてたはずの、風呂場のガラス戸がほんの少しだけ開いた。
俺も従姉も、ガラス戸からは離れてたのにな。
風呂場の窓でも開いてて、風で開いたのかと思ったけど違ってた。
細く開いた隙間から、白い小さい赤ん坊みたいな指が見えた。
小さい爪に血の塊がこびりついて、床をカリカリやってる。怖かった。
でもここで騒いだら従姉が余計に怖がる、俺一人で片付けるからあっちでテレビでも
見ててくれと言おうとしたら、途端にガラス戸がすっごい音をたてて勢いよく開いた。

『マ゛マ゛ア゛ア゛アアアアアアアアアアアアアア!』
って、猫の鳴き声が混じったような、子供の声が響いた。
風呂場の中にすごいのがいた。赤ん坊の皮を被った、ぶよぶよした白い芋虫みたいなの。
それがタイルに広がった赤い水溜りにつかって泣いてた。
こっちに来ようとしてたんだけど、風呂場の敷居が乗り越えられなくてじたばたしてた。
従姉と俺、脱衣所から飛び出した。
部屋に戻ったら声は聞こえなくなってたんだけど、従姉が泣きだして
「もうやだ帰る!」状態になった。
俺もさすがにこれはないわ……となったんで、サークルの女友達に連絡とって、
従姉をそっちに泊めてもらう手配をした。
俺も、元々転がり込む予定だった友人のアパートに逃げ込んだ。
従姉はもう一泊して近場の観光する予定だったけど、次の日速効で帰っていった。
従姉を送りだしてから、俺は自分のアパートに戻った。
一人で戻るのは怖かったんで、事情を話して泊めてくれた友人に付き添って貰った。
そしたら今度は、別のものが見えた。

玄関開けた左手が風呂場になるんだけど、風呂場から這い出す半透明の女が廊下を横切っていった。
女が這った後に、あの濁った赤い水溜りが残ってた。
這いずる女の姿が消えてから、俺は半泣きになりながら床を拭いた。
友人が手伝ってくれたんで助かった。
まあ俺は結局、大学卒業するまでそこに住んだけど。
最初は部屋探ししたんだけど、なかなかいいのが見つからなくて、もうしょうがなく。
でもあの日以降、猫みたいな鳴き声も赤い水溜り現象も起こらなかった。
さすがにもう一度経験したら、どんなに無理してでも引っ越してたと思う。

従姉が来た夜はそんな経緯もあってばたばたしたんで、俺は片付けを済ませてから、
両隣と上下の部屋に謝りに行った。
そしたらどの部屋の住人も「ああ…」みたいな反応するんだよな……
本当ならこのアパート、一部屋六万位以上するらしい。
そりゃこんなのが出るんなら、半額にもなるだろうと思った。
俺はこの頃コンビニでバイトしてたんだけど、そこの常連のお客の一人が、このアパートのことを知っていた。
俺が問題の部屋に住んでることは言わずに、それとなく話を聞いてみた。
すると、あのアパートは元々独身女性用のものだったが、できたばかりの頃に
問題の部屋で未婚の女性が出産し、生まれたばかりの赤ん坊を風呂場に置き去りにして
逃亡するということがあったらしい。

でも赤ん坊は生まれて半日後ぐらいに無事保護されたらしく、死人は出てないそうだ。
しかしその後、その部屋では色々あったらしい。自殺未遂とか夜逃げとか。
夜逃げした住人の荷物を業者が片付けてると、押し入れの中から赤ん坊の骨を入れた骨壷が出たこともあるそうだ。
ほんとかどうかわからんけど。
まずは死人が出ないんだけどトラブルが続出する部屋、ということで有名になったらしい。
だったら俺が見たものはなんだろうな?という疑問が残るわけだが。
幽霊じゃなくても、悲惨な記憶みたいなものが残るってことはあるんだろうか。
俺が大学卒業した後でこのアパートは取り壊されたんで、今はもう残ってないけどな。

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