【名作 長編】『晴美の末路』|本当にあった怖い話・オカルト・都市伝説

『晴美の末路』|洒落怖名作まとめ【怖い話・都市伝説 - 長編】 厳選

そしてその幹部が、この金を受け取らなかったら殺す、って言うんですよ。何で私がこんな目に、と思いましたよね。渋々受け取りましたよ。そして、もし今後今日の事を他言する様な事があれば、お前が世界のどこにいても探し出して殺す、と。

その時、私は漠然とですが、晴美は風俗に沈められるのでは無く、他の事に使われるんだな、と思ったんですよ。もっと惨い事に。

晴美はある程度の衣服やその他諸々を旅行鞄に詰め込み、そのまま連れて行かれました。

別れ際も、私の方なんて見ずにつつ~と出て行きましたね。結構気丈な女なんですよ。

1人残されたアパートで、私はしばらくボーッとしてました。明日にでもスナック辞めてどこかへ引っ越そうと思いましたね。嫌ですよ。ヤクザに知られてるアパートなんて。

ふと、晴美が使っていた鏡台に目がいったんですよ。リボンのついた箱が置いてあるんです。

空けて見ると、以前から私の欲しがってた時計でした。あぁ、そういえば明日は私の誕生日だ。

こんな私でも涙がつーっと出てきましてね。その時初めて、晴美に惚れてたんだな、と気がつきました。え?それでヤクザの事務所に晴美を取り返しに行ったかって?

はぁはぁはぁ、映画じゃないんですから。これは現実の、しょぼくれた男のお話ですよ。

翌日、早速スナックを辞めた私は、百万を資金に引っ越す事にしたんです。出来るだけ遠くに行きたかったんで、当時私の住んでた明太子で有名な都市から雪祭りで有名な都市まで移動しました。

そこを新たな生活の場にしようと思った訳です。住む場所も見つかり、一段落したので、次は仕事探しですよ。

もう水商売はこりごりだったので、何かないかなと探していると、夜型の私にピッタリの、夜間警備の仕事がありました。面接に行くと、後日採用され、そこで働くことになったんですよ。

それから約10年。飽きっぽい私にしては珍しく、同じ職場で働きました。

え?晴美の事?時々は思い出してましたよ。あの時計はずっとつけてました。北国へ来てから新しい女が出来たり出来なかったりで、それはそれで、楽しくは無いですが平凡に暮らしてましたよ。

私、こう見えてもたま~にですが、川崎麻世に似てるって言われるんですよ。え?誰も聞いてない?キャバ嬢のお世辞?はぁはぁ、失礼しました。

それで、つい1ヶ月前ほどの話です。同僚のMが、凄いビデオがある、って言うんですよ。

どうせ裏モンのAVか何かだろうと私は思いました。こいつから何回か借りた事があったので。そしたらMが、スナッフビデオって知ってる?って言うんですよ。

私もどちらかと言うと、インターネットとか好きな方なんで、暇な時は結構見たりするんですよ。だから、知識はありました。海外のサイトとか凄いですよねぇ。

実際の事故映像、死体画像、などなど。で、ある筋から手に入れて今日持って来てるんだが見ないか?ってMが言うんですよ。

深夜3時頃の休憩時間でしたからね、まぁ暇つぶしくらいにはなるだろうってんで、見ることにしたんですよ。私は、どうせフェイクだろうと疑ってかかったんですけどね。ビデオをデッキに入れ、Mが再生ボタンを押しました。

若い全裸の女が、広い檻の中に横たわっていました。髪の毛も下の毛も、ツルツルに剃りあげられていました。薬か何かで動けなのか、しきりに眼球だけが激しく動いていました。

晴美でした。

私は席を立ちたかった。でも何故か動けないんですよ。やがて、檻の中に巨大なアナコンダが入れられました。

何か太いチューブの様な物を通って。大げさじゃなしに、10m以上はあったんじゃないでしょうかね。

それはゆっくりと晴美の方に近づいて来るんですよ。Mが凄いだろ、と言わんばかりに
得意げに私の方を、チラチラと横目で見てきます。それは、ゆっくりと巨体をしならせ、晴美の体に巻きつきました。

声帯か舌もやられてるんでしょうか、晴美は恐怖の表情を浮かべながらも、声ひとつあげませんでした。

パキパキ、と言う野菜スティックを2つに折った様な音がしました。晴美の体が、グニャグニャとまるで軟体動物の様になっていったんです。10分ほど経ったでしょうか。

それが大口を開けました。
晴美のツルツルになった頭を飲み込んだんですよ。ここからが長いんだ、とMは言い、早送りを始めました。それは、晴美の頭部を飲み込み終えると、さらに大口を開け、今度は肩を飲み込み始めました。

胴体に達したとたん、テープが終わりました。続きが、後2本あるんだ、とMが言ったんです。もういい、と私は言うと、逃げるようにビルの巡回に戻りました。

それからなんですけどね、いつも同じ夢を見るんです。晴美の顔をした大蛇が、私に巻きつき、締め付けてくるんですよ。

そして体中の骨を砕かれ、頭から晴美に飲み込まれるんです。凄まじい激痛なんですが、逆にこれが何とも言えない快感でしてね。

晴美の腹の中でゆっくり溶かされ始める私は、まるで母親の胎内に戻った様な安心感さえ感じるんですよ。え?そのビデオはどうしたかって?Mから私が買い取りましたよ。

それこそ、給料何ヶ月分かの大枚はたいてね。3本全部見て、少し泣いた後、私は全てビデオを叩き壊しました。

それで、深夜仕事をしてると、晴美を感じるんですよ。

ビルなどの屋内を1人で見回るでしょう?すると、後ろからピチャピチャと足音が聞こえてくるんですよ。振り返ると、誰もいない。

でまた歩き出すと、濡れた雑巾が床に叩きつけられる様な音で、ピチャピチャと。晴美かな、と思うんだけれども、一向に姿を現さないんですよ。

感じるのは気配と足音だけ。そんな事が数日続き、流石に精神的にまいってしまいましてね、今現在、休暇と言う事で仕事を休んでるんですよ。

3日前です。とうとう晴美が現れたんですよ。

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