山にまつわる怖い話【14】全5話
鬼になってしまった
今はもう廃村になってしまった小さな集落の話。
当時はまだ火葬は山で野火送りで行われていました。村で強欲、残虐、非常識
で有名だった独り者のばあさんが亡くなった時に、祖父や村の人らが火葬場
でそのばあさんの死体を燃やしていたそうです。
薪を積み上げ、その上に死体を乗せ、上にムシロをかけて死体を燃やしてい
ると、ばあさんの頭の部分のムシロがゆっくりと持ち上がっていく。気味悪く思
いながら見ていると、ムシロが崩れて黒くこげたばあさんの頭があらわに。
そこには二本のツノが生えていたそうです。
爺さんたちは坊さんを呼んできて、燃やしている間はずっと念仏
を唱えてもらって、朝までかかって骨も原型をろくに残さないくらいまでに
燃やし尽くしたとのこと。
「あのばあさんは○○の家のもんやったが、あんまし酷いことばっか
しとったから、ほんまもんの鬼になってまったんやろな。
わしらみんなあの婆さんは鬼じゃと言うとったが、
まさかほんまもんの鬼やとは思いもよらなんださ」
年に1、2回、離村した集落のみんなが集まって飲んだりするたびにそんな話を
爺さんや、ばあさん達から聞きました。
そういった集まりのときに聞いた話がいくつかあるので書き込みます。
祖母がまだうら若い乙女だった頃、山の上のほうにある畑に仕事をしにい
った時の話。
夕暮れ時の帰り道、谷川沿いの道を通って山から降りてくると、
谷川の上からとんでもなく大きな岩がぶつかり合うような音が聞
こえてきたそうです。
なんだと思って上流を見ると、人が手を広げたよりも大きな
虹色に光る玉が谷川をごろごろと転がってきたそうです。
それはそれは綺麗なもので、祖母は怖いのも忘れて
見えなくなるまで、ずっと見ていたそうです。
羆
札幌にて母が妹を出産するために当時7歳だった俺は道北にある母方の実家に預けられていた
祖父母宅では酪農を営んでいて仕事合間の子供の面倒は手に余ったらしく
そこで登場したのが父方の姉夫婦、俺にとっては伯父伯母なのだが、この伯父さんが絵に描いたような山男で
職業もまさにマタギ、なにより見た目が本当に山に捨てられてしまうと覚悟するくらい怖かった
祖父母宅を放逐され伯父さん宅に行くのだがこれがまた道北の山の中の小さな村で
戸数も30戸あるか無いかのさびれた村だった(当時)
ちょうど冬になり初めで外で遊ぶこともできず退屈を持て余していた
実は伯父さんは見た目からは想像もできないくらい話好きで猟から帰ってきたら
山で撃つ動物の話などを聞かせてくれた
「うさぎは狐の鳴きまねしてやったら、すぐ耳立てて頭出す馬鹿だ」とか
「えぞ鹿はものすごくでかくて頭の高さがダンプの運転席くらいある」とか
中でも一番心に残っているのが羆の話
「親の羆は一発で仕留めないとダメなんだ、小羆は人を見たらひるむんだ、そんで一発で死ぬ
でもな親羆はこっちに向かってくる、一発で仕留められんかったらこっちがやられる
万一な、親羆がびびって逃げたとしても安心したらダメだ、あいつら執念深いからな
臭いで追っかけてくるそんでやられたヤツもいるんだ」と
その話を聞いたときは心底怖かった
そうこうして数日がすぎ、朝から吹雪になったある日の午後
伯父さんが家に戻ってくるなり玄関先でこう言った
「羆出た」
駆け寄った伯母さんと玄関の土間でなにやら話しているが聞こえた
「吹雪じゃ出れねぇから吹雪止むまで待つ」
「仲間にはもう言ってあるから雪が止み次第でる」
子供ながらに羆って絶対やべぇ!!ってなって居間から顔だけ出して二人の話聞いてた
そんな様子を見つけた伯母さんはニヤリと笑って
「ダイジョブだから気にスンナ~」となんとも能天気に俺に声をかけた
それで夜になり、雪が止んだので伯父さんは山に入って行った
伯母さんは慣れたもんなのかさっさと床について寝てしまい
俺は、羆がそこら辺を歩いているのか!?などと妄想して寝るに寝れず
布団の中でガタガタ震えながら横になっていたのだが
こういうときに限って、あいつは襲ってくるのである
尿意である
しばらく羆の恐怖から布団の中で我慢するのだが、どうにもならなくなり
布団に地図を作るよりは!と便所に向かう決意をした
真っ暗な寝室を抜けて、便所に続く短い廊下を壁伝いに手探りで進んだ
便所は、というと裸電球から紐が伸びてるやつで、真っ暗な便所に入ってからじゃないと明かりがつけられない
俺はもう我慢の限界に達していたのでほとんど外の寒さと変わらない便所に突貫した
外の雪明かりがわずかに便所に差込んでくるのを頼りにし、紐を引き電気をつける
やや明るく照らされたそこは、もちろん壁床全面板張りのボットン便所
窓には外からビニールで目張りしてあり幾分寒さを和らげる工夫がしてあるがいかんせん北の冬なわけで
怖さと寒さでちっさい息子はさらに小さくなって小便を出そうにも中々出てくれない
ちょろちょろと小便が出始めた・・・そのとき、突然風が吹き、壁と窓が大きくガタガタと鳴りだした
「うわゃ!!」と俺は思わず声を上げた
ビックリした俺は、小便の的をはずし大粗相をしてしまった
的を戻し小便を出し切った時には、羆のことよりも粗相をしてしまったことで「怒られる」に頭が切り替わってしまい
こぼれた小便を片付けるのに懸命だった
一仕事終えて便所を後にした俺は、すっかり羆のことも忘れて放尿した安心感からかすぐ寝てしまった
この話の顛末は、翌日伯父さんに聞かされた話
吹雪が止んで山に出ていた伯父さんと猟仲間は、長いこと羆探していたが見つからず
日付がかわる前に、いったん山を降ることにし、それぞれが家路についていた
伯父さんが家まであと50メートルくらいのところで、雪明りに中に黒い塊が家の裏手に向かうのが見えたと
そのとき家の一角にぱっと明かりが付き黒い塊を照らした、間違いなく羆だった
その羆は明かりを覗こうと立ち上がり壁に体をあずけ、窓に向かって顔を伸ばした
伯父さんが注意をこちらに向けようと大声をだそうとした瞬間
羆は何かに驚いたのか、急に家の裏手の雪深い沢の方へと走り去って行ったという
その後伯父さんは再び仲間を集め羆を追いかけたらしい
翌朝には1.5メートルの立派な羆が役場の前にさらされていた
天狗だったかも
じいちゃん、ばあひゃんが子供の頃は建物も粗末だし
灯油ストーブ無いし暖かいお湯の出る給湯器もないし
防寒着もないし・・・どうやって越冬してたのか、てか
何でその状態で生きてられたのか信じられん
林業の町で木のぬかや薪には困らなかっただろうけど
大正昭和初期の家屋はオンボロ小屋で熊に壊されそうだし。田舎では
番犬はよく吠えるの飼ってたよ。熊接近中なのに沈黙だと困るだろ
もう三十年近い昔。畑沿いに防風林が並ぶ道を、親が運転する車に乗ってた。
親戚関係の用事の帰り道だったと思う。おれはまだ小さくて、後部座席で
体を横たえてた。街灯ひとつ無い夜道を車はベッドライト頼りに走っている。
冬で寒いし後部座席に仰向けになると漆黒の闇になってる窓が見えちゃうので
ちっちゃい俺は目を閉じては開けるを繰り返してた
傾斜を感じて、平地から丘陵地帯の森の中の道に入ったとわかる。
帰路の半分を来たんだなと安心しておれはうつらうつら。
雪で視界が悪い夜道を走る親は緊張継続中だったろうが
突然、雪道の上を急ブレーキ。おれは前列シートの後ろに叩きつけられた。
「どうしたの?」おれが聞くと「人をひいたかもしれない」
肩で荒い息をする親父。降りて確認しても車の下にも前の地面にも何も無く
白い雪道だけ。「野生動物じゃないの?」と聞くと「いや、・・・し、白い
着物の髪が長くてボサボサの長いひげ生やしたジイサンが、森の中から突然
飛び出して来たんだ・・・」
当時のおれは、コントみたいにお墓で息を吹き返した人が出てきたのかなと
今は、年取った天狗だったかもなんて思ってる。ひびりまくりの親父可哀想だった。
嘆きのような声
天体観測が趣味の時期があり、都会の灯りをさけて山奥まで出かけていった。
ある流星群の集団観測のときも、険しくはないが人家から離れた山に登って行った。
流星の観測には、カメラのほかに声を録音する方式を採っていた。
その日の観測は当りだった。
みんな興奮して天空を見つめたまま、声にして観測結果を記録していった。
後日、録音を聞いて用紙に記録した人が、「観測は成功だったが、あの日の録音にへんな声が入っていた」といって、
ログを見せながら首をかしげている。
みんなで聞いてみようということになり、再生してみた。
観測中の雑談、そして観測報告が録音されている。
そして会話の間のホワイトノイズが響いている個所で、自分達以外の声がする。
「ああっ、ふう」
嘆きのような声と溜息の繰り返し。
最初微かだったげと、その内に大きくなっていた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー」
こんな声になり、マイクが近い自分達の声が遮られることはなかったけど、
明らかに何者かが周囲をうろついているようすが録音されていた。
奥山の観測では、ときたまこんなことがあります。
耳元で笑い声
小学五年生の時の林間学校での話。
林間学校メインの山登りは前日に雷が落ちたり登山中に雹やら霧やらにやられたりでオカルト以前に散々だった。が、下山中に変なのがおきた。
下山はクラス単位で集合写真を撮ったあとに流れ作業みたくおこなわれるんだが、頂上から暫くくだって行って、確か白樺の林を横切るときに耳元ではっきり笑い声がした。
おいらはクラスの一番後ろで友達と喋りながらあるいてた。後ろのクラスはまだ此方に追い付いてなくて、自分の後ろが静かだったのをおぼえてる。若干先程の雹で地面がぬかるんでて危なかったから、足元ばかり見てたな。
その時に耳元で笑い声がした。だから友達に何か面白いことあったん?って聞いた。友達からは、何にも楽しくない。早く下山したいとぶーたれた反応しか返ってこなかった。勿論しかめっ面で。とても笑ってたような雰囲気でも無かった。
そもそも子供の笑い声じゃなかった。先生位の年齢かと思ったが、先生は先頭に居る。なのでとてもじゃないが聞こえない。ゾッとしたおいらは今までよりも歩くスピードをあげて下山し始めた。
そのあとも笑い声は途切れ途切れだが続いたし、上着のパーカーをくいくい山の方に引っ張られた。後ろはみたらやばいと思ってずっと前ばかり見てたからマジで怖かった。
やっと視界がひらけて宿舎の後ろ姿が見えた時は凄く安心したな。やっと下山したかと思って。
その直後に今までとは比べられないぐらいの強さでパーカーが山道に引っ張られた。その時は悲鳴…ギャーっ!!って叫んで全速力で先生のいる先頭まで走ってった。
それ以来登山は怖くなったわ。
幸運にも中学林間学校は雨天で登山は全部中止、高校は臨海学校だったので山に登る事はなくなったよ。
山って女のひと?いるんですかね。ショタッ子大好きなひと?とか。
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