山にまつわる怖い話【38】全5話
婆ちゃんから聞いた話
今は亡き婆ちゃんから聞いた話
婆ちゃんが曾婆ちゃんとか、先祖から言われてきた事
「山には絶対に鏡を持ち込むな」
山は人ではないモノに逢う事が多いが、通常は気付かないフリでノープロブレム
でも鏡はKYな存在で、異なる存在同士を結び付けてしまう力があるらしい
婆ちゃんが先祖から言われたのが、
「山で鏡に自分自身を写した時、昼なのに背景が夜になってたら手遅れだ」
既に自分の存在が「人とは異なるモノ」の世界に取り込まれているらしい
そういう時に、「神隠し」が起こるらしい
さらに言うと「完璧な神隠し」というのがあって、この場合は居なくなった事、もともと居たという存在を消されるらしい
たぶん山での遭難を避ける戒めだと思うが、この話を聞いた時は正直怖かったな
再び今は亡き婆ちゃんの話
茶畑で刈り取りをして、茶葉袋を担いで山を降りる時の事
急な土砂降りで、父(曾爺)と欅の巨木で雨宿りをしていたら、逆に山を登って来る人達がいた
父(曾爺)「登って来る人らを見てもかまへんけど、話をしたらあかんで」
登って来る人は五人くらいで、雨避けか手拭いを被って顔は見えない
ただ最後尾の小男だけは里芋の葉を傘にしていたから、顔が見えた、筈だった
婆ちゃん「ええ男かなと思うて見たんやけど、目も鼻も口も何も無かったんや」
のっぺら坊、だったらしい
曾爺さん曰く、のっぺら坊は顔が無くなったのではなく、人間に似せた姿になったモノノケが、顔だけ再現できなかった姿らしい
雨宿りしている父子をやり過ごそうと人の姿に化けたモノノケの、ポロリな瞬間だったという話でした
生前の姿で
親父から聞いた話を思い出した。
オレの故郷にあった火葬場に昔勤めていた爺さんの話。
その火葬場は小高い山の上に建っていたんだけど、
遺体が運ばれてくる前日に魂が生前の姿で
火葬場に続く坂道を登ってくるのが見えたらしい。
…この方は突然心臓麻痺か何かで亡くなられたんじゃないか。
坂道を元気に駆け登って来たからな。
…苦しそうに胸を押さえてらっしゃった。結核だろうな。
そうやって死因を言い当てたそうだ。
まんが日本昔ばなしで似たようなお話がありました。
その話では、村人全員の魂が通るという凄いことになっていましたが(w。
山の化け物話
仕事が休みになったのにどこへ行く宛もなく、怖い話を
ざっと読んでおりました。大変恐ろしいし、面白かったです。
この中から幾つかが後世、「昔話」として語り継がれて行くのでしょうね。
私も一つ。長い上に、自分でもこれがどんな話なのか判っていません。
小学生の時の話です。怖いと言うか、申し訳ない話。
祖母が山のそばに済んでいたから、良く遊びに行きました。
何と言うか植物の殆どない石だらけの斜面の山で
祖母の他には余り登る人も居なかったようです。
で、これは最早「山の掟」云々じゃなく、人としてやっちゃいかん
気がするんですが、しかも祖母が口を酸っぱくして駄目だと
言い聞かせてくれていたにも関わらず、私はある程度の高さまで駆け登った後、
斜面の小石を蹴りながら降りて来る変な遊びを良くしていました。
勿論下に人が居ないのは確認してからやったし
大体が人も来ない山なので、別にいいだろう、と思っていたようです。
しかし祖母が私の行為を止める言い種は、他の人と登山した際言われた
「小石を踏むな!後続の迷惑だ!」
と言った種のものとはどうも違っていた気がします。
危ない、とかではなく(勿論それも含みますが)
「タブーだ」というものに近かった、ような。
で、ある日、いつものようにそんな遊びをしていると、突然走りたくなりました。
岩だらけの下り坂(子供には割と急)な斜面です。
幾ら頭の足りない子供だった私とは言え、ヤバい事は
判っていたはずなのに、えらい勢いで走り出し、盛大にすっころびました。
額を縫う怪我をしてみました。当然です。
当時の私としては、その出来事自体よりも、連れて行かれた病院で
麻酔もせず(脳に近かったからでしょうが……)洗浄縫合された
プチ地獄絵図のみが長く忘れられない思い出でしたが、
成長した今、坂の下でへんに冷静な顔で走る私を待っていた祖母の方が
気になるようになりました。
どう考えてもあの時彼女は、私ではなく、私の少し上、
つまり私が走り出した地点を凝視していた気がしてならないのです。
祖母は長生きしましたが、その時の事を滅多に言う事は
ありませんでした。たまに口にする時も「これで済んで良かった」
みたいな言い種だったものです。
私は「二針縫うだけで済んで良かった」という事を
彼女は言っているのだと思っていましたが、ある日そうなのかと
問い質してみました。
祖母は、「あの時あんたが走ったから、怪我だけで済んだってことだ」
というような事をぽつんと言うと、それきりどんなに聞いても、
その言葉の意味を教えてくれませんでした。
成長し、山登りも少ししました。流石にあれはまずかったと心から
思います。山なんて驚く程死角が多いし。
けれど、それとは別に、あの時走った私の後ろに何がいたんだろう、とも思います。
所で山の石のタブーってあるのでしょうか……。
銀座風の二人
最近ここを読み始めました。過去ログに、スーツ姿の男性の目撃談があったので、思い出した話があるので書かせていただきます。
だけど山の上の話ですが、山登りの話ではないので。
私は奥日光が好きで、ヒマな学生の時は気が向くとすぐ車で出かけていました。
あるクリスマスに、彼氏を連れて奥日光に行きました。
時期が時期なので、ありったけの防寒具で行っても耳がちぎれるほどの寒さでした。
金精峠は路面凍結で閉鎖されていたので、その手前の湯の湖で散歩に出ました。
湯の湖周辺は道が狭くて急な感じの3kmくらいのハイキングコースになってるのでよく歩きに行きます。
しかし雪と霜でツルツルで、周囲にも誰もいなかったので、数分もしないうちに「滑って危険だから引き帰そうか。誰もいないから事故起こしても助けもこないし」
と二人で意見が一致して、引き返そうとしました。
と、その時突然、すぐ前を男女が歩いているのが見えました。
彼らは死角になっていたカーブから現れたようだったので、20mも離れてなかったと思います。
びっくりしたことに、彼らはかなりの軽装備でした。
男性は革靴で、スーツの上にトレンチコート。
女性は髪をアップにして、タイトなワンピースとハイヒール。
二人とも全身黒づくめ。
どう見ても銀座の街でデートしてるような格好で、普通にスタスタ歩いているんです。
あんな格好で歩ける人がいるなら大丈夫かなあ、と思った私は、
「あの人たちに追いつこうか。人がいれば安心だから」と散歩を続けることにしました。
ところがどんなに追っかけても追いつけない。
逆にどんどん距離が開いていきました。
その間、私たちは滑って湖に落ちそうになったり(3~4mの高さから)、凍った倒木を越えるために二人で力を合わせて登ったり降りたりと、事故がなかったのが不思議なくらいの状態でした。
でも男女はずっと前を向いたまま、頭の位置も少しも変わらず歩いてた。
やっとの思いで一周したら、彼らの姿はどこにもなく、駐車場にもその途中のホテルのロビーにもそれらしい人がいませんでした。
もしすぐに車で出ていったとしても、金精峠側は閉鎖されているため、
中善寺湖方面に行かざるをえないはずで、見逃すわけもなかったんだけど。
結局は「プロの登山家のカップルがクリスマスに銀座でデートしてたが、
彼氏が突然奥日光に来たくなって、車で彼女を連れて来てしまった。
だけど彼女が怒ってしまい、会話がない状態で歩いてた。」
ということで私と彼氏は納得することにしましたが、釈然としない思い出です。
悪いモノ
昔さ、学校の遠足で近所の山登ったんだよね
で、俺らまだ小さな子供だったから、最近になって開かれた比較的平坦な道を登ったわけ
新しい道だから、階段とかあるし、道案内もあるし、結構整備されてるんだこれが
半分くらい登ったところかな、泉みたいなのがあってね
まぁ、これも後になって作られたものみたいで、傍に『山から引いた水なので飲めます』みたいな綺麗な看板が立ってた
俺は、なんかクサイ匂いがしたからから飲まなかったけど、女の子とか水筒に汲みとってた
で、『空気が綺麗だし、涼しいから』ってことで、そこで一旦休憩することになったんだけどさ
そのね、説明しにくいけどなんか変なんだよね
違和感があるって言うのかな、とにかく『どこかおかしい』って思った
山なんて登るの初めてだったからおかしいもおかしくないもないんだろうけどさ
とにかくなんか妙な感じがあってさ
まぁ、結局なにも解決しないまま休憩時間も終わって皆で頂上まで登ったんだけどね
漸くそこで何が『妙』だったのかわかったよ
俺たちが登ったの、初夏の頃だったんだ
だから、頂上から見た山の木々も青々と芽吹いてた
でも、休憩した場所にあった木はみんな茶色い葉っぱだったんだよね
枯れ木みたいな感じでさ、全然生気が無かったの
まぁ、そこだけ土壌が悪くて枯れてたのかもしれないし、そういうことってあるじゃん
でもさ、俺は多分、原因はそばにあったあの泉だと思うんだ
泉で水もってきた女の子がね、山を降りる途中で水飲もうとコップに出したんだよね
そしたらさ、出てきたのは水って言うよりも泥みたいな、腐った『何か』が出てきた
それが何かは分からないけど、とにかく何か悪いモノだったんだと思う
まぁ、なんとか無事に下山はできたけどね
確かに、人間が生きるために山を切り開くのは仕方ないとも思うけど
いつまでも開拓し続けるって言うのは正しいことなのかな
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