山にまつわる怖い話【49】全5話
背を向けて立つ少年
おれは 宮城県の山奥に住んでる。
近くにローカル線が走ってる。
20年も前か 子供の頃の友達が 交通事故で死んだ。
車にはねられたらしい。毎日のように一緒に遊んだ友達だったが。
葬式が終わって一週間位だったかな?
秋も深まって 日も短くなっていた。
友達と遊んだ帰り道。漏れの家はローカル線の向こう側にあったから
小さな踏切を渡らなくてはならなかった。
山道を下って 90度の曲がりかどを曲がって 踏み切りを渡るのよね。
その時 なんか悪寒がしたのよ。あれは秋も深まって
気温が下がってきたのもあるし、もう暗かったのもあるだろうよ。
だけど今にして思えば 人間とういうか 生物の持つ第六感が感じ取った
危機だったのかもしれない。
曲がり角を曲がっると 踏み切りが不意に現れる。
その踏切の中間地点に 少年が僕に背を向けて 立ってるのよね。
僕は すぐに180度ターンして ダッシュしてそこから逃げた。
あれは明らかに 一週間前にしんだ ひできくんの後ろ姿だった。
家に帰るには大きく分けて2つあった。踏み切りを渡るルート。
小高い丘の道を通って 小さな橋を渡るルート。
漏れは無我夢中で走ったね。何かお化けが追ってきそうで
気が気じゃなかった。前だけを見て走ったよ。
山道だからさ、ほとんど民家無いのよね。
丘の あんまり舗装されていない道を3分ほど走りまくって
急カーブ、ココを曲がれば橋だ。橋を渡れば 集落がある
曲がったのよ、橋があるじゃん。だけどその橋の中央に
またその少年が僕に背を向けて立ってるのよね。
明らかに踏み切りで立ってた少年と同じなのよ。
だって服が同じなんだもん。 黄色と白のラガーシャツ。
怖くなって きた道戻って友達の家に駆け込んだ。
友達の親はあんまり信じてくれなかったけど、
もしかしたら その道は霊道に なってたんじゃないかって。
死んだ友達が 最後に俺に挨拶しに来たのではないかと話してた。
もし最後のあいさつだったら 悪いことしなぁ
ずぶ濡れの女の子
小学4年のころ、近所の女の子5人と山に行きました。
家は山に囲まれた盆地でしたので、小学校の裏にも、
ちょっと行けばすぐにでも、山があったのでよく子供だけで行っていたのです。
その山には川が流れていて、深さは子供の腰くらいで、
岩も大きなのがごろごろとあって調度いい泳ぎ場がありました。
遊んでいると女の子の1人が、
「足のマメを魚がつつく」
というので、うそだーと言っていましたが、
あまりにも言うので、みんなでもぐって、水の中の彼女の足を見ました。
確かに小さなメダカみたいな魚が彼女の足の親指にあるマメをつついてます。
私は顔をあげて、友だちに話し掛けようとしました。
すると、そこには誰もいなかったのです。
今まで、その子の足を4人でもぐってみてたのに。
うっそーんと思って川からあがると、
向こう岸に(といっても3mくらいの川)白いワンピを着た女の子がすごい顔でにらんでいます。
あんな子いたかなと思ってよくみたら、ずぶぬれなのです。
迷子かなと思った瞬間、後ろから髪をひっぱられました。
後ろを振り向いても誰もいず、向こう岸の女の子もいなくなりました。
その後、ひとりで自転車に乗って帰ったのですが、
一緒に行った女の子たちは私が急にいなくなったから
心配で家に戻ってたそうです。
思い出としては
「メダカは人間の肉を喰うのか?」
というのが強かったんですけど、
やっぱずぶぬれの女の子が怖いですよね。
でもその時は怖いっていうより、心配でした。
迷子かなって…
望みの交換
知り合いの話。
彼は学生時代にオフロードバイクを趣味にしていたという。
よく一人で山中の林道を走っていたそうだ。
ある夜、バイクの横でシュラフに包まっている時のこと。
ふと目を覚ました彼は、すぐそばに小柄な影が立っているのに気が付いた。
身を硬くする彼に、それは奇妙な抑揚をつけて話しかけてきた。
望みを言え。お前の大事なものと交換してやろう。
大手の企業に就職が決まっていた彼は、しばらく考えてから答えた。
会社で大出世をさせてくれ。代わりに俺の子どもを差し出そう。
よかろう。その願い聞き入れた。
承諾の返答が聞こえると、影はすうっと消え去った。
彼は身を起こして、くすくす笑ったという。
おかしな夢だと思っていたし、何といってもその時、彼はまだ独身だったのだ。
当然子どもなどいるはずもなかった。
数年後、彼は二十代の若さで課長に抜擢された。
その企業では異例の大出世で、陰口も色々と叩かれたという。
彼自身の頑張りももちろんあったのだが、ライバルたちがことごとく病気や事故で
脱落してしまったせいだった。
呪いという言葉まで囁かれたのだそうだ。
元来勝ち気な彼は気にもせず、ますます仕事に邁進した。
会社の創業者の孫を嫁にもらい、向かうところ敵なし順風満帆だった。
それからしばらくして、彼は影との取り引きを思い出すことになる。
彼の妻が流産してしまったのだ。
あれは夢だったはずだ、何かの偶然だ。
そう思ったが、妻はそれから続けて二回流産をくり返した。
検診では母子ともに健康だったといい、医師にも理由が分からないと言われた。
憔悴しきった妻には、とても約束のことは話せなかった。
彼は恐怖に襲われ、あの林に一人で出向いたらしい。
しかし彼の前に影は現れなかった。
必死で林に向かってひざまずき、あの願いを忘れてくれと頼んだという。
現在、彼の妻は四回目の妊娠をしている。
周囲はいささか神経質に見守っているのだそうだ。
入ってはいけない場所
俺が聞いた中でもロマン溢れるのをひとつ
ある人が子供の頃の話
ある山の麓に、大人たちが「入ってはいけない場所」呼ぶ場所があったそうで、そこは山の麓の、一畳ほどの空き地だったそうだ
なんとこの空き地、草一本生えず、その場所の上に貼り出す樹の枝さえも完全に枯れていたという
まさにそこだけ切り取られたように、本当になにもない更地であったそうだ
しかし、大人たちはその空き地に入らないように気をつけながらその空き地に畑でとれた野菜や山菜なんかを置いて帰ってゆく
体験者が「ここは入っちゃいけない場所なのになんで?」と問うと、大人たちは笑いながら「人なら、顔さえ入れなかったら大丈夫」と言ったという
また、「ここはどんなものを置いていても動物が近寄らないから、大荷物になった時はここに放置しておくんだ」とも語ったという
そんなある日、その体験者はこの場所がどうしても気になり、誰もいない隙を見計らって、この場所に一歩足を踏み入れたそうだ
途端に、パクッと上半身ごと何かの口に喰われるような感覚がして、当たりが真っ暗になった
周りは普通の里山の光景だったのに、身を乗り出してこの場所に頭を入れた瞬間、景色だけでなく音さえもいっぺんに消え、
テレビの主電源を消すかのように、すべてが真っ暗になって何も見えなく、何も聞こえなくなったのだという
えっ? と思って咄嗟に身を引くと、まるで今までの光景が嘘だったかのように、元通りの里山に戻っていた
この場所は単に入ってはいけない場所なのではない、この場所には何者かが居座っているのだと、体験者はそう思ったそうだ
八大竜王の光
去年の秋の話。
うちの裏に御嶽山っていう100mくらいの山がある。山頂に御嶽社があり、200年ほど昔に偉い験者が木曽御嶽から分霊して開山したからこういう名前なのだそうだ。
とても暇だった僕は、天気がよかったのでこの山の探索をすることにした。
旧参道から鬱蒼とした山の中に入ると、両脇には無数の石碑、石碑、石碑…どうやら神道系の墓らしい。
森の中に石碑が混ざっており、まるで廃墟のような雰囲気だ。
時々龍の形をした石像や、延命地蔵や不動明王像なんかもある。
途中ひときわ眼を引いたのは3m程の大きさの天狗像だった。ここまでくると正直怖い。
それでも山に入る人は結構いるらしく、花や線香がお供えされた石碑も多い。
さらに道を外れて奥の方に進むと、わりと新しい感じの像があった。
剣に龍がまきついてるというデザインで、八大竜王と書いてある。
山奥なので当然暗いんだけど像の後ろの蝋燭立てから光が漏れていて、その周辺だけぼんやりと明るい。
なんとなく手を合わせてると、道なりに行く方向から水の音が聞こえてきた。
行ってるみとそこにはやたらと透き通った小さな池があった。湧き水でもあるのだろう、葉っぱが少し浮いてるだけで水が全く汚れていない。
傍目には生きてるのか死んでるのか分からない速度で大きな鯉が泳いでいる。
池の横に、潰れた小さな社があった。社の前には白い蛇の置物が置いてある。
時が止まったような場所だなぁ、と思った。
それでさ、帰る時「八大竜王」の石像の前を通ったんだけど、さっきと違って明かりがなかったのね。
気になって像の後ろの蝋燭立て見たら、蝋燭なんて一本も立ってなかった。
火が消えただけなら蝋燭はあるはずだし、全部燃え尽きちゃったとしても燃えカスは残る…はず。
って事はさっき見た光って?
びくびくしながら帰りました(笑
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