山にまつわる怖い話【72】全5話
奥の院
ある山寺に行った時の事
その山寺は地元では有名な山寺で私も何度か参る御山で、
その日も足腰を鍛える為見慣れた山道を一人登りました。
山寺まで何も目立った事も無くいつも通りお参りを済ませて帰ろうとした時、
気付くとそこには一人の老人が居り私に語りかけてきました。
老人「奥の院に行った事あるか?」
私「いえ、どこにあるんですか?」
老人「一緒に行くか?」
私は承諾し老人としばし話しながら狭い山道を登りました。
しばらく行くと獣道に入り周囲が草に囲まれた森の中に奥の院らしき石造りの宮がありました。
「ああこれが奥の院ですか」
そう言った頃には老人は居なくなっていました。
遭難するような場所でも無く数秒前まで目の前に居た覚えもあったので、
奥の院に呼ばれたような気がしましたとさ。
古い登山靴
夏と秋、山小屋でアルバイトをしていた後輩が下山してきた。
朝から晩まで追い回されるように過ごし、ほんの少しの山歩きを楽しんだらしい。
その山小屋は、夕方ともなると宿泊する登山者で満杯になり、
靴が整然と玄関付近を埋め尽くす。
無論、整然と靴を並べるのは我が後輩の役目だ。
指名されたわけではないが、何となく、後輩の役目になってしまった。
靴を各自で保管すれば良さそうなものだが、小屋の主人の方針で
客の靴は玄関に並べておく。
翌朝、客が出かけ始めると、玄関から靴が消えていく。
ある朝、全ての宿泊客が出払った後、靴が一足だけ残された。
年季の入った古い登山靴だ。
昨夜、これがあっただろうかと思い返してもはっきりしない。
覚えきれないほどの人数が泊まれるような施設ではない。
小屋の主人に声をかけ、靴を見に玄関へ戻ると、すでに靴はない。
翌朝、彼の忙しい一日が始まり、宿泊客の出発が一段落し、
せわしない一日の中でも、時間の流れが少しだけゆったりする頃、
玄関の掃除を始めようとする彼が見るのは、昨日と同じ靴だ。
小屋の主人を呼びに行った。
無論、二人が戻る時には靴など残っていない。
三日目にも靴はあったが、もう彼は主人を呼びに行かなかった。
小屋の主人を連れてくることが、靴の主を追い立てる行為に思えた。
数日後、客が出払った後の玄関に、その靴はなかった。
代わりに食堂のテーブルに彼宛の封筒が置かれていた。
封筒を開くと、しわくちゃの千円札が一枚。
客からの心づけだから取っておけと主人に言われ、彼は千円札を
財布に入れた。
千円札に印刷されている人物は、伊藤博文だった。
あの靴と同じくらい年季が入った、古い札だった。
視線
まだ学生だった頃の体験談。
田舎のさらに山の上、新しく出来た団地に住んでいた頃。一番近くのコンビニまで徒歩20分という立地条件で、
四方八方は山。団地の裏がそのまま山で、山菜採りの場所には全く不自由しないという、
そんな所に住んでいました。
そのころ、剣術をかじっていた私は、夜、眠れないときなどは剣道着と袴に着替えて、よく、裏山に素振りに
出かけていたものでした。(満月の晩に道着に袴、模擬刀で素振りしていて、お化けと間違われ、
団地の七不思議になってしまったことはまた別のお話です)
ある晩、素振りを終えて、帰ろうとした瞬間、どこからか視線を感じます。私がいた裏山の土手、20メートルほど
のぼった地点でしょうか?さらに、藪が動く音。野犬か山猫か。まさか熊や猪は勘弁・・・と、
冷や汗を流しつつ、腰の引けた情けない体勢で、腰に差した模造刀のツカに手をかけながらじりじりと後退。
よく考えて、はたか見たらこちらのほうが不審人物そのものと気付いて、相手が万が一寝近所の人である
可能性にも思い当たり、震えないように注意して声をかけました。
「・・・夜中に失礼致しました。どなたかいらっしゃるんですか?」
沈黙。視線も感じなくなりました。
やはり、動物か何かだったのかと、掌の汗を袴の腿にこすりつけ、袴の裾をもちあげて、土手を上ってみました。
と、そこには、ちょっと予想していなかったものがありました。
風雨にさらされた、縦横40㎝ほどの、小さなお社のようなものが、ちんまりとそこにありました。
杯のようなものと、青く錆をふいた10円硬貨がいくつか。言ってはなんですが、住宅地の裏手とはいえ、
誰も通りがからない、わざわざ土手の上まで見に来なければわからない場所にありました。
そこで私は怖いとは何故か思わずに、邪魔をして申し訳ないという気持ちになり、
「お騒がせして、申し訳ありませんでした。」とお社にお辞儀をして、土手を降りていきました。
背後で、小枝が折れるような音が、一度だけしました。
あとで聞いたら、昔、集落がそこにあった時代の、道祖神のようなものだったそうです。
霊酒の話
啄木で有名な?渋民村から近い県境で、実は野生の朝鮮人参が取れる
三つ葉を細く鋭くした様な葉に、細い蔓で独特の匂いを持っている
ある事情で山奥の宿に泊まった時に、そこのおばさんにそれを漬けたお酒をふるまわれた
少し変わった宿でおばさんが一人だけ
奥の突き当たりにある部屋の戸に「日本刀には神がどうの」「八百万の神がどうの」と書いてある
「何これ?」と思い聞いたら、そこのおじいさんの部屋らしい(姿はみてない)
めったに取れなくて「山の神様からの贈り物」らしい
瓶詰めの琥珀色のそのお酒を飲んでいたら、思いがけない事が自分を襲った
「イタコ」みたいに意識はあるのに自分が変な事を話し始める
「ここの土地の~犬神がどうの~おばさんに妹がいてどうの」とか色々
翌朝帰る時に「これ」と言って小さなビンにそのお酒をいただいた
強烈な経験だった為に未だに怖くて飲んでいません
怖い気配を感じた体験
京都の田舎方面を当てもなくバイクで走ってた
○○滝って看板を見てバイクで山奥に向かう事にした
こういう行き当たりばったりのツーリングは好きだ
少し走ると山の中の墓地に出た
通り過ぎるとまた墓地がある
道路の左右にぽつぽつと墓地がある山道だった
ようやく山奥の滝に到着し徒歩で山を登り滝と対面
案内図では更にこの上に池2つと城跡があるらしいので歩いて登った
いかにも河童の出そうな不気味な池に到着
池と言うより沼って感じた
もう1つの池も見ておこうと更に山奥に歩いて行く
杉が覆い茂っていてかなり不気味な山道を気配を消しながら歩いていた
歩きながら前方右上の杉並みの奥に
物凄い何かの気配を感じた
足を止めじっと見るがわからない
するとその方向から何かのうなり声のような
息遣いの様な声が聞こえてきた
犬や鹿とかではないと直感でわかり
その声に警戒しながら巨大な池に辿り着いた
城跡を探す気にもなれず、すぐに来た道を戻る
もう威圧的な気配や声は聞こえなかった…
カバンのファスナーをゆっくり開け閉めする様な低い声でした。
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