『木の話 二題』霊感主婦シリーズ|洒落怖名作まとめ

『木の話 二題』霊感主婦シリーズ|洒落怖名作まとめ 短編
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木の話 二題

 

主婦さんからの話です。
家の近所に、わりと大きな家とそれは見事な藤棚があるそうです。
毎年彼女はその木の花が咲くのを楽しみしてたそうですが、長いこと空き屋だった
その家が売れたら、なんと家の取り壊しをはじめた。
「まさか、あんな立派な藤まで切らないよね・・・」と思っていたら、何と枝をばきばきに
折られ、引っこ抜かれてたそうだ。
あんなに綺麗に咲いてたのに・・・と、彼女は非常に残念に思ったそう。

ある晩、夢を見た。
藤色の着物?を着たおじいさんに、「ちょっと待っておれ。戻ってくるぞ。」と言われたと。

新しい家が建ち、庭が整備されたときになんとその引っこ抜かれた藤の木が戻っていたそう。
「ああ、ちゃんと戻すつもりだったのね、良かった良かった。」と思っていた。
後日、家人と話す事があり「この藤の木、毎年楽しみにしてたんですよ」と言ったら、
「それがね、引っこ抜いたら毎晩夫の枕元におじいさんが立って、睨み付けるって言うの。それで
見て貰ったら、藤の木を抜いたからだ、って。で、造園業者に聞いたら雨続きだったから、もしかしたら
まだ根っこが付きますよ、って言われたんでまた戻したのよ。」と。

「木の霊はいるらしい。でも妖怪の分類になっちゃうのかね?」と主婦さんは笑ってました。
でも、その藤は以後もちゃんと新芽を出し、彼女の目を毎年楽しませてくれるそうです。

□ □ □

もう一つ、木の話。
彼女はミモザの木が好きで、実家でも植えて大事に育て、それは見事な花を咲かせていたそう。
ところが、台風でその木が倒れてしまったそうだ。
だが、翌年、何とミモザの芽が出ていた。
親は「あなたが大事にしてたから、子供を残してくれたのね。」と、その木を嫁に行くまで持たせて
くれたそうですが、新しい庭には着かなかったそう。
「ごめんね、枯らしちゃって本当にごめんね」と思っていたそうです。その枯れた枝を、まだ彼女は持ってます。

翌年、妊娠したとき、初期から出血が続いたそう。
「ああ、駄目かも・・・」と安静している中見た夢が、やはり黄色の服を着た女の人が子供と、
そして腕に赤ん坊を抱いていて。
「大事にしてくれてありがとう、助けてあげたいけど、それはできない。だからこの子が寂しくないように、
私たちがお預かりしていきますね。」と言って、頭を下げて行ってしまったそう。
主婦さんはその時は結局、流産してしまったそう。
でも翌年、また妊娠し、今度は無事出産しました。

「なんで藤が男でミモザが女性だったかはわからないけど・・・。」との事ですが。
いま、彼女の庭には新しいミモザがありますが、彼女の長男(流産後に出来た子供)は、しゃべるように
なったときに、「○くん、このお花好きなんだ、いっぱいいっぱいあるといいんだよ。」と言ったそうで。
近所のミモザ農園(と名付けてる、ミモザばかり植わっている空き地?)に花の季節に息子を連れて行くと、
それは楽しそうにずっと遊んでるそうだ。

「そんなメルヘンな・・・」
「いいじゃん、メルヘンで。こういう事ばかりだったらいいのにな。」と、笑顔の主婦さんでした。

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