山にまつわる怖い話【73】全5話
丑光井戸
実家の裏にある無名な山ですが、奥深くに古ぼけた井戸があります。
子供の頃に井戸の中を覗いたことがあり、その時に不思議な現象が起こったという記憶があります。
真昼間に井戸に首を入れ、奥深くを覗いたのですが特に何も無く、
それから、井戸から首を出し、周りを見廻すと、真夜中に変わっていたのです。
今、思い出すと、そのような記憶しか残っていませんが、その後、
最近になって、その井戸のことについて調べてみたのですが、
その井戸は古くから、「丑光井戸」として祭られており、夜になっても井戸の中は昼間の様に明るくなるという言い伝えがあり、それに関係があるのかもと思った次第です。
消える者、探す者
伊藤正一氏が書いた「黒部の山賊」に載っている実話(抜粋)
1963年、金沢大学医学部の3人・A、B、C君は夕方雲ノ平山荘についたが一人が疲れていたためにザックを小屋の手前10分程度のところにデポした。
小屋に到着後一番元気のいいA君がザックをとりに戻ったが、ここから消息不明となる。
暮れるには十分時間があるし、天気は晴れ、万一の場合は声をあげれば十分に聞こえる位置であった。
A君がいなくなったといって騒ぎ出したのは暗くなってからで、営林署4名、小屋の者10名その他40名ちかくで捜索したが手がかりは皆無であった。
翌日も未明から捜索しヘリも飛びビラをまいたまた、他の小屋へも連絡を取り捜索のネットワークを強化したが手がかりは得られなかった。
不思議な出来事であった。天気は晴れ、シーズン中で人も多くいた中で忽然と姿を消したのである。
伊藤氏は自殺も考えたが二人の仲間はそれを否定した。
四日目、A君は突然帰ってきた。
どこにいたのか訊ねると「小屋にいたんだ」という返事がかえってくる。
また、「おい、ガソリンはないか」「オレのズボンはどこへいった」などと口にするものだから、
とりあえず伊藤氏はA君を休ませることにした。
半日眠ったA君は正気な人間に戻り語り始めた。
ザックをおいたところまでいくと急にガスがかかって方角が分からなくなった。
それから後はただ小屋に帰ろうとヤブの中を歩き続けたことしか記憶に無いという。
当日はガスなどかかってはいなかったのだが、A君の言うヤブの中を歩いて出たのはカベッケであった。そこでキャンプをしてた人たちの中に入れてもらって最後の夜を過ごし、翌朝雲ノ平山荘に戻ってきたということであった。
A君の言葉→「今となっては不思議です。昼も夜も、いつも四人で、話し合ったり僕の持っていたカンパンを食べたりしながら歩いていたので少しも寂しくありませんでした」
この話の中の3人とは一体誰なのか? 色々な憶測が飛び交った。
寒い
小学生だった時の話。
ある夏の日、スイミングスクールの行事か何かで、キャンプへ行った。
夜は、テントではなくバンガローに布団を敷いて寝た。
私は怖がりなので、真ん中に寝たかったのだが、
内向的な性格が災いして、結局ドア前の場所になってしまい、憂鬱だった。
夜も更けてどのくらい時間がたったか、いつの間にか寝いっていたようだ。
ふと、後ろで誰か喋っているのに気が付いた。
女の人の声だ。
「寒い」
自分が端っこに寝てたっけ。と気づいた瞬間、私は恐怖で飛び起きて、
隣に寝ていた友人に助けをもとめようとした。
腰が立たず、ただ四つんばいになってアワアワしていた。
「寒い…寒い…寒い!」
エコーのかかったような大きな声が、部屋中に響いた。
友人はぐっすり寝ていて、そんな声は聞こえなかったという。
恐怖で錯乱ぎみだった私は、懇願して彼女の布団に入れてもらって
震えていた。
二十年たった今でも、本当にはっきりと声が聞こえたのを思い出します。
ただの幻聴か、それとも何かと波長が合ってしまったのか…。
せかす
3泊4日4人でスキーに行った帰りの出来事です。
帰り道の山道を走っていると後ろの2人の様子が変らしいのです。
後ろの右側に座ってる人が「早く言ってくれ!」と急かすし、左側の人は「早く!早く!」と叫んでるそうなんです
前の2人は当然分けが分からないし、後ろの二人にむかついてきたらしいんですが、そうしてるうちに後ろの右側に座ってる人が
「うわーー!」と叫んだ途端左側の人が「おい!**」とその人の名前を叫びだしました。
前の助手席に座ってた友達のお兄さんが振り返ると後ろの右側の人がスーっと消えていったらしいのです。
信じられない話です。
しかし実際にこの事は新聞にも載りましたし、8年たった今でもその人の消息は不明のままです。
一体何が起こったんでしょうか?
幽の沢
秋の矢木沢ダム(奥利根湖)にカヌーを浮かべて岸を巡ってキノコなどを採るツアーを2名でやった時の話です。
暗くなる前に適当なところに上陸して泊まりました。
真夜中に急に目がさめたらテントの上部から私の顔面上におおいかぶさるような感じで女の顔の気配があり、「#&*~`@$#<|~% ?」と意味の解らない言葉で話しかけられました。質問形でした。
その後、何分間かテントの周囲をがさがさと何かが這い回りました。テントをばさばさ揺らしながらです。
こわかったですが、戦おうと思ってナイフを取り出したのを思い出します。
別のテントに寝ていた友人は起こしませんでした。
オバケが出たといって起こすのははばかられたからです。
その後、ランタン2基とヘッドランプを煌々とつけて朝まで暗闇を睨み付けて過ごしました。
朝になって山菜採りらしい年輩のハイカーと世間話をしているなかでこの場所は幽の沢という名前だということがわかりました。
あの問いかけ調の音声は生々しく今でも耳から離れません。
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