『蓮の池の話』霊感主婦シリーズ|洒落怖名作まとめ

『蓮の池の話』霊感主婦シリーズ|洒落怖名作まとめ 短編
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蓮の池の話

 

主婦さんが話すのが私だけなんだと思う。本人曰く「この年齢で幽霊がどーのってw」だし。
私は霊の存在を信じているけど、普通にオカルトが嫌だって人の方が多いと思う。

蓮の池の話も聞いてきたんだけど、本人は怖がっているが自分はあまり怖くなかった。
主婦さんが免許取り立ての頃楽しくて、あっちこっちへと車で遠征していたらしいのだが、
一度夜の運転練習で酷い目にあったので、タバコを欠かさず持ち歩くようにしていたと。
で、その日も、ちょっと田舎の山道を走っていたら、蓮の花が咲いている池に行き当たった。
水場があまり好きじゃない主婦さんは「うへえ」と思ったようで、そこでUターンしたそうだ。
何か寂れた祠が目に入ったが、なんだか嫌な雰囲気がして、車から降りることもしなかったそう。

で、来た道を引き返したんだけど、何故かまたその池につく。
ナビは誤作動を繰り返しあてにならない、地図を見ながらでもどうにもならない。
それを三回くらいやったあと、池から少し離れた場所でタバコに火を付けたそうだ。
主婦さんは吸わないので、とりあえず火を付けてみただけなんだが、その時に「開いた!」と
思ったそうで、すぐにタバコを灰皿に入れ、来た道である、先ほどから何故か何回もぐるぐるした
道を戻ったら、今度はきちんと国道に出られたそうだ。
「やったー!」と安心したとき、何を思ったかハンドル操作を誤って、その山道への入り口にある
大きな石碑みたいなものに、車ごと体当たりをしたそう。
当然、車は壊れたが、主婦さんは怪我はしなかったらしい。
気付くと、どこから来たのか村の人たちに囲まれて、お巡りさんも来てたらしい。

□ □ □

お巡りさんや、どこから来たのか近くの村の人が見守る中、「もしかしてまずいものを
壊したのかも?」とびくびくする主婦さんに、お巡りさんは「自爆だし、その石碑も誰の
ものでもないからいいよ。あとは保険会社に相談して」と言われて終わりだったそう。
村の人らしき人に、「これって大事なものじゃないですか?修理とかしないといけないのでは?」と
聞くと、「いや、いい、いい。そのままで実は困ってたんだ、これがあると、道路も広げられないし」
とか言われて。小学生くらいの男の子に「お姉ちゃん、車これじゃ駄目かもね」とか言われたそう。
車はJAFに取りに来て貰い、自分は電車で帰ったそうだ。
村の年寄りに、「もういいから、明るいうちに帰りなさい」と言われて。
結局車は修理より新車を買った方が、って事で、1ヶ月のつきあいの車となってしまったそうだが。

その後、どうしても気になり、同じ場所に行ってみたそう。
そうしたら、石碑はそのまま(壊れたまま)で、看板に「この先行き止まり、抜け道無いので入るな」と
いう意味のことが書いてあったそう。
「こんな看板あったっけなあ?あったら入らなかったのに」と思いつつ、そこに車を止めていると
先日のお巡りさんが自転車に乗って通りかかり、主婦さんに気付いたそうだ。
「あ、先日はどうもご迷惑おかけしまして・・・」と言ったら、お巡りさんは意味ありげに笑い、
「いや、この辺の人は皆、それを壊せなかったから。あなたの体当たりのおかげで助かったよ」と。
そういえば、ぶつけた後に出てきた村の人たちはやたら親切で、「駅は解る?」とか、「どこも
ぶつけなかった?病院行く?」とか声をかけてきたなあ。と。
見知らぬ人に親切な土地柄だなと思っていたが、何か違うのか?と、お巡りさんに食い下がった。

□ □ □

そうしたら、お巡りさんは「僕はここの生まれじゃないから詳しいことは知らないんだけど」
と言いつつ、話してくれたそう。

あの池にある祠は見たか?と。
見た、それから三回くらい道に迷ったけど、タバコに火を付けたら出られたと言うと、
あの池の神様は、この土地を守る代わりに生け贄を差し出せという神様だった。
村からは出せないと言うと、よそ者が迷って入り込むように、入り口に石碑を建てるようにと
お告げ?があって、あの石碑が出来たと。(大昔のものだったらしい)
昔は旅人が迷って、あの山から出られなくなったりとか多かったらしいですよ、と。
「確かに、道祖神みたいに見えたから、あの奥、入っちゃいますよね」と言うと、「それが狙いでしょ」と。
で、現代になって流石にそんな気味の悪い物は壊そう、となったが、いざとなると施工業者の人が
怪我をしたりして、結局皆、嫌がった。
だから、看板を作って「行き止まり」を示しても、その看板は何故か字がすぐ消えたり、風で飛んで
いったり、或いは粉々に壊されていたそうだ。
「じゃあ、私は運が良かった人なのかなー、あははは」と言ったら、「蛇はタバコが嫌いなんですよ。
だからこの村の人たちはみんなタバコを吸います。あ、池の神様は蛇神様らしいのですが。」と。

「じゃあ、行方不明になった人が実際いるんですか?」と聞くと、「村にはいない。でも最近は
自殺したい人が入っていくらしい。年に一度はあの祠を掃除するけど、毎年死体が出るよ」と。
そんな、樹海じゃあるまいし、平成の世の中にそんなことが、と思ったが、自分も確かに道には
迷った。でも、お巡りさんは「一本道」と言う。

□ □ □

「じゃあ、あの石を壊した私は祟られないんですか?」と聞いたら、
「村の人が言ったでしょ。日没までに帰りなさいって。ああいうものは昼間は動かない
らしいからね。・・・まあ、あなたも迷信を信じるなら、このあたりには夜来ない方がいいよ。」と。

その後、帰るときに視線を感じて振り返ると、鎌首をもたげた大きな蛇がいたそう。
主婦さんダンナは虫、は虫類は一切駄目なので「うわー!」と逃げたが、主婦さんは果敢に挑んで
しまったようだ。「捕まえてマムシ酒にしちゃろ!」と。(結局逃げられたそうですが)
ちなみに、マムシかどうかも主婦さんには解らなかったが、基本的に蛇とか怖くないらしい。
毒蛇だったらてか、マムシは毒蛇だし、と言うと、「蛇には捕まえ方があるんだよー」とだけ言ってた。

そして、その池は今や地元で有名な「心霊スポット」になりつつあると。
そして一番腑に落ちないのが、そこに交番など無く、付近に駐在さんはいるが、主婦さんと話したお巡りさんの
正体は不明との事だ。しかも、言われた村など存在しなく、とうの昔に廃村になっていたらしい。
「お巡りさんコスプレの人が捕まったときに、私もそういう人に担がれたと思ったけど、あんな田舎で、
そんな話あり得るかな? 」と。
村人もいたはずなのに、あそこに住んでいる人はいませんよ。廃村で、廃屋が少々残っているくらいです、と。
そう言えば、大人や子供もいたけど、あれって平日の昼間だし、小学生くらいの子供がいるのは変?と
思ったそうだが、もう忘れることにしているらしい。

今でもその国道を通ると、左側に壊れてそのままの石碑と、「この先行き止まり」の看板をそこで
見るが、周囲には一件の家も建物も無いまま。
少し行けば海にも出るのに、ぽっかりと忘れ去られたように、まだそこは存在しているらしい。

という話だった。
個人的に主婦さん、よくそんなの壊して平気だなと思ったが、「一応お払いはしてもらった」とか。
こんな事ってあるんですかねえ?と聞くと「自分でも不思議な体験と思うけど遭っちゃったからなあ」でした。

□ □ □

タバコを持ち歩くは、「道に迷ったらタバコに火を付けるといい」という迷信から。
主婦さんはお祖母さんから聞いたそうだが、同じ迷信を私は漫画で見たことある。
一般的な迷信なのかは不明。

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