『呼び出しボタン』『部屋の音』2話収録

『呼び出しボタン』『部屋の音』2話収録 中編
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間違って呼び出しボタンを押してしまった 【実話系】

大学生のときに同じ学校の友達が体験した恐怖体験です。

ある夜、友達が私のアパートに駆け込んできました。
まるで怖いものでも見たように青ざめた顔で、部屋の床にへたり込んだ友達になにがあったのかと問うと、こう言ったのです。風呂に入っていて、追炊き機能のボタンを押そうとしたとき、間違って呼び出しボタンを押してしまった。
その時、風呂の外から女の声で

「待ってて、今行くから」

と聞こえてきたのだと言うのです。

友達は、結構いい賃貸マンションに住んでいるのですが、実家は地方のため、私と同じ一人暮らしです。彼女もいません。一体だれの声だと思ったとたん、悪寒が押し寄せてきて震えがとまらなくなったそうです。怖くて風呂から出るのもためらわれたが、風呂から出ないことには外にもいけない。

そんなわけで、脱いだ服をあわてて着て逃げるようにマンションから飛び出してきたのだといいます。

「部屋の中に、女の人がいたのを見たの?」

との私の問いかけに、友達は小さく

「わからない。怖くて、わき目も振らずに家のドアまで向かった。でも…ドアにはきちんと鍵がかかっていて、チェーンもしていたんだ。大学から帰って、俺が戸締りをした。鍵はかかっていた。間違いないんだ。」

と、がたがた震えながら言いました。
結局その日は友達を家に泊めましたが、電気を消さず冷蔵庫に入れてあった酒を浴びるように飲み、なんとか気持ちを落ち着かせていた、といった状態でした。
そして彼はそのまま実家に帰り、両親がマンションの荷物を引き取りに来たようでした。

それ以来、連絡を取っていないのでその後のことは分かりません。あの話を聞いて以来、私は風呂の中で呼び出しボタンを押さないように、細心の注意を払っています。

 

 

部屋の音 【実話系】

私は大学生の時に一人暮らしをしていたのですが、家賃等の生活費は自分で稼がなくてはいけなかったため、出来るだけ安いアパートを借りていました。

部屋は月3万円の1DKアパート。私が住んでいた地域の平均相場が6万円くらいなので、とても安いアパートでした。安くてお得だと思って選んだのですが、引越しが終わった初日から異変を感じていました。

部屋にいると胸騒ぎというか、心がザワザワするような何とも言えないような気持ちになるのです。夜になると何故だか涙が止まらなくなります。ですが理由は全く心当たりが無く、夜中ずっと涙が出ます。

「花粉症かな?」

と思ってさほど気にもせず、新生活に追われる日々が続きました。

しばらく住んでいると、ある事に気付きました。
毎晩夜中の12時くらいになると「音」が聞こえてくるのです。それは蚊が飛んでいるようにも、換気扇や冷蔵庫のノイズのようにも、女性がすすり泣くような声のようにも聞こます。最初は隣の部屋に女性が住んでいて泣いてるのかな?と思っていたのですが、毎日同じ時間に泣くなんてことは考えにくい。音はどうやら自分の部屋から聞こえるようなのですが、どれだけ調べても発生源は特定できません。もしかしてこの部屋は…と思いつつも、そんなはずは無いと思って生活を続けます。

しかし今度は、私の体に異変が起こります。
私は滅多に泣くことがないのですが、ほんの些細な事で泣いてしまったり、不意に悲しくなってしまったりするのです。気分も塞ぎ込みがちで、ひょっとして鬱になりかけているのかもと不安になりました。そこで気分を一新するため、私は引越しをすることにしました。

引越し当日、隣に住んでいる人とたまたま玄関の外で会いました。
するとその隣人は

「やっぱり出て行くんですね」

と言うのです。
私はやっぱりという言葉がひっかかって

「どういうことですか?」

と尋ねてみると、その隣人の方から

「この部屋は昔、女性が孤独死した部屋。」

と言われました。5年くらい前のことだそうです。亡くなられたのはまだ20代の女性だったそうですが、誰も肉親がおらず、結婚もしておらず、ずっと1人だったそうです。
ある日、部屋から出てこないなと思って大家さんが開けてみると、1人で亡くなっていたそうです。おそらくは自殺などではなく、突然死だということでした。

部屋はまた貸しに出されましたが、それから変な噂が流れたそうです。

「夜中になると女性の泣く声が聞こえる」
「女性の気配がする」

誰かがその部屋に引っ越してくると、長くても1ヶ月としないうちに出て行ってしまう。いつしかこのアパートの中では「呪いの部屋」と言われていたそうです。

引越ししてからは、私の心身も元に戻って普通の生活を送ることが出来ました。
今では地元に戻って社会人をしていますが、まだあの部屋はあるのかと、ふと気になります。

 

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