『先輩と生き霊』先輩シリーズ【怖い話】|洒落怖名作まとめ

『先輩と生き霊』先輩シリーズ【怖い話】|洒落怖名作まとめ 先輩シリーズ

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先輩と生き霊

 

先輩が、女連れだった。
そりゃ、大学生にもなれば彼女の一人くらいいてもおかしくない。
ただ、先輩はヨーコさん一筋だから、他の女性と付き合うって事は考えられない。
と、勝手に思っていたわけだが、どうやらそれは思い違いだったらしく、先輩は俺の知らない女性と並んで歩いていたのだ。
それだけで彼女と断じるのもどうかと思うが、先輩はとにかく女性に人気がなく、全く近寄りもされなかったので、一緒に歩く程度でもかなりの仲に思えた。
俺は声を掛けようとしたが、二人の時間を邪魔するのもアレだなと思い直し、微笑んで見なかったことにした。
翌日、先輩を問い詰めてやろうと思いながら。

「いつだ」
翌日、いつものように図書館でその話をしたら、先輩は険しい表情で言った。
先輩をからかってやろうとしていた俺は、予想を裏切る真剣さに驚いた。

□ □ □

「昨日です。夕方、駅前のコンビニらへん歩いてましたよね?二人で」
先輩の眉間に深い皺がよる。
「女の特徴は」
「顔はわからなかったです。髪がこう、長かったんで。なんていうか、アレ、貞子みたいに」
手で顔の横に垂れた髪を表す。
女性は真っ黒な髪を背中の真ん中あたりまで伸ばしていた。
さらにうつむいていたので、俺の見た角度からでは顔が見えなかった。
先輩は溜め息を吐く。
「そうか。やっぱり」
どうやら彼女や何やの話では全く無かったらしい。
良く良く考えれば、いくらなんでもあの女性は異質すぎた。
それでもなんとなく納得出来たのは、あの先輩の知り合いならあり得るかと思ったからだった。
「なんなんです?」
先輩は肩をばきっと鳴らす。
今日は何やら疲れているようだ。
「そうだな、使い魔ってわかるか」
はい、と答える。
「コウモリだとか、カラスだとかのイメージありますけど、それが?」
「まずそこから説明しようか。日本だと使い魔ってのは、式神と呼ばれる。知ってるな?」
式神。
使鬼神とも言う。
特定の術式を介して、術者の手駒となる精霊などを使役する術。
そうか、言われてみればこれも使い魔の一種だ。

□ □ □

「陰陽師なんかが使ってたってアレですよね」
「そうだ。付け加えるなら、犬神やくだ狐なんかもそうだな。自分の……術力とでも言おうか、エネルギーを分け与え、手駒を生み出し使役する。つまり、女はそれだ」
ん?
使い魔というと、知能を持たない低級な連中を思っていたが。
「人間霊でも式神に出来るんですか」
先輩は首を振る。
「まだ半分だ。というより、こっちの方が重要か。お前の見た女は、生き霊なんだよ」
「つまり?」
先輩は逆の肩を鳴らす。
「お前の見た女は実在する。そいつがとにかく俺の所に行きたいって願った結果、エネルギーが俺の所へ来たわけ。式神のように」
「じゃあ、知り合いなんですか」
先輩はまた首を振る。
「俺が行ってる病院で、二言三言話しただけ。あそこ精神科あるだろ。そこの患者」
俺はぞくりとした。
精神科にかかるような人間の、それも女の妄執は、想像出来ないほど恐ろしかった。
ただ二言三言話しただけで、自分の魂を割って先輩の所へ飛ばしてしまう程に。
「……やっぱり、害があるんですよね」
先輩は疲れた様子だった。
きっとその女は先輩の精神にも影響を及ぼしたりするのだろう。
先輩は神妙な面持ちで言った。

□ □ □

「いや、全く。見られてる気がしてちょっと寝不足なくらい」
「あ、そーすか」
予想外に軽い被害だったため、若干拍子抜けしてしまう。
「まあ害意がなけりゃそんなもんだ。それもそろそろ終わりっぽいし」
終わりっぽい?
「なんでです?」
先輩が笑う。
嫌な笑顔だ。
「お前、見えたんだろ」
「はい、確かに」
確かに、女は見た。
「それがどうかしましたか?」
「言ったろ、エネルギーだ。より強く存在するには、当然多くのエネルギーを使う。俺ならともかく、お前程度に見える程はっきり存在するってことは」
あ。
なるほど。
「もしE線切っても飛ばしてたら、最後にはそりゃ……なあ?」
はっはっはと笑って先輩は立ち上がる。
「逃げ戻る先が無くなれば、俺なりのやり方で追っ払える。まあ、もう少しの辛抱だ」
手をひらひらさせながら図書館を出る先輩の背中に、昨日の女が見えた気がした。
彼女の体は、今どうなっているだろう。
考えるのは、やめておいた。

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