妖怪退治の仕事シリーズ『先生とマレーシアに行った』|【5】洒落怖名作まとめ

『先生とマレーシアに行った』妖怪退治の仕事シリーズ|洒落怖名作まとめ【ホラーテラーシリーズ】 シリーズ物

 

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【妖怪退治の仕事シリーズ】- 妖怪退治の仕事してるけど、何か質問ある?

 

先生とマレーシアに行った

 

先生がマレーシアの友達に会いに行くから、お前も来るか?
みたいなことを言っていた。

その時はめずらしく、先生が交通費を持ってくれるという話だった。
ちょうど、その時はすこし稼ぎがいい仕事が終わった後で先生の機嫌がかなり良かったのが理由かも

成人してからは、先生からなけなしだけど、給料をもらっていたんだけど。
仕事の時、新幹線とかの移動費用も自分持ちが多かったから
かなりめずらしい話だった。

特に仕事関係のものでもないらしくて、俺はどうせならと考えて
ついていくことにした。

まぁ、軽い旅行気分だった。

 

ちなみに、この話は妖怪関係とすこし違う話で
どっちかというと、人が怖いみたいなやつ。

その先生の友達って人は、昔仕事ですこしお世話になったという人で
中国人のおっさんらしい。そんで霊感がすごいうんぬんで
金牌術っていうよくわからない分野のものに詳しく
妖怪から、除霊とか、風水とか、なんでもござれの感じな人だった。
現地ではそれなりに有名な人らしい。

金牌術についてはまたすこし後に。

俺としては、その頃にはそれなりに貯金があったから
到着してからはすぐに先生と別行動して、帰るときに合流するみたいな感じに持って行きたかった

行く前にはそれなりホテルとか物価とかしらべて、ひとりでインジョイするつもりだったんだけど
そんな俺の考えを知ってか、先生は飛行機で俺にマレーシアの女はすごいんだぜ、ゲヘへ
みたいな話をしてきて

そんで、友達に会った後に、俺を東南アジアの女の素晴らしさを知ることができる場所に連れて行こうか?
と聞いてきた。

俺は3,4分ぐぬぬって悩んだけど、やっぱり男なわけで
●貞を異国で捨てるのも悪くないなぁとかなんとかw

一人でホテルを予約していたんだけど、キャンセルした

 

そんで空港から、先生に連れられて、その人の家に行くことになったんだけど

最初はバスに乗って、2,3回乗り換えて、さらにタクシーに1時間半揺らされて
その後さらに車が通れないような細い道(町中なんだけど、なんか細かった)を徒歩で1時間。それでやっと着いた。
ちなみに、その間の荷物持ちはもちろん俺だった。

もしかしたら俺は先生に荷物持ちとして連れられてきたのでは?
とかおもった。

先生の知り合いの住んでいる場所はかなり古い感じのアパートみたいなもので
そのアポート一つ丸々その人のものみたいな感じ?
ぼろいけど、中は結構きれいで

住むにはいい感じだった

 

俺と先生を出迎えてくれたのは、かなりのイケメンで俺と多分ほぼ同じ年の青年だった。

日本語ペラペラで、先生と話していたんだが、俺はほぼ無視された。
たぶん、雇われた荷物持ちだと思われていたのかも

そんで、話の内容から、その青年の名前はワンなんちゃらで
中国人で、先生の友達ので弟子的な人だった。

無視されて少しムッとしたから、わんとか犬かよとか、大人げないことを思ったりもした

そんで案内されてやっと、先生の友達の人にあったんだけど
これまたかなりのイケメンで、後から、先生よりも年上で50台後半だと知ったんだけど
40代のナイスミドルみたいな感じだった。

 

少し前にも質問あったけど、うちの業界ではイケメンは少し少ないという話をしたよね
これはとくに理由というのは定かではないんだけど
最近自分が思うに、たぶん、イケメンのほうが女性的な部分が強いからじゃないかな?
あくまで憶測だから気にしなくてもいいが

そんなジンクスを真向に崩された気がして、俺はすこしこの子弟に興味がわいた

最初ナイスミドルのおっさんは先生とひさしぶりとか日本語で色々話して

そんで、俺の存在に気がつくと
この子は誰だ?と聞いてきた。

先生は俺のことを紹介すると、おっさんはリーなんチャラだと紹介した。
リーのおっさんは物珍しそうにすこし俺を眺めたりしたんだが

俺と先生を座れる席に案内して、ワンくんにお茶を出させた。
その間に先生とリーのおっさんが世間話を色々していて

俺がちょうどお茶を口にしようとしたら、先生にそのお茶は飲まないほうがいいぞ
と、たしなまれた

 

先生にえ?って感じな顔をしたんだけど。
先生は呆れたかのように、昔は教えただろ?綺麗な部屋には気をつけろって。

そんで、そこでやっと思い出して合点した。
この家ってもしかしたら蠱を飼っているんですか?
って聞いたら。リーのおっさんはそうだ。と答えてくれた。

まぁ蠱って割と有名だから、wikiにも割と詳しく書かれていてるんだけど。
多分みんなが思っているような式神みたいなものとはまた違うんだよね。

かなり前に、そういった式神みたいなものは多分使える人はいない、といったよね。

じゃあ蠱ってのは実際のところどういうものかというと

 

ではまずは蠱についてかな。

蠱ってのは一種の人工的に妖怪に似た何かを作り出す手法なんだよね
まぁ、作り方とかはwikiに色々書いてあるんだけど

あそこ敵には蠱は呪いの道具として使われていて
蠱をすりつぶして、呪いたい相手に飲ませると、相手は呪われて死ぬ
というもの。

ただ、うちの先生によるとそんなもんマユツバにもほどがあるとのことだ

 

普通に現代の常識的に考えて
たくさんの虫とか蛇とかを共食いさせたりとかすれば、それだけ生き残ったやつにたくさんの寄生虫が集まるし、
それがないとしても、かなり汚い

そんなものをすりつぶして誰かにのませたら、病気の一つや二つにもなる
しかも昔は医療環境がひどいから、多分そのまま死ぬ

ただ、これだけだと、蠱の使い方としては下の下
結局のところ、ただ毒を盛るのと同じだからね

本物の蠱使いってのはもっと恐ろしいものなんだよ。

最初に言った通り正しい蠱とは一種の人工的に作り出された妖怪で
人間に対してはかなり悪い方向の感情をもっているらしい

そして、その力というのは、どっちかというと座敷わらしに似たもので

昔話では、とある金持ちの一家が歴代にわたって蠱を飼っていたんだけど

新しく嫁が家に入り、嫁には蠱を飼っているとは言わなかった
ある日、その家の他の人が外出して、嫁だけが留守番していたら
突然部屋に置いてあった大きな桶から物音がして、嫁が確認すると中には大きな蛇がいた

びっくりした嫁は急いで、お湯を沸かして、その蛇にかけてころした。
家の他の人が返ってきた後、その話を聞いたら、みんな泣きだして
すこししたら、家の人間全員が病気でなくなった。

というものがある

 

蠱の専門家でも何でもないから、説明がうまくなかったり、詳しくなかったらごめん
結局のところ蠱はなんの働きをするか簡単にいうと「寄生虫」みたいなもの

蠱を作った人は、それを他人に「憑かせる」
作られた蠱によっては、その憑いた人から運気とか寿命とか色々吸い取って
そんで憑かれた人間が死んだりすると、また作った人の元に戻っていく。

ただ、ここで気をつけないといけないのは蠱はより住みやすい環境に住みつく習性があるから、
たまに憑いた人の家が心地よくてそこに居座ることもあるんだけどど、
その場合、作った人も、憑かれた人も色々吸い取られて死ぬ。

しかも、蠱は一定時期に人を殺したりしないと作り手を殺すので
いったんつくったら、三年おきぐらいに新しく人を殺さないといけないとのこと
じゃないと、作り手を殺す。

さらに、もし蠱が見つかって、誰かほかの術者とかに殺されれば
それでも作り手は死ぬ

大体こんな感じかな?

 

そんで蠱をどうやって放つかというと
これも方法が色々あるんだけど

どの方法でも、あげる→受け取る、というサイクルが必要みたい

例えば、財布みたいなものに蠱を仕込んでおいて、それを道端に置いていく
そんで、その財布をねこばばすると、蠱はねこばばした人につくとか

放つ側としては「財布を上げる」そして拾う側としては「財布をもらう」みたいな関係ができて、そこで蠱は拾った人に憑く
だから、道端に物が落ちていたらむやみに拾わないほうがいいし、拾ったとしても警察に届けたほうがいい

そして、蠱の厄介どころとしては、作り手が仕込む場合もあるけど、蠱は式神とかと違って自分の意思があるから
たまに、独断で誰かについてしまうことも多い。

例えば、蠱を飼っている人が友人を誘って食事をするとしよう。
その友人とは親しいとしても、飼っている人は「食事をあげる」
友人は「食事をもらう」って関係ができると、蠱が無断に友人について
友人を吸い殺すことも多いらしい。

まぁ、これでも軽いほうで。ひどいと
握手を求める、それに応じられるとかだけでも、相手に憑いたりする。

だから、蠱を飼っている人は碌な人間関係はつくれない。
身内から死んでいくからな。

ちなみに買い物の場合では、お金を渡す→かわりに何か貰う
というものだから、憑かれる心配はないらしい。

そして蠱を飼っている家の特徴としては、ほこりがひとつもないほど綺麗
人がたくさん住んでいる場所に家が建っている
写真が飾っていない、とかなんとか

もちろん、蠱の予防策的なものもあって
他人の家で、ご飯とかいただくときは、箸でまずお椀をたたく
ネギを持ち歩いて、他人の家に入る前に、齧る
万能な塩たっぷりしょうが水を外出後に飲んでみるとかとか

ちなみに、蠱のいる家でお酒飲むのは厳禁で、かなりやばいらしい

 

ここで話を戻すんだけど、俺はそんなことを思い出しながら
口をつけそうになったお茶を置いた。

蠱を飼っているなら、相手側に何も悪意がないにしろ、
むやみに何かをもらったりするのはかなり危ない行為だった。

同時に、なんて物騒なもん飼っているんだ。
しかも、お茶を出してくるとか憑かせる気満々じゃないかとも思った。

すると先生はそんな俺の考えを読みとったのか
リーのおっさんは好きで蠱を飼っているわけではないと説明してきた。
どうやらそれは親から受け継いだものらしく、俺でいうイタチみたいなものだという。

そんで、それでもお茶を出したりするのは、礼儀がなっていないと
蠱に愛想尽かされる可能性があるかららしい。

それで、もし憑かれたとしても、それは自己責任だ
とのこと

ちなみに蠱毒ってのは「こどく」って読む。
言い換えれば「孤独」なんだよなぁ

 

一通り世間話が終わると
リーのおっさんは先生に見せたいものがあると言って
先生を別の部屋に案内していたった。

俺も付いていこうとしたんだけど
リーのおっさんは若い人にとってはつまらないものだといって
ワン君に町の観光案内でもしてもらいなさいと言ってきた

俺はしかたなくワン君について行って、そこらへんを散歩することになった。

ワン君も日本語がすごく上手だったんだけど
なんか態度が悪いというか、微妙にこちらを見下している感じがあって
すこし気に食わないやつだった。

しかしワン君の対応自体は丁寧だし、お願いごととかは普通に聞いてくれる感じだった
彼としばらく町をうろついて、屋台みたいなところで色々食べたんだけど

ワン君は結構すごかった。
なにがすごいかというと、みんなからの人気がやばかった。
なんか現地の言葉は理解できなかったんだけど
町の殆どの人と知り合いみたいで、みんなから挨拶してもらったり
お店なら、普通に食べ物ただでくれたりした。

現地に到着したのが午後の3時頃だったんだけど、そのまま町を2,3時間回って
特に観光スポットはないけど、異国の文化というかそういうのが新鮮だった。

お守り屋さんとかもあったんだけど、物珍しさから色々買ってしまったら
そんなもの何の役にも立たないから、もしほしいなら、私が効力のあるものをあげると、ワン君が言い出した。
蠱のこともあるから丁重にお断りした。

そんでなんだかんだでリーのおっさんの家に戻ると、リーのおっさんと先生が消えていた

 

そんでワン君によると、どうやら書置きがあって、二人で飲みに行くらから
明日の朝まで留守番を頼みたいとのこと。

まぁ、二人は古い友人みたいだし、2人きりで話したいことでもあったのかもね
でも次の日の朝までとは...まさか例の東南アジアの女性のすばらしさを知ることができるいいところじゃないよな。
とか思ったけど、先生は帰るときに連れて行ってくれるという約束を信じて我慢することにした

ワン君は俺に部屋を用意してくれたあと、この家で夜を過ごす時の色々の注意を言ってくれた。

まずは夜の間決して目を手で触ってはいけない。
もし触りたい場合は、何か布とかでクッションしてから触るとか
夜の間は決して「死ぬ」とかそういう系の言葉を言ってはいけない
もしどうしても言いたい場合は「ああいうこと」とぼかすこととか色々

用意してくれた部屋はまぁ、ビジネスホテルみたいな感じな部屋で窓がなかった。
でも、割と快適みたいだったから、ネギを少し時間置くごとに齧って
ワン君のくれた蠱よけの笛みたいなのを一定期間おいて吹いて

風呂を浴びて寝ようとしたそのとき
事件が来た

俺がちょうどペットに入ろうとしたら、全部屋中に響き渡るようなブザーの音が鳴った。
どうやら誰か来客が来たようで

俺は、まぁワン君が対応してくれるだろう。とおもって放置するつもりだったんだけど
しばらくすると、下の階ほう(俺は二階の部屋を使わせてもらっていた)がすこし騒がしくなって
子供が泣き叫ぶ感じの声がしたりして

好奇心がわいてきたから、パジャマから普段着に着替えて様子を見に行くことにした。

すると、朝に俺が案内されたあの応接室?みたいな場所で、
現地の人っぽい男3、4人と女の人が一人いて、その人が子供を抱きかかえていて、子供は泣いていた。

男の一人がワン君となんか話していて、ワン君は話を終わらせると、部屋から出て行った
なにがあったの?って聞いたけど、急いでいるみたいで無視された。

俺はなんだなんだとおもって野次馬根性で眺めていたら
ワン君が聴診器をもって再び部屋に戻ってきた

 

聴診器を持ってきたワン君は子供に診察のようなことを始めた。
そんで、難しい顔をして大人たちと話し始めた。

しばらくそれをぼんやり眺めていたら、ワン君と目があった。
するとワン君はやっぱり難しそうな顔で俺のほうにやってきた。

何かあったのか?ときいたんだけど。
どうやらリーのおっさんとワン君が住んでいる街には正式な医者がなくて
普段彼らが医者まがいみたいなことをしていて

それで、今日も今着ている人たちの家の子供が朝からお腹が痛いと言って、最初は気にしていなかったんだけど
夜になってから急に痛すぎてわめき始めて、しかたないからリーのおっさんを訪ねた
みたいな感じだった。

それで、なんでワン君とかが現地の人にあんなに尊敬されているのかが少しは分かった気がした
近くにいる唯一の病気が見れる場所のひとなんだもんな。

それで、まぁ、弟子のワン君もまだ半人前だけど、一応それなりに知識を持っているみたいで
その子供はどうやら急性盲腸炎みたいだ。
とのこと

 

それでどうやら結構切羽詰まっていて、今すぐ手術をしないとやばい症状らしい。

一応リーのおっさんとワン君は外科的な知識もあって、
普段は本当に極たまに小さな手術もやったりしているし、盲腸もきったことあるらしいんだけど。
いつもはリーのおっさんがメインで、ワン君がお手伝いみたいな感じだった。

まぁ、もちろん2人は医者免許なんてないんだけどね。

それで、今日リーのおっさんは出かけているし、近所のでかい病院までといっても
歩きで30分、さらに車で3時間かかるらしい。

子供の盲腸は進行が急速で、穿孔しやすいらしいから。さすがにそれでは命の危機がある
だから、今からなんとか手術をしたいんだが、手伝ってほしいとのことだった。

俺ははぁ!?みたいな感じだったんだけど
ほかに手伝えそうな人くらいいるだろと、初めてエヴァに乗れと言われたシンジくん状態だった。

その時はナンデ俺が?とかおもったけど、どうしても手伝ってほしいとお願いされたから
どうなっても知らんぞと無理やりワン君と現地の人たちに懇願されて
手術室みたいなところに行くことになった。

手術室みたいなところはアパートでいう3階のはじっこにあって
確かに清潔っぽかったけど、でもやっぱり衛生的には気になる環境ではあった
あと、機材もすごい簡易的なものばっかで
おいおい、こんなんで大丈夫かよ!とおもった。

そんで、一応白衣みたいなのを着替えさせられて
新品みたいな感じで袋に入っている手術道具とかを使って、ワン君は手術を始めた。
でも、妙なことに、俺に手伝えとか行った割には、なんにも俺にやれとか指示はくれなかった

 

棒立ちのまま、手術を眺めていたんだが
ワン君の手並みはみごとなものだった。ブラックジャックみたいでカッコよかった
それでよくわからないまま、手術は1時間半から2時間?ほどで終わった。

子供はすやすや眠っていたんだけど。
ワン君は疲れ果てたみたいな感じだった。

そして、ついてきてくれと俺に言うと、切り取った肉片?多分盲腸みたいなとこだと思うんだけど
それを持つように指示されて
彼は手術室の地面にあった出っ張りみたいなのをひっぱた。

すると、そこには狭い階段みたなのがあって
すまない、今これを一緒にやることを頼めるのは君しかいない
三尸虫は分かるか?
ときいてきた

三尸虫というのはわりとしっているものだった。
先生によれば、一番かかわりたくない系のものの一つらしい

もう結構前のほうでいろいろ調べてくれた人がいるんだけど
多分大体そんな感じ。
昔の人は、なぜ人が年をとるのか知らないから、虫が人の命を食べている
と理解していた。
三尸虫は人の体に住んでいて、人の精神力というか、気力というかそういうのを食べて生きている
しかも厄介なのはこいつらは吸えれば吸えるほど喜ぶやつらで
宿主のことなんか全く考えずに、ひとを殺すまで吸ってしまう。

その後、また知らん顔をして新しく生まれる子どもとかに憑いたりしているんだ。
人間が道行をつもうとする場合、まずは最初のこの虫たちをなんとか殺さないといけない

だから、昔の道士とかは重金属の水銀とかでできた丹をたべたりしていた。
三尸虫をころして、自分が死ぬ前に入道してしまえば!
みたいなかんじだけど、そうそう簡単にいかないからなぁ。

あと、神さまも三尸虫に吸い殺されることがあるとか

つまり、マジでやばいものなんだ。
悪い例かもしれないけど、もののけ姫とかで、最初にでてきたあの豚の神さまから
すごいくろいにょろにょろがたくさん出ていたんだけど、あれを三尸虫のイメージにしてもいいかも

 

まぁ、そんな感じなのが三尸虫で
それがどうしたのか、と俺が聞いたところで

ワン君は俺をつれて階段を少し降ながら、断龍杭のことは?と又聞いてきた。
断龍杭ってのも結構有名な話だ。

これまた起源は昔の中国だったんだけでど
明朝をひらいた朱元璋は、自分の作った王朝がまた、別の王朝に滅びされるのをおそれ
部下に命じて、中国全土の龍脈つぶしにかかった。
龍脈はまぁ、なんか風水的にすごいところで

昔は、龍脈の力を借りないと皇帝になれないと信じられていた。
まぁ、借りたとしても、その後の地殻変動とかで、龍脈の流れが変わったりして
王朝が入れ替わったりするらしいけどね

そんで、その龍脈をすべてつぶす方法に使われたのが断龍杭。

でも、明のその行為により、明の龍脈が弱くなっても、漢民族から別の王朝が生まれず
代わりに異民族の清によって支配されるとかなんとか

近代でこれにまつわる話だと、二次大戦中の日本とかあるね。
小国の日本は東南アジアを占領したりしたんだけど、
支配している国のほうが圧倒的に人が多いし、土地もでかいということから

とりあえず、そこら辺にある龍脈をつぶしまくったらしいね。
まぁ、結果、これは無駄になったかは知らんが、東南アジアではなく
新大陸がわからたたかれたわけですが

 

と、そういう話をしながら、階段を下りていたら
急に肩から、後ろに向かって引っ張られる感じがした。

階段の中は結構真っ暗だったんだけど
後ろに人がいないのは確かだった。

でも、後ろからたくさんの息づかいというか、そういうのを感じた。
そして、妙に焦げくさいというか、そんな匂いがした。

すこし立ち止まったから、ワン君は少し不思議に思ったのか
早く来てくれ、と言ってきた。

すまないけど、俺はこの先から降りていけないんだ。
と、俺は答えた

 

前の話でしたように
例の俺のじいさんが焼き殺したイタチたちは別に、完全に復讐を遂げて満足しているわけじゃない。
そいつらはずっと、いまだに、俺をいじめてあそんだりしているわけなんだけど

俺もどっちかというといじめてほしかった。なんというかおれはMじゃないんだけど
でも、家族がみんな死んだのは俺のせいというかなんというか

妹をあの日とめていればとか、そういうことで結構罪の意識があるんだと思う。
だから、何か罰がほしかったのかもね

そんなこんなで
どうやら、彼ら的には、まだ俺は結構いじめがいがあるみたいで

極たまにやつらが役に立つこともある。
俺が死んだり、それに近いことになってもらってはつまらなくなるらしいから

だから、なにかとマジでやばいところとかに行こうとするときは
こういう風にとめてくる

霊感皆無の自分としては助かるんだけど
存在は迷惑だった。

仕事柄、そういう危ないところに行くのはしかたないことだから
ただ、無駄に恐怖心をあおられるだけで、結局行かないとだ学んだから

でも、今回は違って、別に行かないといけない理由は何もないわけだから
危ないなら近寄らないのがいちばんだ。

だから俺はワン君のお手伝いを断ろうとした

 

すると、ワン君はいらいらしげに、この下に断龍杭が刺さってあるんだ。
ひとりじゃむりだから、手伝え。と言ってきた。

俺はえええみたいな感じになったんだけど、それを聞いて納得した。
断龍杭と三尸虫の組み合わせでいうとかなりメジャーで

つまり、俺は手術の手伝いとして呼ばれたわけではなくて
「祝死」という儀式の手伝いをするために呼ばれたわけだ

 

夜の神社は行く必要性をあまり感じないんだけど

どんなにはながむずむずしても、くしゃみをしない
白い服をきていかない
ぼうしをかぶる
をまもると大丈夫ってきいたことある

「祝死」というのは中国の「清」の時代にうまれた文化で、薩満たちによってうみだされたものだ
清は中国の女真族という少数民族によって作られた国家で薩満はその民族のオラクルみたいな存在かな

そして、この「祝死」ってのは非常におそろしい儀式なんだよね。

これは、三尸を寸断された龍脈に植えてるというもので
詳しい、理屈とかはわからないんだけど、とりあえず龍脈の「死骸?」をかりて
ものすごい勢いで増える。

これで、人工的に三尸を増やすことができる

 

これを利用して色々三尸でやるんだけど
この儀式にはすごいデメリットがあった。

当時の薩満たちは将来とかのことはあまり考えていなかったみたいだけど
植えられていた三尸が龍脈を食い荒らしながら、どんどん増えて
最終的にあふれだしてしまうんだよ。

中国の18世紀とか19世紀初頭とかはかなり戦争で人が死んだりしたんだけど
それが、この「祝死」によって
最終的に三尸が増えすぎて、マンホール的存在だった断龍杭をふっとばして
湧き出てきてしまったのが理由とか何とか

 

業っていうにたいする認識のつがいだと思うんだけど

すごく複雑で、俺もうまく言えないんだけど
まぁ、因果ってものがあるじゃん。

原因があって、結果が生まれる。この概念がとても大切なんだよね。
たとえば、そうだね。誰かからプレゼントをもらうとするじゃん。

その誰かは、多分好意とか、まぁおかえしがほしいとか、そういう感情があって
それをおくってくる

そしてそれを受け取る側としては、たとえそれに対してどんな思いを抱いたとしても
その二人の間に、つながりみたいなものが生まれる

このつながりのことを因果みたいなようにいうんだけど

昔の仙人修業とかは、なるえくこの因果がないほうがいいらしい

浄化する人とかの話だけど、実際にいるかわからないが
もし本当にいたとしたら

たとえば、道端になんかの妖怪があるとしよう。
その妖怪は何も悪いこともしないで、ただ人間って面白いなぁーって人間を観察していた

そこにその浄化する人が通りかかる。妖怪は浄化されて、ちりいっぺんもなくなってしまう
しかし、その妖怪にも友達とか家族とかがいる

その浄化する人はなんの悪意もないけど、いつの間にか、その妖怪のそういう仲間と
悪い関係を結んでしまう。

悪い原因があれば、いい結果が生まれるわけがない。この悪い原因のことを俺は先生から業とおしえられた。

問答無用で浄化するのは、つまり、街に出て問答無用で町の人を無差別に殺して
町のものを無差別にぶっ壊すのと同じ意味だと思うから
すくなくても、俺としてはかなりヤバい感じはする。

 

あとはそうだね。
例えば、借金を背負った人がいるとしよう。
そんで、ある人が、その借金を背負った人をころしてしまいました

そして、その借金を、背負った人は返せなくなっちゃうよね
じゃあ、その借金はどうなるかというと、因果の世界では
背負った人を殺した人が返さなくてはなくなる。

妖怪とか殺すと、その妖怪がした悪さの分のつながりは、殺した人のものになる
それが殺したほうの責任というかそういうものだとおもうんだ

まぁ、簡潔にまとめると、悪いことをしたてるんだから、そのうち罰あたってもおかしくないよな?
みたいな感じだと思う。

浄化するのがわるいこと?って思うかもしれないけど
たとえ汚いものでも、存在しているならば、それには一定の天の意思というか
自然の摂理というか、うまく表現できないけど

そういうのがあるから、それをただひたすらぶっこわすのはよくないと思う

なんていうか質問系統はなるべく妖怪系に限定してほしいかな

他はあまり詳しくないから。
ただ、どんな方面でも

害をしている=じゃあ、浄化すればいいじゃん。っていうのは絶対に間違えていると思う

現代社会でそんなことができる人がいるなんて、少なくても俺は信じないんだけど
いたとしても、やってはいけないことだと思う。

ちなみに業の話の続きだけど

悪いことをする=いつか報いが来るというわけじゃないんだ

いじめをすれば、いじめをされた人から恨まれるじゃん。
なら、その恨んでいる人が急にぶち切れて、殺しにかかってくる「可能性」
というか、そういう感じのものが業なんだと俺は理解している

悪いことがいい結果につながる可能性は少ないけど
いいことをしても、その結果が悪いことを引き起こす可能性はかなり高いのも
因果をむやみやたらに結ぶなということなのかもね

 

業についてだけど、清めることができないから、恐ろしいんだと思う。
少なくても方法は俺はん知らない

死んでもなくならないらしいし、他人に移すことはできるらしいけどね

妖怪と幽霊とか念とかの違いは

妖怪は生きている
幽霊は死んでいる

ってのが一番の違いかな

 

幽霊は足がないっていう話があるけど
あれはつまり、幽霊は死んでいるから、実際に物理的なちからがないんだよ
じゃあ、どう人とかとかかわりあうというと、人に幻覚とかみせたりている

妖怪は物理的なものかな?例えば部屋の中でなぜか足音がするとしよ
この場合、周りを探してもなにもなけてば、それは幽霊がきかせている幻覚の可能性が高い
もし、なにか物理的な証拠、たとえば足跡とかあれば、それは妖怪だよ

 

人間が妖怪になる方法だけど
そういうのはあまりわからないけど
人不死、即成妖って中国の言葉があるから
とりあえず長く生きればいいと思う

まぁ、中国はほぼ自業自得で祝死の影響をうけていたんだけど
実は、日本も結構これの被害があったりするんだよ。
これは前にも言った通り、第二次大戦中に日本は東南アジア諸国の龍脈を寸断してまわったんだけど

その時の話で、どっかの国のとある風水わかる人に、日本軍にむりやり道案内をさせたんだが
その人は日本軍の軍人たちをつれて、龍脈にたどり着くんだけど
その人はかなりすごい術師だったらしくて
色々策を巡らせて、龍脈を切断させたあと、軍人たちを殺した。

そして、その軍人たちの死体と三尸を龍脈に埋め込んで
祝死をして、軍人たちのしたいとか持ち物とかも利用して
半永久的に、日本を呪うすごい術を構えた

そのある術ってのが、降頭術の由来というか、そういうものの大本かな
基本的な部分は、ほとんどそれに似ていて

当時これを考えた人はマジですごいと思った

それが今回の本題である、降頭術である

 

日本が呪われているって話なんだけど、日本人はほかの国の人間と比べて
現在はうまれながら三尸が一匹多いらしいよ。
いろんな人が色々試していたけど、結局直すのは無理だって話になった
そのため、修業とかそういうのはほぼダメになっている。
それも、式神とか霊使役とかが無理な要因の一つかな。

ここでひとつ、そういった系の修業とかの話を
なんかよくわからずにそういうおまじないとかに手を出すのはよろしくないことだからね

 

もともと修業はなんのためにあるかのかという話なんだけど
聖人になるためらしい。その聖人ってのがなにかというと
例えば、この世界が将棋の盤上だとすると、一般人は全員ただのコマなんだよね

でも、聖人はこの将棋盤から飛び出して、将棋を指す人となっている。
つまり、聖人は天地と合一した存在になるということらしい。

それじゃあ、それにむけて何が必要かという話になるんだけど
道、法、術、器の4つの概念をまず理解する人う用がある

なんか難しそうかもしれないけど
これを簡単にたとえると、ある人が車で青森から、東京までいくとしよう
この場合、この車が器。いい車ほど、スピードが出て、早く目的地に着くよね?
ちなみに「器」は使う道具とかの意味じゃなくて、才能とかそういうものをさすらしい

そして「術」は技術、つまり、車では確かに少しくらい差がでるけど
片方が車運転歴10年のベテランドライバーで
片方が免許取りたての新人ドライバーだと
たとえ器に少しくらい差があったとしても、ベテランのほうが確実に早く到着するよね?

「法」はなにかというと、これは方法
つまり、青森から東京までどうやっていくのかということ
例えば、片方が車でいくけど、もう片方が新幹線か飛行機で行くとしよう
新幹線や飛行機で行くほうは、どんなに器がだめでも、技術がだめでも
より早い方法をとっているから、確実に早く東京に着く

そして、最後が「道」だ

 

道はつまり青森から東京まで行く方向だ

どんなに早い方法でいい技術で、すごい機材をつかったとしても
全然違う方向に行ったら、地球一周しても、目的地にはつけないよね

「入道」「入道」ってよく言うけど。これはつまりこの「正しい道のりをみつけ、入ることができた」
ということ、つまり、どんなに時間がかかろうとも、でも正しい方向はつかめたから
いつかはたどり着けるだろう、のような感覚でいいと思う

ただ、目的地は青森から東京までとかの比じゃなくて
何億光年も離れて星とかなんだけどね

 

現在でいう、霊能力者とか霊感があるとかいうひとは
この概念でいうと、器に頼る人間
そして、式神とか、お札とかそういうのをできるという(実際できるのかうたがわしいけど)
が術に頼る人間
俺の先生によれば、人と妖怪とかとの間の関係を正しく認識し、交流する
我々のような人間がつかんでいるのが「法」

単純に「道」をめざすものもいるんだけど、これは無理なので、ただのバカであるとのこと
これは多分まじめなお坊さんとかそういう人のこと言っているんだと思うけど

 

別にお坊さんとかをバカにするつもりはないんだけど

何がいけないかというと、ただ単純に道を極めては、
もしその道の途中で何かしらアクシデントに出会うと対処できないからである

我々は人間だから、世の中にいる限り様々な業を知らずの内につくってしまう
その業のせいで、たまに悪いこととかとも出会ってしまい
それで命を落としてしまうかもしれない。それじゃあ、いままで頑張ってきた意味が全部パーになる

でも、だからといって、だたひたすら法や術、器に頼っていてはどんどん道を踏み外し
悪い方向に行ってしまう

歩く神社とかという浄化する人だけど、やっていることは、車で道端にいる人を目的もなく
ひたすらひきまくっているのと同じなんだよ。
じゃあ、どうすればいい?って聞かれても、俺にはどうしようもないけどね

ひたすら自分の利益のために「術」を磨くのもよくない
これは目的は特にないけど、とりあえず、車で他人の道をふさごう!
みたいな感じになる。

そして、方法だけど。これ自体はどんなに間違えても少なくても他人には迷惑はかからない
ただ、法は人が決めるものだから、それで自分を縛ってしまうと、もし方法が間違いの場合
正すのはかなり難しくなる。

青森から東京に行くためには、飛行機が一番はやいのに、車で出発してしまい
取りかえしのつかない感じね

その呪いってのは誰がやったのかはわからないし、くわしい方法も少なくても俺は知らない
降頭術使いじゃないし

とりあえず、死んだ日本軍の死体を断龍杭のまわりにうめる、そんで何かしらの方法で
その死体が生きていると、日本軍の兵士魂とその三尸の虫に勘違いさせる

魂は体が死んでいないと勘違いするから、死体から完全に離れない
三尸の虫は、死体に入って、「あ、これやっぱ死体だ」と思って
はい出てきて、死んだ龍脈に寄生する。そして、龍脈に寄生した三尸の虫が増えすぎて、臨界値になると
また龍脈からはい出る。

でも、そこで、三尸の虫を食い止める陣みたいなのをしく

その結果三尸の虫はどうするかというと、日本軍さんたちの死体の中の魂は日本を思う気持ちというか
そういうのでいっぱいで、人の思いは、道を作る力がある。
三尸の虫はそのおもいで出来る道のみを頼りに、日本にやってきて、日本の新しい子供たちに寄生する

わかりにくかったらすまんが、多分大体こんな感じ。

そんで降頭術ってのは大体こんな感じで、だれかの体の一部とか、思い入れのすごいものとか
そういうのを利用して、三尸の虫で、人を潰す。

蠱とにているけど一番の違いはここかな?でも誰が術をしているかがばれると
被害者は、術をかけた人を怨むよね?その恨みによって、被害者と術者の間に思いの架け橋ができて
被害者が死んだら、術者も次に死ぬ。

だから降頭術のタブーは、自分がやったと決してばれてはいけない

 

そして、色々話がそれたけど。俺は目的がわかったし、祝死ならしかたないか
とおもって、後ろから引っ張られるのを無視して
ワン君についていくことにした。

祝死の儀式には、一時的に三尸の虫を鎮める方法があって
その鎮めている間に、昔の薩満たちはそれらを取り出していたわけなんだけど

いまだと、薩満の大体の文化は失われて、一部しか現存していない
その一部と他の左道の文化と結びあわせられ、生まれたのが金牌術だ。

ちなみに左道ってのは「道」をあまり考えず、ひたすら「術」を極めんとする人に対する軽蔑用語かな。

薩満のそういう部分のものを応用して、現代では三尸の虫だらけの龍脈を安定させてたりするんだ。

俺はその時、それについてのくわしいやりかたとかはしらなかったんだけど
その存在自体は知っていた。

ワン君が俺を必要とすると判断したんだから、彼にしたがうしかなかった

金牌術というのは具体的にどういうものかというと
「法」の範囲に属すもので、代々「金牌」というものを受け継いでいる

継承者というか、そういう人は、いろんな所を旅して
なるべく多くの友人をつくり、多くの妖怪とかそういうものと触れるようにする
その分業を背負う可能性があるんだけどね

そして、最終的になると、たとえば、妖怪にちょっかいだされたら
「ほら、この金牌がみえないか。俺は何々の弟子の弟子の弟子の…だ!
友達たくさんいるんだぞ!俺をやったらやばいんだぞ!」

とか

困った時は「ほら、この金牌がみえないか。俺は何々の弟子の弟子の弟子の…だ!
友達たくさんいるんだぞ!俺に恩を売るのは悪くないぞ!」

みたいに金牌が伝わった代とかが多ければ多いほど
虎の威を借りるキツネ的に、どんどんとそのコネ的な力を強める
すごいところだと、神さまでさえ命令できたりする

階段をおりきると、真っ暗な、少し開けた空間についた。
そして、さっきまでは全く気がつかなかったのだが
そこらあたりからものすごい腐った肉のようなにおいがしていた。

俺はまっくらだから、明かりつけなくていいのか?とワン君に聞いたけど
ワン君は付けないほうがいいといった。

そんで、ワン君は手術で取り出した内臓をもって、暗闇の中に進んでいった。
俺はその場に立ったままでいいと、指示をされた

真っ暗だったから、すぐにワン君の姿は見えないようになった
真っ暗の中一人ポツンと置いてかれたから、すこしこわかった

 

しばらくすると、奥のほうでたんたんたん、とリズミカルに手を打つ声が聞こえてきた
そして、ワン君が大声で「ソンセンラァーー」云々と叫び始めた。

中国語くさかったから、意味はよくわからなかった。
こういうのってパクれるところはパクリたかったんだけど、中国語の知識はなかったから
少し残念だった。

しばらくその声を聞いていると、空間の奥のほうで足を引きづるような音が聞こえてきた
しかも、すごくゆっくりだけどなにやら、俺のいる方向にやってきているようだ。

すーっと寒気がしたんだけど、大丈夫だと自分に言い聞かせて
何か使えるものがないか、念のために考えた。

何も準備してなかったから、専用のものはなかったんだけど
ポケットにあらかじめ忍ばせておいた●ンドームがあった。

俺は急いで両手に唾を吐きつけて、●ンドームを取り出した。
そしてその中に髪の毛を一本だけ入れて、特に尿意はなかったんだけど
その中におしっこをした。

そんで、それの口を結んでおいた。すこし手におしっこがついて嫌な感じだった

地下のところで変な、足を引きづるような音がどんどんと近づいてきたんだが
ちょうど、俺の目が暗闇で見えなくなるくらいの瀬戸際のところでとまった。

そして、そこでひたすら足踏みをする感じの音に変わった。

ワン君は「祝死」の何かしらのことをやっているのはわかっていたが
具体的に何やろうとしているのかは分からなかった。
でも、それで、暗闇の向こう側にいるやつが何なのかはわかった。

金牌術の中には「死体運び」という技術があると聞いたことがあった。
一番金牌術の大本になったのは本来葬式屋だった。
しかしもととなった葬式屋は、少し特殊な葬式屋で
昔って死体とかは故郷とかに埋葬するじゃん?
でも交通の便がかなり悪かったから、もしどっか自分の家から遠いところで死んだりすると
その死体を故郷まで届けないといけない。
それも腐らせたりせずにね。

その葬儀屋というか死体の運び屋が、最終的に金牌術をうみだした。

なぜそんな術が生まれたかというと、どんな人でも死体となっては罪とかそういうのはないし、
それを故郷の土に埋めたりするのは生きる人の義務みたいな考えが昔にあるから

死体運びの仕事をする必要だったが、それをする人って、あんまり人気がないのはすぐに想像できるよね?
まぁ、ばっちいというかなんというか、不吉なイメージあるし。

だから、旅をする割には、宿とか食事とか誰も提供してくれなかったりした。
でも、死体を運ぶのは誰かがやらないといけない。

だから、朝廷から、この人たちに絶対協力しなさいみたいな「金牌」を死体運びの人に配ったんだ。

 

そして、それで、死体運びの人たちは「自分たちは死体運びだから協力しろ」
みたいな感じで

ただで宿とか提供してもらっていた。
そのうちそれがどんどん変化したのがもとらしい。

そして、その「死体運び」の具体的なやり方が、運ぶというより
死体自身に動かせるというものだった。

これが中国のキョンシーの由来でもある出しいんだけど。
何かしらの処理の後、死体を立たせて、軽くひもでつないで
それを引いて歩くと、ぴょんぴょん後ろをついてくるらしい。

さらにすごい人とかだと、死体を自分自身の故郷に行かせる方法とかもあるらしくて
その後ろをひたすら見守りながらついていくみたいな。

ただ、その死体をじぶんで歩かせる方法にはすこし不便なとこがあった。
それは、その死体が生きた人間の周りを通れない、というものだ。
理由はよくわからないけど、まぁそういうものらしい

そして、そのとき、俺の目の前にいたのは大方そういう感じの死体だった。

この地下のスペースで狭いドアひとつという場所は
多分だれか人をドアの前に立たせれば、死体が勝手にどっかにいかなくて済むようになるためだったんだ

 

大体そんな感じで暗闇で待つこと30分くらい

ワン君は一段大きくなんか叫ぶと、俺に対して日本語で「正気の歌はうたえるか!?」と聞いてきた。

正気の歌の詳細はたぶんwikiさんのほうがくわしいから割愛するとして。
正気の歌というのはうちの世界でもかなりメジャー系な歌い物だった。

これは読み方に色々工夫があったりするんだけど。作者の文天祥ってのがすごい人で
あまりにもその気迫というかそういうのがすごかったから
一喝で、どんな汚いものも退散させられたとのことだった。

金牌術をしらないものでも、これを読むことで、文天祥の気持ちをいうか
そういう気迫を借りることができるとかなんとか。

俺も先生に一応叩き込まれたから、歌うことはできた。
そんでワン君は、俺とそれを合唱するようにいってきた

 

それを聞いた俺はとりあえずなるべく息が合うように正気の歌というものを彼と一緒に読みはじめた。

そんなに長くないものだったんだけど。
不思議なことに、それを読んでいくと、足をひきずるような音がどんどんと俺のほうから離れて行った。

そして、正気の歌の終盤になると、奥のほうからワン君の声が少しずつ近づいてきて
最終的には彼の姿が見えた。

そんで、歌が終わると、彼は急いで俺を引っ張って階段を上がっていった。

階段の上のほうはだんだんと明るくなるんだけど
ワン君の顔がはっきりとわかるようになると俺はびっくりした。

ワン君のいけいけな感じの顔は、青あざだらけになっていて
全身が黒いすすのようなもので覆われていた。
そのまま手術室に上がり、彼と俺は精神的にも肉体的にも疲れ果てて

とりあえず、冷たい水でシャワーを浴びてから服を着替えて。
もとの服とかを燃やすとか
そういう後始末に入った。

 

その間に俺は、ワン君に説明を求めたんだけど
彼は俺に「とくに説明する必要はない」
と言ってきた。

まぁ、他人の流派の話とかを聞くのはよろしくないというか
なんというか

中国系だと、そういうのがもっと顕著で
師匠と弟子でも、全部教えないとかざらだから
俺は手伝ったのになんなんだそれはみたいな不満はあるけど
その時はとりあえず、それでなっとくした。

そして、ワン君はまだ待っていた病気の子供の親とかと話をしに行って

俺は自分の部屋に戻っては、このリーさんの家は嫌な感じで
出ていきたいとおもって、ベットで悶々とした。

そのまま怖くて一睡もできないまま、朝を迎えて
腹減ったし、下に降りてみると。ワン君はすでに起きていて
庭みたいなところで、国術の朝練をしていた。

国術というのはいわゆる中国の武術の一種で
朝鮮でいう撃術とか、ロシアのシステマとかそういうのと似たものって想像して
厳密にいえば、八極拳とか八卦掌とかもその一種で
ワン君は筋肉がすこかった

彼の練習が終わるまで待つと、彼は俺を連れて、街へと繰り出し
そこらへんの屋台で朝食をとることにした

 

さすが人気のイケメンワン君というか、なんというか
朝ごはんは屋台のおっさんがただでいいと言ってくれた。

まぁ、町で唯一の病院もどきだしなぁとかおもって
俺はかなりうらやましかった。

俺も仕事の関係上、人を助けていると押しつけがましく思ったりすることもあるが
ここまで尊敬されることはあまりなかった。
たすけたとしても、たすけなかったにしても

かかわった人的には、二度と会いたくない類の人間だからね。
副業として、医者とかなろうかなとかまじで悩み始めたときに事件は起きた。

突然屋台にかなり厚着で、グラサンをかけた男が近寄ってきて
そして、胸からいきなり拳銃を取り出して
パンパンと、短く二回ほど、ワン君に発砲した。

ワン君はその男が拳銃を取り出したのをみると
すぐさま横に飛ぼうとしたんだけど、間に合わなくて
そのまま脇腹にいっぱつ、太ももあたりに一発あたった。

でも、そこからのワン君がすごかった。
撃たれたにもかかわらず、そのまま相手に突っ込んでいって
俺が腰抜かしてへたり込んでいて、状況も読めない中
その男をぶん殴って、失神させた。

 

俺は拳銃とか今までみたこともなかったし
ましてや、人がうたれるのを見たこともなかった。

だから、半分恐怖もあって、男を倒した後の、ワン君をどう処理すればいいかまったくわからなかったし
現地の人たちで人だかり出来たんだけど
何言っているのかもわからなくて、何をどうすればいいのかわからなかった

そんで、まだ意識のあるリーさんと現地の人たちがしばらく話し合って
血をだらだらとながすワン君を三輪車の大きいバージョンみたいなやつに乗せて
リーさんの家にとりあえずいくことにしたらしい

俺はぼんやりとしたまま、現地の人たちについていった。
途中いろいろ話しかけられたんだけど、俺は「ははん?」的な感じだった。

発砲した男に関しては、そのあとは俺はよく知らない。

リーさんの家に着くと、彼は色々と現地の人に指示飛ばして、
包帯とか、とりあえず、止血した。
ここらへんになって、ワン君は気を失った

 

しかし、奇妙なことに。
ワン君の指示で、どうやら地元の人が、出血のために色々やってたんだけど
血は一向に止まる気配がなくて、たえずににじみ出ているようだった。
包帯とか色々使ってたみたいだけど
それもどんどん真っ赤に染まる感じだった。
医学の心得のあるのはワン君だけだったし
そのワン君も失神していて

みんなが途方に暮れていたちょうどそのころ。
次の朝には変えるとか何とか言っていた、師匠とリーさんが戻ってきた。

そして、リーさんは状況とかを地元の人に聞いて
先生は俺に聞いてきた。

俺はとりあえず、ワン君が屋台でなぜか撃たれた話をして
先生もびっくりしたような感じだった。
そして、ワン君の様子を少し見てきたが
先生は特に医学にくわしいわけでわなかったから

様子が悪そうだねぇ、みたいな話を俺とした。
すこし先生からお酒と香水臭い感じがした。
あ、これってもしかして、俺を放置して、「いい場所」とか逝ったんじゃないのか!
とかおもったけど、こういう状況だし、何も言わないことにした。

 

一方地元の人から、色々と聞いていたリーさんは
俺と先生に、すまない、こんなことが起きてしまって。本当は観光案内くらいはしたかったが
それどころじゃなくなった。
とりあえず、家の中の部屋は自由に使っていいから、ゆっくりしていってくれ

みたいな話して

治療のためとかだと思うんだけど
深刻な顔で、ワン君を手術室のほうに運ぶように指示しているみたい
ワン君をつれて上のほうに行った。

俺はぽかんとしたんだけど。
先生はまぁ、しかたないなぁみたいな感じで
俺をつれて、もってきた花札で自分たちの部屋であそんだ。

遊びながら、もちろん雑談はするんだけど
その間に、先生に昨日の夜の話をした。
すると、先生は顔色を変えた。

それはやばい。早くリーさんに教えないとみたいなことを言って
リーさんを探そうとした。

 

リーさんは案の定というか、手術室のような部屋にいて
まだ、治療中だったようだ。

そしたら、待っているついでに、先生は俺にいろいろ話をした。
まぁ、詳しい術とかどうなっているのかは、先生も金牌術の専門家じゃないからわからないんだけど。

どうやら、昨日ワン君は俺を手伝わせて
誰かが子供にかけた降頭術を解いたんだと言ってきた。

うちは妖怪専門だし、こういう呪い系は存在は知ってるけど

降頭術というのはまぁ、前のほうで説明したような気があるから
もう、あまり詳しくいわないけど。

よくある症状としては、けだるいとか、病気になりやすくなるとか
すぐ怪我をするとかで、日にちがたつにつれて、どんどんひどくなって
死に至らせる、という呪い方らしいんだ。

具体的な解き方は実は先生も分からなかったらしいが
でも、降頭術を解いてしまうと、術をかけた人間がすごいしっぺがえしをくらうこと、
そのしっぺがえしを食らわないためには
術を解いた人間を殺すこととかだ、と言ってきた。

降頭術は東南アジア一帯で流行っているらしくて
大抵のその手のすごい人は、地元の規模の大きいギャングとかに所属していて
大量の金をもらう代わりに、人をのろったりしている。

だから、降頭術ってのは例え、見つけても、解き方を知っていたとしても
決して関わってはいけない。
じゃないと、そっちの術師と、どっちか生きるか死ぬかの話になるから
もうどうしようもなくなる。

まぁ、じゃあ、降頭術師は手の着けようがないのかというとそういうわけでもなく
その手の人って10年に一度とか、5年に一度とか
そういうペースでしか、人をのろったりしかできないので。
その間は呪いで稼いだ金で、豪遊しながらくらす。

手術室でリーのおっさんを待っていると
そのまま2,3時間たった。

おっさんが出てくると、ものすごい疲れている感じの顔だった。
待っていてくれたのか的なことをいったが、すぐさまそれを遮る形で
先生は俺が言っていたことを彼に教えた。

話を聞くうちにリーのおっさんの顔色はどんどん悪くなった。
そして、話を聞き終わると、彼は今ワン君はなぜかどんな処置を施しても
血が流れ出るのがとまらないらしい。

もちろん、応急処置で、流れるのをかなり遅くしたが
それでもおかしいことに、血がひたすら流れ出てい来るという
かなりヤバい状況とのこと。

俺は、これってやっぱり降頭術が原因ですかって聞いたが
リーさんは少し悩むそぶりを見せて、そうだと、俺に答えた。

少し風呂ってくるがすぐもどる

リーのおっさんが住んで着る街というかスラムは実はとあるマフィア?みたいな組織が仕切っているみたいで。
そんでリーのおっさんはそのお抱えで、風水とか占いとかそういうのをしながら生計を立てている。

まぁ、そういう裏社会云々はまた長くなりそうだから、省略するとして
とりあえず、そのマフィアはほかのマフィアと争って、敵側のボスみたいなのを殺してしまったらしい。

そんで、新しくボスになったやつが、下に威厳を見せつけるためもあってかな?
大金はたいて、降頭師に頼んで、地元のマフィアのボスの子供さんをのろわせた。

前に書いているように、降頭師ってのは5年や10年くらいでしか、一回働かない。
なぜかというと、一つに罰あたりすぎるから、やりすぎると寿命がちじむから
もうひとつが、「俺、10年に一回しか働かないんだから、そんぐらい他の術者は放っておけ」
という意味合いもある。

術を邪魔されると、邪魔した人間とはどっちかが生きるか死ぬかの争いになるから
そういうのを避けるためもあるのかな?
だから、暗黙の了解として、他の術者は、降頭術がかかった人間をみたら
放置するって決まりがあるらしい。

 

その呪われたギャングのボスの子供が前の日に連れてこられたあの子
三日前ほどの一度ボスはその子を連れてリーのおっさんに助けてほしいとお願いにらしいが
もちろん、その時は自分にはどうしようもないと、おっさんは断った。

暗黙のルールをまもったんだよ。例えどんなに親しい人でも、こればかりはできないってやつ

しかし、ワン君はそれをやぶった。

まぁ、俺が言うのもあれだけど、彼は若すぎたんだよ。
そんで、俺なんかよりはるかに優秀なのも、少し祟った。

彼はそのマフィアの子供とかなり仲良かったらしくて。
生まれた時に出産に立ち会い、世話や遊び相手もたまにしていたらしく、情が移っちまったらしい。

だから、やばいのは分かっていたが、自分は優秀だし
もし、相手側の降頭師が何か仕返しをしかけてきても、自分ならなんとかできて、
自分の先生には迷惑かけないと思って
リーのおっさんが留守になったのを見るや否や、ボスに連絡して

降頭術を破ったのだ。
何も知らない俺とかもついでに使ってね

 

これがいわゆる業かな?
分かっていても、情に流されてしまう感じ。
一度仲良くなってしまった人間とのつながり
一度仲違いになってしまった人間のつながり
そういう複雑に絡み合った思いというかそういうのというか

こういうのが後あと、自分の不利益につながってくる。
でも、だからと言って、それを避けたり、払ったりはできない。

ワン君の場合はその例だね。自分が弟同然と思っている子供が呪われた。
それを助けるためには、業を背負うことになる。

でも、自分のみに危機が迫ったとしても、どうしても助けたい。
そういう時のことを、先生は俺にこれを「劫」と教えた。

俺は今でも覚えてる。手術室に入った時の、ワン君のあの真白の顔

 

リーのおっさんと先生は深刻な顔をして色々話し合った
どうやら、相手側のギャングはてっぽうだまの下っ端で、ワン君を重症にしたうえで
呪いをかけているみたいだと合意した。

まぁ、確実にワン君を仕留めたかったんだろうね。

これは謝りに行っても、無理だし。
助けるとなっても、降頭師側にさらに喧嘩を売ることになる。

先生はリーのおっさんに、出来ることをしたいのは山々だが
さすがにこれは事情も事情だし、関わりたくないと伝えた。

俺はワン君が少しかわいそうだと思って、どうにかできないか先生に聞いたが
先生はそんな情は捨てろ、といった。
そんなことより、お前は自分の身を心配しろ。お前だって降頭術をやぶる手伝いをしたんだろと
さらに続けた。

ワン君はいい手をつかったと言わざるおえない。
俺を使うことで、先生まで巻き込もうとしたんだからね。

まぁ、ただ、先生はそこまでお人よしじゃないので
まんがいち、俺もしかいしの対象だったら、容赦なく切り捨てただろうなぁと
今でも思う

 

でも、リーのおっさんは先生と違って、弟子思いだった。
やっぱりワン君をなんとか助けたいとのことだった。

そこで、先生はどうするつもりなんだときいたら
リーのおっさんはただ頭をふり、部屋のどっかに消えていった。

そんで、しばらくすると、またもどってきてこれをどうぞと
爪切りを渡してきた。

俺はあ、これってもしやエンギではないかと思った。これは昔教わった、この人の行動は
もう自分とは関係ありませんよとの儀式らしい。

そして思った通り、先生はその爪切りをとると、かなりの深く爪を切った。
目安としては、少し血がにじむくらい。
俺も、それをやった。痛すぎて涙目になった。

その爪と爪切りをリーのおっさんに渡すと、おっさんは爪切りを割って
その爪を赤い布袋に入れた。

これで、その爪の入った袋を燃やすまで、俺と先生は、リーのおっさんと
一言もしゃべったり、筆談したり、とかそういう交流を一切持っちゃいけないんだけど

彼のその間の行動は、俺と先生とは関係ないよってことになるらしい。

そんで、その日は飛行機のチケットの都合上、まだその家に残ることにしたんだけど
俺と先生はリーのおっさんが準備してくれた客部屋で、中国将棋とかやりながら時間つぶした

まぁ、俺は降頭術の仕返しが飛んでこないか、一日中がくぶるしてた。

俺の場合、助けてくれる師匠なんかいないからねww

 

その間。リーのおっさんは何やら準備しているらしく、かなり玄関のほうとかは騒がしかった。

そして、夜中。先生はもう寝ると言って、自分の部屋でぐーすかし始めて
俺も、色々あって眠れなくて、うとうとしていて、でも、やっぱり疲れもたくさんあって
結局眠りに落ちようとしたそれくらいの時に

俺の部屋のドアをトントン叩く音がした
そんでぼんやりとワン君の声が聞こえてきた。

なにをしゃべっているのかは、多分中国語だったのかな?
よく理解できなかった。寝ぼけてたしね。

なんだよ、こんな時間に、とか思いながら。
めんどくさいから放っておこうとかそんな風に無視してたら
急にッバと足を強く引っ張られた気がする。
そんで、急に眼が覚めて、身を起こしたんだけど、真っ暗で何も周りが見えないのに
くすくすくすっとなんか誰かが笑っているような気がした

 

気味が悪かった。
なにかすごく嫌な予感がしたから、ベットから飛び降りて、ドアのほうに行って耳を澄ませてみた。
今度は何も聞こえなかった。

でもなんか変なにおいがした。嗅ぎ覚えのある匂いだった。
半分寝ぼけた頭はその匂いを認識するのには時間がかかった。
俺はとりあえず、部屋の外の様子をうかがってみようとドアの鍵を回すと
扉はピクリともしなかった。

なんかものすごい重いものが、ドアをふさいでいるようだった。

そんでやっと、その時点で頭の中が明瞭になってきて。
臭いの正体がわかった。
物がやけて炭になっていく匂いだった。

何で、またこんなことにとか、ぼんやりおもってしばらく、ドアを押したり声をあげたりしていると、
扉の隙間から煙がむくりとでてきた

 

俺はなぜか確信した、これは火事だ。
いや、なんというか俺は火事を経験したことないし
その現場に行ったことがないけど、俺以外の何かが、俺自身の頭に
これは間違いなく火の手が迫っていると、俺に伝えてきた。

そんで、俺はこれはマジでやばいぞ。何が起きたのか知らんが
俺このまま蒸し焼きにされて死ぬかもしれない、と思った。

どうしよう、どうしようと部屋中をまさぐりまくった。
部屋には窓がなく、脱出のルートはないし、使えそうなものはなかった。
ポケットの中には●ンドームがあった。

ああ、俺●貞のままで死ぬのかなぁとか思った。
その時だった。

バンバンと何かがまた強くドアをたたいた。
俺はもうモクモクと煙が入ってくる扉に咳しながら近寄ってだれかーとか叫んだ。
返事はなかった。俺は無駄だと思ったが、ドアを開けようとしてタックルをかました。

すると、扉はバンと、結構すんなりあいた。予想以上に力入れた俺は何かに頭をぶつけて、痛みで少し悶えた

痛みが治まり、あたりを見ると、結構火がこっちに迫っていた。
そんで、俺のドアの前なんだけど、ドアをふさいでいたものなのか
本棚とか、重そうなタンスとか、そういうものだった。

 

そういうものは当たりに散らばっていて、もちろん、おれのタックルでどいたものじゃないだろうって感じだった。

もしそうだとしたら、俺は相当な火事場の馬鹿力を発揮していて、
多分その時なら、キン肉バスターとかできるぐらいだったんだと思う。

一体誰がどかしてくれたんだろうとか、それを考える暇もなく。
俺は逃げ道を探した。階段に行くほうはもう火が広がっていて
とてもじゃないが行けそうになかった。

そんで、そういうえば、先生の部屋に窓が!と思いま出した。
そして、急いで隣の先生の部屋に行った。

部屋に先生はいなかった。
窓のほうにかけよると。俺はぞっとした。二重の意味でね

まず窓の中、ぼんやりとガラスの反射で窓が鏡になっていて
俺の姿の後ろに、黒い影のようなものがたくさんいた。
そして、窓の外、家が燃えているからだろうか。当たりが赤く光って見えているんだけど

そこにはたくさんの無表情の人が立っていた。
現地の人たちだろうか、何もいわず、ただ整然とそこに立っていて
じっと、燃えている家をただ見つめていた。

煙の量がどんどんと増える中、俺には何かを考える暇がなかった。
窓をものすごい勢いで開けて。

俺は、そのまま飛び降りた。

 

もちろん、一階じゃないし、それなりの高さがあったけど。
それ以上に、パニックになっていたし。その時はそれ以外方法はないと思った。

地面に最初についたのは足だったが、グキッといった。
次にからがを強く打った。頭を守るための手も、ぐぎっといった。
でも、なんとか受け身はとれた。

ふしぎに痛みはなかった。
そして、あたりを見渡すと。現地の人が、俺を見つけたのか
かけよってきて、そんで、俺の顔を見ると。
さっきまで静かだったのがウソだったかのように
みんな、声をあげたり、何か叫び始めた。中には泣きはじめる人もいた。

 

そっからは、意識を失ったので。覚えていない。
目が覚めると、もう朝で、狭い車の中にいた。
後ろのほうに横たわっている感じだ。

手と足はものすごく痛くて、みると添え木なのか木の板があった。
車の運転席を覗き込むと先生がいた。
助手席は誰もいない。

先生は、もうすぐ病院のある町につくと言ってきた。

俺は、記憶の混乱のせいで状況がまったく理解できなかったし
痛みでそれどころじゃなかったから、道中は静かにうめき声を上げるだけだった

大きないかにも観光名地みたいな町の病院につくと
医者に色々処置された。まぁ、どうやら手と足の骨折と、その他もろもろの打撲らしい

初めて骨折したんだが、骨つなげるあれ、めっちゃ痛いねwww
そして、ひと段落して、とりあえず一日入院するようにと、日本語の分かるその医者に言われて
病室にうつされて、そこでやっと、先生とゆっくり話ができた。

 

簡潔に言うと、先生は俺を売った。

リーのおっさんは俺をワン君のかわりに殺すつもりだったらしい。

先生によると、リーのおっさんは先生にエンギをする直前に
うちの業界特有の手を使った合図みたいなので、30万でどうだ?(ここでいうのはドルかな?)と聞いてきたから

先生もあ、これ多分弟子のことだな、と思っていいよと返事した。
(その時の俺はまだこれを習っていなかったが、この件の後にすぐに習得した)

それから、先生は暗黙の了解的に、とりあえず俺を家に残すために、色々と俺の暇つぶしとかに付き合って。
そんで、夜中になったら、こっそり家を抜けだした。

詳しくはリーのおっさんが何をしたかは先生も知らないらしいが。
でも、たぶん俺を殺して、リーのおっさんとワン君が助かるか
俺が生き残って、リーのおっさんとワン君両方死ぬか、どっちかだったらしい。

現在は、ワン君は失踪していて、そんでリーのおっさんはまだ生きているが
もう長くないだろう

リーのおっさんはこんなことに巻き込んでしまって悪かった。
しかし、これしかなかったんだ。許してくれとはいわないとかなんとか
俺に伝えてほしいと先生に依頼していた。

まぁ、これから会うこともないだろうな
それにしてもよくあれで生き残ったな。運がよかった。と先生は締めくくった。

俺はやっぱり何がなんだかよくわからなかったけど、無事なほうの手で
先生の顔をグーでなぐった

 

リーのおっさんはその夜に、どういう儀式をしたのかはわからない。
もしかしたら、あの地下室の断龍釘とかとも関係あったのかもしれない。

あの時聞こえてきたワン君の声は一体何だったのかも謎だ。
ワン君は失踪したらしいけど、一体どこに消えたというのだ。
何で、家は火事になったんだろうか。そんで、その時外にいたたくさんの現地の人たちは何がしたかったんだろうか。

俺を引っ張ったりしたり、笑い声が聞こえたのは幻なのか
俺の部屋のドアをふさいでいたもの。
あれをどかしたのは一体誰だったのか。

考えても分からないことが多すぎた。

でも、窓に映ったたくさんの影。あれはだけはわかる。
間違いなく火で、焼けて炭になった。イタチたちだ。

まぁ、この話はこんな感じ。
少し駆け足気味になってすまぬ。

 

まぁ、それ以降の教訓としては
二度と先生と一緒に外国に行かないってことかな

 

妖怪退治の仕事シリーズ

1 太平洋側の島の話

2 うちのじいちゃんの小さい頃の話

3 止められていた

4 相談者の姉 – 先生との出会い

5 先生とマレーシアに行った

6 初めての一人仕事

7 倀

8 先生の話 その1

9 先生の話 その2

10 鬼隠し

11 先生の話 その3

12 初めて先生と仕事した時の話

13 先生の話 その4

14 スクエア

15 禁山

16 先生の話 その5

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