『犬は、ブランドバックと同じ?』スカッとする話【長編- 名作まとめ】

【長編- 名作】スカッとする話

 

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【長編- 名作】スカッとする話

 

犬は、ブランドバックと同じ?

今日の朝あったはなし。

祖父は車椅子だが庭の花や植木を見たいと、朝方から外に出ていた。
恐らくは、近くの川に散歩しに向かう”犬を見る”と言うのが目的だったと思う。

そんな中で二匹の犬を連れた、30歳前半ぐらいだろうジャージ姿の奥様がやってきた。
祖父の好きなキャバリアだっただけに、祖父は直に手を伸ばし犬を呼んだ。
犬は喜んだような顔で祖父の元へ、もう一匹は奥様の後ろへ隠れた。

オレ「すみませんねー」
奥様「いえいえ、老人に犬を見せるのが、動物を飼っている飼い主の役目ですからー^^」
オレ「ちょ、ちょっと……」
奥様「大丈夫ですよー、老人には聞こえませんって^^」

オレはここら辺で不愉快と言うか、なんか単純に「嫌な奴」と言う印象を抱いた。

祖父はそれが聞こえてるのか分からないが、近寄ってきた犬を撫でてご満悦な様子。
犬の方も祖父に身体をまかせるなど、かなり人懐こい犬だった。

奥様「まー、この犬がそんなに人に懐くだなんてー」
まるでローラのように口に手を当てて「( ゜д゜ )マー」と白々しいリアクションを見せる奥様。
流石に祖父も「え?」って感じで奥様を見た。




奥様「この子は元々引き取った犬なんですよ。それも”動物虐待”していた飼い主から。
群馬にもの凄く悪いブリーダーがいてですね、
20匹ぐらいの死体の山の中から生きていたのは、5匹。その中の二匹なんですよー

あっ、だからこの子(隠れたキャバリア)、こうやって怯えてしまってるんですよね……。
今はそうやって、その子も元気にしているけど我が家に来た時は……そりゃね……。
怖がって小屋から全く出て来なくて、大変でしたよー……

でも、そうやって人に懐いている姿を見ると、ああーよかった。って思えます」

そう言う話をしている中、四六時中ニッコニコ、ニコニコ、と。

祖父「そうなのですかー」
そっけなく返事を返し、犬へ「よしよしよし^^」と撫でる。

それを見て奥様一瞬硬直し「( ゜д゜ )」となってた。
あきらかに悔しいと言った表情だった。

「●●老人ホームで毎週○時からー」と言い「毎日車で行かなくてはならなく大変ですよw」
「私も●●会に所属していてー」と、笑顔で肩の腕章を見せ、何故か名刺を渡して。
あと有名な愛護団体の会長とのツーショット見せたりしてかなり必死。

祖父「あんたは偉い人だねー」
と返事をするだけで、奥様の顔も見やしない。

奥様は一瞬顔をしかめたと思うと、スマホを取りだし、
今の二匹が『救出された当初の写真(グロイ)』を見せ始める。現場写真も見せる。
それで「この子たちはー!」と熱弁。

奥様「アナタ、この犬は虐待されていたとか聞いて、何も感じないのですか?」
一通り話終えた所で、奥様はギリリと笑いながら祖父へ尋ねた。

祖父「そりゃ、可哀想だ、辛かっただろうに、色々考えさせられるなー」
奥様が「フッ」とやり切った表情になる。

祖父「……ところで、アンタはこの犬たちを、ブランドバックか何かと思っているのか?」
奥様「え、えっ?」

祖父「そうするしか注目浴びれないのか?
”虐待されていましたー!”って言うブランド名が欲しかっただけなのか?
”動物助けています!” と言う肩書きが欲しかったのか?
この子らは別として、お前にはそう言う感情しか抱けない。

本当に普通の善良な人間なら、”虐待”と言うトラウマを犬から拭う方が大切じゃないか?

犬が完全に人に懐いて、そこで人知れず”あー、良かった”。
そうして笑える方がワシは好きだ」

奥様「( ゜д゜ )……」
こんな感じで硬直したかと思うと、三十秒ぐらいしてから顔をカーッと赤くして、
子供の様に泣き出して大変だった。

幸い名刺に書かれていた家電に電話をかけ、息子さんに迎えに来てもらったが何度も謝ってた。

ただ、去り際。
祖父「ワシなんかより、犬の方がよっぽど耳いいぞー。
お前の小言なんか全部聞き取ってるかもしれないぞー」と悪戯に笑いながら言った。

蛇足の完結。

元々祖父は、近所でもかなり有名な犬のブリーダーだったらしく、
犬が大大大好きすぎるし、団体に所属しないで悪徳ブリーダーを懲らしめてた(仲間と)様な人。
故に、愛護団体にも顔見知りの人がいるらしく、名刺に書いてあった会にも知り合いが居た、

名刺から会へ電話し、その人への連絡先を確認。
その後、ことの事情を全て説明。




電話口から聞こえてくる相手は「すみません」と、何度も謝ってる声。

ただ、最期に。

祖父「ほんじゃ、虐待されていた犬で、あの野郎(奥様)が一緒に助けたのは本当なんだな?
ってことは、虐待されていた犬をあそこまで元気にしたのは本物だな。
毛の手入れも、元気な方の犬の表情も、体格も、全部よかったからな!
”その気持ちを忘れないように”と、伝えておいてくれ!」

祖父曰く、犬好きに”根から悪い奴”は居ないらしい。

ちなみに、その奥様は最近ここらを散歩ルートに居れた人らしく、
近所の犬を飼っている家から『虐待自慢』するから、煙たがられてたそうな。

ただ祖父は「もう一度、この道通らねーかなー、犬可愛かったなー」
と、きつく言い過ぎたのを後悔しているようです。
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