ちょっと切ない話『不細工な弁当』【短編】全5話 Vol. 19|切ない話・泣ける話まとめ

ちょっと切ない話『不細工な弁当』【短編】全5話 Vol. 19|切ない話・泣ける話まとめ
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切ない話 Vol.19

 

 

3年前の自分へ

 

3年前の自分へ。

樹海まで行ったけれど、死ぬことが怖くなってくれてありがとう。
冬で1人木々の中を進むことに恐怖を感じてくれてありがとう。
そこで意地張らないで戻ってくれてありがとう。
世界は貴方が考えるより優しいよ。
貴方は貴方が考えるより愛されてるよ。
あんまり他人に心配掛けるなよ。
「自分はいらないんだ」って思い込むのは止めた方がいいよ。
あと1日帰ってくるのが遅かったら卒業できなかったし、
そこで首吊ってたら今大学に進んでないよ。
相変らずデブだし頭も良くないし駄目な人間だけど、
それなりに楽しくのんびり生きてるよ。
死にたい気持ちも分かるけど、もうちょっと緩く生きていきな。
世界は貴方も含めて輝いているよ。

 

 

私は悲しいんだ

 

こないだの話。

電車で高校の時の担任と教頭に偶然会った。
卒業してからだから2年ぶり。

「お久しぶりですー」
なんて言葉を交わしたあと、何故か教頭がヒートアップ。
教頭は「大学は楽しい?」「サークルは何やってるの?」などと質問攻め。
それでも私はサークルの飲み会あとで機嫌もよく、ニコニコしながら受け答えしていた。
そしたら教頭、さらにヒートアップ。
最近の就職状況がどうだの、政治がどうだのと批判の嵐。
私はそういうオジサン特有の批判じみた発言が苦手なので、途中からあんまり頭にも入らず、ただ苦笑いで話を聞いてた。
で、私が「あ、次の駅で降りるんで」と言って、立ちあがったとき
「私は悲しいんだ。こんな輝いた笑顔の子たちの活躍できる社会が、未来が、危ぶまれてるなんて。」
と言って涙を流していた。
私も思わずもらい泣きしてしまいそうになった。

「がんばります」とだけ言って電車を降りた。
ぶっちゃけ高校時代、教頭とは全然関わらなかった。
それを少し悔んでしまった。

 

 

不細工な弁当

 

この前息子の通う保育園で遠足があった。
弁当持参だったのだが、嫁が出産のため入院していたので俺が作ることに。
飯炊くぐらいしかしたことないのに、弁当なんて無理!
嫁にアドバイス貰ったり、弁当の本を買い朝5時から弁当つくりをした。
案の定不細工な弁当が出来上がった。申し訳ないと思いながらもそのまま持たせた。

夕方子供を迎えに行くと空になった弁当箱と手紙を渡された。
字は書けないはずなのに、「とうちゃんありがとう」
俺の似顔絵付きで。
先生が言うには、午後の外遊びの時間に教室にこもって手紙をずっと書いていたんだと。
帰りの車中で「なんか食べに行こうか?」と尋ねると
「とうちゃんのたまご焼き食べたい!」と。
涙堪えるの必死だったよ。

 

 

ブス女

 

ちょっと聞いてくれ。昨日、ブスな女と話したんです。ブス女。
そしたらなんかめちゃくちゃ好きな人ができたらしいんです。で、よく見たらなんかほんのり化粧してて、アイラインとか引いてるんです。もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前な、好きな人ができたぐらいで普段してない化粧なんてしてんじゃねーよ、ブスが。
つくりの問題だよ、つくりの。
なんかリップも引いちゃってるし。女の子らしくメイクってか。おめでてーな。ちょっとは見られる顔になったでしょ、とか言ってるの。もう見てらんない。
お前な、鏡やるからその化粧落とせと。ブス女ってのはな、すっぴんでいるべきなんだよ。
席替えで隣になった男子からボロクソ言われてもおかしくない、私は女を捨ててます、そんな雰囲気がいいんじゃねーか
ピエヌだのメイベリンだのは、すっこんでろ。
で、やっと話がそれたかと思ったら、はぁ~恋って切ないね、とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。あのな、お前にはそんなもん必要ねーんだよ。ブスが。
得意げな顔して何が、恋は切ないね、だ。お前は本当に恋をしているのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、恋してるって言いたいだけちゃうんかと。情報通の俺から言わせてもらえば今、お前のアノ人には、カワイイ恋人がいるんだよ。残念だったな。
気づかずラブレターでギョク砕。これがブスのコクり方。
ラブレターってのは顔を合わせることがない。そん代わりショック少な目。これ。
で、返事がいつまでも来ないで自動あぼーん。これ最強。
しかしこれをやるとクラス全員にばれる危険も伴う、諸刃の剣。素人にはお薦め出来ない。
まあお前みたいなブス女は、早いところオレの気持ちに気付けってこった。

 

 

サンタクロース

 

幼稚園の頃の話。

俺の家族は借金を背負い、田舎の農家の畑を売り払い、一家4人安定した収入のある街へと出てきた。

当時の生活は苦しく、毎日その日食べるので精一杯な状況。
両親は借金の返済のため、そして何とか俺と弟には栄養のあるものを食べさせるため、朝から夜まで仕事をする毎日だった。

クリスマスの夜、弟と紙に欲しいオモチャを書いてサンタクロースが来てくれるのを心待ちにしていたが、その夜は来なかった。
次の日、隣のアパートの友達が新しいオモチャを手にした光景を弟と羨ましそうに見ていた。
俺たち兄弟は、その日も紙を枕元に置いて眠ったが、結局サンタクロースは来なかった。

次の日の夜、俺はアパートのベランダに出て空を見あげてサンタクロースに問いかけた。
「サンタクロースのおじいちゃん。どうして僕のところへはプレゼントを持ってきてくれないの?僕は何も悪いことをしていないのにどうしてなの?隣の○○クンは悪いことしてたのに、なんできてくれないの?」
そう問いかけた。
そのとき、隣の部屋でシクシクと泣き声が聞こえた。
そっと隣の部屋をのぞくと、父と母が涙を流して抱き合っていた。
あの時はなぜ泣いているかがわからなかったが、今思うと非常に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

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