ちょっと切ない話『明日遠足なのか』【短編】全5話 Vol. 20|切ない話・泣ける話まとめ

ちょっと切ない話『明日遠足なのか』【短編】全5話 Vol. 20|切ない話・泣ける話まとめ
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切ない話 Vol.20

 

 

おやじの誕生日

 

内定0の状態が延々と続き、しかも本命の最終落ち・・・と鬱なときに親に電話してみた。
その日はおやじの誕生日。「内定をプレゼントしたかったんだけどね」とおれ。
いつもはあんまりしゃべらないおやじが一言、「それでもがんばるおまいの姿が今年の誕生日プレゼントだ」。
親の前(電話口だけど)ではじめて号泣しますた。悔しいのとうれしいのと、たかがシュウカツでここまで弱ってる自分が情けなくて・・・
でも、本当に親を大切にしなきゃっておもった。「ありがとう」・・・

 

 

人生をほとんど楽しめてない

 

中学生のころ日常的にいじめを受けてました。
作ってもらったお弁当を捨てられたり、メジャーで怪我をさせられたりしました。
試験前なのに荷物持ちとして遊びに付き合わされたことも何度かありました。
その他いろいろなことがあって成績は急落し、対人関係が怖く登校拒否になり、今はいわゆる引きこもりを続けてる状況です。
精神科に通っているのですが、先日帰り道で私をいじめていた人と会いました。
話しかけられたので応じましたが、あちらはいじめのことをあまり覚えていない様子でした。
今何やってるの?と聞かれて、家で過ごしていると答えると「ふーん、要するにニートなんだろ?」と言われました。
彼は都のニート対策の企画に携わってると言い、私のことを根掘り葉掘り聞いてきました。
それからと言うもの定期的に家を訪れては、社会にとってのニートの存在の害などを説教していきます。
もし社会復帰したら自分のおかげであることを投書してほしいと言われました(そっちが本音?)
お前は周りの同世代と比べて人生をほとんど楽しめてないんだぞ、このままでいいのかと言われた時は、彼が帰った後泣きました。
あなたにいじめを受けていたせいだとは言えず、今日までずるずると生き延びてきました。
構図としては引きこもりのニートとそれを説得する都の役員。周囲の人間がどちらに味方するかはわかっています。
彼からの圧力がだんだん増してきていてもう耐えられないので、明日から自分でもできるバイトを探したいと思います。
これだけかまってやったんだから、初のバイト代が入ったらおごれよと言われています。おごることになりそうです。

 

 

ぼくのヒーロー

 

アメリカの、とある地方に野球観戦の大好きな、でも、目の見えない少年がいました。
少年は大リーグ屈指のスラッガーである選手にあこがれています。
少年はその選手へファンレターをつづりました。

「ぼくは、めがみえません。でも、毎日あなたのホームランをたのしみにしています。
しゅじゅつをすれば見えるようになるのですが、こわくてたまりません。
あなたのようなつよいこころがほしい。ぼくのヒーローへ。」

少年のことがマスコミの目にとまり、二人の対面が実現することになりました。
カメラのフラッシュの中、ヒーローと少年はこう約束します。
今度の試合でホームランを放てば、少年は勇気をもって手術に臨む、と。

そして、その試合、ヒーローの最後の打席。
2ストライク3ボール。テレビや新聞を見た多くのファンが、スタジアムで
固唾をのんで見守り、少年自身も、テレビの中継を祈る思いで聞いています。

ピッチャーが投げた最後のボールは・・・、大きな空振りとともに、キャッチャーミットに突き刺さりました。
全米から大きな溜め息が漏れようとした、その時、スタジアムの実況が、こう伝えました。

「ホームラン! 月にまで届きそうな、大きな大きなホームランです!」

 

 

明日遠足なのか

 

小学生の頃、母親が入院していた時期があった。
それが俺の遠足の時期のちょうど重なってしまい、俺は一人ではおやつも買いに行けず、戸棚にしまってあった食べかけのお茶菓子とかをリュックに詰め込んだ。
そして、夜遅くオヤジが帰宅。
「あれ・・・明日遠足なのか」と呟き、リュックの中を覗き、しばし無言。
もう遅かったので、俺はそのまま寝てしまった。

次日、リュックを開けて驚いた。
昨日詰めたおやつのラインナップがガラリと変わっている。
オマケのついたお菓子とか、小さなチョコレートとか・・・
オヤジ、俺が寝てからコンビニ行ったんだな。
俺、食べかけの茶菓子でも全然気にしてなかったんだけどさ。

あの時、オヤジがどんな気持ちでコンビニへ行ったかと思うと、少し切なくなる。

 

 

老人ホームで実習

 

老人ホームで実習した時の話。
そこは認知症のおじいちゃんおばあちゃんばかりの所で、5分前に話した話は覚えてない、1ヶ月居ても私の顔は覚えてくれない。
かなしいな、とは思いつつも精一杯介護させていただいた。

1ヶ月の実習が終わっていよいよ最後の日。
一人一人に挨拶をして回る私。
すると、かなり重い認知症を患ったおばあちゃんが目いっぱいに涙溜めて
「あの時はありがとう。怪我した小指に絆創膏貼ってくれたね」
ってそう言って抱きしめてくれた。
その後、聴いたことも無いメロディーに乗せて涙ポロポロ流しながら
「別れは辛いけどあなたに会えてよかった。」と歌ってくれた。

あんなに泣いたのはいつ振りだろうってくらいに声を上げて泣いたよ。

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切ない話
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