墓場まで持っていく話 短編10話【20】まとめ

墓場まで持っていく話 短編10話【20】まとめ

 

 

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墓場まで持っていく話 短編10話【20】

 

1

大学には入ったが卒業はしなかった。

高校も進学校だったけどもともと大学に行く気はなかったんだが、
上位者クラスに入っていたこともあって某国立大を受けたが、
受験勉強はおろか自宅学習すらしていなかったので(といっても3ヵ年皆勤だったけど)当然落ちた。
反面、親は大学にどうしても行かせたがっていたのですべり止めで受けた私立校に入学した。

もともと母親とは仲が悪くて、中学のときテレビで野球中継(忘れもしない開幕戦)を見ているとき
「勉強しろ」とうるさいのを制してテレビを見つづけていると、
包丁を持ち出されて親父の職場まで逃げたこともあった。そのあとも数回包丁つきつけられたけど。

で、そんな感じでいやいや大学入学したんだけど、とりあえず将来のこともあるし、
卒業しようと思って人並には学校にも通ってた。

でもある日、母親の不倫が発覚した。
物心ついたころから何度か父親とそういう話をしているところを見たり聞いたりしたことがあったが、
今回は親父が俺に電話してきて、初めて直接聞かされた。
それで、俺は母親が逃げてた母親の実家に電話をして、母親と話をしたが、
「お前が私の言うことを聞かないからこういうことになったんだ」などと責めたてられ、
全て俺や親父が悪い、と断言したのがものすごくショックで、いい年して泣いてしまった。

離婚するって話だったけど、結局その話は流れたんだが、
さすがに一緒に生活する気にはなれなくて、もともと通学に二時間近くかかる距離だったこともあって
親父にわがままを言って大学の近くに一人暮しをさせてもらった。家賃は払ってもらえることになったけど。

でも結局それからやる気が出なくて、どんどん学校に行く回数も減っていった。
テストの日にも行く気が出ず、結局とれた単位は8。
二年になってからマジメに通おうと思っていたが、やっぱりやる気は減退する一方だった。

結局学校はやめて、実家に帰ったけど、やはり母親とそりがあわず、去年の2月に家出をした。
それで2ヶ月近くホームレス生活をしながら、バイトを続けてた。(バイト先にこっそり入ってそこで寝たりしてました)
その間、一度自分で深く手首を切ってしまったことがあって、6針縫ったこともあった。

4月ごろ、バイトで稼いだ金を元に付き合ってた彼女と一緒に部屋を借りて同棲をはじめた。
でもそれ以来、外に出るのも嫌でバイトに行くのもものすごく体が嫌がるようになって、数ヶ月でバイトを3つ変わった。
ひどいときは一日中ベッドに寝転がっているのが精一杯だった。
病院に行ったらうつ病と診断されて、そのあとずっと家にひきこもり。

彼女は俺を養うために9月ごろにはホステスまではじめてしまった。
結局それが申し訳なくなって、11月に俺は実家に帰った。

今は一応、週一回家庭教師のバイトをしているが、それ以外は相変わらずひきこもってる。
最近はだいぶ気分がよくなってきたから、そろそろしっかり働いて彼女にお返しをしないといけないと思ってる。

鬱病には珍しく食欲だけはすさまじくあったので、大学入学時から20キロくらい太ってしまった。
幸い筋肉質なうえ顔に肉がつきにくいので、そこまで体重が増えたように見えないからまだマシだけど。

こんなことは友達には絶対言えないだろうな。
もう、ずっと逢ってないけど。もう少し回復したら友達とも遊びに行きたい。

 

2

昔、私の弟が高校教師に体罰を連日受けて帰ってきていて、
それが原因で高校に通えなくなり、結局中退してしまった。
校長・教頭ともに家に謝りに来て玄関で土下座したりしていたけど、
当の本人(教師)はまったく反省していなかった。
私は親にずっと訴えろって言ってたのだけど、
世間体がどうの、近所の人に知れたら恥ずかしいだの言って
結局訴えなかった。
けれど、少しでもそいつ(教師)に仕返しがしたかった私は
そいつの車の4つのタイヤの前に無数の画鋲を置き
ボンネットのエンブレム(っていうのかしら?)を取って
どぶに捨ててやった。
その頃、私も高校生だったけれど
何故もっと酷い事をしなかったのかと悔やんでる。
話でなく気持ちだけれど、墓場まで持っていくのでしょうね。

 

3

帰省して高校の時の友達2、3人かが家に遊びに来てて、
ひょんなことから俺の幼稚園の卒業アルバムを皆で見たんですよ。
で、その後酒飲んだり談笑したりしてたんだけど、
突然、その友達の中の一人の女の子が思い出したように「あっ!」なんて叫ぶから、
「どうしたの?」って聞いたら、
「昼間見てたあんたの幼稚園の写真、
誰かに似てるなあって思ってたんだけど、
Mちゃんの長男とそっくりだぁ」
なんて言いだすんですね。
「Mちゃん」てのは俺が高校の時から5、6年付きあってた女の子なんだけど、
とりあえずその場は「何言ってんだよ、アハハ」「懐かしいなあ」なんてな感じのトークでなんて事なく過ぎたんだけど…

夜も更けて皆が帰った後、布団に入ってから、ハッと思ったわけです。
5年前、Mは俺に愛想を尽かして去っていった後、
それから程なくして他の男と結婚、しばらくして子供を産んでるです。
当時その話を人づてに聞いたときは、
「なーんか薄情な女だなあ」くらいに思ってたんですけど、
まさかその子供、俺の子ってことはないよなあ…
別れた直後に妊娠が発覚して、でも俺に言えなくて、
他の男と一緒になっちゃったとか…
なんて考えたら眠れなくなっちゃったよ。

別れて以降、全く連絡取ってないし、
今さら真相を尋ねることなんかできない。
そんなことないとは思うんだけど、
でもあながち有り得ない話でもないなと今でもモンモンとしております。

気のせいだよね?

 

4

幼稚園の頃、もう18年も前の話。

近所に優しいお姉さんがいた。僕は自分の実の母よりも慕ってた。
で、ある日、姉さん家に行ったら姉さんがぶら下がって逝ってた。
前後3年間の記憶が妙に編集されてたから調べてみたらこんな記憶が埋もれてた。
思い出したのは去年の六月。
そりゃー半狂乱にもなるさ、18年も前の出来事に泣き叫んだ。

この事件をきっかけに多重人格になってた事は誰にも言えんね。
自分がメイン人格じゃなかった事を知った時の衝撃といったらないね。

さいわいメインは5歳のまま凍りついてるし表に出てきても幼児還り扱いされるから出てこれなくて大変らしいが。
こっちだって大変。
で、さらに、前まで5つ以上の人格があって、やっと二つまで統合できたと思ったら22男なのに今の人格が記憶は無いけど目の前で逝った女性のものだという事は絶対墓場まで持っていく。普通に男として生きていけるけど変な感じ。

 

5

震災があった前の年の秋頃に、ある男の人と知り合って、
このままずーっと一緒にいれたら良いね、なんて言い合っていたのに
震災があって私からは連絡がとれなくなってしまって、
いつかは私のところに連絡くれるだろうと思いつつ、
今の旦那と知り合って、去年結婚した。
未だに消息不明のその男の人をたまに(この時期とか)思い出すけど、
元気で生きていることを今でも祈ってる。
案外、どさくさに紛れてあの女と離れられて良かったと思われていたりして(W

 

6

私がまだ幼稚園の頃。
母が私を連れて少し離れた街中のデパートに行った。(うちは田舎だからね)
色々買い物をしたあと、喫茶コーナーで買ったばかりの寿司の折詰めを
広げて二人で食べた。
店を出てしばらくしたとき、いきなり2人連れの姉ちゃんに囲まれ
あれよと言う間に警察署へ。母が寿司折を万引きしたと。

たぶん魔が差したんだと思う。夜中に父がタクシーで迎えにきてくれた。
母も泣いて、私も泣いた。
私は今30代だが幼稚園の頃の記憶がほとんど無い。
たぶん母は私が忘れていると思っているだろう。
でも、この事件がトラウマで私自身が幼稚園時代の記憶を封印しているのだと
最近になって気がついた。
でも母の名誉のためにこの事は墓場まで持っていくつもりだ。

 

7

働いていた所に来ていたお客さんが勧めるがままに
どんどんローンを組んでくれた。
旦那さんの職業も社会的地位の高いものだったから
かなりの高額になっても
ローン会社も「参考人」程度で通してくれた。
みんなで営業担当を持ち上げて煽ってそのお客にどんどんローンを組ませた。
高額契約を取ったときは拍手喝采した。
そのお客さんは浪費やら何やらが原因で親子共々旦那さんに
殺害されてしまった・・・
ローンの返済は旦那さんの収入からではなくお客さんのアルバイトで
まかなわれていたとワイドショーで知った。
直接関わっていなかったけど嫌な思い出だ。

 

8

弟が女を連れてきてデキ婚宣言した。
それから2週間くらい経った頃、会社の同僚と食事に行った店で隣のテーブルにその女が居た。
ついたてもあるし、女は私達のテーブルに背中を向けていたので私に気付いていない。
女は男とふたりで来ていたのだが、男が大きな声で言った。
「オマエってマジ、悪い女だよなー!俺の子だってバレたらどーすんの?」
「バレるわけないじゃん♪血液型あんたと同じだし、人がいい男だもん」
ふたりで笑って話していた。
次の日は日曜日で女が家にやって来た。
弟と女は結婚準備があるとかですぐに出かけた。
私が出かけるために家から出ると女のバッグが玄関前の自転車のカゴに。
とっさにつかんで持ち去り、駅まで行ってゴミ箱に捨ててやった。

 

9

バイト先のスポーツクラブの会員。見た目も普段も普通の30歳の主婦だが
なにか「ふとしたきっかけ」でいきなりスタッフ相手に意味不明のことを
怒鳴り散らし泣き叫び出します。今日もフロントで社員相手に延々1時間
「貴方、私のこと避けてるでしょ!隠したって無駄よ
・・本社に言って必ずクビにしてやるから
証拠だって有るわ!いつも目をそらすじゃない!それが動かぬ(?)証拠よ
本気よ!許さない・・絶対に一生忘れないわよ・・」
顔を痙攣させながら手と声を振るわせながら絶対に目を合わせず
毎日別のスタッフ捕まえて言いがかりの嵐・・
ちと調べると、癲癇を患っている&精神科に長期に渡って通院している
電波主婦でした。
なんとこの主婦旦那には自分が癲癇であること、精神科に通っていること、
クレームを吹っかけることの全てを隠して結婚しているらしい・・・
ますますこの主婦がエスカレーとすれば、ご主人にこのことを説明しなければ
いけない。。そうすると彼女の伏せていた全てがばれて
夫婦に亀裂が入るのでは。。とおもうと
今日も胃が痛い・・

 

10

うちの父は四人きょうだいの長男ですが、
下から二番目だけが女です。つまり父方の唯一の叔母ですね。
この叔母は他のきょうだいと一人だけ父親が違うんだそうです。
祖父(故人)が戦争に二年くらい行っている間に、
祖母(生存)が産んだ子だそうです。父やすぐ下の叔父は
子どもの時に祖父がいない間に叔母が生まれたのを見ていたので
事情は知っているのですが、一番下の戦後生まれの叔父と
当の叔母じしんは全然知らないそうです。
だから多分祖母・父・叔父にとってこのことは墓場まで持って行く
秘密なんだと思います。
私がなぜこのことを知ったかというと、女は一人なのでわがまま
たっぷりに育てられた叔母が、私の母に辛くあたってきたので、
いつも私に愚痴を言っていた母が、ある時ふっと漏らしたからです。
祖母は勝手に祖父の籍に叔母を入れましたが、祖父は末っ子の叔父が
生まれてすぐに祖母とは離婚しました。
もう父のきょうだいもいい加減な歳ですから、封印した秘密という
ほどではないかもしれませんが、やっぱり墓に持って行く話だろう
なと思います。

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墓場まで持っていく話
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