墓場まで持っていく話 短編10話【12】まとめ

墓場まで持っていく話 短編10話【12】まとめ

 

 

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墓場まで持っていく話 短編10話【12】

 

1

先日祖母が亡くなった。大往生の末老衰だったんだけど、最期は家族で看取りたいと決めて自宅介護をした。認知症があり寝たきりで、最期に近付くにつれ会話もままならなかった。

十数年前に私が中高生の頃、家庭内不和に耐えられずに恥ずかしながらヤンチャしていた自分は、祖母の財布から頻繁に金を抜いていた。それに気付いた祖母が両親に「泥棒だ、金を抜かれている」と訴えた。
でも今思えば両親は恐らく犯人が私であると気が付いていて、警察を呼ぶでもなく、だけど問い詰めもしなかった。

祖母はそれから数年経って認知症になった。認知症にはよくある事かもしれないけど、しょっちゅう「金を取った奴は許さない、泥棒!」と幻覚を見ている様だった。
私は改心して介護に励んだけれど、祖母が呆ける度に申し訳なさでやりきれなかった。

でも何故か祖母の最期の数ヶ月、祖母は私を見るといつも微笑んでくれた。本当に、何でか分からないけど家族の中で私の顔だけが祖母のツボらしく、顔を合わせる度にケタケタと喜んでくれたんだ。それこそ死ぬ数日前まで、意識がある内はずっと。

私は普段は家を出て暮らしているから、たまたま一旦そっちの自宅に戻ったその日に、祖母が死んだ。死に目に会えなかったのは、自分が祖母の金を盗んだからじゃないかって、涙が止まらなかった。冷たくなった祖母に、心の中で謝りまくった。

ばあちゃん、ごめん。あんなに笑ってくれたのに、ばあちゃんの大事な金盗んだの私なんだよ。純粋に介護してたんじゃなくて、申し訳なさとか償いみたいな気持ちでごめん。だけどずっと傍で介護させてくれて、私の顔見て笑ってくれて、ありがとう。

私がそっちに行ったら、もう一度謝ります。また馬鹿モンって叱って下さい。

誰にも本当の事が言えなくて、死ぬまできっと言えないヘタレなんでここに書かせてもらいました。

 

2

10年位前、就職率が5割切るFラン大学だったのに、海外の某大手証券会社に内定出た人がいると言う
噂を広めたのは自分です。
まさか大学の就職課がそれを信じて、翌年の出願率がはね上がるる位尾ひれがつくとは思わなかった。
今は反省しています。

 

3

林間学校でせいかちゃんが泣きだしたのは、
虫が好きだった私がせいかちゃんを驚かせたくて
せいかちゃんのてのひらに
バッタを乗せたから。
泣き声を聞き付けたクラスの皆がどうしたの?って
集まって来て、動揺した私は思わず「わからないの。
いきなり泣き始めたの」と嘘をついた。
あまり口が達者じゃなかったせいかちゃんは、虫パニックと
親友の私に嘘をつかれた驚きで、何も言えなかった。

 

4

私が小2の時に母が亡くなった。死因はアルコール中毒による衰弱死。当時毎日大量に酒を飲んでいた母。母の部屋は酒と嘔吐物の匂いと空き瓶などのゴミで入れたもんじゃない。そんな母をただただ怖いと思いながら毎日すごしてた。
そんな母が死ぬ前夜『○○…●●…(私と姉の名前)』
と呼ぶ声が聞こえた。別の部屋で寝てた私と姉。姉はぐっすり寝てて声に気付いたのは私だけ。恐る恐る母の部屋に行き『お母さん…?』と呼ぶも返答なし。
空耳だったのかな?と思いまた姉の所に戻り寝た。
翌朝姉が『お母さんが息してない!!』と私を起こした。
あの時私がちゃんと確かめたら母は死なずにすんだのではないか、姉を起こす事など何らかの対処ができたのではないか。
そう姉や祖母に責められると思い母に呼ばれたことは誰にも話せないでいる。もう15年になる。墓まで持っていこうか。

 

5

少し遠いおばあちゃんの家に頻繁に遊びに行って、可愛がられてた。
他の孫は来てくれないから私はあんたが来てくれて本当に嬉しいんだ、とニコニコしてくれてた。

そんなおばあちゃんの家にいつも行ってたのは、おばあちゃんに会うためじゃなくておばあちゃんの財布からお金を盗むためだった。
おばあちゃんがお金が無い事に気付いた時、おばあちゃんは私を疑わずにヘルパーさんを疑ってて、胸が痛かった。
ヘルパーさんが違う人に代わったのも知ってたのに私は知らないふりをしてた。

ごめんおばあちゃん。
怖くて本当の事は話せないけど、精一杯誠意をこめておばあちゃんとまた話したい。おばあちゃんと会うためにおばあちゃんの家に行きたい。
こんな歳なのに、こんな馬鹿な孫でごめんおばあちゃん。

 

6

おじさんは刑事でした。ある夜、家で飲み会があって、おじさん「飲んでるケド、まだ仕事が残ってるから、運転してくれないか」と免許とりたての私に頼んできました。それは、ある人を、明日の朝早くに捕まえに行くから、いるか下見しにいくという内容でした。
で、行った家が…

ぐるりと町内を回って時間を潰した後、また自宅まで戻らされた。おじさんは、車を降りると、明日はゆっくり寝てろよ、と言って帰って行きました。翌朝、玄関が騒がしく、荒々しい足音が自分の部屋の前に…

高校の時から、みんなでよくご飯をゴチになって仲良くしていた年上のヤクザさんの家でした。私はいちを良いとこのお嬢様で、おじさんも、まさか私がそんな人達と関係あるとか思ってないし、その日は朝まで眠れなくて、結局、友達にも誰にも言えなくて逮捕されてしまいました。

 

7

某日、俺は球場で同じチームを応援している女性ファンに話しかけられた。
それから一緒に話しているうちに、彼女の好きなモノと俺の好きなモノなどがよく重なる
ことに気付き、彼女は顔を赤くして「これも運命なのかもね」と言ってきた。
それから順調に交際を続け、気が付くと親父の誕生日になっていた。
そんな日に彼女が「もっと私に振り向いてほしいな」と言ってきたから、思わず告白して
しまった。
すると彼女は喜んで「嬉しい!」と言い、その後しばらくお喋りして帰った。
とうとう俺にも彼女ができた、親父に最高のプレゼントを与えられる!と喜んでいたら
「私生きてる価値ない。死にたい」と彼女からメールが来た。
俺は自殺だけはやめてくれと訴え、かろうじて命は救えたが「もうメールやめない?」と
彼女からメールが来た。
付き合ってまだ半日も経っていないのに…と思った俺は頑固拒否した。

翌日、学校でも必死に俺は彼女を大切にするからと訴えたが、彼女の返事は「はいはい」だけ。
たまたま会話を聞いてた女子が「ラブラブなの?」と聞いてきたから俺は慌てていたのか思わず
「彼女の方から自分に思いを寄せてるみたいだったから、彼女の為に告白した」と教えたら
その会話が聞こえていたのか、彼女は「別に私は○○に思いなんか寄せてないし」と言ってきた。

俺は建前では「早とちりしてごめん」と謝ったが、実際本音では「最初に話しかけてきたのも、
俺といると楽しい、そして告白したら嬉しいって言ったのも全てそっちからだろ?
何勝手なこと言ってるんだ?」と思ってしまった。

女という生き物の気持ちって本当に難しいな。
高校時代解いた現代文の小説の読解よりずっと難しいわ…と思った。

 

8

愛妻家、家族を大事にする人として周囲に知られている父が、
私が生まれる前から余所に女がいた、という事実を私が知っていること。
家に一人でいるときに相手に凸電された。本当は母にしたかったようだけど。
母は私がいなければ即離婚したかったようだ。子供だって馬鹿じゃないから、
父と母をずっと見ていたから、凸電がなくてもわかっていたよ。
母が亡くなって、父のことを知るのは私一人。知らないフリを続けてる。
私も良い子のフリするのはもう慣れっこだから、得意ですよ。

そして私は三児の父と不倫してる。家族の心の痛みを知ってるのに。
私さえしっかりしていればこんなことにはならなかったのに。
私もあの人も、自分以外が傷つくことにはならないようにしようと
決めている。本当は、傷つくのは私だけでいいんだけど。
ごめんなさい

 

9

あまりに死にたくてたまらないので計画たてたこと
身辺整理もだいぶ終わった
一応寝る前に「生きるってすばらしい!!」系の話や
「生きたくても生きられなかった」系の話を読んだりするけど今んとこ効果なし
死んで誰かの役に立てるなら本望

 

10

十年くらい前だが埼玉県新座市で一家心中があったんだよ
同い年の娘だけ重傷で生き残ったんだが俺は当時
引っ越し屋の学生バイトしてたんだ。心中した家の家財を処分する仕事をしたんだが…
マジで血だらけで気持ち悪くなり、バイトだったのでその場で辞めたよ。
でも社員は家族もいるし泣く泣くやったらしい。
自殺すらななんて大層な事は言わないが
人に迷惑をかけない自殺なんてあるのかな?
死にたくなったら逃げちまえよ!

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墓場まで持っていく話
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