『指輪』|名作まとめ【巣くうものシリーズ】

『指輪』|名作まとめ【巣くうものシリーズ】洒落怖・怖い話・都市伝説 巣くうものシリーズ

でも、今考えてみるとどうしても気になって、先日、改めてAに聞いてみた。
Aは物凄く迷ってたが、やっぱり黙ってるのがしんどかったようで、しつこく聞いたら最後には話してくれた。
クロだった。
「……その親戚の子、Eが好きだったんだと思うよ。どこで呪いの方法を見つけたのか知らないけど、実際に猫を殺して本格的に呪いかけるくらい、Bが憎かったんじゃないかな」
俺が聞いたのは、やっぱりその子の声らしかった。Eから指輪を貰う女に対して、死んじゃえ、と呟いて猫を殺した時の声なんだろう、と俺は思った。

そしてAが心配してたのは、Bが呪われることじゃなかった。
Bの中にいるものの性質をかなり正確に把握してたAは、動物を殺して形を整えて行われた呪いの、「返り」を気にしてたんだった。
「……私も俺君も大怪我じゃなかったでしょ?呪い自体には、人を殺すような力は無かったんだと思う。だけど」
Bにはアレが居たから。
Bをターゲットに真っ直ぐ飛ばされたものを、アレが真っ直ぐ打ち返したときに「加速がついちゃった」んだと、思う……

Aは、それ以外は何も言わなかった。
多分、当時のAは、指輪をどこか霊能者のところへ持ち込んで、呪いを外してもらおうと考えてたんだと思う。
正直、Aと話してから、少し気持ちの整理がつかなくて、混乱してる。
俺がBを呼んでAの鞄を渡さなかったら、Eの親戚の子は死ななかったんだろうか。
BにAの鞄を預けたと言ったとき、Aが取り戻そうとしなかったのは、もう間に合わないと思ったのか、怪我して怖くなったのか、俺は解らない。
いずれにせよ、もう何年も前の話だ。

Bは何も悪くないんだろう。普通に彼氏から貰った指輪を喜んでただけで。
少し大雑把だけどイイ子で、同じものを探すのに貸してと言ったAに快く指輪を貸し出してくれるような奴だったわけで。
でも、俺が悪いんだとも思いたくない。
Aも俺も巻き込まれただけじゃないか、って気持ちが消えない。
同時に、猫を殺して呪いをかけた女の子は確かにゾッとするけど、相手がBでなかったら、死人は出なかった話だったんだと思わずに居られない。
Aが複雑な顔で「何もできないんだよね」って繰り返す気持ちが初めてまともに解った気がした。
吐き出させてもらってすまない。

[完]

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