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『ネガティブの塊』|洒落怖名作まとめ【天狗男シリーズ】

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『ネガティブの塊』|洒落怖名作まとめ【天狗男シリーズ】 天狗シリーズ
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ネガティブの塊

674 :天狗男 ◆JP.Ba21tS.:2010/03/10(水) 06:06:16 ID:.y8DnQxs0

 

あれは俺が専門学校生の頃だったからもう10年近く前になるかな。
その頃にインターネットを通じて巻き込まれた恐怖体験を書いてみる。

当時俺は「チャット」にハマッていた。PCで文字を打ち会話するあれだ。
俺はゲームが好きなのでFF好きが集まるチャット部屋に入り浸っていた。
部屋主の名前は「マサ」。気さくで面倒見がよく皆に慕われていた。俺は学校が終わり、用を済ますと毎日そこで色々な会話を楽しんでいた。

常連は10人程度。オフ会も何度もやっており俺もよく参加していた。ある日、俺はいつものようにチャットに入室すると皆の様子がおかしい。俺は不審に思いながらも挨拶をすると参加者名を見た。すると1人の新規さんがいるようだ。ハンドル名は「魚女」。

変な名前だなと思いつつ「はつよろ~」と入力していたら「寒い」と言いその魚女は落ちていった。何が寒いんだ?俺の挨拶か?と思っていると皆がその魚女について話し始めた。皆の会話を読んでいると、どうもすごくネガティブな感じの女らしい。

メンバーがFFの話を振っても「友達がいない」とか「人は信用できない」等の発言を繰り返していたらしい。常連は皆、大人なので気を使って色々と話しかけていたようだ。俺はフ~ンと軽く聞き流すとFFの話題で彼女のことなどすぐに忘れた。

翌日、夜になりいつものようにFF部屋に入ると例の魚女がいた。

俺は「こんちゃ~」と入れると「こわい・・・」と言っている。「え、俺?^^;」と入れても「怖くて眠れない・・・」と言う。俺は何が怖いの?と聞くと夜になると何かが襲ってくるそうだ。明らかに場違いな発言に、俺はどうしようかと思っていると、部屋主のマサが「電気つけて寝れば?」と言ったが彼女は「鈴の音が聞こえる・・・」と言い落ちていった。

その後しばらく魚女は来なかった。俺は彼女の事などすっかり忘れていた。
と、ある日マサがおかしな事を言い出した。

「そういえばさ、最近寝るとき鈴の音が聞こえるんだよね・・・」

俺はギョッとし咄嗟に魚女のセリフを思い出した。しかし気のせいだろうと思い深く考えないでいた。

それから一週間くらい経った頃、俺がいつものようにFF部屋に入ると例の魚女がいた。と、皆が凍りついている。俺は不振に思い常連のひとりにささやきをしてみると、どうやら魚女がリスカをしたと言ったらしい。
俺はうつ病なのかな?と思いどうしようか思案してると魚女からささやきが来た。

「一緒に死んで・・・」

俺は、ヒィイィィ!と背筋が寒くなりすぐに部屋から落ちた。何で俺が顔も知らないやつと死ななきゃならないんだ・・・俺はしばらく部屋に行くことが出来なかったが、心配だったのでメールで常連に聞いてみた。すると他の常連達も同じように言われたらしい。その他、助けて・・・呪ってやる・・・
等をしばらく言い落ちたらしい。

さすがにこんな女がいたのでは、チャットを楽しむことは出来ない。俺は、しばらく部屋にいくのをやめようと思った。その夜、夢を見た。

俺は深く暗い森の中を歩いていた。

空は曇り日差しも届かない。うっそうとした森の中を彷徨い歩いていた。
と、遠くで宴のような祭りのような賑やかな声が聞こえてくる。俺は凄く楽しそうだなと思いそっちに向かって歩き出すのだが、なかなか辿り着かない。疲れたので大きな木の根元で休むことにした。と、チリーンと音がする。

俺はなぜか咄嗟に魚女のことを思い出した。辺りをキョロキョロ見ると、大木に鈴が巻きつけられているではないか。よく見ると、鈴はこの大木だけではなくそこら中の木に巻きつけられている。

結界だ・・・

俺は夢の中でこれは夢だと悟った。以前の人形夢事件を思い出し冷や汗が流れてきた。恐らくこれも結界の外に出ないと夢から抜けられないのだろうという事を感じていた。俺は身構えて精神統一をすると念じて刀を出現させた。じつは人形事件の後、夢の中で武器となるものを出せる訓練をしていたのだ。ドクン・・・ドクン・・・鼓動が早くなる。

うぎゃぁぁぁぁぁ・・・

遠くで悲鳴が聞こえた。聞いたことのあるような声だったが俺は恐ろしさ
で身動きが出来なかった。何かがいる・・・遠くに何か邪悪なものを感じた。
宴の声はいつの間にかヒソヒソ話のようになっている。ヤバイ、とにかくここ
から出なければ・・・と走り始めた途端、目が覚めた。

ハァハァ・・・ハァハァ・・・

ベッドの上で汗だくになりながら起き上がると、嫌な予感がした俺はすぐにPCを立ち上げた。と、1通のメールが来ていた。

そんな・・・そんなまさか・・・

マサの訃報を知らせるメールだった。近くに住む常連の一人が連絡がつかないことを不審に思い、マサ宅を訪ねると部屋で死亡していたらしい。死因は急性心不全。明日、密葬を行うから出席できる人は来てくれと書いてあった。
当然、俺は出席した。密葬には親族とFF部屋の常連数人がいた。

俺は変わり果てたマサの姿を真にあたりにして言葉が出なかった。相当苦しかったのか下唇を噛んだ痕がクッキリと残っていた。恋人は泣き崩れていた。
今年結婚する予定で、先日式場まで一緒に見に行ったらしい。俺は悲しさで胸が一杯だった。

俺はしばらくの間、ショックで呆けていた。

信頼できる友を亡くしたショックは大きく、若かった当時の俺にとっては相当な痛手だった。学校も休み、FF部屋にも行かなかった。そんな俺を見て親父がこんなことを言った。「おまえ、何か黒いものに憑かれてるな。引き込まれないように注意したほうがいい」と言い、足で結ぶ密印を教えてくれた。

通常、印とは手で結ぶものでこれは特別なのだと言う。

俺はフーンと軽く聞いていたが「黒いもの」と聞いて魚女のことを思い出した。
その後、彼女はどうしただろう。気になった俺は久しぶりにFF部屋に言った。
人数は減ったが常連が数人おり、久々に会話できて俺は少し安心した。そこにはマサの彼女もおり、マサの追悼の話もしばらくしていた。と、彼女からささやきが来た。

「俺クン、この電話番号の人って知ってる?」
「え、何番ですか?」
「080-xxxx-xxxx」
「(調べたが)ん~ちょっと知らないですね」
「そっか・・・」
「その番号がどうかしたんですか?」

マサが亡くなった時、部屋の受話器が外れていたと言う。どうやらマサはこの番号の人と電話中に亡くなったらしい。しかし誰に聞いてもその番号の相手が誰なのかわからないという事だった。警察も死因が急性心不全なのでその番号にはノータッチだったらしい。

そして彼女さんが試しにその番号にかけても電源が入っておらずつながらないという。俺は誰あろうと思いながらも、その日はそれで部屋から落ちた。その晩、またあの夢を見た。

俺はまたあの森の中を彷徨っていた。

遠くから賑やかな声が聞こえる。しかし今度は真っ暗な夜だ。3m先もよく見えない。と、遠くから鈴の音が聞こえた。

チリーン・・・ チリーン・・・

俺は身構えて刀を出すと、音のする方向を見据えた。どす黒い何かの意思のようなものが近づいてくるのが分かる。と、どうしたことか体が動かない。刀を構えたまま身動きが取れなくなっている。ヤバイ、逃げるにも逃げられない・・・
黒いものが近づくにつれ、何やらうめき声が聞こえてくる。

コロシテェ・・・シニタィ・・・

1人や2人ではなく、おびただしい数の声だ。それが黒い塊となって徐々に近づいているらしい。メキメキと木々をなぎ倒しまっすぐこちらに近づいてくる。いくら夢でも、この闇の集合体に勝てるわけがないと悟った俺は目をつむって起きようと念じたが、やはり無理だった。そいつは闇よりも深い闇で無数の手が伸びギラギラとした目がいたるところについていた。

う”お”お”お”お”お”・・・

すでに目の前まで迫ってきたが体が動かない。もうダメだと思った瞬間、俺はそいつに飲み込まれた。そして理解した。こいつは物凄いネガティブな意思の塊だ・・・こいつの中にいるだけで俺も死にたくなってきた。ダメだ思考がまとまらない。悲しさが止まらない。生きているのがつらい・・・

もうこのまま眠ってしまおう・・・と思った瞬間、声が聞こえた。

「おまえはまだ生きろ」

その瞬間、俺を飲み込んだ真っ黒い塊が2つに裂け、俺は放り出された。

き”え”え”え”ぇ”ぇ”・・・

何が起こったのか分からなかったが、俺は咄嗟に親父に教えてもらった密印を足で結んだ。その瞬間、まばゆいばかりの光がその塊の中から溢れ森をも包み込み辺りを飲み込んでいった。

夢の中は俺以外、無になっていた。

しばらくして俺はゆっくりと目覚めた。ふと時計代わりにしているケータイを見て固まった。時刻は夜中の2時。しかも着信があったのだ。例の番号から・・・
もしあのまま闇に包まれていたら、きっと無意識に電話を取っていたのだろう。
そして電話を取ってしまったらきっと・・・そう考えると恐ろしくなった。

しかし最後に聞こえたあの声。
あれは間違いなくマサのものだった。闇に包まれて命を落としたにも関わらず俺を助けてくれた。俺は声を出して泣いた。

週末、マサの墓参りに行くと彼女さんが来ていたのでそのことを話した。彼女さんは泣き崩れた。そしてマサの分まで強く生きてください、と俺に言った。
俺も泣きながら頷き、何が何でも生き抜いてみせます、とマサの墓前で誓った。

近年、うつ病の患者が急増しているという。俺が出会ったネガティブの塊は、そういった生きてる人たちの負の思念が大きなうねりとなって、俺達生きてる人たちに影響を与えているんだなと、この事件を通して理解した。少なくとも自分だけはポジティブに生きねばと考えさせられる事件だった。

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