3人の男 【日常系】
男はあせっていた、時間がない。
「なんで起こしてくれなかったんだよ~」
とぼやきながら走った。
ひとの流れを縫うように…。
◇ ◇
男は幸せだった。
かわいい息子はまだ2つ、女房はいまだ恋人気分。
久しぶりの休み、今日はお出かけ。
ベビーカーから子供を下ろし歩道橋を上がる。
息子は車が大好きだ、肩車で高い高いがお気に入り。
「気を付けてよ!」
「ほ~ら高いだろ」
◇ ◇
男はイライラしていた。
今日はやけに信号につかまる。
煙草を何本すっただろうか、早くこの荷物を降ろして次へ…。
「チェ、また赤かよ~」
◇ ◇
男は歩道橋を駆け上がった、駅はすぐそこ。
足がもつれた。
男は肩車をしながら、一瞬気配を感じて振り向いた。
走る男はバランスを保てなかった。
肩が男の腹に当たった。
その瞬間、肩車の男もバランスを失しない手が緩んだ。
悲鳴が上がった。
子供は歩道橋を越えて、重力のなるがままにその高さから落下した。
信号待から勢いよく飛び出した車の男は、一瞬なにかを見た。
間に合わなかった、急ブレーキとともに悲鳴が錯綜した。
車の男は目の前が全て真っ暗になった。
免許がなかった。
そして同時に3つの家族が崩壊した。
普通の生活にありえるふつうの話。
溺れる子
友達の怖い話
仮にK君としよう。
彼は沖縄出身でな、若い頃はけっこうヤンチャしてた。
ホントにおばけなんかいるのか?
じゃあ、ためしてみようなんて。
たとえば、夜中の防空壕、沖縄には今でも白骨化した死体とかけっこう残ってて、夜中にオバケが写るんじゃないとかいって、友人にカメラ向けてピースで写真をとったり
夜中2時くらいに、海で泳いで友人にカメラもたせて映せとかやってて、結局でも(なーんもなかったぞ)と言ってたりした。
そんな肝っ玉優れたやつ。
で、ある日、悪友達連れて車3台連れて夜中ドライブに行ったんだって。
立ち入り禁止の波止場に入っていって、夏だから花火とかして酒飲みながら遊んでた。
鞍馬のヘッドライトの先、海の中10メートルくらい先に5~6人いて、
一人が
「誰か溺れてる!」
って叫んだ!
見れば子供が1人あっぷあっぷしてる。
「えーどこ見えないよー」
「いるだろあそこ」
そのうちの一人が誰か呼んでくるって、近くの民家に走っていった。
「早く助けないと!」
「どこ?どこにいるの?」
そんなやりとりをしてるうちに、むこうからオジサンと助けを呼びに行ったやつが走ってくる。
「お前たちここは立ち入り禁止だろ!!」
そのオジサンは漁師で、今にも救出しようとして服むいでるやつにむかって
「やめろ!!!」
と叫んでる。
「いや、でも子供が…」
漁師のおっさんは、なんか必死に止めようとしてる。
???
その状況はというと子供が溺れてる。
6人中3人は見える。
他のやつには見えない。
漁師「見えるのか?」
「だっているだろ。早く助けなきゃ!!」
目の前10メートル先くらいに確かにいる。
「どこ?いないよ?見えない」
漁師のおっさんが
「じゃあ見える奴。アイツの顔見てみろ」
「あのこども助けを求めてるように見えるか?」
よ~く見ると
「ううん…笑ってる」
漁師「いるんだよ…お前たちみたいな奴らが助けに飛び込んで引き込まれるんだ」
「そして、そんな状況で水死体があがるんだよ…だからいつもここは関係者以外立ち入り禁止にしてるんだ」
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