『嫁のカツ丼』など短編5話【80】 – 感動する話・泣ける話まとめ

『嫁のカツ丼』など短編5話【80】 - 感動する話・泣ける話まとめ 感動

 

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感動する話・泣ける話まとめ 短編5話【80】

 

 

機械オンチの母

夫の仕事の都合で、東京に引っ越してからは、あまり実家に帰らなくなっていました。

ある時、数年ぶりに実家に戻ると、

「連絡をよこせ」

「孫の顔が見たい」

と母がうるさく言うので、携帯電話をプレゼントして、写真付きのメールを送ることにしました。

ところが、機械オンチの母はメールの返信ができないようでした。

反応がないせいか、私の送る頻度もだんだんと減っていきました。

そんなある日、母の急死の知らせが入りました。

実家に戻ると、母の枕元には10年以上前に私が渡した携帯が置いてありました。

塗装が剥げてボロボロになった携帯を手に取ると、

「お前から届いたメールが消えるのを嫌って、替えなかったんだ。暇さえあるとメールを読み返していた」

と父。

壁紙には、娘が11才の誕生日に写した写真が。

娘はその時16才です。

母の中で、娘は11才で止まったままだったのです。

忙しさを言い訳にして、母の気持ちを考えようともしなかった自分が情けなくなりました。

もっと実家に帰っていれば…。

こんなに早く会えなくなるとは思わなかったなんて、言い訳にもなりません。

お母さん、本当にごめんなさい。

それからは、毎年家族写真を撮り、父に写真付きの年賀状を送っています。

 

 

嫁のカツ丼

今日は朝から冷えると思ったら雪降ってたよ
めったに降らない地域なのに
雪が降ると思い出すから書く

嫁との出会いは俺が大学二年の頃の年末
粉雪が降る夜だった
バイトの帰り道、ふらふら歩く嫁を発見
夜中に、しかも粉雪とはいえ雪が降ってる中傘もささずに、しかもコートとかもなんもなし
最初情けないけど幽霊かと思って本気でビビったし、できる限り見ないようにスルーして通りすぎようとした
けどよくよく見たら顔中あざだらけで、しかも口も切れてる
ちゃんと足があること確認したうえで、心配になって声をかけた
不審な出で立ちじゃなきゃお近づきになりたいと思うくらい可愛かったっていう下心があったのは否定しない

嫁は立ち止まりはしたけど、こっちを見つめるだけで返事しないし、今だから言うけど声をかけたことちょっと後悔した
とりあえず怪我してるんだし救急車呼ぶなり警察なりって言ったとこで嫁過剰反応してそれだけはって懇願してきたんだよ
それでなんともないのでってどっか行こうとする嫁に、カツ丼作れますか?って聞いたのがきっかけ
その次の日大事な試験で、ゲン担ぎにはカツ丼だろって思うけど作れないから作ってって頼んだ
24時間スーパーはあっても外食するようなとこは車で行かなきゃいけないような田舎だったから、我ながら上手い言い訳だったと思う
とにかくそのまま一人にしたら死ぬんじゃないかって思って、でも次の日ニュースになんかなったら後味悪過ぎるって必死だった

それ以来うちは記念日にはカツ丼が出てくる
嫁のカツ丼を食べ続けて10数年になるが安定の美味さ
歳とってもきちんと食べきれるように健康でいたいと思うっていう年末年始の思い出話

 

新しい母と兄と姉

父が急逝し母親が鬱病状態で当時4才だった私は放置子だった
お腹減っても母親は仏壇の前に一日中座ってて目の前にたっても私の存在自体忘れられてた
完璧に違う世界行ってた母親が置物にしか思えなかった
親戚も居ないので本当に誰も世話してくれない
お腹を満たすため公園で草とかヘビイチゴとか食べるのが日課

でもある日、女の人に
「何してるの」
と話しかけられて私はビックリしつつも
「これオイシい」とか得意気にしてた
そしてなぜかいつの間にやら私はその人の家に住むことになって新しい母と兄と姉が出来た

当時の記憶はあまりないけどあっという間に生活が変わった
何不自由なく特に姉には過保護なくらい可愛がられて生活してきた
実の母と再会したのは大学卒業式の日
ずっと聞いちゃいけないと思ってたのに生みの親を育ての親が軽い様子で連れてきた見た瞬間生みの親と解った
育ての母親がずっと色々世話して社会復帰させてくれたと生みの親が告白して
何で育ての親はそこまでしてくれたのかと聞いたら
「もう一人くらい娘欲しかったから浚ってきたんだけどあんたに後から怒られるの嫌だったから手伝ってみた」と笑ってた

精神的にも経済的にも立ち直った生みの親とは一緒に暮らしては居ないけど週に何回か一緒にご飯を食べるようになった
姉からすると「お母さんはノリで行動するだけだから深く考えない方がいい」らしい
育ての母親は宗教家とかじゃないけど自営業でずっと働いて私の生みの親以外にも子分みたいな人が沢山居て
こういうのがカリスマなんだろうかとたまに思う

 

 

私の命を代わりに捧げれる

今から約十年前バツイチ子持ちの姉が交通事故で亡くなった。
子供は二人。当時十歳女と九歳男。
婦人系の病気して子供が出来ない体の私は
姪と甥をそりゃーもう可愛がってた。
姪と甥の命が危なかったら私の命を代わりに捧げれるくらい可愛かったんだ。

姉が亡くなり、少し落ち着いた時、
子供をどうするかって話し合いをした。
そん時 すぐに私が引き取るって言ったよ。
だって姪と甥が○○ちゃんって抱きついて泣いてたんだもん。

悠々自適の一人暮らしから三人の生活。
楽しかった。
いきなりの母親業は戸惑いと、収入面でもきつかった時もあった。
やっぱり姪と甥はさ、情緒不安定で夜中に泣いたりストレスで禿げたり、突然泣き叫んだり。
五年くらい三人川の字で寝たよ。

学校のママ友って言うの?
あれもワクテカ凄くてさ、うざったかった。
PTAもやった。
町内会も全部参加した。
でも何とか頑張ったよ。

昨日甥が二十歳になった。
大学行ってて、一人暮らしで一緒に祝えなかったけど、ラインが来たよ。

俺の本当のお母さんは居ないけど、○○ちゃんが今の大事なお母さんと思ってる。
彼女が出来たよ。
今度一緒にご飯に行こう!
まだ35歳なんだから、○○ちゃんも彼氏作りなよ!
俺とねぇちゃんを愚痴一つ言わずに育ててくれてありがとう。
大好き!

だってさw
おばちゃん嬉しくて酒飲みすぎたよw
そして甥に彼氏作りなよ!って言われたのが今の修羅場w
二人の子持ち女を好いてくれる人
今から探すなんて出来ないぜw

 

 

監督さんも気を付けてください

ちょっと暑かった日の夕方、
電車で座席は全部埋まってる混み具合で、カップルが座ってた

そこに鳶っぽいイカツイにーちゃんが
彼氏の方に
「悪いけど席変わってくんねー?」と登場
うわ、絡まれてる可哀想、とは思ったけど、恐いから皆見て見ぬふりそうしたら
彼女の方が席を譲って
「昼休憩入れました?じゅーじさんじ(?)にコーヒー以外の水分取りました?
すみません、ちょっと○○(聞き取れなかった)見ますね」
と喋りながら、結構汗かいて汚れて見えたにーちゃんに普通に触る
にーちゃんも吃驚してたけど、質問にだるそうに答えてた
彼氏も「気分悪かったら俺に寄りかかっててください」と心配そう
この辺りでにーちゃんがDQNじゃなくて軽く熱中症気味なことに周りも気づいた
彼女が飲みかけでごめんなさいと言ってOS-1取り出してにーちゃんに飲ませてた

ちょっと休んで復活したのかにーちゃんが彼女に
「同業ですか?」
と聞くと
「セコカン(施工管理技士のことらしいggった)なんです、この前うちの職人さんも熱中症やったので…」
と答えてた

自分とその三人が降りる駅一緒だったんだけど、彼女がにーちゃんに優しくお説教
「涼しくなってきた時期が危ないの分かってますよね?もー、駄目ですよ!」
にーちゃんも
「うっす…、監督さんも気を付けてください」と敬語になってた
最後に彼女が
「休んでちょっとでも気分悪かったら必ず病院行ってください、ご安全に!」
にーちゃんも笑って
「すみませんマジ助かりました、ご安全に!」ってやりとりしてた

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