ドイツ・オーストリア・イタリア旅行【和む話】
先日いわゆる大学卒業旅行という奴をしてみたので、その時のなごみ話。
行先はドイツ・オーストリア・イタリアの三カ国で期間は半月強。
まずドイツでのなごみ話。
フランクフルトのホテルでチェックインした際、
「ここにサインしてねー」
と言われ日本語でサインしたら、フロントのおっちゃんのテンションが急に上がった。
うっひょううっひょう言いながら、ロビーの奥のソファーに座っていたドイツ人客に
「日本語でサインもらったぜー」
みたいなことを叫んでた。
(叫んでたのはドイツ語だったけど、何となく内容は理解できてしまった。
ヤーパンがどうたらこうたら言ってたし)
ドイツ人客の皆様も、なぜか一緒になって、うっひょううっひょう言ってた。
結構日本人客もいるホテルだし、なぜそんなにテンションが上がったのかいまいち不明だったんだけど、とりあえず嬉しそうだったんでなごんだ。
隣にいた友人が言うには、何でも私の筆記スピードが受けてたらしい。
すごい早い!って褒めてたよ、英語で。といわれたが、呆気に取られた私には聞き取れなかった。
すまんおっちゃん、褒めてくれたのに。
でもそんなに早かったかなあ・・・
ドイツのミュンヘンからウィーンへ向かう途中、モーツァルトが生まれたザルツブルグという町で途中下車した。
駅から町へ向かって歩いていると、橋の上で向うから歩いてきた白人のおっちゃんに英語で声をかけられた。
おっちゃん「すいません・・・バス停ってどこですか?」
明らかに旅行者の私らに聞くなよ!
と思いつつも、おっちゃんも大きな鞄もってるし、英語だけどドイツ語訛りじゃない感じの訛りだし、外国で道に迷う不安は良く分かった。
なので、一緒に地図を睨めながらバス停を探すことに。
ちなみに地図は、日本で買ったガイドブックの奴なので、外国人にはちょっと分かりにくい。(日本語表記と現地表記がごっちゃになってる)
おっちゃん「今は・・・ここ?(地図を指して)表記よく分かんないんだけど」
私「ここですね」
友人「バスでどこまで?」
おっちゃん「駅まで」
友人「たぶんターミナルはあっちかな」
おっちゃん「あっち?(我々が歩いてきた方を指して)」
私「あの道を左に行った所かと…たぶん」
友人「間違ってたらすみません」
おっちゃん「大丈夫!本当にありがとう!君たちは旅行者?日本人だよね!
僕フランス人なんだけど、この街はすばらしいよ!」
おっちゃんはしばらくザルツブルグの美しさを褒め称え、握手をしながら
おっちゃん「日本もすばらしい国だよね。日本人に声をかけて良かったよ。ありがとう。
君たちの旅がすばらしいものになりますように。次はフランスに来てね」
こっちが赤面する勢いでありがとうを連発し、最後に
「メルシーボクー」
と言って去って行った。
おっちゃんが無事に駅まで辿り着いてくれたことを祈る。
日本びいき…と言っていいのか分からないけれど、熱烈に感謝されて非常にこそばゆかった。
細細した和みは他にも色々あったんだけれど、私的最大のなごなごは、フィレンツェからローマに向かう電車の中。
今回の旅はヨーロッパでの移動は全部鉄道移動だったわけだけども、ちょっと奮発というか、色々事情があってユーレイルパスの一等を使っていた。
一等車両なので静かなんだけど、結構その…まあセレブな方とかビジネスマンが多くて、気楽さでは二等の方が断然上だったりする。
フィレンツェ→ローマ区間では、4人がけのボックス席の廊下側の二席、向かい合う形での席が我々の席だった。
ネットで予約したため席が選べず、そういう席になったんだけど、その窓側二席には先客が有った。
お母さんと娘の二人だったけど、お母さんは私らを見るとちょっと眉をしかめた。
たぶん、せっかく娘と二人のボックス席でのんびりできたのに、
よりによって言葉の通じなさそうな東洋人が来ちゃったわ、ってとこだったんだと思う。
(その席は、他の席との間がパネルで仕切られて、ちょっとしたコンパートメントになってた)
で、なんとなく申し訳なく思いつつ、かといって全席指定の列車じゃ
勝手に席を替わるわけにも行かないし、とりあえずそこに座った。
ちなみに、車内で車掌さんに交渉すれば席の変更は可能だったりするけど、ここで変更してくれって言うのも
「あんたたちとは一緒に居たくない」
って言ってるみたいだし。
列車が走り出して、シーンとなった車内でお母さんは、ipodを装着して寝始めた。
(列車内で寝るのは無用心といわれるけど、特急列車の一等になると結構寝てる人はいる。)
娘さんは鞄から落書き帳を引っ張り出して、何かをぐりぐり書き始めた。
年齢は、恐らく10歳前後。
外国人の年は良くわからん。
そこで、ふと娘さんのペンケースに目が行った。
ハム太郎だった。
ふと娘さんの耳元に目が行った。
キティちゃんのイヤリングが揺れていた。
おおお!と思って、こそーっと娘さんをよくよく見ると、トレーナーから鞄から、全部キティちゃんだった。
キティちゃんってマジで外国で人気あるのか…と思って見てたけど、まああまりジロジロ見るのも…
と言うことで、娘さん観察はその辺で止めて、こっちも暇つぶしにうつることにした。
とは言っても、おしゃべりするには車内が静か過ぎるし、かといって日本のように携帯でネットというのも不可。
読書は、本が重いから一冊しか持ってないし、スーツケースの中。
結果として、私は折り紙で薔薇を折る自己最短記録更新を目指すことにした。
なぜ薔薇かとか、最短記録ってなんだよとか突っ込んだら負け。
友人に時計役を頼み、折り始めた。
隣にお母さんが寝ているので、できる限り音を立てないように、しかし素早く!!
ものすごい集中して、ようやく形になり始めてきた時、
ふと顔をあげると娘さんが、ものすごく目を見開いて身を乗り出していた。
目が合ったので笑うと、ぴゃっ!て感じで席に座りなおして、でもやっぱりじーーーーっと手元を凝視。
これは是が非でも美しく完成させねばならない、と奮起して、残りの行程を一気に折りあげた。
タイムは15分ジャスト。
音を立てないように折っていたので、かなりタイムロスが出た。
けれどその分、織り目はキッチリそろって、なかなかいい出来だった。
娘さんは、もうなんというか、キラキラオーラを撒き散らしながら
薔薇を見ていてくれたので、どうぞと差し出した。
ちょっときょとんとして、自分を指差して
「いいの?私に?」
って感じで何度も薔薇を私を見た。
それが可愛いのなんのって!
いいよいいよー。貰って。と言うと、娘さんはぱぁああああああっ!って感じの笑顔になって、
お母さんの服を引っ張り始めた。
「もう何よ…静かにしてなさい」
って感じのお母さんに、娘さんは薔薇を差し出して
「貰ったの!これ貰ったの!」
と、興奮気味に報告。
ちょっと不機嫌そうだったお母さんは、薔薇を見て
「あら綺麗!!薔薇かしら?」
と笑顔に。
私に向かって、ありがとうと笑顔で言ってくれた。
あまり綺麗な紙じゃなくてごめんなさい、と言うと、そんなこと気にしないで、と笑われた。
追記:当方ちょっとだけイタリア語分かります。
母子との会話は、イタリア語と英語の混じった謎言語で行なわれました。
薔薇にすごく喜んでくれた娘さんは、ご機嫌に絵を描きはじめた。
その横で友人も、鞄からスケッチブックを取り出して、イラストを描き始めた。
ちなみに友人は同人屋で、かなり絵が上手い。
娘さんは手を止めて、友人の手元を凝視。
友人は
「羞恥プレイだ…かなり羞恥プレイ…」
とつぶやきつつ、
フィレンツェで目撃した憲兵さんをザカザカ完成させた。
一発ペン書きスケッチなので、本人いわく忘れないためのメモ程度らしいけど、娘さんは友人に引っ付きそうなほど近寄って、そのイラストを見ていた。
あまりにもキラキラした目で見つめられて、友人は何かスイッチが入ったらしく、ページを破って娘さんに渡した。
娘さんは物凄く可愛い笑顔になって、やっぱりお母さんを起こしにかかった。
今度はしかめっ面じゃなく目覚めたお母さんは、娘さんが見せた絵を見て、これはあなたが?と友人に問いかけ、友人が頷くと、素敵な絵をありがとうと言ってくれた。
そこで、私が試しに
「どうせなら彼女の似顔絵でも描いて上げればよかったのにー。
っていうか描け。可及的速やかに、ローマにつくまでに」
といってみると、友人は
「それマジでどんな羞恥プレイ!?このどS!」
と罵りながらも、
いそいそ描き始めた。
私がどSなら、奴はどMだ。
ザカザカとペンを走らせる友人に、今度はお母さんも一緒になって注目。
友人は恥かしい、死ぬ、恥かしすぎるといいつつも、結構本気で描いていた。
でも時間も無いし、下絵も簡単にしただけだから、多分15分くらいで描きあがったと思う。
水彩色鉛筆があれば色もつけられたんだけど…と口惜しげに言いつつ、友人は絵を娘さんに渡した。
彼女はあなたを描いたんだけど、似てると思う?と聞いてみると、娘さんは
「ええっ!」
とびっくりして、友人の顔を絵を見比べて、
「ほんとに!?これほんとにわたし!すっごく可愛い!ねえママ、これ私だって!!」
というような感じのことを、興奮しつつお母さんにまくし立ててた。
お母さんも、最初のしかめ面なんて想像出来ない笑顔になって、本物よりかわいいんじゃない?とか、
本当に上手だわ、とか言いながら、友人に何度もお礼を言っていた。
けれど、そのままじゃ何となく寂しい気がしたので、娘さんに
「お名前はなんですか?」
と聞いてみた。
敬語で聞いたので、最初「?」って感じだったけど、もう一回聞くと照れながら名前を教えてくれた。
スペルが分からなかったので紙に書いてもらい、絵をいったん返してもらった。
友人が筆記体で彼女の名前をイラストに書き加え、
友人のサインと日付をいれて、もう一回彼女に手渡した。
娘さんは何度も何度も友人に
「ありがとう、すごいね、とっても絵が上手!」
と繰り返し、友人は照れつつも笑っていた。
その後、すぐにローマについてゆっくり話せなかったけど、下りる前、お母さんから、
「沢山のプレゼントを本当にありがとう。いい旅になることを祈っています」
という言葉を、とびっきりの笑顔付きで貰った。
ちなみに、その母子もローマ下車だったんだけど、下車前の慌しさと下りてからの人ごみで、ちゃんとさよならはいえなかった。
バスツアーも楽で良いんだけど、こういう出会いがあるのは個人旅行の特権だとしみじみ感じた。
あの絵と折り紙が、あの子にとって良い思い出になればいいなーと、
臭い台詞を吐いて報告終了といたします。
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