ほっこりする話 短編5話【15】
母親の匂い
先日、母の日に実家に帰ったとき、ジョイントを持って行った。
兄に子供が生まれた関係で家は禁煙になっていて、俺の部屋も物置き状態。
母親の隣で寝る事になったんだけど、何か気恥ずかしくて、
母親が寝静まるまで、散歩したり、旧友と会ったりして過ごした。
夜の2時にベランダで一服して、布団の中に入った瞬間母親の匂いがして、
忘れてた記憶がどんどん蘇ってきた。
引っ越す前の家で、俺もまだ小さくて、自分の部屋が貰えなかった頃。
隣に寝ているお母さん、反対側にタンス、タンスにはやたらとシールが貼ってあって、
その上に象のぬいぐるみ、枕元は・・・
20年以上前の記憶が、母親の匂いに乗ってどんどん出てきて布団の中でばれない様に泣いた。
お母さんいつもありがとう。
長生きしてください。
お母さんのメモ
海の学習という名前で学年全体で泊りがけでの研修のあった5年生。
雨女の私が出かけると必ず雨。
今までの遠足も雨が多かったからそんなにがっかりすることもだんだんなくなってた。
ただ海の学習だから海でボートに乗ったりできるのが楽しみだったのに。
本当なら外のお日様の下で食べられるはずだったお弁当。
かわいそうに。
せっかくお母さんが作ってくれてみんなで外で気持ちよく楽しくワイワイ食べたかったのになー。
雨だから研修所の宿泊大部屋でみんな自分のお弁当をとりだした。
あれ?包みの中にお母さん、何か入れてる??
「○○ちゃん、楽しみにしていた海の学習の日がきたね。たくさんのお友達と一緒にお弁当を食べてね」
メモがでてきた。
3人年子の兄弟の真ん中の私。
いつも子育てに仕事に忙しかったお母さんはそれでも家事の手抜きはなかった。
それでも中子の私はあまり母にはかまってもらえてなかった。
それもあまり気にならなかったし。
お母さん大好きだから。
そこにこのメモ。
読みながら涙がブワーっとでてきた。
どんなおかずがはいってたか記憶にない。
自分の涙でしょっぱかったことは覚えてるのに。
そのメモ、お母さんに見られないように20年たった今でも隠してもってる。
1万人に1人
母は元々体が弱く月1回定期検診を受けていた。
そこで私が出来たことも発覚したらしい。
母の体が弱いせいか私は本来赤ちゃんがいなくてはいけないところにいなくて危ない状態だったらしい。
当時の医療では1万人に1人しか助からないと言われ母子共に命の危険があり、もし生まれたとしても障害が残るかもしれないと言われた。
でも父が一生懸命お医者さんに頼み母も3ヶ月前から入院して体が弱いのに頑張って私を産んでくれた。
だから私は無事に生まれることが出来た。
当時幼稚園だった姉も寂しいのを我慢して祖母の家で私が生まれるのを楽しみにしてくれた。
私は3人から溢れでそうなくらい愛情を貰って生まれることができた。
今は凄く幸せだ!
お父さん、お母さん、お姉ちゃん…ありがとう
神様…
ありがとう私は皆から貰ったこの命を大切にします。
母のおにぎり
おととしの、秋の話しです。
私が小学校5年の時に家をでて、居場所のわからなかった母に、祖母の葬式の時、23年振りで、顔をあわせました。
その時、母の家に遊びに行く約束をしました。
その日は、私が料理を作りました。
ハンバーグと肉じゃがと、簡単なサラダです。
2人で食事をして、お酒を飲んで、はじめはあたりさわりのない話しをしてましたが、だんだん、「何故いなくなったのか?」という話しになりました。
母はたんたんと話します。
私も、母がつらくならないように、途中、冗談を入れながら、聞きました。
帰る時、「今日はおかあちゃん、なんもできひんかってごめんな。」と、
言ったので、私は「ほな、残ったごはんで、おにぎり作って」と言いました。
母は、「そんなんで、ええんか」と笑いながら作ってくれました。
帰り、駅からタクシーに乗りました。
今日のことを思い出しているうちに、不覚にも涙がててきました。
運転手さんがびっくりして、「気分悪いんか?」と聞かはりました。
私は、「いえ、なんか、嬉しくって、泣けてきちゃったんです」と、
泣き笑いしながら、運転手さんに、今日の事を短く話しました。
すると、運転手さんも一緒に泣き出してしまいました。
「よかったな、よかったな」と鼻水まですすってました。
家に持って帰ってきたおにぎりは、冷凍庫にいれて、元気のない日に、1コづつ、大事に大事に、食べました。
お母さん「おはよう」
俺ニートだからいつも昼過ぎまで寝てるんだけど、たまに朝早く目が覚めることがあってさ
ぼーっとしてたら母さんが部屋に入ってきて「おはよう」って言ってたのね
「おはよう」って返事したら、俺が起きてる事に気付いてなかったみたいで母さん驚いてた
そんな事が何回かあって、母さんは俺が寝てるのを知ってて、毎朝返事のない「おはよう」を言ってくれてる事に気付いた
たいした事じゃないんだけど、なんか凄い嬉しかった
真面目に生きようと思った
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