– しみじみ - グッとくる話 短編10話【5】
妻に愛してるなんて言ったことがない
俺は結婚してから妻に愛してるなんて言ったことがない
プロポーズもしなかったし、自然に結婚していた
俺と同じ働き先の若い子に此処を聞いて、読んで改めて妻に伝えようと思った昨日
早めに退社して、ケーキ買っていこうと思ったが、参った
妻の好きなケーキが解らなかった
娘のはすぐに解ったのになぁ
慌て娘に電話したら、珍しがっていたが、妻の好きなケーキを教えてくれた
買って帰ったら、妻は凄く喜んでくれた
どういう風のふきまわし、ってニコニコしながら
思えば仕事一筋で、残業続きでなかなか家に居れず、娘のことも嫁に任せっきりで
妻話を相槌か上の空でしか聞いてなかったのに
ずっとついて来てくれた妻はたった一つのケーキに喜んでくれて
自然に胸が熱くなって、言っていたよ
ありがとう
娘を24になる今まで一人で育ててきてくれたこと
家庭をしっかり支えてくれたこと
仕事一筋な俺を影で支えてくれたこと
見捨てないでくれたこと
涙が情けなくも出た
娘がビックリしてこっちを見ていたが、知らん
もうすぐ退職だが、これからは二人で歩もう
愛してる、結婚してくれてありがとう
妻もボロボロ泣いていた
初めて言ってくれた、って詰まる声で言っていた
娘もつられて泣きながら、家族全員しょっぱいケーキ食べた
此処を見ていなかったら、俺は大事なもん失うとこだった
ありがとう
これからは妻を娘を大事にする
もう一つのお仕事
業績不振で給料下がってカツカツに。。
最近まで入院してた嫁に働いてもらおうなんて選択肢はもちろんなく
でもついに年一回のお情けボーナスまで廃止に
だからダブルワークしようと仕事探してた
昨日テーブルに置き手紙が
「帰りません。。
夕方まで!○○にお仕事に行ってくるね。お昼は冷蔵庫にあるよ。
あなたのもう一つのお仕事はゴロゴロすることです。」
って。
ダブルワークしようとしてるの知って、俺が仕事決める前に自分が決めようとこっそり職探してたらしい
お金より俺の身体が心配だって。自分こそ身体弱いくせに。
ありがとう。
人生は悪くないと思う瞬間
同じアパートの主婦(?)が料理持ってきて
この間のお礼だって
難儀そうだったんで三階まで荷物運ぶの手伝っただけだったし
去年の話でオレ 忘れてた
煮物 唐揚げ まだ温かいグラタン
独りで食べるのはかわりないけど
ありがとう ごちそうさま
美味かったです
誰かがやらなきゃいけない仕事
大雨を避けて入ったドトールで。30代前半のサラリーマン二人。
「子供がさ、「パパ、バイバイまた来てね」って言うんだわorz」
「この仕事だと仕方ないよ。奥さん元同業者だし、うちよりマシだよ」
「同業者って言うか、思いっきり上官だしね」
「俺、お前のうちに遊びに行く時いまだに緊張するw内緒なw」
「いやチクるw」
「マジでやめてww。このワッフルやるからw」
「よし買収されたw」
「この台風でまたコショウ(?)掛かりそう」
「お前のとこ、福島から帰ってきたばかりなのにな」
「良いんだ。誰かがやらなきゃいけない仕事だから」
「パパ格好いい(裏声)」
「うちの子そんなん違うw」
多分、自衛官。やっぱり大変な仕事だよね。感謝しています。
九段下の辺りって、よく自衛官がいるなー。官舎か何かあるのかな?
父の靴を磨く
父親が休みの日は母親が玄関に父の革靴をずらっと並べて順番に磨いていく習慣があった。
靴墨の匂いが独特すぎてクサいと思ってたのに、
母を独占しながら幼稚園や友達のことを話したりできるのが嬉くていつも手伝っていた。
いつもピカピカの革靴で仕事に行く父のことが誇らしかった。
言われなくても靴を手入れする母は、父のことがとても好きなのだろうと思っていた。
私は愛し合ってる二人から生まれた子だと無意識に感じていた。
母は今でも父の靴を磨く。
母親が父親のために何かをしてるって姿って子どもに良い影響を与えるんじゃないかなーと思ったので書いてみた。
もちろん父親が母親のために何かをする姿も。
父親を待ってる
昨日の夜
駅に母子が立っていて、娘が『パパー!パパー!』と叫んでる
どうやら、父親を待ってるみたいだ
5分ほど叫んだ後に父親登場
『あっ、パパきたー!』と大騒ぎして、クルクル回ってた
父親に抱き上げられると、ほっぺにおかえりなさいとチュー
3人で仲良く帰っていったが、すごく幸せそうだった
なぜか見ていた俺が泣いてしまう始末
息子にメイクしてもらう
私オカマなのね
そのことで父親と何度も口論して、でもいつも母だけは私の見方でいてくれた
ちょっと抜けてて、世間に疎くて、でもとても優しくて私の自慢のお母さん
お母さんは見た目なんてどうだっていいのよ~なんていっていつも私がもらった試供品なんかで化粧してたの
このあいだ久しぶりに二人で買い物に行くときに、母にメイクしてあげたら
「息子にメイクしてもらうなんて変な気分ね~」って笑ってた
でもできあがりをみて「すごいわね~○○(私の名前)はお母さんよりずーっと女らしいわ」って喜んでくれた
ご近所さんとかから私のことでいろいろ言われてるだろうに、いつも明るくて気丈な母。
お母さん、私はあなたの子供に生まれて本当によかったよ。またメイクしてあげるね。
なついている猫
事情があって数年行ってなかった祖父の家に行ってみた。
もう祖父はいない家に猫だけがいて、みーんな俺のこと覚えてるらしい。
ハラ減ってるだけかも、と思って猫缶開けて食わせて、満足しても俺のそばから離れない。
本当に覚えてる?と思い始めたら、一番の年寄猫がついてこいと言わんばかりにチラチラ振り返りつつ風呂場に向かった。
風呂場で洗面器見て、まだ一緒に住んでた頃、洗面器に水入れてふたりきりになって水飲ませてたことを思い出した。
他の奴より臆病でなかなかゆっくり水を飲めないから。俺がいないときは我慢して皆と水飲んでた。
帰りがけに猫の世話してくれてる叔母の家寄って、「あいつメシ食った後、風呂場行く?」って聞いたら、そんなの見たことないって。
やっぱり俺にだけしかしないのか、と思ったら不覚にも涙ぐんだ。
一生懸命洗面器で水飲む横にしゃがんで、ゆっくり飲めよーって待ってて、あいつが満足すると顔上げて俺のこと、じーって見て勿論何も言わないんだけど。
そういう光景思い出したら何か泣きそう。
猫なんて何も考えてねーよwって言われるだろうけど、でも俺はそう思わないからいいや
ちょっとだけ前向きになれた
すごく悲しいことがあった。
でも悲しさをすこしでも紛らわそうと仕事に打ち込んでたら、
何か察したのか偶然か、上司が急にうなぎをおごってくれた。
うなぎ嫌いだったけど誘われたことが嬉しくてなんとか食べに行って
そしたらそのうなぎが本当においしかった。楽しかった。
今日は他にも、もう会えないかなあと思っていたお客様がまた来てくれたり。
悲しさは消えないけど
生きてればこうやってどんどん嬉しいことがあるんだなって
なんかちょっとだけ前向きになれた。がんばる。
図書館で借りてきた本に手紙が
この流れで思い出したけど、中学生の頃に図書館で借りてきた本に、前の人が挟んだらしき手紙が入ってた。
住所が書いてあったから封筒に入れて、書いた人らしき人に送ったら、後日とても丁寧なお礼状と図書券が届いた。
手紙の宛先の人からだった。
内容は、「息子からの手紙を届けてくれてありがとう」というもの。
どうも前の借り主が、闘病中に両親に宛てて書いた手紙を投函せずに挟みっぱなしにして亡くなったらしく、
死後しばらくして見ず知らずの他人から息子の書いた手紙が送られてきたので、
親御さんは天国の息子から手紙が届いたような気持ちになったんだそうだ。
まあ、不思議でもなんでもない話かもしれないけど、図書館の本にも色々なドラマが挟まってるということで。
お礼状を読んで号泣しましたよ。
その後お返事を書いて、もう1通お手紙を頂いたんですが、その手紙には
「本と絵が大好きな優しい息子でした。あなたもたくさん本を読んで立派な大人になってね」
みたいなことが書かれていて、ちっとも立派な大人になってないのですが、
少しの手間を面倒がらずに他人様のために手や身体を動かすように心がけるようになったのは、
あの経験があったからこそかもしれません。
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