『母さんの好きな芋ようかん』など短編5話【49】 – 感動する話・泣ける話まとめ

『母さんの好きな芋ようかん』など短編5話【49】 - 感動する話・泣ける話まとめ 感動

 

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感動する話・泣ける話まとめ 短編5話【49】

 

 

母さんの好きな芋ようかん

最近はずっと起きてる。なるべく寝ないようにしてる。
寝ても二、三時間くらい。
後、俺の家族に残された一ヶ月って時間を、出来るだけ記憶に留めておきたかったんだ。
寝てしまうその時間すらも惜しいんだよ。

俺に何か出来ないか、俺に何か出来ないか、そればっか考えてる。
残念な事に、俺には何も出来ないんだよ。病気の進行は容赦ない。
母さんをすぐに蝕んでいくんだ。薬の副作用で母さんの顔がむくんで、髪がボロボロ抜け落ちていった時に、
「アハハ、お母さんブサイクになっちゃったわねぇ~!!」
って、母さんは元気いっぱいに俺に言ったんだ。

俺が病室を出ると、母さんの泣き声が漏れてきた。
俺は病院の廊下で恥ずかしながら泣いたよ。
俺の前では元気いっぱいに振舞っていたのは親心なんだって気付いたよ。
母さん、俺バカでごめん。

だから、俺が出来る事って稚拙だけど、母さんの好きな芋ようかんを買っていってやったんだよ。
俺はたまに買って行ってやるんだ。
母さんが病気になる前から、給料入ったらお土産で買ってくのね。
はしゃいで、顔をくしゃくしゃにして喜んで…食べながら泣いて…

日常ってとても素晴らしいものだね。些細なことでもキラキラしている。
芋ようかんですら愛しくて、ありがたくて、
涙が出てしまうくらいのものだよ。

俺はきっとこれから、いつもの芋ようかんを買う和菓子屋を通る度に その日常を思い出して、泣いて、
「ありがとう」って感謝するんだろうね。
本当は眩しいくらいのものなんだよ、日常って。
絶対に家族ってとてもとても眩しいものなんだよ。

だから、恥ずかしくても自分の家族にありがとうって言ってやってくれ。
暖かくてキラキラしててかけがえのないもの。
俺の中では永遠に生き続けるもの。

母さんありがとう。

 

 

仲が悪いのだと思っていた

両親は、仲が悪いのだと思っていた。
冷たく見えるぐらい素っ気なかったから。

両親の兄弟姉妹などから、幼なじみで大恋愛だったとか、周りの反対を押しきって結婚したんだとか聞かされても、到底信じられなかった。

母が子宮癌で手術を受けた。
手術の終わる時刻を見計らって病院へ行くと、父が母のベッドの傍に座り、好きな歴史小説を読んでいた。
麻酔から覚醒したのか、母が痛い痛いと呻きだした。

父は即座に小説を閉じ、母の右手を両手で包み込んだ。

『ユミ、大丈夫だよユミ…』
まだ意識が戻りきっていないながらも、父の声に母が反応して答えた。
「タカちゃん…痛いよ…タカちゃん…」

父と母が名前で呼び合うのを聞いたのは、それが初めてで、最後だった。

母の通夜の後、棺の中の母の頬を何度も何度も父は撫でていた。
黙って撫でていた。

 

母親を守れるくらい強くなりたい

半年ほど前に、「強くなりたい」と自分から入部してきた子。
はっきりいって運動神経もなく、体もひ弱です。

あまりここに書くのもはばかられるのかもしれないんですが、
めちゃくちゃ切ない過去を持つ子供なんです。
なんでも、父親に虐待されて、母親と一緒に実家に逃げてきたとか。
母親が殴られて泣かされるところを、何度も見てきたそうなんです。

それで、「母親を守れるくらい強くなりたい」と。
自分の足で相撲道場をしらべてやってきたそうです。
こんな子供が、本当にいるとは・・・・。
家庭環境の話など、聞いていて目頭が熱くなりました。

稽古は、驚くほど真剣に取り組みます。
一度でも倒されると、「もういっちょお願いします!」と立ち上がる。
おでこから血が流れても、かまわず必死にぶつかる。
申しあいの時も、積極的に前にでて取り組みます。
ゲロを吐いて、「少し休め」といっても、「まだまだ!」といって稽古を続ける。

泣きそうになるのを奥歯をかみ締めて我慢している姿を見ると、
「絶対強くしてあげたい」と思うようになります。
ただ、体格が悪いのと、ちょっと気が弱いため、まだまだ勝てるレベルには到達していませんが。
しかし、必死に稽古を頑張っている姿は、周りの子供にも少しずつ影響を与えはじめています。

家でも努力しているようで、毎日四股腰割りを100回以上するそうです。
股割がだんだんとできるようになってきました。
しかも、家ではお母さんのために皿洗いをしたり、肩をもんであげたりするようです。
まさかこんな子が現代にいるとは・・。

この子の成長が楽しみです。

 

 

忘れてた記憶

先日、母の日に実家に帰ったとき、ジョイントを持って行った。
兄に子供が生まれた関係で家は禁煙になっていて、俺の部屋も物置き状態。

母親の隣で寝る事になったんだけど、何か気恥ずかしくて、
母親が寝静まるまで、散歩したり、旧友と会ったりして過ごした。

夜の2時にベランダで一服して、布団の中に入った瞬間母親の匂いがして、
忘れてた記憶がどんどん蘇ってきた。

引っ越す前の家で、俺もまだ小さくて、自分の部屋が貰えなかった頃。
隣に寝ているお母さん、反対側にタンス、タンスにはやたらとシールが貼ってあって、
その上に象のぬいぐるみ、枕元は・・・
20年以上前の記憶が、母親の匂いに乗ってどんどん出てきて布団の中でばれない様に泣いた。

お母さんいつもありがとう。
長生きしてください。

 

 

お母さんのメモ

海の学習という名前で学年全体で泊りがけでの研修のあった5年生。
雨女の私が出かけると必ず雨。
今までの遠足も雨が多かったからそんなにがっかりすることもだんだんなくなってた。
ただ海の学習だから海でボートに乗ったりできるのが楽しみだったのに。

本当なら外のお日様の下で食べられるはずだったお弁当。
かわいそうに。
せっかくお母さんが作ってくれてみんなで外で気持ちよく楽しくワイワイ食べたかったのになー。
雨だから研修所の宿泊大部屋でみんな自分のお弁当をとりだした。

あれ?包みの中にお母さん、何か入れてる??

「○○ちゃん、楽しみにしていた海の学習の日がきたね。
たくさんのお友達と一緒にお弁当を食べてね」

メモがでてきた。

3人年子の兄弟の真ん中の私。
いつも子育てに仕事に忙しかったお母さんはそれでも家事の手抜きはなかった。
それでも中子の私はあまり母にはかまってもらえてなかった。
それもあまり気にならなかったし。
お母さん大好きだから。

そこにこのメモ。
読みながら涙がブワーっとでてきた。

どんなおかずがはいってたか記憶にない。
自分の涙でしょっぱかったことは覚えてるのに。
そのメモ、お母さんに見られないように20年たった今でも隠してもってる。

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