『さす方角』『見ている』など短編 – 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】

『さす方角』『見ている』など短編 - 全5話|洒落怖名作まとめ【短編集】 短編

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黒い天井

私の友達の話です。

あれは中学3年生の修学旅行の時の話です。 私達は仲のよい6人組で部屋にいました。 消灯時間が過ぎ、最初は他愛もない会話を楽しんでいました。

すると、そのうちの一人(Aと書きますね)のAが、『そういえばこの前金縛りにあってさあ?…』と、自分の体験談を話し始めました。

Aは霊感が少しあるらしく、小さい頃は本当にやばかったらしいです。 Aが話をしているうちに、私の隣にいたRがぶるぶると震え始めました。

普段のRからは想像も出来ないくらい脅え始めたんで、私は驚いて『大丈夫? どうしたの?』と聞きました。

するとRはいきなり

『嫌…嫌だこの部屋無理…無理…』

と言いました。 周りの子達も脅え始め、仕方ないので歌を歌いながら寝ようとしましたが、Rは脅える一方でした。 そしたらAがいきなり

『ここ…はじっこの天井だけやけに黒くない?』

と言いました。 私は目が暗いのに慣れてきてた上、比較的目がよかったのではっきり見えました。

やけにはじが黒い…。 いや、黒すぎる。 みんなに説明して、あの異常なまでの黒さは何故かと悩んでいたら、Rがいきなりその天井を指にさし、

『あ…あ…あーーーー!!』

と叫び、ばたんと死んだかのように寝始めました。 本人は覚えていなくて、次の日の天井は全然黒くなく、染み1つもありませんでした。

 

 

老人の復讐

2年前、とある特別養護老人ホームで介護職として働いていた時の話です。

そこの施設ははっきり言って最悪でした。

何が最悪かと言うと、老人を人として扱わず、物のように扱う職員ばかりで、食事も薬とかおかずをご飯にまぜたり、入浴は水のようなお風呂で、乱暴な介護で抑制も日常茶飯事でした。

職員の給料とか待遇はよかったんですが、あまりにもひどい老人への対応の仕方に、心ある人は我慢できずやめていく人も多かったです。

そのため毎日のように人はいなく、職員全員がいらいらしてる状態で、ひどい職員はそのストレス発散を老人にして怒鳴ったりすることもたびたびありました。

その酷い職員の中でも特に酷い職員がいまして、老人に暴力を振るっていました。

Aと呼ぶことにします。

Aの暴力はいつも酷くて、顔以外の場所を叩いたり蹴るなど。

Aは元ヤクザをやってた人で、みんな見てみぬふりで、暴力によって怪我をしてもうまく隠蔽されました。
俺もAが怖く注意できず、今思えば情けない話です…orz

Aの暴力する老人の対象は、認知症や言語障害でしゃべれない人でした。

その中で言語障害のBさんは、Aにされた暴力の内容を日記に書いてました。

そして、その日記を別の職員に見せて助けを求めるも無視され、Bさんは身内の人もいなく、4人部屋でも周りの老人は認知症が酷く自分がわからない状態で、AにとってBさんは最高のカモだったのです。

そんなある日、早朝Bさんは急変して病院に行くも亡くなられました。

Bさんが亡くなった夜に、Aは急な心筋梗塞にて亡くなりました。
まるであとを追うように……。

次の日、Bさんのベットを片付けていた時に、本当はいけないことなんですがBさんの日記を見させてもらいました。

Aに対しての暴力の内容や怒りが書かれてました。

Bさんが亡くなる前の夜に書かれた最後の日記を見て、ぞっとしました。

「あいつを地獄につれていく」

その後、すぐ職場をやめて違う仕事に転職しました。

転職してから一ヶ月後、交通事故に合いました。全治三ヶ月。

もしかして日記の内容を見て呪われてしまったのではないかと思ってしまうこともありますが、これは偶然であると自分に言い聞かしてます。

最近ですけど怖い夢を見ました。
地獄みたいなところで、Bさんが笑いながらAを木刀のようなもので殴っている夢を…。

まあ、大丈夫とは思いますけど、これを見てもし何か災いが起きたらすみません。

投身自殺

ある日、女子高生のA子さんが学校帰りに駅で列車を待っていると、反対側のホームに同じ学校の制服を着た子がいるのに気づいた。

それは同じクラスのB子さんだった。
確か、その日のB子さんは体調が悪いとかで学校を休んでいたはずだった。

よく見ると、うつろな表情でぼんやりとしており、こちらに気づいた様子も無い。

A子さんは、B子さんとさほど親しいわけでは無かったが、学校を休んだ子が制服を着てぼんやりと立っているのはさすがに気になり、近寄って声をかけてみようと思った。

しかしその時、B子さんのいるホームに列車が入ってきた。

B子さんはその列車に乗るのだろうから、もう間に合わないとA子さんが思った、その瞬間!

うつろな表情のB子さんは、ホームに入ってきた列車に飛び込もうとした。

あっ! とA子さんが思った時には、すでにB子さんの足はホームから離れていた。

助けられるわけもないが、A子さんは思わず身を乗り出した。

と、その時。
A子さんはドン! と何かもの凄い力によって突き飛ばされた。

ただでさえホームの端で態勢を崩していたA子さんは、線路に向かって飛んでいった。

A子さんの目に飛び込んできたのは、猛スピードで向かってくる列車と、引きつった表情で急ブレーキをかけようとする運転手の姿だった。

……さて、問題となるのはここからである。

A子さんはあまりにも凄い力で飛ばされた為、列車の入ってきた線路を飛び越えて、向こう側の線路に落ちた為、列車にはぶつからなかった。
その為、肉体的な怪我は骨折だけで済み、命に別状は無かった。

駅員や警察の調べでは、「普通の女子高生が助走もつけずにこんなに飛べるわけが無い」との事で、誰かが彼女を押したに違いないのだが、調べた限りではそんな人物は見当たらない。

そして、A子さんが見たというB子さんの投身自殺。

これはそもそも、その時間、反対側のホームに入ってきた列車自体が存在しなかったという。

仮にそんな列車が入ってきていたのなら、反対側の線路に落ちたA子さんは、間違い無くその列車にぶつかっていたはずである。

A子さんはありもしない同級生の自殺の幻覚を見た後、何者かに突き飛ばされたという事になるが、実は、A子さんが線路に落ちたのと全く同じ時刻に、8つも離れた駅でB子さんが投身自殺をしていたというのだ。

つまりA子さんは、遠く離れた駅で起きた同級生の自殺を目の前で見たという事になる。

ちなみに、A子さんはあまりのショックで精神が不安定になり、精神科の病院に通っているという。
そして、その路線では現在も人身事故が絶えないという。

その大半がよくある投身自殺として片付けられているようだが……。

さす方角

そういえば以前住んでたところの近所で、ごくまれに顔が隠れるほど深く帽子をかぶったおじさんが立ってて、どこかの方角を指差したままじっとしてるんだよ。

そのおじさんは毎回違う場所に立ってるんだけど、指をさしてる方角を見ても特に何もない。

ある時期にだんだん会う回数が増えてさ、連日で遭遇するようになると、なんか怖くなって部屋に引きこもった。

で、その日チャイムが鳴ったんで、ドアの覗き穴から見たらさ……。

いたんだよ、そのおじさんが。
まっすぐ俺に指をさして……。

そのとき気付いたんだけど、指をさす方角って全部俺の家に向けられてたものだった。

見ている

すでに半年ちかく学校に行かず、家に引きこもり、登校拒否を続けている少年がいた。
その少年は、いじめを苦に学校へ行くのを恐がっていた。

家に引きこもる日が続くある日、同じ学校の友達が家に訪れてきた。
話を聞くと、いじめをしてきた人たちはみんな反省して学校で謝りたいと言っている。ということだった。

その夜、悩みに悩んだ末、少年は学校へ行くことを決意した。

朝がやってきた。
重い足どりで家をでた。

少年はマンションに住んでいて、エレベーターを使っている。
しかし少年にとってエレベーターまでがやけに遠く感じた。

ふっと、視線を感じたので辺りを見渡すと、マンションの屋上にきれいな女の人がこっちを見ていた。

その時は、『きれいな人だなぁ』としか思わなかったが、学校へ通い始めてから毎日、屋上からこっちを見ているので少年は自分に気があるのかと思い
その女の人に毎朝会えるから学校へ行くのが楽しみにもなっていた。

今朝も、いつもと同じく女の人はこっちを見ていた。

学校でも少年は気がつけば友達に自慢そうに話していた。
友達に『話しかけてみろよ!』と言われて、明日の朝話しかけることを約束した。

帰り道、自分のマンションに警察官がたくさん集まっていた。
少年が驚いて警察官に事情を聞こうとすると、警察官は察して向こうへ行ってしまった。

少年は何かあったことを一瞬で悟り、急いで家に帰り、母親に何があったのか問いただすと……母親は少し間をあけてから

『このマンションの屋上で女の人が首吊り自殺をしてたんだって』

少年の顔はみるみるうちに青ざめていった。

そう、毎朝こっちを見ていて自分に気があると思っていたその女性は、初めから死んでいた人だった。

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