焼肉
歯医者に行って麻酔を打ってもらった。
麻酔が切れるまで何も食べてはいけないと言われた。
飲みに誘われて、焼肉に行ったが自分一人だけ食べないのはいささか惨めだ。
一枚だけ食べてみた。何ともなかった。
もう大丈夫だろうと思いそのまま食べ続けた。
その中でどうしても噛み切れないのがあった。
5分後激痛が走った。
解説
肉の中で噛みきれないもの。
自分のタン(舌)。
親切な医者
脳死が確認されて二週間を経過した彼の皮膚細胞は、無数のチューブに繋がれ、人工呼吸器と点滴によって生き続けていた。
しかしそれも、昨日までの話。
彼は死んでしまった。
「すみません。手は尽くしたのですが…」
お医者さんはとても悲しそうな顔で告げた。
彼の亡きがらを抱いた時、とても軽くて、苦しかったんだと思う。
でも、もう苦しまなくていいんだよ?楽になれたね。
「………治療費は結構です」
決して裕福とは言えない私の状況を察してか、
なんて優しいお医者さんなのだろう。
私はすぐに泣いた。
「……遺体を見るのは辛いでしょう」
お医者さんがシーツを被せる。
「……思い出は彼と共に焼いて忘れなさい」
この一言で私は立ち直れた。
ありがとうございます。お医者様。
解説
軽くなっていた遺体=この医者は彼の臓器を売買していた。
だから医療費も取らず、早く火葬するのを勧めた。
息子に届いた手紙
精神病棟にいる母親から、息子に届いた手紙らしい。
↓
大介、イタリアの生活はどうですか。お母さんはフツウ。
守護神ジス様のおかげで、元気です。お医者をだまして何でも食べちゃう。
隣人達めケッコウ気さくでいい人ばかり。安心しれ。明日は仕事で、皆
船が来るて、喜んどる。毎日楽しいです。給料でるし飯も固くない。
ね、ね!!病棟生活だからって悪いことないわ、わりと私にはいい老後です。じゃね。
解説
縦読み
「介護人が、イジめる!タスケて!」
「はだしで フまれるわ」
「何日も私 食事ない」
水着の女の子
「んぁ? 誰だあれ?」
見ると一人のスクール水着姿の中学生くらいの女の子が、まるで俺達が来るのを待っていた様に
乗ってきたレンタカーのボンネットに腰掛けていた。
「…こんにちは。 これお兄さん達の車?」
「あぁ、借りた車だけど、そうだよ。キミは? 地元の子?」
コクッと頷いたかと思うと、同時にピョンッと車から飛び降りた彼女は、
俺達の顔を一人一人品定めでもする様に見上げて、俺達の間をねり歩きながらこう言った。
「あの…よかったらこの近くの駅まで乗せていって欲しいんだけど、駄目?」
「そうだなぁ、あと10年、いやあと5年経ったら是非にでもと言いたいところだけどさ…」
人一倍女好きの修平がそんな冗談を言いながら断ろうとしたので、俺はすかさず
「いや、困ってるみたいだし乗せていってあげようぜ。
駅の近くに行けばラーメン屋くらいあるだろうし、どうせついでだろ?」
と言って、その少女の願いを聞き入れようとした。
「駄目だ! おい、早く車を出すから、みんな急いで乗れ!」
突然、大きな声を出して仁が反対してきた。
やや青冷めた顔でその少女の方を見ながら俺達を車へと急かす。
「どうしたんだよ、突然。この辺は車も通らないだろうし、彼女もこんな格好で置いてけぼりじゃかわいそうだろ?」
そんな言葉にも聞く耳を持たず、仁は車にキーを挿しエンジンをかける。
「いいから…よし、全員乗ったか? 出すぞ」
遠ざかる車の中で、バックミラー越しに彼女の姿が見えたが、特に落ち込む様子もなく、
じっとこちらを見ている様に彼女は突っ立っていた。
「なぁ、どういうことだよ、説明してくれよ?」
「あっ、この4人の中でお前だけ彼女がいるからって、その彼女に義理立てて女は乗せないってか?」
「あんな子供だってのに、色男は何かと気を使って大変だなぁ、おい」
そうやって3人で茶化したものの、仁は訳を答えず、強くアクセルを踏み込んだ。
加速した車が、陽炎が揺らめくアスファルトの道を駆けていく。
解説
陽炎が出るほどの気温でボンネットの上に水着で座れるか?
この少女は人間ではない?
特別番組
お気に入りのドラマが今日放送されるのでTVをつけると違う内容だった。
しかし新聞のTV欄では間違いなくこのチャンネルなのに・・・・。
内容はホラードラマらしい番組を見ている女性のTV画面の前で殺人鬼が、ギロっとにらんでTV画面が砂嵐に、ところがTVを見ていた彼女の後ろから その殺人鬼が現れて彼女を惨殺してしまった・・・。
あまりのことに固まってしまった私の眼の目でTV画面の中の殺人鬼が、ギロっとにらんでTV画面が砂嵐になった・・・・。
解説
この語り手に同じことが起こっている。
コメント