山にまつわる怖い話【6】 全5話
こんにちは
ちょっと前に彼女と一緒に筑波山に登ったんだよね。
お互いに週末が休みじゃない仕事なんで「平日だからすいてていいね。」なんて話しながら登りはじめたんだけど
日頃の運動不足がたたって喋るのがきつくなり、そのうち二人とも話をしなくなってただ息を切らしながら淡々と登っていった。
俺が前を歩いて彼女が後ろからついてくるって感じで。
たしかに平日の山道はあまり人がいなかった。
結構早めの時間に登り始めたこともあって下りて来る人とはほとんどすれ違わなかった。
そんななかで一人同じ道を登っている登山者がいたんだよね。
大学生くらいの若い男の人で青いジャージに登山靴を履いて背中になんていうの、金属のフレームのついた大きなリュックみたいな奴を背負ってた。
その人の歩き方っていうか上り方が変わっててさ、ちょっと登ってはまた戻ってきたり、
わざわざ大きな岩によじ登ったり藪の中に入っていったり。
登山部で訓練でもしてるのかなーって思ってた。
その人が最初に俺たちを追い抜いていったときに小さな声で
「こんにちは。」って言うのよ。
山ですれ違うとみんな挨拶するでしょ。
それでオレも「こんにちは。」って挨拶をしてその変わった登り方をする人を後ろから見ていた。
その人は行ったりきたりしている割には歩くのが早くてすぐに見えなくなった。
俺たちは相変わらす黙ったまま必死になって登っていたんだけど
ふと耳元でまた
「こんにちは。」
って聞こえた。ちょっとドキッとしたんだがオレも
「こんにちは。」って挨拶し返してみると
先に登っていったはずのさっきのリュックを背負った人がまた追い越していくわけよ。
一瞬「同じ登山部の人かな」って思ったんだけどどう見ても同じ人。
ま、変な登り方をしていた人だったんで途中で道を外れていた時に俺たちが追い越したのかなと思い、その時はあまり気にせずにまたうしろ姿を見送った。
で見えなくなったとたんにまた
「こんにちは。」
今度はあせった。
わき道にそれていたとしてもちょっと考えられないくらいのタイミングでまた後ろから追い越していくんだよ。
ちょっとだけ怖くなって彼女のほうを振り向いてみたんだけど何も気にしてない様子で足元を見て息を切らしながら歩いている。
気味が悪くなりながらもまたその男のうしろ姿を見送りながらひたすら登り続けた。
ちょっと開けて休憩できるようになっているところに出たんでそこで座って休む事にした。
そこで彼女に言ってみたんだよ。
「大きなリュック背負った人いたじゃん、あれ何やってるんだろうねー。」
そしたら彼女は
「え、そんな人いた?さすが休日だから一人もいないなーって思いながら歩いていたんだよー。」
これ以上彼女に言えませんでした。
そのあと頂上につくまではもうあの男の人には会わずに、登頂してからもあまり長居せずにすぐにケーブルカーで下山しました。
全然幽霊っぽくなかったし普通の人に見えたんだけどな~・・・
真昼間だったし。
あの人はなんだったんだろう。
コハンバ
部のOBに聞いたんだけど、11月頃に部で所有している山小屋に一人で泊まった時、夜一人で寝てたら窓がガタガタ音を立てるんで目をやったら、髪の毛ボサボサの女が窓に貼りついてたそうだよ。
「なんだ・・・・コハンバか・・・・・」
ってまた眠っちゃったらしい。
何でコハンバなのか自分でもわからない。寝ぼけてたんだろうって言ってた。
でも、翌朝見てみたら窓の外の雪の上にちゃんと足跡が残ってて、何気なくその足跡をたどっていったら、途中からだんだん足跡が大きくなっていって、さすがの先輩も
「ヤバイかも・・・」
って思ってひき返したらしい。
来週、その山小屋の整備に行かないといけないので、その時は一人で寝てみようと思う。
公衆電話の怪
山というか林道での不思議な出来事…
10年前の夜、神奈川のヤビツ峠に車で行った。
走り屋さんだらけでちょっとした渋滞になってたんで、右脇にあった林道みたいなとこを走ることにした。
5分くらい砂利道を走るとオレンジ色の水銀灯の街灯が輝いてて、道がなくなっていた。
道の脇に、崩れた茅葺屋根のぼろぼろの民家があって、塩とかコドモわたとかのさび付いた看板が掛かってる。
古い自動販売機と真新しい緑の公衆電話がその前に。
喉が渇いてたので、蛾がたかってるその販売機でコーヒーを買った。
見たことのないメーカーで黄色と黄土色が波打ってるパッケージ。
そのとき、いきなり公衆電話が鳴り始めた。
そのとたん、街灯の明かりも、自販機の灯りも、公衆電話の灯りも消えおれは暗闇の中コーヒーを片手に立ち尽くしていた。
こんな誰も来ないような所にになぜ公衆電話が?どうして鳴ってる??
なんで林道に水銀灯が?そしてなぜ一斉に灯りが消える??
よく見ると電柱も何もない!!電気はどこから来てるんだ??
電話はまだ鳴りつづけていたが、びびった俺はそのまま車に乗り込み本道へ向ったが帰りの林道は、さっき走った砂利道とは思えないほど草が茂っていた。
後日、友人を誘ってもう1度その場所に行こうとしたが、どうしても見つからなかった。
当時の証拠はコーヒーの缶だけ、それも今はもうない。
雨の日に来る
ある雨の午後、不思議なものを見つけた。
それは仕事で移動する時に使う、ちょっとした抜け道のような山あいの道だった。
ときどき通るその道は、幹線道路の渋滞を避ける峠道につながる寂しい道。
走行中にふと右側の路肩を見ると子供用のプラスチック椅子に座ったクマのぬいぐるみが見えた。
道路と平行してぬいぐるみの横に小さなテーブルがひとつ。
そしてそのテーブルを挟むように大人も座れるレジャー用の椅子が道路に向かって置いてあった。
最初は子供がオママゴトに使ったものかと思った。
しかし、その場所の近くには民家などなく、道路ギリギリに置かれた椅子も不自然に思えた。
数日後にその道を通った時には椅子もヌイグルミもなく、その事も記憶の中に埋もれてしまった。
何回かその道を利用し、数週間経った雨の朝、また同じ場所で椅子とテーブルとぬいぐるみを見た。
あいかわらずクマのぬいぐるみは、雨に濡れ虚空を見つめていた。
誰がなんの為に・・と思ったと同時に妙な胸騒ぎがした。
だがその時はその胸騒ぎがなんなのかわからないままであった。
その日からその場所が気になるようになったが、その後はそのテーブルセットもぬいぐるみも現れなかった。
誰がなんのために?その道を通るたびにその疑問は膨れ上がっていった。
子供の仕業にしては場所が変である。テーブルセットの奥は木が生い茂る山だった。
物売りのあとだろうか?結局答えは出ないまま日にちだけが過ぎた。
そして先日、雪が降った日はたまたま仕事の関係でその道を通ったのが夜も更けてからになってしまった。
それまではなんとも思わなかったその道が妙に不気味に思えた。
例の場所に近づくにつれその不安は大きくなり自分が動揺しているのがわかった。
そして暗闇のハイビームの中に浮かんだのは降りしきる雪の中のテーブルセット・・そしてぬいぐるみ。
路面には雪が積っていたが反射的に強めにブレーキを踏んでしまった。
ABSが作動するのがブレーキペダルを通じ脚に伝わってきた。
ぬいぐるみの真横で停まりウインドウ越しに様子をうかがった。
テーブル、椅子そしてぬいぐるみにも雪が積っていた。
路面を見るが足跡らしきものはない。
雪が降る前に置き去ったのだろうか?何の為に?
不安ではなく自分の中に恐怖がひろがっていくのがわかった。
理由のないの恐怖・・生理的嫌悪感というものだろうか。
奥の山より誰かがこちらをうかがっているような気がする。
逃げるようにその場をあとにした。
翌々日に通った時にはかすかに残った雪の中にテーブルと椅子の脚の跡だけが残り、
足跡のようなものは確認できなかった。
そしてこの間の雨の午後・・
またそこにそれはあった・・
あいかわらずクマのぬいぐるみは虚空を見つめ、主のいない椅子もそこに・・
そして確信した・・その【何か】は雨の日を選びそこに来ているのだ。
実際の話なんでそんなドラマチックには・・
でも雨の日にそこ通るのマジでコエーよ
脇道
仕事で県南の町へ行った。
少し時間があったので、近くの神社を散策してみた。
神社の裏に山があり、頂上まで鳥居と石段が続いていた。
あそこに行けば町が見渡せるな と思い何気に登ってみた。
小さな祠にお稲荷さんがまつってあった。
そろそろ降りようかと ふと脇道があるのに気がついた。
ここを下れば近道かも、と1歩踏み入れたとたんに何かの気配が体を包み込んだ。
やばい、これ以上進んではいけない・・。
ものすごい寒気を覚え、石段を振り向かず走って降りた。
なにか得体の知れない気配の塊があったように思う。
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