『炎と氷』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

『炎と氷』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】 祟られ屋シリーズ

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『炎と氷』

903 炎と氷 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/23(金) 05:19:05 ID:kXMhFsZQ0

 

今夜は、以前書くと言った、マサさんの元で行った「修行」の話。
「傷」の話を投稿した後すぐに書いたのだけれど、俺の文章力の問題で余りに長すぎたのでUPしなかった。
内容も少々問題があるし・・・
4月から10月の終わりまで手元にPCやネットのできる環境がなかったので放置してました。
かなり削って修正したけど、それでもかなりの分量になってしまったので2部に分けました。
毎度の事ながら突っ込み無用と言う事で。

話はマサさんの「結界の地」にいた頃に戻る。
マサさんの所に着いた晩から俺達は毎晩のように「霊現象」に悩まされていた。
日没を過ぎるとざわざわした気配と「声」が聞こえてくるのだ。
何を話しているのかは判らない。
夜が更けてくるにつれて気配はだんだんとはっきりしてきて、やがては肉眼でも見えるようになってくる。
それは、壁を這う黒い虫のように見える時もあれば、透明な靄の様に見えることもある。
3時頃をピークに増え続け、部屋を埋め尽くすのだ。
部屋を埋め尽くす「蟲」は俺達の体を這い回り、皮膚の下に
潜り込んで、シャリシャリ、プチプチ音を立てて俺達の肉を貪る。
むず痒いが痛みはない。
絶対に見るなと言われていたし、恐怖の為に固く目を閉じていた。
自分の体が食い尽くされ、骨にされたと感じた時に夜が明けて蟲どもは消えてゆく。
日の光に晒されて、やっと安心して俺達は眠る事が出来た。

そんな恐怖の夜は俺達を急速に消耗させた。
しかし、短期間でカタが着くはずの除霊は予想に反して長期化した。
俺達は呪いの井戸に精気を吸い取られ続けられていた。
このままだと「抵抗力」を持たない俺達の方が生霊の主よりも先にアウトだ。
マサさんが依頼者に修行を施す事は基本的にない。
危険を伴うし、「異界」を覗き、足を踏み入れた者は二度と元には戻れないからだ。
しかし、俺とPの消耗具合から、修行を施すにもタイムリミットが近かった。
マサさんは俺達に選択を迫った。
このままだと俺達は持って1週間。
それまでに除霊が完了すれば良いが、それは望み薄である。
このままだと井戸に飲み込まれるか、結界から出て取り殺されるかしかなくなる。
この地に留まって除霊の完了を待つには、俺達に修行を施して抵抗力を持たせる必要がある。
しかし、一度修行を行えば、一生こういった霊的トラブルから逃れられない体になる。
どうするか、と。
その時の俺達に選択の余地はなかった。
俺達は「修行」を選んだ。

修行の第一段階として、俺達は呼吸法をレクチャーされ徹底的に反復させられた。
詳細は省くが、第1は「ゆったりとした呼吸法」。
ひたすらゆっくりと、「頭の天辺から背骨を通して息を吸い、尾?に貯めて息を止め、背骨を通して頭の天辺から息を吐く」というもの。
吸気・停止・呼気をそれぞれ同じ時間掛けて行う。
通常は各1分間で一息3分間、10息が出来るようになるまでこれだけを続ける。
熟練者、例えばキムさんはこれを各2分間で5息行えるらしい。
尾?骨に精神集中し、決められたイメージを描き続ける事が必要だが、呼吸の苦しみでイメージを保つ事は極めて困難である。
殆どの者は1分間に達する前に挫折するらしい。
時間のない俺達は各30秒で20息出来るようにと言われた。
俺は、肺活量が最盛期6000cc近くあり、安静にしてだったら、息を一杯に吸って3分間は息を止める事ができた。
しかし、精神集中とイメージをしながらの呼吸法は想像以上に苦しく、各30秒・20息を行った後は激しい頭痛と吐き気に襲われた。

第2に「激しい呼吸法」
眉間に精神集中をしながら、両鼻孔で25回の呼吸を出来るだけ早く深く繰り返し、完全に息を吐ききったら喉・腹・肛門を締める「三段締め」を行う。
限界まで息を止めたら、両鼻孔で息を吸い、息を圧縮して限界まで保持する。
限界に達したら両鼻孔から勢い良く息を吐き、再び25回の素早い呼吸からはじめる。
これを30回行う。
これは過呼吸のせいか、頭の中や目の前がチカチカしてきてキツイ。

そして第3の「逃れの呼吸法」
呼吸や心拍が限界に達してヤバイ時に行う。
鼻から腹式呼吸で丹田に息を下ろし、下腹で圧縮する。
圧縮を掛けながら下腹からゆっくり息を抜く・・・これは、空手などでスタミナが切れ、息が上がった時に行う呼吸法に非常に良く似ている。
マサさんの修行法は、武道や武術の応用が非常に多いのが特徴なのだ。

ガキの頃から運動馬鹿だった俺はPよりもかなり早く条件をクリアできた。
俺は先に第2段階に進んだ。
俺は第4の呼吸法をレクチャーされた。「丹田と尾?を連結させる呼吸法」
下腹を引き締め両鼻孔から息を吐き切る。
右手人差し指を眉間に当て親指で右の鼻孔を閉じ、左の鼻孔から首から尾?骨にかけての「背骨」に息が満ちる事をイメージして息を吸う。
限界まで腹に力を込めて保息し、限界になったら、中指と薬指で左鼻孔を塞ぎ、右鼻孔から吐き出す。
今度は、右鼻孔から息を吸って同様に保息し、左鼻孔から吐き出す。
これを左右交互に3回づつ繰り返すのだ。
マサさんは俺に「明日から3日間道場に篭る。これを飲んで寝ておけ」と俺にボトルに入った、ドス黒い色をした妙な味のする「茶」を飲ませた。
横になると俺はあっという間に眠りに落ちていった。

翌朝、日の出と共に叩き起こされた俺はマサさんと共に道場に入った。
第2の「激しい呼吸法」を終えるとマサさんは俺にパチンコ玉程の大きさの黒い丸薬を飲ませた。
正露丸に良く似た匂いで辛い味のする薬を飲んだ後、第4の呼吸法を行う。
第4の呼吸法を行ずると体温が異常に上がり、心拍も相当早くなる。発汗も物凄い。
しかし、その時の「熱」は異常で、炎の中に放り込まれたかのような熱さだったが、汗は一滴も出なかった。
マサさんは俺に着ている物を全て脱いで、床に横になる様に指示した。
横になると第1の「ゆったりとした呼吸法」を各10秒で行った。
ある程度の停止時間をとらなければ行は進まないが、呼吸のリズムが狂うと失敗し、命に関わると言う事だった。
マサさんは俺の眉間に親指を当て、俺の呼吸に自分の呼吸を合わせた。
やがて、マサさんの親指が触れている眉間の部分と尾?骨の辺りが熱くなり出した。
暫くすると尾?骨のあたりにモゾモゾとした感触が生じ、それは激しくなり、何かが暴れ始めた。
その「暴れる」熱を持った何かは、やがて俺の背骨を這い上がり始めた。
呼吸法で保息している時に、それはググッと少しずつ這い上がってきた。
やがて、それはマサさんが親指を押し付けている眉間の位置まで上ってきた。
それがマサさんの親指に触れた瞬間、俺の背骨を貫いていた熱の固まりはすう~っと消えていった。
同時に、俺の体温はまた一段と上がり、まるで燃え上がったかのようになった。
しかし、不思議な事に熱を発しているのは首から下だけで、首から上に異常はなかった。
肩で息をしながらマサさんは俺に「茶」を飲ませ、そのまま呼吸を保つように指示した。
俺は呼吸法を続け、やがて意識を失った。

翌朝目覚めた時、体はまだ火照っていたが、嘘の様に熱は引いていた。
昨日と同じように呼吸法を行じた。
第4の呼吸法を行う前に、「絶対に噛むな」と言われて、ベッコウ飴のような黄色い飴で薄く包まれた薬を3粒と100cc程の水を飲まされた。
第4の呼吸法を行ってもその日は体は熱くならなかった。
横になって第一の呼吸法を行っていると、急に悪寒が襲ってきた。
マサさんが「寒いか?」と聞き、俺が目で肯ずると昨日と同じ手順でマサさんの「処置」は始まった。
ただ違ったのは、俺の背骨を這い上がってきたのは、今度は氷のように冷たい何かだった。
その冷たい何かは眉間の位置まで到達すると、前日の「熱」と同様に俺の背骨の中から消え去った。
その後に襲って来たものは、そのまま凍死してしまうのではないかというくらいの寒さだった。
マサさんは前の晩よりも疲労困憊した様子で俺に「茶」を飲ませた。
俺は呼吸法を続けながら意識がなくなるのを待ったが、「落ちる」までかなりの時間を要した。

翌朝目覚めた時、俺の体はそれまで経験した事がないほど軽く感じられた。
第1の呼吸法の要領で呼吸をすると、背骨の中をスースーと冷たい風が通り抜ける様な感覚がした。
そして、頭の中にキーンと耳鳴りとは違った甲高い金属的な「音」が響いていた。
ただ、「音」と言っても、それは耳に聞こえるものではなく、あくまで頭の中に響いているのだ。
「音」は視線を動かしたり、何かを集中して見ると音色や音の強さが変わるようだった。
強く集中すればするほど、音は大きくなった。
俺が面白がって「音」を試していると、マサさんが道場に入ってきて俺に声をかけた。
「これからが本番だ。もう後戻りは出来ない。失敗すれば命に関わる。確率は五分五分。集中してくれ」

マサさんは俺に赤黒い色をした丸薬を飲ませた。
鉄臭い匂いが口の中に広がる。
次に濃い茶色をした熱い飲み物を湯飲みで一杯。
これは俺にもすぐに判った。すこし他の味も混ざっているが、高麗人参茶だ。
そのまま横になって30分ほど待つと体がポカポカしてきた。
するとマサさんが俺にうつ伏せになれと言う。
俺がうつ伏せになると、マサさんはいきなり俺の尻の穴に指を突っ込んできた。
drftgyふじこlp;@***** な、なにを?!
マサさんの太い指が俺の菊門を探る。そして、いきなり親指を尾?骨の上辺りに当て、テコの原理でゴキッとやった。
尾?骨から背骨を通って、電撃が俺の脳天を叩いた。
あまりの痛み、ショックに目の前に星とも雷ともつかない光がスパークした。
マサさんは、そのまま腰から首にかけて背骨に沿って灸を据え、灸が終ると俺を仰向けに寝かせ、体の前面に針を打った。
打った針の頭に灸を着けて線香で火を点けると「呼吸は自然にして、ケツの穴を締めながら眉間に意識を集中しろ」と言った。
マサさんが指を置いた眉間の部分に意識を集中すると、濡れた指でワイングラスの縁を擦ったときのような音が頭の中に響いた。
集中度を高めると「音」は高音になり大きくなった。
やがて、目をつぶっているのに眉間の部分に白い光がポツポツと見え始めた。
光は徐々に大きく、強くなり視界の全てを覆った。
光の眩しさに耐えられなくなった瞬間、頭の中に大量のガラスを一度に叩き割ったかのような音が響いた。
すると、背骨に沿ってゾクゾクするような物凄い快感がゆっくりと登って行った。
射精時の快感などまるで問題にならない強烈な快感だった。
「快感の塊」が頭に達した瞬間、物凄い爆発音を聞いた。
俺は意識を失った。

どれくらいの時間が経ったのだろう?
横に目をやると疲労困憊したマサさんが倒れていた。
俺も酷い有様だった。
胸や腹には物凄い量の精液がこびりついていた。
あの強烈な快感を感じている間、俺は何度も射精を繰り返していたようだ。
顔の皮膚も突っ張る。大量の鼻血と精液の一部が乾いたものだ。
目が覚めて暫くするとマサさんが起き上がって、俺の体から針を抜いた。
針を抜き終わるとマサさんは「シャワーを浴びてよく眠れ。目が覚めたらここに来い」と言った。
本宅に戻ってシャワーを浴びて、鏡を見た俺はゲッソリと肉の落ちた自分の姿に驚いた。
70kgから60kgほどまでに激減していた体重は、3日間何も食べていなかったせいもあったが、55kgを僅かに切っていた。
更に翌朝目覚めた時のショックは大きかった。
全身の毛が抜け始めていたのだ。
来た時に剃り上げられたのが伸びて黒くなり始めたばかりの頭髪はもとより、胸毛や脛毛、陰毛まで3日ほどで全て抜けた。
残ったのは眉毛とヒゲくらいか?
抜けた毛はすぐに伸び始めたが、ガリガリでつるっぱげの自分の姿を鏡で見て、俺は大いに凹んだ。

俺は前日のマサさんの指示通り、動揺する気持ちを抑えて道場へ向かった。
マサさん正面に胡坐で座ると、マサさんは俺の目の前、50cmくらいの所に掌を広げた。
マサさんは俺に「何が見える」と聞いた。
マサさんの掌が何か透明なベールのようなもので包まれているのが見えたのでそう伝えた。
「これはどうだ?」顔に熱気を感じたので「熱いです」と答えた。
その次は冷気を感じたので「冷たいです」と答えた。
マサさんは特定の指から発する『気』を長く伸ばしたり、気の『色』を変える度に「これはどうだ?」と聞き、俺はそれに答えた。
ふーっと息を吐いてから、マサさんは俺の肩を叩いて「よかったな、成功だ」と言った。

マサさんは俺に様々な注意を与えた。
最も重要なものは「丹田から気が溢れても尾?に気を流し込んではいけない」というものだった。
ヨガの行者などは呼吸法やその他の行で集めた「気」を尾?に目一杯溜め込み、気道を一気に駆け上がらせるらしい。
しかし、持戒や瞑想、宗教的な「行」を修めて「煩悩」を滅却してからでないと気が滞り、発狂したり命を落とす危険があるらしい。
マサさんの行った「処置」は丹田に「気」を取り込む為に「気道」を開けるものだった。
「気道」を開く作業は、通常の修行により安全を確保しながらだと最低5年から10年掛る過程らしい。
しかし、それを短期間で終らせるために、危険な薬物を使い、鍼灸により経絡を操作し、無理やり気道に「気」を送り込むと言う博打を打ったのだ。
個人の「丹田」の強さ、キャパシティーにもよるが、丹田に溜め込める「気」の量には限度がある。
日本人は丹田が異常に強い民族らしい。
それに俺は空手やその他の「力」を使うスポーツを色々やっていた。
大きな力を出す時、手足の筋肉や腹筋・背筋ではなく「丹田」を特別な訓練もなしにしっかり使っているのは、マサさんが知る限り日本人だけだそうだ。
俺の処置が成功したのは丹田が強かったからだと言う事だ。

丹田から溢れた気は性器の付け根を通って尾?に導かれる。
尾?に導かれた気が臨界量を越えると爆発的に背骨の中の気道を駆け上がるらしい。
しかし、世俗的な煩悩にどっぷり浸かった通常人にとっては、それは命取りになるので避けなければならないのだ。
ただ一つ、尾?から貯まった気を抜く方法がある。
それは、女と交わって精を放つ事だ。
尾?に蓄えられる気は「性エネルギー」なのだ。
尾?から気が背骨を登った時、俺が強い性的快感を感じたのはその為らしい。
多くの宗教で、修行者にとって「姦淫」が禁戒となるのは、「悟り」に必要な性エネルギーの損失を防ぐ意味もあるらしい。
だが、裏道を行く者は何処にでもいる。
女と交わって「性エネルギー」を奪い取って取り込む技法が存在する。所謂「房中術」だ。
性器を通して女から盗んだ気を丹田に送る。
だが、「性欲」は人間の持つ「煩悩」の中で最も強いものの一つであり、気の上昇時に命取りとなりかねない諸刃の剣である。
それ故に、邪道・邪法とされるらしい。
また、直接尾?ではなく丹田に気を送り込むのは、女は「性エネルギー=生命力」を本能的に引き込む力が強いからだ。
気の漏出を防ぎ、溜め込んで置く力の弱い尾?に接続すると逆にエネルギーを奪われてしまうのだ。
ヨガの行者や房中術を使う連中は「性器の付け根」を通して丹田から尾?へ気を圧送するらしい。
「性器」の部分は「気」を「性エネルギー」に変換して尾?に送るポンプの役割をするということだ。

俺はマサさんに女から「精気」を奪う技法についてもレクチャーを受けた。
その時注意されたのは、同じ女と行う時は、行為の間隔を1週間以上開けること。
週1回のペースで3ヶ月行ったら、次に行うまでは6ヶ月以上開けることだった。
俺はマサさんの話を余り本気で聞いていなかったし、房中術の話は眉につばを付けて聞いていた。
ただ、娑婆に戻ったら絶対に試してやろうと思ってはいた。

娑婆に戻った俺は、郷里を離れる前、店外でもよく逢っていた「オキニ」の風俗嬢の部屋に転がり込んだ。
前に書いたように「精力」を抜き取られる時の快感は非常に強く、その快感に飲み込まれた状態を「色情狂」と言う。
俺はマサさんにレクチャーされた内容を当時21歳か22歳だったその子で試した。
房中術の話を聞いた彼女も「ヤル!」と乗り気だった。
彼女の中に挿入して暫くの間、彼女は「余裕」だった。
クスクス笑いながらクイクイ締め付けたり腰をくねらせたりして俺を攻め立てた。
しかし、マサさんに習った方法に従って「導引」を仕掛けた瞬間、様相は一変した。
急に余裕がなくなって激しく喘ぎ出し、あっと言う間に逝ってしまったのだ。
彼女曰く、今までに感じたことのないような強い快感が信じられないくらい長く続いたと言うのだ。
逝ったことはあるがこんなに凄いのは生まれて初めてだと。
ここで俺は大きなミスを犯した。
マサさんの警告を無視して、彼女の求めるままに再度そのまま交わってしまったのだ。

それから一週間、彼女は正に色情狂だった。
明らかに疲労困憊しているのに何度も何度も俺を求めるのだ。
俺が「導引」を掛けずに交わると気が狂ったかのように「『あれ』やってよお~」と迫るのだ。
彼女は仕事を休み、飯を食う時間、眠る時間も惜しいといった感じで俺を求め続けた。

一週間目の朝、同じベッドの中、隣に眠る彼女を見て俺はゾッとした。
剥き立てのゆで卵のようだった彼女の肌は張をなくし、目尻に皺が生じていた。
弾力があってプリプリとした感触だった自慢の乳は、ハリを失ってフニャフニャした感触になっていた。
そして、何より衝撃的だったのは、綺麗なダークブラウンの髪の根元が数ミリだったが明らかに白髪となっていたことだ。
俺は目を覚まし、また俺の体を求めようとした彼女に「仕事の斡旋で人に会う約束がある。今度は店に行くから、またな」と言って、彼女の部屋から逃げた。

数日後、彼女の店に電話をすると、過労で倒れて暫く休むと言う事だった。
数週間後、郷里を離れてから彼女の部屋に電話したが、その番号は既に使われていなかった。
店に電話すると彼女は退店してしまっていて、結局それっきりになった。

俺はそのことがあってからヨガや密教関連の書籍を何冊か読んだ。
マサさんの呼吸法はヨーガの物に非常に似ていることが判った。
性エネルギーの話も疑問点は多々あるも、合致する部分は多いと思った。
そして、最も驚いたのは、後に有名になった(当時も有名だったが)ヨーガ・密教系のあるカルト教団の存在だった。
その教団の教祖や幹部は、大金を取って何百人もの信者にマサさんが行ったのに似た儀式を行っていた。
マサさんの儀式を受けた俺だから言える。
あの儀式は術を施す者の気力・生命力を根こそぎ消耗させるもので、一人に施すのにも多大なリスクを伴う。
受ける者、施す者双方にとって命懸のものだ。
適性に欠けたPは、結局ほかの術を受けている。万人に通用する、効果があるものではないのだ。
だが、他方で、教祖は身の回りに何人もの女性幹部を侍らせ、子を設けていた。
死刑判決を受け拘置所にいる彼は発狂した状態だと聞く。
案外、彼の教団で行っていた「行」は、全くのインチキという訳でもなかったのかもしれない。
後に住職に聞いた「『行』を齧った信者が『魔境』に落ちた新興宗教団体」の一つに彼の教団も含まれていたからだ。
彼は、多数の女性幹部を利用して房中術を行っていたが、その強い「煩悩」により自滅し発狂したと考えると俺には納得できる点が多いのだ。

今日はここまでにする。
続きは後日に。

後編:『赤と青の炎』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

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