『リゾートバイト』|2chで語り継がれる怖い話 – 洒落怖名作まとめ

『リゾートバイト』|洒落怖名作まとめ【殿堂】 殿堂

ここから、坊さんの話が始まる。
結構長くて、正確には覚えてない、所々抜け落ち部分があるかも。

 

 

坊「この土地に住む者も、臍の緒に纏わる言い伝えを深く信じておりました。
土地柄、ここでは昔から漁を生業として生活する者が多くおりました。
漁師の家に子が生まれると、その子は物心がつく頃から親と共に海に出るようになります。
ここでは、それがごく普通のしきたりだったようです」

坊「漁は危険との隣り合わせであり、我が子の帰りを待つ母親の気持ちは、私には察するに余りありますが、それは深く辛いものだったのでしょう。
母親達はいつしか、我が子に御守りとして臍の緒を持たせるようになります」

坊「海での危険から命を守ってくれるように、そして行方のわからなくなったわが子が、自分の元へと帰ってこれるようにと」

俺「帰ってくる?」

 

俺は思わず口を挟んだ。

坊「そうです。まだ体の小さな子は波にさらわれることも多かったと聞きます。
行方の分からなくなった子は、何日もすると死亡したことと見なされます。
しかし、突然我が子を失った母親は、その現実を受け入れることができず、何日も何日もその帰りを待ち続けるのだそうです」

坊「そうしていつからか、子に持たせる臍の緒には、”生前に自分と子が繋がっていたように、子がどこにいようとも自分の元へ帰ってこれるように”と、命綱の役割としての意味を孕むようになったのだと言います」

皮肉な話だと思った。
本来海の危険から身を守る御守りとしての役割を成すものが、いざ危険が起きたときの命綱としての意味も持ってる。

母親はどんな気持ちで子どもを送り出してたんだろうな。

坊「実際、臍の緒を持たせていた子が行方不明になり無事に帰ってくることはなかったそうです」

坊「しかしある日、”子供が帰ってきた”と涙を流して喜ぶ1人の母親が現れます。これを聞いた周囲の者はその話を信用せず、とうとう気が狂ってしまったかと哀れみさえ抱いたそうです。
何故なら、その母親が海で子を失ったのは3年も前のことだったからです」

B「どこかに流れついて今まで生きてたとかじゃないんですか?」

坊「そうですね。始めはそう思った者もいたようです。そして母親に子供の姿を見せてほしいと言い出した者もいたそうなのです」

B「それで?」

坊「母親はその者に言ったそうです。

”もう少ししたら見せられるから待っていてくれ”

と」

どういう意味だ?
帰って来たら見せられるはずじゃないのか?

俺はこの時、理由もなく鳥肌が立った。

坊「もちろんその話を聞いて村の者は不振に思ったそうですが、子を亡くしてからずっと伏せっていた母親を見てきた手前、強く言うことができずそのまま引き下がるしかできなかったそうです」

坊「しかし次の日、同じ事を言って喜ぶ別の母親が現れるのです。そしてその母親も、子の姿を見せることはまだできないという旨の話をする。
村の者達は困惑し始めます。」

坊「前日の母親は既に夫が他界し、本当のところを確かめる術が無かったのですが、この別の母親には夫がおりました。
そこで村の者達は、この夫に真相を確かめるべく話を聞くことになったそうです」

坊「するとその夫は言ったそうです。”そんな話は知らない”と。母親の喜びとは反対に、父親はその事実を全く知らなかったのです。
村人達が更に追求しようとすると、”人の家のことに首を突っ込むな”とついには怒りだしてしまったそうです」

 

 

まあ、そうだよな。
何にせよ周りの人に家の中のことをごちゃごちゃ聞かれたらいい気はしないだろうな、なんて思ったりもした。

坊「その後何日かするとある村の者が、最初に子が戻ってきたと言い出した母親が、昨晩子共を連れて海辺を歩く姿を見たと言い出します。暗くてあまり良く見えなかったが、手を繋ぎ隣にいる子供に話しかけるその姿は、本当に幸せそうだったと。この話を聞いた村の者達は皆、これまでの非を詫びようと、そして子が戻ってきたことを心から祝福しようと、母親の家に訪ねに行くことにしたそうです」

 

 

坊「家に着くと、中から満面の笑顔で母親が顔を出したそうです。村の者達はその日来た理由を告げ、何人かは頭を下げたそうです。

 

すると母親は、

”何も気にしていません。この子が戻って来た、それだけで幸せです”

と言いながら、扉に隠れてしまっていた我が子の手を引き寄せ、皆の前に見せたそうです」

坊「その瞬間、村の者達はその場で凍りついたそうです」

坊「その子の肌は、全身が青紫色だったそうです。そして体はあり得ない程に膨らみ、腫れ上がった瞼の隙間から白目が覗き、辛うじて見える黒目は左右別々の方向を向いていたそうです。そして口から何か泡のようなものを吹きながら母親の話しかける声に寄生を発していたそうです。それはまるでカラスの鳴き声のようだったと聞きます。
村の者達は、子供の奇声に優しく笑いかけ、髪の抜け落ちた頭を愛おしそうに撫でる母親の姿を見て、恐怖で皆その場から逃げ出してしまったのだそうです」

坊「散り散りに逃げた村の者達はその晩、村の長の家に集まり出します。何か得体の知れないものを見た恐怖は誰一人収まらず、それを聞いた村の長は自分の手には負えないと判断し、皆を連れてある住職の元へ行くことにします。その住職というのが、私のご先祖に当たる人物らしいのですが・・」

坊「相談を受けた住職は、事の重大さを悟りすぐさま母親の元に向かいます。そして母親の横に連れられた子を見るや、母親を家から引きずり出し寺へと連れて帰ったそうです。その間も、その子は住職と母親の後をずっと付いてきて奇声を発していたのだとか」

 

 

AB俺「・・・」

 

坊「寺に着くとまず結界を強く張った一室に母親を入れ、話を聞こうとします。しかし、一瞬でも子と離れた母親は、その不安からかまともに話をできる状態ではなかったと聞きます。ついには子供を返せと、住職に向かってものすごい剣幕で怒鳴り散らしたのだそうです」

A「それでどうなったんですか?」

坊「子を想う母は強い。住職が本気で押さえ込もうとしたその力を跳ね飛ばし、そのまま寺を飛び出してしまったのだそうです」

坊さんは少し情けなそうな顔をしてそう言った。

坊「その後、村の者と従者を何人か連れて母親の家に行きましたが、そこに母と子の姿はなかったそうです。
そして家の中には、どこのものかわからない札が至る所に貼り付けられ、部屋の片隅には腐った残飯が盛られ異臭が立ち込めていのだとか」

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