【意味怖《その拾》】『無人島』など全5話

【意味怖《その拾》】『無人島』など全5話 意味がわかると怖い話

刑務所からの手紙

姉を殺して両親や私にも怪我を負わせた兄が刑務所から手紙を寄越した。
「昨、風、年、夜」
「時計、照、没、常」
「逸、線、走、却」
「監、牢、舎、投」
手紙の消印は一昨日だ。
「鍵!」
気付いてすぐ玄関に向かった母が悲鳴を上げた

 

解説

「昨今、今風、今年、今夜」で今
「日時計、日照、日没、日常」で日
「逸脱、脱線、脱走、脱却」で脱
「監獄、牢獄、獄舎、投獄」で獄

つまり今日脱獄
手紙の消印は昨日。兄は昨日脱獄して家に向かってきている。

 

 

朝日

鍵が空いてて、無用心だなと思いつつ中に入った。何故かいつもと雰囲気が違う。
朝だからだろうか。寝室を覗くと差し込む日差しが眩しくて、よく見えない。
見知らぬ下着姿の女が父のベッドで眠っていた。
誰、この女の人。まさか、父の不倫相手?。信じられなかった。
別居の理由はこの女かもしれない。きっとそうだ。
パニックになった私は、近くにあった重い灰皿で女の頭を何度も殴った。
汚らわしくして耐えられなかった。女はすぐに動かなくなった。
我に返り、怖くなった私は逃げ出した。

それから父の元へは行かなくなった。父が犯人となり逮捕されるかもと思ったが、
不倫する父など逮捕されればいいとも思った。
怖くてニュースは見られなかった。怯え続けて数か月、母から父が寂しがっているから
一緒に会いに行こうと言われた。迷ったけれど、やっぱりあの女の事が気になり、
母と一緒に父の部屋に行った。
父は以前と変わらず、元気そうだった。
もしかしたら、あの日のことは夢だったのかもしれないと思った。

そろそろ帰るかという頃、覗きこんだ寝室に射し込む夕日を見て、
私は、とんでもない事をしてしまったことに気が付いた。

 

 

解説
「女が住む朝日が差し込む寝室のある家」と「父の住む夕日が差し込む寝室のある家」を間違えた。
ということは、殺してしまったのは関係ない人。

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