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【名作 長編】『歩いている女』|本当にあった怖い話・オカルト・都市伝説

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【名作 長編】『歩いている女』|本当にあった怖い話・オカルト・都市伝説 厳選
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歩いている女

 

4ヶ月前に刑務所から出所した。今は一人暮らしをしながら保護司さんから紹介された仕事をしている。

何の罪で捕まったかというと、ひったくり。いま考えると本当に申し訳ない事をしたと思っているし、馬鹿な事をしたと思う。

ひったくりをした時に相手に怪我を負わせた件があったので、連続強盗傷害事件として扱われ、他にも余罪があったので、弁護士の予想に反して罪が重くなった。

ひったくりは仲間3人と計画して、毎日のように繰り返していた。まず盗んだ原付に二人乗りをし(これで窃盗罪もついた)前カゴにカバンを入れている自転車のおばちゃんの後ろからひったくるオーソドックスな方法だった。

3人目は携帯で連絡をとり、近くに巡回中のパトカーがいないかどうかを入念に調べる役目だった。狙い目は銀行から出てきたおばちゃん。一番多い時で50万近くカバンに入っていた事もあった。盗んだのは現金のみ。

あとの財布やカードには手をつけなかった。

一度カバンから通帳が出てきて、暗証番号らしき紙が挟んであったけど、手をつけなかった。足がつくのを警戒していたからだ。

3ヶ月以上同じ地域で繰り返していたが、ある日俺たちの特徴が詳しく書いてあるビラがあちこちに貼られ始めた。身体的な特徴や、銀行から出てきたところを狙う、など。

仲間の中に頬にホクロがあるやつがいたんだが、そのホクロの位置まで書かれていたので、俺たちはかなりビビッてしまい、当分の間は自粛しようと話し合った。

しかし、一度ラクに金を稼ぐ事を覚えてしまったら、そう簡単にはやめられない。俺たちは一週間くらい自粛したんだが、結局また再開する事にした。話し合った末に今まではほとんど夕方だったのを夜中に狙う事にした。

夜の11時過ぎから原付でウロウロと獲物を探したが見付からない。夜中に自転車の前カゴにカバン入れてるおばちゃんなんているわけがなかった。

それどころか、人通りや車があまりいない夜中に盗んだ原付を二人乗りで運転しているほうが危なかった。パトカーがいたら間違いなく引き止められるだろう。俺たちは街からかなり離れた郊外に移動して、獲物を探す事にした。

そこは山を切り崩して作った大きな住宅街で、帰宅中の誰かを狙うつもりだった。しかし見付からない。今夜はヤメにしようや、などと話していたんだが、その時かなり遠くに女が歩いているのが見えた。山の方向?に進んでいる。俺たちはゆっくり後ろから近付いて様子を見ていた。

髪のやたら長い女で、背もたぶん高かったと思う。服は白のワンピース姿。10月の後半で夜は寒いのになぜかワンピースだった
(その時はひったくる事に集中していて気にならなかった)

左手には大きの黒のカバンを持っていた。もう一人の仲間が「あれにしよう」と言った。

普段なら俺は絶対に狙わない相手だった
(理由は単純に金をカバンに入れてなさそう)

しかし俺もその時は苛立っていたので、その女にする事にした。俺はゆっくり近付いた。女の歩き方がなぜかおかしかった。説明しにくいが、つま先を地面に擦りつけるような、見た事もない歩き方だった。

原付の灯りを消していたんだが、音は隠せない。だが女はそのまま歩いている。5mくらい後ろに近づいたその瞬間、バッ!と女が振り返った。俺は驚いた。

片目が腫れたように潰れていて、ニタ~と笑っていた。口を大きくイーッとしたみたいに満面の笑みだった。それなのになんか泣いているっぽくて、満面の笑みなのに泣
き顔みたいな違和感がある表情だった。

あわわ…なんかヤバイッ!と思ったが、運転を止められず、その女と横並びになった瞬間に後ろの仲間がひったくったのが分かった。後ろから右肩をポンポンと叩かれた。

いつも使う逃げろの合図だった。俺は猛スピードで逃げた。5分くらい運転して広場のような空き地があったのでその近くに停まった。逃げる間後ろの仲間は何もしゃべらなかった。

俺は金よりあの女の事をすごく聞きたかったので、原付を停めるとすぐ降りて「あの女見たかよ!すげぇ気持ち悪かったわ~」と言った。仲間は後ろに立ったまま、あの女が持っていた黒のカバンを大切そうに抱き締めて下を向いてぶつぶつ言っていた。「ちょっwお前どうしたんw?」と聞いても返事がない。

「おまwいいよ、そういう三文芝居はw」とか言っていたんだが、まったく反応がない。ただカバンを抱き締め下を向いてぶつぶつ言ってるだけ。

俺はキレたふりしたり、いろいろ話しかけたが反応はまったくなかった。俺の存在すら見えてないかのように。「おい、とりあえず帰るから乗れよ」と言っても乗らない。俺はいろいろ考えた。救急車を呼ぶのが一番だが呼べるわけがない。

誰かに車で迎えに来てもらおうかと考えたが、場所がわからない。いりくんだ住宅街の山に近い位置としか分からない…なにより目の前のコイツが怖かった。もし元に戻らなかったら…いろいろ悪い想像をした。今までのバチが当たったんだ…と思った。「頼むから後ろ乗れや。乗ってくれんと帰れんだろ!」と言ったがぶつぶつ言うだけ。何を言っているのかさっぱり分からなかった。

煙草を吸いながら、ヤバイヤバイと考えていたんだが、さっきから抱き締めているこのカバンが原因なんじゃないかと思った。俺はカバンを引っ張った。その瞬間「ハウァァァ」と低い声を出して俺を睨みつけてきた。

目は異常に充血して真っ赤だった。かなり怖かったけど、これさえ引き離したら元に戻るかもしれないと思えてきたので力いっぱい引っ張った。

ちょっとした引っ張り合いになったけど、そいつの肩を強く押し倒して奪った。カバンはやけにブニョブニョしていた。妙な触感がした。

中身は絶対に見ないほうがいいと思ったが…俺は開けてしまった。金目当てじゃなく好奇心だった。開けた瞬間いやな臭いがした。

腐ったような臭い…中にへその緒の束みたいなのが出てきた。へその緒は自分のを見た事があったので、たぶんへその緒だと思う…。「うげっ!なんじゃこれ!」と叫んだ。更に写真が何枚も入ってた。オッサンが娘と遊んでいる写真。街中や遊園地?っぽい場所や、家の前らしき場所の写真だった。

あの気持ち悪い女の夫や娘か?と思ったが…その写真には母親らしき女性も写っていた。なによりアングルが変だ。カメラ目線の写真は一枚もなく、明らかに盗撮した写真ばかりだった。

その写真の中の何枚かに黒い字で「巍」みたいな文字が書かれていた。巍ではないけど、見た事もない難しい字だった。カバンの底を見ると、黒い携帯電話が入っていた。しかも化石のような古い機種でやたらデカイ。

あの女の携帯か?と思い、手に取り、中を覗いてみた。ニュルッとした。口を当てて話す部分がネバネバ濡れていた。

「うげっ!きったね~な…」と思わず声に出た。発着信履歴を見てみた。発信履歴は07#65#429*479などデタラメな数字ばかりで着信履歴はありません、だった。

俺はいよいよ怖くなって鳥肌が立ってきた。頭のイカれた女である事がハッキリ分かった。

仲間はぶつぶつ言いながらカバンの中身を探る俺を恨めしそうに眺めている。カバンに手を突っ込むと、奥に木の箱のようなものがあった。木の箱は15センチくらいの大きさで、開けようとしたが開かなかった。

振ってみるとカタカタ音がした。中身は確認できなかった。俺は写真や携帯やへその緒の束や木の箱をカバンに戻すと、広場の少し先にある林がたくさんある方向へ向けておもいっきり投げた。それで「おい!もうえーけー早く乗れや!」と怒鳴った。

そいつはさっきまで下を向いてぶつぶつ言っていただけだったのに、まったく別の方向を向いてニタ~と笑っていた。俺はそいつが笑っている方向へ振り返った。20mくらい先に女がいた。暗くてよく見えなかったが、直感的にあの女だと思った。

俺は数秒間動けず、ジッとその女を見ていた。女はこちらを向いているのは分かったが、俺を見ているのか、仲間を見ているか分からなかった。急に女がこっちに歩きだした。あの独特の歩き方で。その瞬間俺はダッシュで原付まで行き、急いで逃げた。

仲間を置いて逃げた。手足がガタガタ震えて何度も事故りそうになりながら家に着いた。何度も仲間の携帯にかけたが、出なかった。その日ろくに眠れず次の日に仲間
の事が気になり何度も電話したが出なかった。

その仲間のヤツは母親がいなくて父親と二人暮らし。その父親も内臓の病気で入院しているし、父親とも仲が悪いと言っていたので、しばらくはいなくなっても誰も気づかないだろうと思ったけど、まさかほっとくわけにもいかない。俺は一番信用できる先輩に会いに行ってすべてを話した。

先輩に何発もビンタされた。ひったくりの件と仲間を置き去りにした件で激しく怒られた。「とにかくその場所に連れていけ」先輩がそう言ったので、俺は先輩の車で昨夜置き去りにした場所に向かった。

先輩は俺とは面識のない友達を連れてきていた。三人で車に乗り、昨夜の場所を探したが、夜中と昼間では景色も違って見えるし慌てていたので探し出すのに苦労した。

1時間以上迷いながらもなんとか昨夜の場所に到着した時は夕方だった。なにもない。仲間もいないし女もいない。

「ほんまにこの場所か?」と先輩に聞かれたけど、俺の煙草の吸い殻が一本落ちていたので間違いなくこの場所だった。昨夜俺が投げたカバンを探したけど無かった。そんなに遠くへは飛んでないのに。結局なにも見付けられず帰ったが、帰りの車で先輩は俺に自首しろと強く迫った。

行方不明の件もある。俺が全部話すしかないと思った。2日間悩んだ末に近くの警察署に出頭した。担当の刑事が来たら驚いた顔をして「お前なんの用や?」と聞かれた。

刑事にお世話になった事もないのにおかしいな?と思ったら、どうやら俺は何週間か前からマークされていたらしく、原付の窃盗で逮捕状請求の準備をしていたらしい。さらに張り込んでいたらしい。

たださっぱりひったくる気配がないので別件のバイク窃盗で引っ張る予定だったところを俺が出頭したから驚いたらしかった。俺は刑事に全部話してあの日の出来事も必死に話したけど、反応は薄かった。というか俺が仲間の逃亡を助けるために嘘をついていると思われているようだった。

結局消えた仲間は見つからず指名手配もされなかった。彼はまだ誕生日を迎えてない19歳だったからじゃないかと弁護士は言った。結局俺は懲役五年半の実刑を受けて控訴せず服役した。服役して半年、あの夜から一年以上経った頃、刑務官の先生から呼び出された。部屋にはあの時の担当刑事がいた。

昨日その消えた仲間が全裸で遺体となって発見されたと告げられた。詳しくは省くが、死因は凍死と断定されたものの、その日から一週間くらい毎日刑務所内に刑事が来て聴取を受けた。

刑事に「僕が殺害したんじゃないかと疑われているんですか?」と聞いたら、「いや、お前には無理だから」と言われた。

最後に刑事に「その女の話はお前だけの胸に閉まっておけ」と言われた。あの日俺が逃げた後アイツに何があったんだろう。一番ゾッとしたのが死後まだ一ヶ月程度だったと言われた時だ。

とっくに服役していた俺には物理的に無理だ。アイツはあの日から死ぬまでの約11ヶ月間どこでなにをしていたんだろう。俺は最近あまりこの事を考えないようにしている。

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