山にまつわる怖い話【57】全5話
姥捨て川
うちの母親が奈良出身なのだが、
小さい子供の頃はよく年寄りが川に首をつっこんだ状態で
死んでいたらしい。
なぜ、そのようなことになっているのかというと、
狸に化かされて、道に迷い山の中を歩き回される。
それで疲れてヘトヘトになったときに川が見えてくるらしい。
で、川の水を飲んだところで死んでしまう。
このように周りの大人に聞かされたそうです。
化かされないようにするには、タバコを吸う、もしくは吸わなくても
タバコに火をつけるだけで、煙を嫌がって狸は逃げるそうです。
で、この話を聞くとこう思う。
姥捨て山ならぬ姥捨て川であり、
実は迷ったのではなくて、人目のつきにくい夜中に
川に連れ出し無理矢理首を...
((((;゜Д゜)))ガクガクブルブル
まあ、昔々のことなので、誰にも真相はわかりませんがね。( ゜Д゜)y-~~
俵岩
田舎の山に一人で登ったときのこと。てっぺんにある滝見物もちとあきたので、さらに上の沢に
上ろうと道を上ると夫婦にであった。「こんにちは。この上に何かありますか?」と聞くと
「俵岩というのがあるよ、私たちも今見てきたの」
道しるべがあるからすぐわかるといわれ、行ってみた。
しばらく行くと確かに『俵岩→』と書かれた標識が。まだ日も高かったので進む。
道は草がほとんど覆いかろうじて道とわかるかどうかの獣道。あの人達
ほんとにここ通ったのかなぁ。
蜘蛛の巣を払い分け進むこと20分。崖にぽこぽこと俵くらいの大きさの
岩がはりついている場所に到達。しばらく見て、そろそろ時間と下山する。
帰り道、ふと夫婦の言葉を思い出す。
『今みてきた』=今通ってきた 道に 蜘蛛の巣 ???
帰って叔母に俵岩の話をしたら「そんな岩聞いたことないなぁ」
叔母に聞くまではあんまり恐くなかったんだけどなぁ・・。一人で
山に登るのはやめようと思った22の夏。
旧伊勢神トンネル
愛知県の山道にある旧伊勢神トンネルは、交通量の増した今日では狭過ぎ、別に新しく大きなトンネルが造られたので、今は使われていません。しかし、「出る」という噂を聞きつけてやってくる人々には、そのいかにもという古めかしい姿が喜ばれているようです。
しかし、地元の私はあえて見に行くという事もしませんでした。私がこのトンネルを通るはめになったのは、単に道を間違えたからです。
バイクで足助へ遊びに行った帰りです。もう夜中でした。新トンネルへ通じる道を間違え、旧トンネルへ続く支流に入ってしまったことに気づいたのは、目の前に今にも崩れそうなトンネルが見えてきた時でした。
トンネルの中は真っ暗で、狭い道と苔むした壁をライトが白く照らすのみです。危険なので30k/h程の速度でゆっくり進んで行きました。しかし、トンネルの中ほどまで来た時です、車体がガタガタと揺れると、突然エンジンが止まりました。
同時にライトも消えてしまいました。完全な暗闇に私は動転し、慌ててスタートキーを回しましたが、キュルキュルとセルの音がするだけで一向にエンジンがかかってくれません。どういうわけか、エンジン内のガソリン濃度が急激に低下した様子です。
私はなるべく真っ暗な周囲を見ないよう、手元だけに集中しながらコックを回してガソリンをエンジンに流し込み、チョークレバーを引くと、頃合いを見計らって一気にエンジンを再起動させました。
パッとライトも点灯し、ほっとした私は早速走り出そうと目線を前に向け直しました。
その瞬間目に飛び込んできたのは人の顔でした。白い顔がライトに映し出されるように宙に浮き、じっとこちらを見つめていました。
私は凍りつきました。思わず悲鳴を上げそうになりましたが、「恐怖で理性を失ったら負けだ」と本能的に感じ、ぐっとこらえると、次の瞬間「ふざけるなぁぁ!」と叫び全速で「顔」に向かってバイクで突っ込みました。
それからはよく覚えていません。間もなく真っ暗なトンネルを抜けると、月明かりに照らされた下り坂へ出、そのまましばらくでオレンジ色の外灯の続く太い通りに合流しました。それでも山道が続く間は気を強く持ってあえて焦らず走って行きましたが、ふもとに出た途端に緊張の糸が切れ、ヘルメットの中で絶叫すると猛スピードで街を目指して走り出しました。
身投げした女
友人から聞いた、20年程前の話
近畿地方に住んでいた友人は、子供の頃お父さんに連れられて
よくあちこちの山に連れて行ってもらっていたそうだ。
その日はN県の山奥にある大きなダムへドライブに出掛けたという。
車を駐車場に止め、展望台へ向かうと、そこにはひとりだけ、先客がいた。
よく晴れた日で、遠くからでもどんなひとか、よく確認出来た。
クリーム色のセーターにフレアスカート、ロングヘア・・・若い女性だった。
季節外れの山中の観光地には場違いな感じがして、何だかとても気になったそうだ。
彼女は手摺に凭れ掛かって友人達を一瞥したそうだが
いきなり、やった。手摺を乗り越えて身投げしたのだ。
お父さんと友人は慌てて駆け寄って見下ろしてみた。
50mほど下のコンクリートに女性は血を流して倒れている。即死だろう。
携帯電話も普及してない時代の事、
お父さんは友人を車に乗せ、ふもとの町まで事故を知らせに行く事にした。
曲がりくねった山道を車を走らせながら、お父さんは
「決して後ろを振り返ってはいけない。バックミラーも覗いてはいけない」
と言ったそうだ。
だが、とても気になる。
友人も、小さな頃から霊感が強く、背後に何だか禍々しいものを感じていた。
・・・耐えられなくなって友人はバックミラーを見た。
さっき身投げしたはずの女が、頭から血を流してついて来てる。
一瞬だがはっきり見た。口を真一文字に結んで黙々と歩いてついて来るという。
車は全速で山道を下り降りているのに・・・
友人は泣き出してしまい、町まで助手席に突っ伏したまま動けなくなってしまった。
町に着き、警察に駆け込んだ時には、女は消えていたと云う。
お父さんも実はかなりの霊感の持ち主で、狐憑きの除霊なんかもした人らしいが
何故、女がついて来たのかは判らない、と言っていたそうだ。
まっくろくろすけ
ちょっと長くなるかもしれないけど書かせてください。
小学生の時の話。
あまり大きくは無いんだけど、私有地として山を一つ持ってる。
半分は私と弟の遊び場になるように祖父お手製の遊具があったり、
お花見ができるように桜を並べて植えてあったり、藤なんかもあったりした。
もう半分は放置。雑草も伸び放題で、昼間でも薄暗くて怖かった。
で、整備されてない方に入るのは禁止されてた。
理由を聞いたら、昔その山の一番奥にお城があったんで、お堀があるから危ないとのこと。
行くなと言われると興味がわいてきて、弟と二人で山の奥まで探検しにいこうってことになった。
いざ実行に移して山に登っていったら、祖父の作ったベンチに祖母が座ってニコニコ笑ってた。
悪戯がばれたと思ったんで弟ともども素直に謝ったんだけど、「じゃあ一緒に行こうか。」って。
許してくれたのが嬉しくて、元気に返事したのを覚えてる。
あっちがお城、あっちがお堀って教えてもらいながら奥の方まで行って、
実際にお堀らしき深い溝が続いているのを見つけて、弟とはしゃぎながら中に入ってみたりしてた。
しばらくしたら雑草で足を切ったらしく弟が泣き出したんで、
慌てて駆け寄っていたいのいたいのとんでけーとかやってたんだけど、
ふと気付いたら祖母がいない。
遊んでいるうちにはぐれたんだと思って急に心細くなったんだけど、もと来た道がわからない。
お堀を辿っていけば整備されている側に着けたはずなんだけど、どうしても着かない。
で、泣きそうになってたら、後ろから肩をたたかれた。
祖母かと思って振り向いたら、なんか毛むくじゃらだった。
青みがかった黒っぽい毛で、大きさは1mくらい。肩を叩かれたのに手も足も無いどころか、顔も無い。
まっくろくろすけから目を取って巨大化させたような毛むくじゃら。
不思議と怖くもないしびっくりもしなくて、
その毛むくじゃらがちょっと動いた方向を指差して「あっち?」って聞いたら、
なんとなく頷かれた気がした。今思うと、どうしてそういう解釈になったのか自分でもわからない。
でも弟もうんうん頷いてたんで、毛むくじゃらに教えてもらった方に二人で歩いていった。
しばらく歩いたら、何故か隣の山の神社に続く道に出た。
これも今考えたら一回下って登らなきゃそこには着かないはずなのに、当時は知ってる道に出て安心しかしなかった。
で、急いで家に帰ったら祖母は家にいた。というか、その日は一日祖父の手伝いで裏庭の整備をしてたらしい。
勿論山には行ってないし、山の奥にも行ってないと言ってこっぴどく叱られた。
祖母に見えたものも毛むくじゃらも何だったのかわからないけど、
後から聴いたら、弟には毛むくじゃらが小さい女の子に見えてたらしい。
怖くは無いけど凄く不思議な体験だった。
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