山にまつわる怖い話【69】全5話
ネズてん
和歌山の山間部での伝承でしょうか、ネズミのてんぷらを作って河原で待っていると狸狐が人間に化けてそれをねだるそうです。(ねだるというよりは非常にほしがるそうです)
そこで「ほしければやるけど金を持って来い」というとしばらくして金を持ってくるそうです。
ただし最初は木の葉で作ったお金なのですぐにばれてしまいます。
「本当の金を持って来い!」などとやり取りが数回あるうちに最後は本当のお金をもってくるそうです。ただしこのやり取りの間は何故か非常に眠くなりうっかり寝込むと
「ネズてん」を持っていかれてしまうそうです。
山本素石さんはこれを友人と二人で実験したそうですが、どうやら眠ってしまい
「ネズてん」は取られてしまったそうです。
俺を食おうとしていた
早朝に山行ったんだ。散歩で。
ちょっと時間が早くてまだ真っ暗。
そのうち明るくなると思って登ってたんだが真冬で曇りだったので
夜明けが遠い。
ちょっとドキドキしながら折り返し地点の展望台についた。
街の夜景は明るいが、山は暗いまま。
帰ろうとすると茂みからゴソゴソと音が。どうせタヌキか何かと思ったら
やっぱり小動物が出てきた。でも種類は何か解らなかった。
気にせず下ってるとなんとその動物がコソコソついて来る。
変わってるな思いつつも下ってるとやっぱりトコトコついて来る。
エサをもらえると思ってるのか?と思いつつバッと振り返りジッと見つめてみた。
でも、逃げる気配なし。捨て犬かと思ったが違う。
ちょっと気持ち悪かったのでダッシュすると向こうも走ってついて来る。
もうすぐ登山道の入り口だ。一気に走り抜ける。
後ろを振り返るとその動物は登山道の入り口で綺麗にピタッと止まると
そこからは絶対出てこない。こっちをジッと見ている。
しばらく見詰め合っていたがションベン行きたくなったのでその場を離れた。
後から「あれは俺を食おうとしていたのかメッセージを伝えに着たのか
それとも仲間になりたかったのか・・・・?」などと空想を楽しんだ。
呼ばれた
大学でワンゲルやってるものですが、先日OBさんからちょっと気になる話を聞きました。
夏合宿での話です。
当時一年生だった彼は先輩のしごきに耐えながら尾根上を歩いていたそうです。
不意に後ろから先輩の怒声が響きます。また野次られたの思いきや、どうやら隊をとめてレストをとれ、とのこと。
普通ならば50分歩いて10分休憩の繰り返しのはずなのですが、そのときは違いました。歩き始めて20分も経っていなかったのです。
最上級生の先輩は無言で山道をはずれた森の奥に向かっていきます。
違和感を感じましたが、雉打ちだろうと思ってそのまま休憩していたそうですが、
やっぱり様子がおかしい。戻ってきた先輩はもう一人の先輩を呼び、また森の奥に向かいます。
結局そのレストは20分間とられました。
下山後に知らされたことですが、どうやら白骨死体を発見したそうです。
警察の方と何やら話し合っている姿がこっけいで、物笑いの種になったとか。
以下は白骨死体を発見したOBの話です。
そのOBは当時四年生。在学中最後のワンデルングでした。
しかし、彼にとってその山道を歩くのは二年の夏合宿とあわせて二回目だったそうです。
普通だったらありえないことですが、どういうわけかそこを歩く羽目になったとのこと。
彼は山行中、理由は無いのにレストをとりたくなり、隊をとめました。
木と木の隙間から白いものが見えて、残雪だと思った彼は後輩を喜ばせてやろうとそれをとりに向かいました。
しかしそれは残雪ではなく骨でした。
熊に食い荒らされた様子も無い、きれいな白骨だったそうです。
同学年の一人を呼んで話し合った結果、後輩たちには下山してから告げようと決まりました。
無事夏合宿も終わり、後日。
遺族からの手紙が届きました。
「息子を見つけていただきありがとうございました。
これで十分な供養ができます。
息子は一昨年の夏に姿を消し・・・・・」
そんな文面がつづられていたそうです。そのOB曰く、
「もしかしたらそいつと目があったかもしれないし、挨拶くらい交わしたかもしれない。
”呼ばれた”って考えても不思議じゃないでしょ?」
二年の夏合宿を終えてからずっと見つけてもらえる機会を待って様子を伺っていたユーレイ
を考えるとガクブル。
箸
小学5年だった時、夏休みに昆虫取りに
一人でテント担いで福井南部の山に入ったんだ。
標高800メートルぐらいのそんな高くない山で、
中腹ちょっと上ぐらいまできれいな沢があるところだった。
マイマイカブリからオニヤンマまで色々とって、
夕方飯食い終わって沢で食器洗ってたら、箸流しちゃったのね.
まあ、フォークあるしいいか、とか思いながら他のもん洗ってたら
上流からその、流しちゃった箸が流れてきたんだ。
そこの沢は高度にしてはかなりゆるい流れのなんだけど、
逆流したりループになってるような流れじゃないのね。
念のため確認しながら歩いてみたんだけど、やっぱり普通に流れてるし。
戻って木の枝とか流してみたんだがやっぱ戻ってこないんだ。
プラスチックだと静電気でも起きるんだろうか、とかひらめいて、
もう一回お箸を流してみようと思って、箸持って沢に近づいた瞬間、
「おいおい、いっかいしかかえしてやらんぞ?」
って野太いというか、チェロの音みたいな声がはっきり聞こえた。
笑い混じりで非常にフレンドリーな感じで、地元のイントネーションだった。
前は沢だし、後ろは砂利と藪と木の葉だらけの獣道だから、
少なくとも半径100メートルぐらいには人がいなかったはず。
今思えば不思議なんだが、その時は
そうか、返してもらえないんじゃ明日ラーメン食べる時困るな
とか思って素直に止めたよ。
アケビ
じゃあ、山の中での食い物絡みのプチ不思議をひとつ。
先代の犬が元気だった頃、よく犬連れて山歩きしてたんだけど、
ある時リードを離して、トコトコ行くヤツの後をゆっくり附いて歩いてたら、
忽然、といった感じで、目の前に大きなアケビが転がってた。
前を行く愛犬からは眼を離さないようにしてたから、
初めからそこにあったのなら、もっと早く気付いたはず。
ちなみにその場所は、当時開通して2年くらいの高速道路のトンネル上で、
工事の時に拓かれた更地がまばらな草地になりかかったようなとこで、
一番近い木立からも7~8mは離れていた。
キズも傷みもなく、きれいにはじけてたっぷりした紫の果肉がのぞいてたもんで、
つい手に取ってしまったw
あんまりキレイなアケビだったから、ちょっと気味が悪くも思ったんだけど
山育ちの母に見せたら喜ぶだろうなーと思い、「いいんですか?頂きますよw」と
草地を囲む山のぐるりに声をかけてから、持って帰った。
さすがに食べる気はしなかったけど、母は大喜びで、しばらく玄関に飾ってた。
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