心霊スポットの体験談【1】全5話 – 洒落怖 短編集

心霊スポットの体験談【1】全5話 - 洒落怖 短編集 心霊スポット

 

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心霊スポットの体験談【1】

 

 

中ノ沢病院(群馬県)

 

赤城山の中腹、国道353号線からすこし北へ入ったところに、今は残骸をさらすだけの心霊スポット『中ノ沢病院』があった。
現在では門と瓦礫の山だけだが、異様な雰囲気は相変わらずだ。
職場仲間の中田さんから、中ノ沢病院がまだ建物として残っていた頃、おそらく10年前くらいの話を聞いた。

いまから10年ほど前のある夜、中田さんは現在奥さんである彼女を連れて肝試しに中ノ沢病院へやってきた。
あくまでも軽いノリだったという。
そこは地元でも有名な心霊スポットで、同時に不良の溜まり場にもなっていた。
つまり近づくとロクなことがない、ということだ。
中田さんが訪れた時に人影はなく、重い空気が立ち込めていたという。
彼女もかなり度胸の座った人でまったく怖がっていなかったので、ふたりは荒れ放題の敷地内をずんずん進み、こともなげに病院の建物内へと入った。

内部も荒れ放題で、床には割れたガラスや医療器具が散乱していた。
しかし、それといって目を引くものもなく、病院内を一通り回ったら帰ろうということになった。

そのとき、すぐそばで床に落ちたガラスをジャリっと踏みしめるような音がした。
ジャリッ、ジャリッ・・・ 。
自分は立ち止まっているし、手をつないだ彼女も動いていない。
中田さんが手に持っていた懐中電灯が不意に消えた。

真っ暗の院内でジャリッという音だけが響き渡る。
あまりの恐怖に中田さんも彼女も声が出なかったという。
暗闇の中、何者かが自分たちのそばを動き回っている。
ジャリッ、ジャリッ・・・ 。
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
中田さんと彼女は何者かの気配に怯えながら震えていた。
「ぎゃーーーーーーっ!!」
突然彼女が鋭い悲鳴を上げた。
それと同時に、彼女はつないだ彼の手を引っ張り、暗闇の中を無我夢中で逃げた。
それから、どこをどう走ったのか。
なんとか外へ出て車に乗り込み、明るい街中まで一気に車を走らせた。
彼女は泣きじゃくりながら話し始めた。
「裸のおじいさんがいたの。真っ暗だったのに、背の曲がった骨と皮だけのおじいさんが見えたの。」
「何かされたの?」
「私の手にかみついたの!」
ルームライトの薄暗さでも確認できるほど、彼女の左手には人間のものと思われる歯型がはっきりと残っていたそうだ。

10年経った今、歯型は消えているが、中ノ沢病院跡の近くには二度と行きたくないと話していた。

 

 

多良崎城跡(茨城県)

 

ゴールデンウィーク中に仲の良かった同僚の男女4人で、心霊スポットへ行くことになった。

身近な割にはあまり行ったことのない場所ということで、「多良崎城跡へ至る道」と「多良崎城跡」の2つの心霊スポットが連なる場所に決定。
僕は昼間に何回か通ったことがあったので友達が運転手、僕がナビ担当で車を走らせた。

国道245線を海浜公園前から日立方面に向うと、やがて右側にコンビニがある交差点が見えた。
そこを左折してしばらく行くと右側に「勝田ゴルフ倶楽部」がある。
ゴルフ場を過ぎて右折すると「多良崎城跡へ至る道」があり、ゴルフ場の側道を少し進むと左側に「多良崎城跡」が見えてくる。

「多良崎城跡へ至る道」には、なぜかバイク通行禁止の標識がある。
ガードレールを見ればボコボコ。ここを夜バイクで通ると、女の幽霊を見て事故るという話。
復旧しても復旧しても、事故が後を絶えないからそのままにしているのか。

しばらく進むと城跡の石碑があったので石碑の前に路駐。
みんなで車を降りて城跡へ向かう林道へ。
女の子が突然転んだので、
「気を付けなよ。」
と声をかけると
「女の人の声が聞こえたの!耳元で。それで腰抜かしちゃった!ヤバいよここ、戻ろう。」
女の子の手を取って立たせてあげると、あたりに霧がかかってきた。
ひんやりした空気が流れてきて、急激に視界がさえぎられる。
皆恐怖に怯えて、4人で手をつないで車へダッシュした。
あわてて車に乗り込む俺達。濃霧が車を取り囲み、先が全く見えない。
急いでエンジンをかける。
突然、女の子が泣き出した。林道を指さし、
「女の人が歩いてくる!もう無理!早く逃げて!」

県道に出ると霧など全くない。 その前兆すらない。
霊の話を聞いたことはあったが、霧は聞いてなかった。
あんな霧の中をバイクで走ったら、事故るに決まってる。
もう二度と行くのはやめようと、4人で話し合った。

 

五月山(大阪府)

 

「きれいな夜景ね。」
私たちは五月山ドライブコースの中間にある展望台から大阪の夜景を楽しんでいました。
大阪平野は夜光虫が光を放つ静かな海のようでした。

5年前、車の免許を取り立ての私は、当時の彼を助手席に乗せて夜のドライブによく出かけていました。
大阪の五月山というドライブコースは、日中は係員がいて通行料がかかりますが夜は無料で通り放題。
料金所から5分~10分ほど、曲がりくねった道を上がれば中間の展望台があります。
見渡したところ私たちだけしかいません。

「ちょっとトイレ、行ってくる。」
彼が展望台の隅の方にある簡易トイレへ。
女性トイレはちゃんとドアがありますが、男性はもろ見え。
彼のトイレ姿を眺めてると、彼が横の女性トイレの方をチラチラ見ます。
どうしたんだろ?と思っていると、彼が小走りに戻ってきました。
「ここ、ほかに誰もいなかったよな。」
「だと思うけど。」
「横で水の流れる音みたいなのがずっと聞こえる…。」
とにかく夜景をさっと見て帰ろうという話になり、ふたりで展望台へ向かいました。
ベンチに座ると、背後からヒソヒソ話のようなたくさんの小さな声がします。
振り返っても、誰もいません。
私たちは恐ろしくなり、急いで車に向かいました。
登ってきた道を下りながら何気なくバックミラーでトイレを見ると、トイレ付近にだけ霧がかかっているようにかすんでいました。
帰ってから私は高熱を出して3日ほど寝込みました。
そして後々、その展望台は自殺の名所と知りました。

 

 

廃病院(東京都)

 

俺達3人は、東京都の山奥にある廃病院の駐車場に車を停めました。
あたりは雑草が生い茂り、立ち入り禁止のフェンスもボロボロです。
フェンスの破れたところを潜ったら廃病院がありました。
闇の中にもいっそう濃く黒々と建っています。
当然外灯もなく、明かりと言えば3人が持っている懐中電灯のみ。
「玄関から行ってみるか。」
「いきなりかよ…。」
俺は少々弱気。
「じゃあ、初心者のために建物の周りを歩いてから入るか?」
「まず慣れることが肝心だからな。」
ふたりはからかうように笑いました。
しばらく建物の周りを歩いていると
「上を見てごらん。」
その声につられて、俺は懐中電灯を建物の3階にある窓へと光を向けました。

窓ガラスに光が反射して見えにくいのですが、どうも女の顔のようなものに見えるのです。
友人ふたりも懐中電灯を当てて、
「やっぱり見えるよな。」
と顔を合わせました。
しかも白い手のようなものが見えて、手招きしているようにも見えます。
「行ってみるか。」
「今夜は止めておいたほうがいい…かな。」
どうしようかと話し合っていたその瞬間、
「ガシャーン!」
突然凄い物音が廃病院内で響きました。
まるで大量のガラスが床に落ちて割れたような音。
俺達は逃げるように廃病院を後にしました。

そしてその一週間後。また3人で集まる機会があり、廃病院の話をしました。
「最後に聞こえた、あの音…怖かったよな。」
「あんなの物音だろ?それより窓に映った女だよ。」
「あぁ、懐中電灯照らしたあの窓だろ?」
「そうそう、さすがだよな、霊感あるとわかるんだな。上を見てって言われて何事かと思ったけど。」
「はぁ?俺言ってねえし…。」
「じゃあ、お前?」
「いや…俺じゃない。」
じゃ…誰だよ!!
俺ら3人は真っ青になりました…。

 

 

広瀬団地(群馬県)

 

「銀行員が大金を持ったまま行方をくらました。」
銀行の集金係りだった男性が、ある日の集金中に行方不明となった。
残された家族は世間から白い目で見られ、耐えかねた母子は心中してしまった。
しかし、数日して事件の真相が判明した。
実は、男性は集金中に強盗にあい、殺害されていたそうだ。

一家が住んでいたのは、古びた団地である広瀬団地。
この団地は事件、事故が頻繁に起こることでも有名だったという。
広瀬団地の家族が暮らしたその部屋はしばらく無人となった。
しかし、事件のほとぼりが冷めた頃、新しい入居者を迎え入れた。
しかし3日も経たずに退去してしまった。
その後も新しい入居者が部屋に入ったが、数日ともたなかった。

最終的に肝の据わったその筋の人が入居したが、彼らも瞬く間に部屋から逃げるように去ってしまった。
こうした事態に耐えかねた団地管理者はようやくその部屋を廃棄することにした。
室内の家具などを処分するため解体業者を呼んだのだが、 その業者すら家具を運び出す途中で逃げてしまったそうだ。
しばらく家具を積んだトラックさえ放置してある始末。

いったい、その銀行員家族の住んでいた部屋で何があったのか。
その団地は、今はもう取り壊されて月極め駐車場となっている。

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