寺生まれのTさん 全50話 / Part 2/3

寺生まれのTさん 全50話 寺生まれのTさん

寺生まれのTさん』 全50話

 

【1話 – 20話】

 

【21話 – 40話】

 

【41話 – 50話】

 

 

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21. お守りの中身

或るところに貧しい母子家庭だが
仲良く助け合って生活していた母と娘がいた。

母親は娘を育て、大学を卒業するまで一所懸命に働き、
娘は家事の手伝いをしながら受験の勉強をしていた。
そして大学受験の時、母親は手作りのお守りを娘にプレゼントをした。

母「頑張ってね。これはお母さんからのお守り」

娘「ありがとう。大事に持っていくね」

母「気をつけて。お守りって中身を空けると
効果がなくなるから空けちゃだめよ」

娘は母親を心から感謝した。そして大学にも合格し、
その後も勉強を怠ける事なく大学生活を終え、就職。
やっと社会人になり、初任給で母親へ旅行をプレゼントした。
ところがその旅行の途中で母親は、
不慮の事故で突然この世を去ってしまった。

いきなり一人ぼっちになってしまい、悲しみに暮れた娘。
その時、受験の時にもらったお守りを思い出し、
娘は母親の「空けるな」という言いつけも忘れ、
急いでお守りを開けてみた。
中には紙切れが。そしてその内容は…

「破ぁ!」いつの間にかその娘の背後に立っていた寺生まれのTさんが叫ぶと同時に、
娘の掌の中のお守りは青白く輝き、そして空気に溶け込むように消滅した。

「・・・すまん。あんたがお母さんにもらったお守りは、
俺が手違いで消してしまった」

「手違い?」

「俺のミスだ。もう中身を確認できないが、
お母さんは間違いなくあんたを愛していた。それだけは信じてくれ」

そう言ってはにかむように笑うと、Tさんはそそくさと部屋を出て行った。
寺生まれってスゲぇ。俺はそう思った。

 

 

22. ビデオテープ

ある4人家族がとある地方の旅館に宿泊。
深夜に娘か母親がトイレで惨殺されているのが発見された。

全身を刃物で滅多刺しにされ、顔面は誰だか判別がつかなくなる程
斬り付けられていた。

死体には舌がなかった。

トイレには格子のついた幅30・、高さ10・程の窓と小さな通風孔があったが、
とても人の入れる大きさではない。

カギもかけられていた。誰がどこから侵入してきたのか・・・。
警察はその旅館を経営している夫婦、
その息子、近辺の変質者などを聴取したが、
現場が密室だったこともあり、迷宮入りになるかと思われたが、
ある日、旅館経営者夫婦に付き添われたその息子が署に出頭。

「近所の目もあり、なかなか正直に話すことができなかったが、
とんでもないことになったので、お話します」

「息子は盗撮が趣味で再三注意していましたが、
事件当夜もビデオカメラで天井裏から個室を撮影していていたのです。
撮影していると格子のはまっている小窓のガラスが開き、
ガラスの破片を持った小さな・・・、いや、
このビデオテープに一部始終がはいっていますので・・・。」

息子はビデオテープについて訪ねられると、恐怖が蘇ったのか半狂乱に。
精神に異常をきたすほどの何かがこのテープに入っているのかと思い、
捜査員達もテープを再生するのを恐れた。

そのテープには排尿する女性を俯瞰で撮影した映像が収っていた。
和式便器にしゃがんでいた女性が立ち上がろうとしたその時、
小窓からガラスの破片らしきものを握った小さな、
15~20・程の老婆が音もなく飛び込んできた。
女性は悲鳴をあげる間もなく咽を掻き斬られ、
そして顔中を、体中を斬り付けられ・・・。

女性が息絶えると、小さな老婆は死体から舌と頭皮の一部を切り取り天井を見上げ、

「次はおまえだよ」

と言って小窓から出て行こうとしたその時、

「次があるなんて甘いことを考えちゃいけねえな、ばあさん」

そこには寺生まれのTさんが立っていた

そして青白い光を手から放つ「破ァッ」、

「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁあぁ」

そしてカメラ目線ではにかみながら
「俺のことは気にしないでくれ」そう言って出て行った
捜査員の中には、感動するもの、泣き出すもの、衝撃の余り失禁する者もいたという。
結局事件は未解決のままだが、警視庁に、件のビデオテープが 今なお保管されていると言う。

寺生まれってすごい改めてそう思った

 

 

23. 気味の悪い無言電話

ある女性が気味の悪い無言電話に悩まされていました。

「もしもし?」

「………」

「もしもし?」

「………」

いつもはここで恐くなって電話を切ってしまうところでしたが、
我慢できなくなって、彼女は叫びました。

「いい加減にしてよね!」

すると受話器のむこうから、押し殺したような声が聞こえたのです。
相手が喋ったのはこれが初めてでした。

「…殺してやる…」

さすがに恐くなって身の危険を感じた彼女は、
だめでもともとと警察に相談してみました。
ところが最近は、そういったストーカーの犯罪が深刻化しているためか
警察は詳しく話を聞いた上で彼女の電話に逆探知機を設置して
捜査を行ってくれることになったのです。

次の日もやはり、無言電話はかかってきました。
慎重に受話器を取り上げ、耳に押し当てる女性。

「もしもし?」

「…殺してやる…」

昨晩のあの声でした。そのときです。
彼女の携帯電話が鳴りました。警察からです。

「すぐに部屋から出なさい!」

「は?」

「逆探知の結果、電話はあなたの家の中からかかっています。
犯人はあなたの家の2階にいるんですよ!」

その時「破ァ-!」2階から声がした。

恐る恐るのぞいてみると、
Tさんが階段から男を担ぎ降りてくるところだった

「危ないところだったな。まったくこんな
可愛い子をストーカーなんて太いヤローだ」

寺生まれってすごい、改めてそう思ったけど
不法侵入はTさんも同じなので一緒に警察連れてかれてしまった

 

 

24. 友達だよな

4人の若者をのせた一台の車が、夜の山道を走っていた。
やがて彼らがたどり着いたのは“出る”と噂されている峠のトンネル・・・
いわゆる、肝試しである。

トンネルは噂がたつだけあってなかなかに無気味な雰囲気であったが、
4人もいればさすがに心強く、怖さもあまり感じない。
彼らは口々に「たいしたことないじゃないか」などと
軽口をたたきながらトンネルの前に集まると予定通り記念撮影を行い、再び車に乗り込んだ。

ところが、4人全員がとっくに乗り込んでいるのに、
なぜか運転席に座る若者は車を発進させようとしない。

他の3人は運転席の若者に向かって、
どうしたんだよ、早く出せよなどと文句を言った。

するとその若者は仲間たちの方に振り向き、真剣な表情でこんなことを聞いてきた。

「俺たち・・・友達だよな?なにがあっても」

仲間たちは何いってんだよ、当たり前じゃないかと口々に答える。
それを聞くと運転席の若者は、泣きそうな顔で仲間たちにこう言った。

「じゃあ・・・俺の足下を見てくれ」

言われて彼らが若者の足下を覗き込むと・・・なんと、
車の床から2本の白い手がはえていて、
その手が運転席の若者の足をがっちりと掴んでいたのだ!

「ああ、俺達は友達だ、何があってもな。破ァッー!」

寺生まれのTはそういってそいつの脚をつかんでた何かを吹き飛ばした
お陰で俺達は今でも時々連絡をとりあったり飲みに行ったりしている

 

 

25. 彼女が誰かにメールしてた

俺の部屋に彼女が遊びに来た時に、
気が付いたら彼女が誰かにメールしてた。

『誰にしてんの?』って聞いても
『ん?ちょっとね』って教えてくれない。

ムカ~っときて、『どーせ男じゃねーの?!』って怒鳴り気味に言ったら、

『○○○(俺の名前)だって、どーせ女からメール来てるんでしょ!!』
って逆切れしてきたから、

『はあ?俺がいつメールしてる?疑うんなら見ればいいじゃん!』
ってポケットから携帯出して彼女の前でこれ見よがしに開いてやったら、
こんな時に限って誰かからメール来てやがんの~~、、、、
内心、しまった~って思いながら、

『・・・・広告か何かだろ、、』ってメール開けたら、件名は『無題』。

本文が
『後ろを絶対見ないで!何も聞かないで!
このメール見たら私と急いで部屋を出て!!』

読んだ瞬間、とてつもない不安感が俺を襲い、
たまらず振り返ってしまうと
ベランダから青白い肌をした、闇のように黒く長い髪をした女が
此方をにらみつけているではないか!

俺は腰が抜けてしまい、動く事ができなくなってしまった!!
するとその女の後ろに人影のようなものが現れた!
と思った次の瞬間、目の眩む様な輝きを帯びた右腕がその女を貫いたではないか!

「破ぁー!」

謎の人影は大学時代の先輩、Tさんだった

「タバコを買いにいった帰りに不穏な雰囲気を感じたんでな……。
おっと、若いお二人のジャマをしちゃいけねえな。あばよ」

Tさんはそうとだけ言い残してベランダから
颯爽と飛んで闇に消えていった。

それにしてもマンションの5階だというのに、
驚異的な跳躍力で瞬く間に駆けつけ、あっという間に除霊をしてしまったのだ。
寺生まれってスゴイ、改めてそう思った

 

 

26. 同じ学校の女の子

ある田舎町の高校で写真部に所属するオタク男が、同じ学校の女の子に片想いした。
彼女は町外れの古い家でおじいさんと2人暮らしで、

おじいさんの面倒をよくみる、とても優しい子で、みんなから人気があった。
そんな彼女に惚れた彼は、写真のモデルを頼んだりして付き合い、
やがて2人は恋人のような関係になる。

高校を卒業した後、上京を望む彼は、彼女も誘うが、
彼女は年老いたおじいさんを残していく事はできなかった。
彼女のおじいさんの存在がだんだん疎ましくなってきた彼は、

なにかにつけて「おじいちゃんが・・・」と言う彼女に

「その、おじいちゃんが、おじいちゃんが、というの止めろよ!」
と冷たく当たる。

そして、彼が旅立つ日になり、彼女の元へ別れを告げにゆくと、
彼女は「私も連れていって」と懇願する。
彼は「でも、おじいさんはどうするんだよ?」と問うが、
彼女は「おじいちゃんならもう大丈夫」と言う。

不審に思った彼が彼女の家に上がると、

彼女のおじいさんは血まみれになって死んでいた。
そして彼の後ろから血のついた包丁を取り出した彼女が、

「おじいちゃん、今寝ているから起こさないでね」と微笑んだ。

彼は恐怖のあまり『破ァーッ!!!』と叫んで一目散に逃げ出し、
この町を離れていった。

「霊よりも怖いものもこの世にはあるんだ」

Tさんははにかみながら「ヤンデレには気をつけろよ」とだけ残して帰っていった
寺生まれってスゴイ、改めてそう思った

 

 

27. ダイバー

私は仲間のダイバーと二人で,あるダイビング・スポットを潜りました。
どんどんと深く潜って行ったのですが,ある地点で海底の異変に気づいたのです。

何かおかしい。

よくよく見ると,海底には一面に人間が生えていたのです。
連れのダイバーを見ると,呆然として固まっています。
海底から生えている人間の顔はどれも同じで,美しい少女でした。
どうしたらいいのかわからなくてしばらく眺めていると,
いつのまにか連れのダイバーがすぐ側に来て,
私の肩を叩き,ある方角を指差しました。

その方角を見やると,ダイビングの装備をまったくしていない,
至って普通の格好をした老人が鎌で少女たちを刈り取っているのです。

無表情だった少女は,刈り取られる瞬間,何ともいえない苦痛の表情を浮かべます。
海中でも叫び声が聞えてきそうな表情でした.
しかし,その顔も,やがて切り取られた足下から広がる少女の血によって
見えなくなってしまいます。

そうして老人は少しずつ私たちの方へ近づいてきました。
やがて,私たちのすぐ側までやってきた老人は,
完全に固まっている私たちの方へ顔を向け,にやりと笑い,
手にした鎌を差し出しました.まるで

「お前たちもやってみるかい?」

とでも言わんばか『破ッ!』
青白い光があたりを照らし、
老人と少女たちは泡となって消えてゆきました。

「冒険もほどほどにな」

そういってTさんは水中でタバコをふかしながらあっという間に浮上してゆきました。
機材もなく深海に来て、しかもタバコをふかし、
急浮上してもなんとも無い寺生まれって、すごい、改めてそう思いました。

 

 

28. のこぎり

俺は久々に嫌な夢を見た
ノコギリを持った男が俺の部屋に立っている・・・
俺は恐怖のあまり動くことが出来ず、ただその男を眺めている。
すると男は突然ノコギリで家の柱を切り出した!
思わず「やめろ!!」と叫ぶ俺

するとゆっくりこちらを振り返る男
その顔は、見るも無残に潰されて顔中に釘が打ち付けてある
「お前もこうなりたいのか?お前もこうなりたいのか?
してやろうか?してやろうか?」

ゆっくり俺に近づく男・・・俺は金縛りにあったように動けず、そして・・・ 男のノコギリが俺の顔に・・・

そこで目が覚めた

嫌な夢だ、後味が悪い・・・俺は水を飲もうと立ち上がった
俺の目に飛び込んできたのは、無残にも傷つけられた家の柱!
俺は恐怖で腰を抜かしてしまった、あの男は現実に!!
そして次はホントに俺の顔が刻まれてしまうのではないかと

その日のバイトで、俺は寺生まれで霊感の強いTさんにその夢を相談してみた
しかし、Tさんは「しょせん夢だろ?」と冷たい対応
なんとしても引き下がれないので必死に何とかしてください!と頼み込むと
「それじゃあ俺の作ったお守りやるからそれを枕元に置いて寝ろ、
そうすりゃ大丈夫だ」とお守りを渡してくれた

次の日、不安ながらも朝の早かった俺は床に付いた、そこでまた夢を見た
「つづき、つづき、つづき!つづき!つづき!つづき!」
またあの男だ!!俺は夢の中でTさんのお守りを探した
しかしどこにも見当たらない・・・
「これ?これ?これ?」なんとお守りを男が持っている!もうおしまいだ!!

だが次の瞬間、お守りが眩い光に包まれ、どこからとも無くTさんの声が
「破ぁ!!」
お守りは光と共に飛び散り、男の半身を吹き飛ばした。

「あああああああああ」
半身でのたうつ男を尻目に俺は夢から目覚めた
枕元にあったはずのお守りはどこをどんなに探しても見つからなかった・・・

その話をTさんに話すと
「半身を吹き飛ばした?
やれやれ、威力は親父の作った奴の半分か・・・」と呟くTさん
寺生まれはスゴイ、俺は感動を覚えずにはいられなかった。

 

 

 

29. 冷蔵庫を開けると

私が牛乳を飲もうと冷蔵庫を開けると、誰かの生首が入っていました。
私はビックリして、思わず冷蔵庫のドアを閉めてしまいました。
きっと今のは何かの見間違いであろうと思い直し、
再び冷蔵庫を開けると、なんとそこには誰かの生首が白目を向いていたのです。
私は思わずドアを閉めましたが、きっと疲れていて見えもしないものを見てしまったのだと思い直し、
覚悟を決めて、改めて冷蔵庫を開けました。
するとそこには、何者かの生首が白目を向いて、ほのかにほくそ笑んでいるのです。
私はビックリして、冷蔵庫のドアを閉めましたが、きっと幻覚を見たに違いない、
最近あまり寝てないから、見えもしないものが見えてしまったのだと思い直し、
冷蔵庫を開けました。するとそこには、白目を向いた生首が入っていたのです。
驚いた私は、気がつけば冷蔵庫の扉を閉めていましたが、気のせいだと思い直し、
再びドアを開けると、やっぱり白目を向いた生首が、ほのかに笑っているのです。
思わず扉を閉めてしまいましたが、きっと幻覚に違いありません。最近寝てなかったから。
と、思い直し冷蔵庫を開けると、やっぱり誰かの生首が入っているのです。
思わず冷蔵庫を閉めた私でしたが、これは何かの間違いに違いない。
疲れているから見えもしない物が見えたのだと思い直し、冷蔵庫を開けると、
そこにはなんと白目を向いた生首が……、うわっと思い冷蔵庫を閉めましたが、
きっと疲れのせいで幻覚を見たに違いないと自分に言い聞かせ、
再び冷蔵庫を開けると、なんと誰かの生首が白目を向きながら笑っているのです。
思わず冷蔵庫の扉を閉めましたが、きっと気のせいで、
何かと見間違えをしたのだと自分に言い聞かせ、扉を開け直すと、
なんとそこには、何者かの生首が白目を向いて笑っていたのです。

「さがってろ!!!」
とっさに後ろから聞こえた声の方を向くと、そこには寺生まれで霊感の強いTさんが!
Tさんは冷蔵庫の中の生首に向かって「破ぁ!!!」と叫ぶと、
生首はおいしそうなケンタッキーフライドチキンに変わってしまった!!!
「おそらく遠まわしに何かの恨みがあったんだろう、気をつけるこったな」
Tさんははにかみながら、「食べたくなるなるケンタッキー」とだけ言い残して帰っていった。
寺生まれってスゴイ、改めてそう思った。

 

 

30. 不審な現象が起こるアパート

同級生の入居したアパートで、不審な現象が起こるという話を聞き、男3、女2で泊まりに行きました。
一般に幽霊というのはシャイで、一見さんが来ると現象が起こらないと聞いていましたが、
夕方に部屋を尋ねた途端から微かなラップ音が、夜半には扉の開閉が起こりました。
眠ると金縛りに会うと聞いたので、面白がって全員で眠る事になりました。

そして、金縛りが起こったのです。
怖くてギュッと目を瞑ったのですが、こじ開けられるように瞼が開き、
壁の前にたたずむ、半身が潰れた様な姿の恐ろしい女性が目に入りました。
どのくらいそうしていたかは判りません。
恐怖と金縛りで硬直している私達の耳に、
「美人だ・・・」という呟きが聞こえると、信じられない事が起こりました。
男の子の一人が急に立ち上がると、幽霊の前まで行き、名前や年齢を聞き始めたのです。
幽霊はビクッと体をすくませると、怯える様に消えていきました。(全員その様に見えたそうです)

幽霊が消えると体が動かせるようになり、電気をつけました。
全員が壁の前に立ちすくむ男の子に詰め寄ります。
「…消えちゃった。くそッ、少し強引過ぎたか?」
「…いや、そういう問題では無いんではないかと…」
「潰れてない方の顔見たろ?めちゃくちゃ美人だったぞっ!」
「いや、気が付かなかった…って言うより、普通、潰れてる方しか目に入らんと思うぞ?」
「「「うん」」」
「質問があるのだけれど。T君、どうして金縛りが解けたの?」
「いや、美人だったし…必死だったし…。気合かな?」

「今なら問答無用で消し飛ばすんだがな…。フフッ、あの頃は俺も若かったよ」
そう言って、学生時代の思い出話を締めくくったTさん。
寺生まれってスゴイ、改めてそう思った。

 

 

31. 何の変哲もない12階建てのマンション

全国には、いろいろな心霊スポットと呼ばれる場所がありますね。
~で~をしたら呪われる、といった話も様々です。
トンネルの中で電気を消して、クラクションを3回鳴らすと…とか、
コックリさんの途中で指を離すと…とか。
今回私がお話しするのは、そういった類の話で、
否応なく『呪い』というものの存在を思い知らされた話です。

夏も終わりかけたある日、私たち2人は地元で噂の心霊スポットに出かけました。
そこは現在も人が住んでいる、一見して何の変哲もない12階建てのマンションでした。
そこの屋上には、以前に飛び降り自殺した男の霊がいると言われていました。
そして、そのマンションの屋上から1階までジャンプしたら呪い殺される・・とも。
私も友達も霊の存在は信じていませんでした。
案の定、友達は言いました。
「呪いなんてねーよ。一緒にジャンプしようぜ」
いつもなら二つ返事でオッケーするものの、その日は嫌な予感がしました。
今にして思えば、それがシックスセンスというものだったのかもしれません。

僕が返事に戸惑っていると、友達は、
「チッ、ヘタレが!今から呪いなんてないってところ、見せてやるよ!」
そう言うやいなや、屋上から飛んで見せました。
僕は身を乗り出して上から見守っていましたが、友達が地面に着地した瞬間、
脳みそや内臓が飛び出て、ただの赤い塊になっていました。
私は、やはり呪いというものは存在するんだ、遊び半分で霊を呼び出してはいけないんだと、
いつまでも子猫のように小刻みに震えていました。

すると、「破ぁ!!」と大きな声が聞こえた。
下を見ると、潰れてぐちゃぐちゃになった筈の友人が、打ち身だけで助かってるではないか!
「やれやれ、ヒーリングってのは、慣れてないぶん力を使うな……
おい、屋上のやつら、早く救急車を呼べ!」
寺生まれってスゴイ、改めてそう思った。

 

 

32. T君

小学生のとき、足し算や引き算の計算、会話のテンポが少し遅い、T君という子がいた。
でも、幽霊と話すことができ、そのおかげか除霊が上手な子だった。
T君は、よく友達の幽霊を説得して追い払っていた。
幽霊と話せるT君の姿には、子供心に驚嘆した。

担任のN先生は算数の時間、解けないと分かっているのに答えをT君に聞く。
冷や汗をかきながら、指を使って「ええと、ええと、」と答えを出そうとする姿を、周りの子供は笑う。
N先生は、答えが出るまでしつこく何度も言わせた。
僕はN先生が大嫌いだった。

クラスもいつしか代わり、私たちが小学6年生になる前、
N先生が違う学校へ転任することになったので、全校集会で先生のお別れ会をやることになった。
生徒代表でお別れの言葉を言う人が必要になった。
「先生に一番世話をやかせたのだから、T君が言え」と言い出したお馬鹿さんがいた。
お別れ会で一人立たされて、どもる姿を期待したのだ。

僕は、T君の言葉を忘れない。

「ぼくを、普通の子と一緒に勉強させてくれて、ありがとうございました」
T君の感謝の言葉は10分以上にも及ぶ。
大人は誰も信じてくれない除霊を信じてくれたこと。
放課後つきっきりで、そろばんを勉強させてくれたこと。

その間、おしゃべりをする子供はいませんでした。
N先生がぶるぶる震えながら、嗚咽をくいしばる声が、体育館に響きました。

と、その次の瞬間、
「お父さんに、『除霊師は、普通の人に正体を記憶に焼きつけてはいけない』。そう言われているんです。
…寂しいけど、除霊師の規則なんだ。
皆とはこれでお別れです」
泣きそうな声でそう言うと、T君は呪文の詠唱を始めました。
その長い詠唱が終わった後、T君はいつものように「破ァ!!」と叫ぶと、僕の目の前が真っ白になりました。

ようやく目が慣れて来た頃、そこにはT君の姿は無く、お別れ会は何事も無かったかのように進められていました。
僕は隣に座ってた子に、「T君どこに行ったの?」と尋ねると、
その子は「え?T君?誰のこと?」と、まるで最初からT君はいなかったかのように返されました。

僕は今でも、T君の姿が脳裏に焼き付いて離れません。
あれは夢でも妄想でも無かった。
確かにあの時、あの場所にT君は実在したんだ。
T君は今でもどこかできっと、苦しんでいる人の除霊に協力している。僕はそう思ってます。
寺生まれはスゴイ、僕が最初で最後にそう思った出来事でした。

 

 

33. 怖がりな妹

今日、両親と弟が出掛けて、家には俺と妹(中2)だけ。
暇なんでちょっと意地悪してみた。

何となく居間で一緒にテレビを見る。結構風の音が強い。
妹「今日風強いね」
俺「カシマサンが来るかもね」
妹「え?何それ?」
俺「…何だっけ、忘れた。その携帯で調べてみれば?」

15分後。
ずっと携帯を握って固まってる妹。
俺「そういや、今日友達の家に泊まるから(嘘)。21時くらいに家出る」
妹「え?そんなの聞いてないよ…っていうか変なもの読ませないでよバカ!」
読むと来る系の怖い話を集めたサイトを、読み通しちゃったらしいw

「お兄、友達の家に泊まれていいな…」「ねえ、今日は家で私と遊んでよー」
「パズルボブル一緒にやらない?」「今日テレビ面白いから、家に居たほうがいいよ?」
引き留め作戦に出る妹。
スルーして居間を出ようとすると、
「ちょっと待って!出来ればこの部屋から出ないで!ね?」

面白いので、非通知で無言電話掛けたり、影から物音立てたりして遊んでみた。
「お兄でしょ!ほんっと怒るよ?!もう、そういうのやめようよ…
ぅ…ぐっ…ひっ……(泣き始める)」

コン……コン……

窓がノックされた。風なんかじゃない。
確かに蒼白な手が、カーテンのスキマから見えた。
ここは2階だ…第一、俺も家の中から妹にイタズラをしている…そんな……
「破ァ!!!!!!!!」
一閃、青白い光弾が手を吹き飛ばした。
妹「だ……れ……?」
「ピーターパンさ」
窓から現れたのは、寺生まれのTさんだった。

妹は安心して眠りについた。
「女の子を泣かせるもんじゃないぜ。兄貴なら妹を守ってやりな」
やっぱり寺生まれはすごい、心からそう思った。

 

 

34. 家賃が異常なまでに安い

友人が引っ越しをした。
引っ越し先は築10年の一戸建てで、そこそこの広さもある良い家だった。
だが、家賃が異常なまでに安い。周囲の物件の半分程度しかないのだ。
俺たちは、「そんなに安いのっておかしい」「絶対いわく付きだぜ」「夜幽霊に気をつけろ」等と、友人をちゃかしていた。
やがてそいつは、「そんな事は絶対に無い。来てみればどんなに良い家かわかる」と言い始めた。
そこで、数人でそいつの家に遊びに行くことになった。

その家に入ると、やはりどこかイヤな気配がした。
そいつはしきりに、「どうだ、何もないだろ。おまえらは僻んでいるだけなんだ」等と言っていた。
一階を回った後、階段を上り二階を見て回った。
そこで、昔不動産関係の仕事をしていた家のことに詳しい男が首を傾げた。
「どうかしたか?」と聞くと、
「一階と二階の広さが違う。二階にはもう一部屋あるはずだ」と言う。
言われてみると確かにおかしかった。
二階の廊下の先に、もう一部屋あるはずだった。

問題の廊下にみんなで行って、突き当たりの壁をよく見てみると、壁紙が周りのものより新しい事に気がついた。
そこで、壁紙を引き剥がしてみると、男の予想通りに扉があった。
何があるのかとドキドキしながら戸を開けようとしたが、鍵がかかっていて開かない。
俺たちは、友人の許可を得て扉を破ることにした。

数度の体当たりの後、扉は開かれた。
部屋の中には何もなかった。
ただ部屋の壁すべてに、青いクレヨンでびっしりとこう書かれていた。

『おとうさんおかあさんごめんなさいここからだしてください
おとうさんおかあさんごめんなさいここからだしてください
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてここからだしてここからだして
ここからだしてここからだしてTさんだしてくれてさんきゅう』

寺生まれってスゴイ、改めてそう思った。

 

 

35. 人類滅亡のシナリオ

人類滅亡のシナリオは、ある日唐突に始まった…。

いつもの様に深夜番組を見ていたら、ニュース速報が入った。
『米国政府はハッブル宇宙望遠鏡により、地球に迫る大質量隕石の存在を確認したと発表…』
それが第一報だった。
正直、俺はハァ?と思った。
その時は、その隕石がどれだけヤバイのか全く分からなかった。
しかし、その20分後にテレビが次々に特番に切り替わり、そのまま通常番組に戻る事は無かった。

番組はどれも同じような情報を繰り返していた。
隕石の直径は27㎞以上であると観測され、恐竜を絶滅させた隕石の2~3倍の大きさ。
この大きさだと、人類の持つ全ての軍事兵器を用いても衝突を回避出来ない。
衝突後の衝撃波や津波、地震や噴火などの災害も予測されていた。
隕石は異常な速さで地球に接近しており、その分ダメージも莫大なものとなる。
そして、一体なぜ人類は今までこの隕石の存在に気付かなかったか…などであった。

スーパーコンピューターの計算によると、隕石がインド洋上で地球に衝突するまでわずか93日と言う事だった。
各国の政府は次々に空港閉鎖を宣言した。
その一方で、全ての国の軍事機密が共有され、あらゆる国のミサイルがアメリカを中心とした国連の指揮下に入った。
北朝鮮でさえノリノリでこれに参加した。
全世界協議が開かれる中、各国の兵器の最終調整が進み、
遂に全人類の期待が寄せられる中、世界中の軍事兵器が隕石に向けて一斉に火を吹いた。
…しかし、結局隕石の接近を食い止める事は出来なかった。

更に時間が経つと、海外では暴動も起きているらしかった。
その映像はネット動画では見られたが、テレビでは報道されなかった。
日本は電気ガス水道などのライフラインも確保され続け、
いさぎよく覚悟を決めた国民の意識も穏やかで、他国に比べ平和だった。
隕石がいよいよ近づくと、テレビでは人類の歴史を振り返る番組や自然の風景が流れたりした。

そして、とうとうアマチュアの天体観測家が、望遠鏡で隕石の姿を確認するまでになった。
隕石はライブカメラでも中継され続けていたが、
俺も望遠鏡を使って自分の目でそれを見てみたくなって、夜中の大学に忍び込む事にした。
ゼミの教授の研究室に、大きな望遠鏡がある事を知っていたからだ。
大学の正門に近づくと、山梨ナンバーの軽トラが一台ハザードを点滅させて止まっていた。
誰かに見られたらさすがにヤバいよな…と思って運転席を覗くと、
そこにいたのは寺生まれで霊感の強いT先輩だった。
「よぉ、遅かったじゃねえか。待ってたんだぜ」
Tさんは笑顔でタバコをくわえたまま、運転席から身を乗り出してそう言った。

俺はTさんと一緒に望遠鏡を盗み出し、中央道を山梨に向かった。
高速を走りながら、Tさんと取りとめのない会話が続いた。
Tさんとこんなに話すのは初めてだった。
無精ヒゲを生やしたTさんの頬は、以前より痩せて見えた。
「Tさんと会うの物凄い久し振りだけど、どうしてたんですか?」と聞いてみた。
Tさんはタバコの煙を吐きながら、
「ああ、山に籠もって色々やってたんだけどな。今回はマジでヤバかったよ…何回も死にかけた。
だけど、おかげで今の俺は物凄げぇぞ」
Tさんは真顔でそう言うと、チラリと俺を見た。
「そう言えば、俺が夜中に大学に侵入するのも知ってたみたいですけど…」
「ああ、知ろうと思えば何でも分かるよ」
Tさんはくわえ煙草のままで笑っていた。

話によるとTさんは、山から降りて動けなかった所を山梨の農家に救われたらしく、
地球の危機を知ったのも3日前だと言っていた。
「だからこの軽トラも俺んじゃねえんだよ。
でもちょうど良かったろ?都会じゃ星も見えないし、俺も山梨でトラック返すんだから」
Tさんと話していると、もうすぐ地球が壊滅する事がウソのように思えた。
目的地の山に着くと俺は望遠鏡をセットして、大分苦労した後に、ようやく問題の隕石を捉える事ができた。
望遠鏡のフレームの中でプルプルと小さく震えているその薄暗い塊が、人類を滅ぼすだなんて、
俺にはとても信じられなかった。
望遠鏡を覗き込んだTさんは、まるで子供の様にはしゃいでいた。
「よく楽しめますね。みんな死んじまうんですよ…」
俺は何だか急にやるせなくなってそう言った。
Tさんは顔を上げると、楽しそうにこう言った。
「何だお前、まだそんな事言ってるのかよ…これ覗いてみろ?面白いのが見れるから」
ワザと眉間にシワを寄せてそう言うと、望遠鏡を指差した。
俺は言われた通り覗いてみたが、別に何の変化もなかった。
その時、物凄いパワーがTさんの方向に流れて行く気配が感じられた。
…地震?屋外にいるのに、大地が大きく揺れているのが分かった。
“ゴゴゴォ”という激しい地鳴りと共に、
せっかく捉えた隕石の姿も、望遠鏡の視界から外にはみ出す程大きく揺れていた。
一体何が起きているのか見当もつかなかったが、俺は恐ろしくて顔を上げる事も出来なかった。
ふと大地の鳴動が止まって、隕石が再びフレームの中心に収まった…次の瞬間、
「破ぁ~っ!!」
望遠鏡の中の隕石に白い光弾が突き刺さるのが見えると、画面全体が真っ白になった。
「うぉっ!」っと俺は思わず声を出した。

…再び虫の声が聞こえ、望遠鏡が宇宙の暗闇を映し出した時、隕石の姿はもうどこにも無かった。
まるで何事も無かったかの様にタバコに火を付けるTさんの横顔を見ながら、
寺生まれってスゴい、改めてそう思った。

 

 

36. くねくね

よし、見るしかない。
どんな物が兄に恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる!
僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。
その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。
僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、
すごい勢いで祖父が、
『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見た『破ァ!!』
刹那……爆発する祖父の顔面。
すると祖父は見る見るうちに変体していった。
「ぬぅおおおおおおおおお!!」
「こんな小さな兄弟を罠にはめるとはな……」
寺生まれで霊感の強いTさんだった!
「神が貴様を裁けぬのなら、義の鉄槌を下すのは俺をおいて他に……」
すると変体した祖父が宙に浮いていく。
「破ァ!!」

僕は、わけの分からないまま、家に戻された。
帰ると、みんな笑っている。
そこには死んだはずの祖父もいた。
「この土地には親しい人に化けて出て心を食っちまう小悪党がいるのさ」
どこか物悲しそうに語るTさん。
寺生まれはスゴイ、俺はまたもやそう思った。

よく見ると、兄だけくねくねと乱舞していた。

 

 

37. ヤマノケ

そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。
通り過ぎる間も、「テン・・・ソウ・・・メツ・・・」って音がずっと聞こえてた。

音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。
近くでみたら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。
思い出したくもない恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。

俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!!」って 叫んだんだ。 叫んだとたん、そいつは消えて、娘が跳ね起きた。

俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘にあやまろうと思ったら、娘が 「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」 ってぶつぶつ言ってる。

「出ろ」

声のする方を見ると、車の前にTさんが仁王立ちしていた。
パニクった俺は、自分に向かって言ったんだと思い、思わず車のドアを開けてしまった。
しかし「自分だけ逃げちゃダメだ、娘を連れて行かなくちゃ、でも娘は今」とも思い、
慌てて助手席を見るとなんと娘はすやすやと眠っている。

俺は混乱してしまってTさんを見たが、顔がTさんの顔じゃないみたいになってた。
頼れる人間がいなくなった俺はもう泣きそうになりながらドアを閉め、何とかこの場を離れるためにダメ元でエンジンをかけようとした。

その途端Tさんが車のボンネットに飛び乗ったかと思うと
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」 ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見ながらつぶやきはじめた。
このときにはもう手が震えてエンジンなんてかけられなくなってた。

「出ろって!」
つぶやきの途中で突然怒号を発したかと思うとTさんは自分の顔面をぶん殴った。
するとTさんの身体からジャミラみたいなやつが勢いよく飛び出した。
Tさんは「破ぁ!」と叫ぶと、そいつに向けて青白い光球を投げつけ距離をとった。
光球はそいつの身体に触れたかと思うと激しい光を発して炸裂。
右腕を失ったそいつは山の奥に逃げていった。
「危ないところだったぜ。あんなもんがいやがるとはな。
遊び半分で山には来るもんじゃねえ。女連れなら特にな」
そう言って鼻血をぬぐうTさん。
俺たちを麓まで送り届けると山菜採りに戻っていった。
寺生まれはやっぱりスゴイ、俺は娘を抱きしめながら思った。

 

 

38. 八尺様

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると、
「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」と言った。
――何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。
と必死に考えたが、何も思い当たらない。あの女だって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし。

そして、「ばあさん、後頼む。俺はTさんを迎えに行って来る」 と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。

ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると、 「八尺様に魅入られてしまったようだよ。Tさんが何とかしてくれる。何 にも心配しなくていいから」

そのうち、じいちゃんが一人の男を連れて戻ってきた 「もう私が来たからには大丈夫だ」 Tさんはそう言うと、空に向けて手を伸ばすと「破ァ!」と叫んだ 途端にTさんの手から青白い光が現れ、村全体に広がっていった
眩しい光に反射的に目をつぶった瞬間、「ぼぼぼ・・・」という
かすかな悲鳴のような声を聞いた気がした

結局、よくわからないままに終わったが、それでも助かったことだけはわかった
じいちゃんとばあちゃんに見送られながら、
バイクで家に帰りながら寺生まれってすげえとそんなことを思った

 

 

39. 猿夢

「次は挽肉~挽肉です~」
いよいよやばくなってきました。「 ウイーン 」と近づいてきます。

(夢よ覚めろ、覚めろ、覚めろ、覚めてくれ)

「いや、次は終点だ」

いつの間にか向かい側の席に寺生まれで霊感の強いTさんが腕組みして座っていました。
「ただしお前らは地獄で途中下車だ!破ぁ!!」
掛け声と共にTさんの両手から青白い閃光が飛び出し、私の膝の上にいた小人を粉々に打ち砕きました。
「さてと、朝まで時間もあるし一眠りするか」
そのまま何事もなかったかのように夢の中でいびきをかいて眠ってしまうTさん。
寺生まれってスゴイ、改めてそう思いました。

 

 

40. 殺人サイト

1990年の10月、私がアメリカの大学で経験した話。

アメリカの学生はとにかく課題レポートを書かされる。
もちろんパソコンを使って仕上げるわけで、私の大学には
50台程度のコンピューターが整備されているラボがいくつもあった。
学生はここで夜通しレポートをタイピングするわけだ。

その日も私は相変わらずレポート作成に忙しかった。
夕食を済ませ、寮から荷物を抱えてコンピューターラボに入り、
パソコンの前に座った。
当時は来る日も来る日も同じような生活で、うんざりだった。

ここのパソコンはインターネットに接続されていた。
まだウェブブラウザが「モザイク」メインだった頃だ。
ウェブコンテンツも研究者の研究成果発表などばかりで、
さほど面白いものではなかった。
おまけに検索エンジンなどは進化しておらず、
URLはもっぱらページ制作者本人から口頭で教えてもらうことが多かった。

その夜、私はいつものようにレポートをしばらく書いていた。
その時、何気なく目をやったパソコンデスクに、鉛筆でURLが書かれていた。
学生がメモ代わりにしたんだろう。

気分転換にはなるだろうと思い、私はそのURLをブラウザに入力してみた。
しばらくすると画面にはページが現れた。信じられないページだった。
そこには薄暗い部屋で床に血だらけで倒れている男性の写真があった。
(今ではよく見るこのような画像ではあるが)
私はこのような残酷な写真に戦慄し、吐き気を催した。

よく見ると、画像の下にはこんな一文が添えられていた。
A guy in Michigan, aged around 30, Killed by me today
間違いない、殺人者が自らの犯罪を自慢するサイトだ。
私は何かとんでもないものを知ってしまったのではと思い、
すぐにラボを飛び出して寮に帰った。
翌日まで誰とも話すことが出来なかった。

次の日の朝。私は再度ラボに出向いた。
そして、昨日のウェブサイトが気のせいであることを信じてURLを開く。
現れたのは同じく薄暗い部屋の画像だった。
しかし、今回は床に倒れているのが
丸裸で仰向けになっている女性だ。左乳房に大きなナイフが刺さっている。
口、鼻、耳から血が流れている。

写真の下にはまたも一文が添えられていた。
A bitch in Michigan, aged around 30, Killed by me today

すぐに私は大学警察に行き、警官に相談した。
しかし、まだウェブがまったく メジャーでなかった頃だ。
「ウェブで殺人者が犠牲者の画像ファイルを掲載している」といっても、
うまく理解してもらえない。
それに恥ずかしい話だが私の稚拙な語学力も足かせになり、取り合ってもらえなかった。

恐怖と好奇心が一緒になった独特の心境で再度ラボに戻り、
そのウェブサイトのURLを入力してみた。

すると、その日数時間前まであった画像はすでになくなっていた。
その代わりに、なぜか私の住所と電話番号が書かれていた。
その後にメッセージが一文。

「You are the next star on my Web.」

あまりの恐怖に私は声すら出せなかった
なぜなら私の後ろにいつのまにか見知らぬ男が立っていたからである。

「ABU! NAI!」
その時だった、いきなり別の見知らぬ男が窓を蹴破り部屋に侵入してきた。

「SYOW TAI MISE RO !! HAAAAA!!!」
その男は明らかに日本語なのに無理して英語っぽく喋っていた。
痛々しかったが、その男が気合を入れた瞬間、私の後ろの気配が爆発するように消えた。

「ダイジョウブデ~スカ~?アノサイト トテモアーブナイデース」
聞くとその男の人はTというらしく、日本でお寺の跡取りをやっているらしい。
わざわざ日本から怪しい気配を嗅ぎ付けて助けにきてくれたそうだ。
寺生まれってやっぱり英語苦手なんだなあと思った。

 

寺生まれのTさん』 全50話

 

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