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『歩くさん』『コジョウイケトンネル』『失踪』など全5話|【短編 師匠シリーズ】洒落怖名作

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『住職への相談』『祖父の家』など全5話|【短編】本当にあった怖い話 師匠シリーズ
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主人公が出会ったオカルト道の「師匠」を中心に、様々な怪事件を描くシリーズです。ここでは『降霊実験』『壷』『歩くさん』『奇形』『コジョウイケトンネル』『東山ホテル』『失踪』『そうめんの話』『鍵』『師事』の10話を収録しています。個性的で魅力あふれる登場人物達や単に怖い話だけに留まらないクオリティーの高い物語などが受けて人気のシリーズとなっています。

 

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歩くさん

僕の畏敬していた先輩の彼女は変な人だった。
先輩は僕のオカルト道の師匠であったが、彼曰く
「俺よりすごい」
仮に歩くさんとするが、学部はたしか文学部で学科は忘れてしまった。
大学に入ったはじめの頃に歩くさんと、サークルBOXで2人きりになったことがあった。

美人ではあるが表情にとぼしくて何を考えているかわからない人だったので
僕ははっきりこの人が苦手だった。
ノートパソコンでなにか書いていたかと思うと急に顔を上げて変なことを言った。
「文字がね、口に入ってくるのよ」
ハア?
「時々夜文章書いてると、書いた文字が浮き上がって私の口に入りこんでくるのよ」
「は、はあ」
な、何?この人。

「わかる? それが止らないのね。書いた分より多いのよ。いつまでも口に
入りつづけるのよ。そのあいだ口を閉じられないの。私はそれが一番怖い」
真剣な顔をして言うのだ。
当時は電波なんて言葉は流通してなかったがモロに電波だった。
しかしただのキチ○ガイでもなかった。
頭は半端じゃなく切れた。師匠がやり込められるのを度々見ることがあった。

歩くさんはカンも鋭くて、バスが遅れることを言い当てたり、「テレビのチャンネル
を変えろ」というので変えると巨人の松井がホームランを打つところだったりした
ことがしばしばだった。
ある時師匠になにげなく歩くさんってなんなんですかねーと言ってみると
「エドガーケイシーって知ってるか?」と言う。
「もちろん知ってますよ。予知夢だか催眠状態だかで色々言い当てる人でしょ」
「それ。たぶん、歩くも」

「どういうことですか」
「あいつの寝てるところを見せてやりてえよ。怖いぞ」
どう怖いのか、よくわからなかったがはぐらかされた。
「エドガーケイシーはちょっと専門外だが、やつみたいな後天的ショック
じゃなく、歩くはおそらく先天的な体質だ」
「予知夢見るわけですか?」
「よく分らん。起きてるのかどうかも分らん。ただあたりもするし、外れもする。
お前が金縛り中にみるっていう擬似体験に近いのかもしれん」
僕は金縛り中に「起きたつもりがまたベットの中」という、わりによく聞く現象に
しばしばあっていたのだが、それが時に長時間、ひどい時は丸1日生活したあげく
巻き戻るということがあり、自分でも高校時代に金縛りノートを作って研究していた。
師匠がそのノートをやたら気に入り、くれくれうるさいのであげてしまっていた。
今思うと、歩くさんの体質を調べる資料として欲しがったのではないだろうか。

「先輩は歩くさんを一人じめしてるわけですか」
師匠はニヤっと笑って懐からフロッピーを出して振ってみせた。
それはタイミングが良すぎたのでたぶんハッタリだが、師匠がなんらかの
形で歩くさんファイルみたいなものを作っていたのは間違いない。

そんなことよりも僕がぞっとしたのは、歩くさんが卒業する時
「洪水に気をつけろ」みたいなことを僕に言ったことだ。
そのことをすっかり忘れていたが、僕は就職に失敗して今田舎に帰って
いるのだが、実家はモロに南海大地震が来たら水没しかねない立地
条件にあるのだ。
次の南海地震の死者は県内で最大3万人と最近の推計が出ている。
勘弁してくれ。マジで怖い。
あと何年で来るんだよー。メソメソ

奇形

俺にはオカルト道の師匠がいるのだが、やはり彼なりの霊の捉え方が
あってしばしば「霊とはこういうもの」と講釈をしてくれた。
師匠曰く、
ほとんどの霊体は自分が死んでいることをよくわかっていない。
事故現場などにとどまって未だに助けを求めているやつもいれば、
生前の生活行動を愚直に繰り返そうとするやつもいる。

そういうやつは普通の人間が怖がるものはやっぱり怖いのさ。
ヤクザも怖ければ獰猛な犬も怖い。キチガイも。
怒鳴ってやるだけで、可哀相なくらいびびるやつもいる。
問題は恫喝にもびびらないやつ。
自分が死んでいることを理解しているやつには関わらない方がいい。

といったことなどをよく言っていたが、これは納得できる話だしよく
聞く話だ。
しかし、ある時教えてくれたことは師匠以外の人から聞いたことがなく、
未だにそれに類する話も聞いたことがない。
俺の無知のせいかもしれないが、このスレの人たちはどう思うだろうか。

大学二年の夏ごろ、俺は変わったものを立て続けに見た。
最初ははじめて行ったパチンコ屋で、パチンココーナーをウロウロしていると
ある台に座るオッサンの異様に思わず立ち止まった。
下唇が異常なほど腫れあがって垂れ下がっている。
ほとんど胸に付くくらい、ボテっと。
そういう病気の人もいるんだなあと思い、立ち去ったがその次の日のこと。
街に出るのにバスに乗り、乗車口正面の席に座ってぼうっとしていると
前の席に座る人の手の指が多いことに気付いた。
肘掛に乗せている手の指がどう数えても6本あるのだ。
左端に親指があるのはいいのだが反対の端っこに大きな指がもう一本生
えている。
多指症というやつだろうか。
その人は俺よりさきに降りていったが、他の誰もジロジロみている気配は
なかった。
気付かないのか、と思ったがあとで自分の思慮のなさに思い至った。

そしてまた次の日、今度は小人を見た。
これもパチンコ屋だが、子供がチョロチョロしてるなあと思ったら顔を見ると
中年だった。
男か女かよくわからない独特の顔立ちで、甲高い声で「出ないぞ」みたいな
ことを言っていた。
足もまがってるせいか、かなり小さい。背の低い俺の胸までもないくらい。
こんどはあまりジロジロ見なかったが、奇形を見るのが立て続いたので
そういうこともあるんだなあと不思議な気持ちになった。

このことを師匠に話すと、喜ぶと思いきや難しい顔をした。
師匠は俺を怖がらせるのが好きなので「祟られてるぞ」とか
無責任なことを言いそうなものだったが。
暫く考えて師匠は両手を変な形に合わせてから口を開いた。
「一度見ると、しばらくはまた他人を注意して見るようになる。
そういうこともあるさ。蓋然性の問題だね。
ただ、さっきの話でひとつおかしいところがある。 」

「乗車口正面の席は右手側に窓があるね」
何を言い出すのかと思ったが頷いた。
「当然その前の席も同じだ。さて、君が見た肘掛に乗せた手は
右手でしょうか、左手でしょうか」
意味がわからなかったので、首を振った。
「窓際に肘掛があるバスもあるけど、君によく見え、また他の人が気づ
かないのを不思議に思うという状況からしてその肘掛は通路側だ。
ということは親指が左側にあってはよくないね」
あっ、と思った。
「左手が乗ってなきゃいけないのに、乗っていたのはまるで右手だね。
6本あったことだけじゃなく、そこにも気付くはずだ。聞いただけの
僕にもあった違和感が、ジロジロ見ていた君にないのはおかしい」

これから恐ろしいことを聞くような気がして、冷や汗が流れた。

「他の2つの話では、女なのか男なのか容姿に触れた部分があったけど
バスの話では無い。席を立ったのだから、見ているはずなのに。
見えているものの記憶がはっきりしない。君はあやふやな部分を無意識
に隠し、それをただの奇形だと思おうとしている。
もう一度聞くがそれをジロジロ見ていたのは君だけなんだね?」

師匠は組んだ手を掲げた。
「いいかい。利き腕を出して。君は右だね。掌を下にして。その手の上に
左の掌を下にしてかぶせて。 親指以外が重なるように。そうそう。
左の中指が右の薬指に重なるくらいの感じ。左が気持ち下目かな。
残りの指も長さが合わなくても重なるように。すると指は6本になるね」

これはやってみてほしい。

「親指が2本になり、左右対象になったわけだ。どんな感じ?」
不思議な感覚だ。落ち着くというか。安心するというか。
普通に両手を合わせるよりも一体感がある。
そのまま上下左右に動かすと特に感じる。
「これは人間が潜在意識のなかで望んでいる掌の形だよ。
左右対象で、両脇の親指が均等な力で物を掴む。
僕はこんな『親指が二本ある幽霊』を何度か見たことがある」

「あれは俺だけに見えていた霊だったと?」
「多分ね。 たまにいるんだよ。生前のそのままの姿でウロつく霊も
いれば、より落ちつくように、不安定な自分を保とうとするように、
両手とも利き腕になっていたり、左右対象の6本指になっていたり・・・
本人も無意識の内に変形しているヤツが。」
師匠はそう言って擬似6本指で俺にアイアンクローを掛けてきた。

不思議な話だった。
そんな話は寡聞にして聞いたことがない。
両手とも利き腕だとか・・・・
怪談本の類はかなり読んだけどそういうことに触れている本には
お目にかかったことが無い。
師匠のはったりなのか、それとも俺の知らない世界の道理なのか。
いまは知りようもない。

コジョウイケトンネル

師匠には見えて、僕には見えないことがしばしばあった。

夏前ごろ、オカルト道の師匠に連れられてコジョウイケトンネルに
深夜ドライブを敢行した。
コジョウイケトンネルは隣のK市にある有名スポットで、近辺で5指に入る
名所だ。
K市にはなぜか異様に心霊スポットが多い。

道々師匠が見所を説明してくれた。
「コジョウイケトンネルはマジで出るぞ。手前の電話ボックスもヤバイが
トンネル内では入りこんでくるからな」
入りこんでくるという噂は聞いたことがあった。
「特に3人乗りが危ない。一つだけ座席をあけていると、そこに乗ってくる」
僕は猛烈に嫌な予感がした。
師匠の運転席の隣にはぬいぐるみが座っていた。
僕は後部座席で一人観念した。
「乗せる気ですね」
トンネルが見えてきた。

手前の電話ボックスとやらにはなにも見えなかったが、トンネル内に入ると
さすがに空気が違う。
思ったより暗くて僕はキョロキョロ周囲を見まわした。
少し進んだだけで、これは出る、と確信する。
耳鳴りがするのだ。
僕は右側に座ろうか左側に座ろうか迷って、真ん中あたりでもぞもぞし
ていた。
右側の対抗車線からくるか、左の壁側からくるのか。
ドキドキしていると、いきなり師匠が叫んだ。
「ぶっ殺すぞコラァッァ!!!」
僕が言われたのかと縮みあがった。
「頭下げろ、触られるな」
耳鳴りがすごい。しかし何も見えない。
慌てて頭を下げるが、見えない手がすり抜けたかと思うと心臓に悪い。
「逃げるなァ!! 逃げたらもう一回殺す!」

師匠が啖呵を切るのはなんどか見たが、これほど壮絶なのは初めて
だった。
「おい、逃がすな、はやく写真とれ」
心霊写真用に僕がカメラを預かっていたのだ。
しかし・・・
「どっちっスか」
「はやく、右の窓際」
「見えませんッ」
「タクシーの帽子! 見えるだろ。 逃げるなコラァ! 殺すぞ」
「見えません!」
ちっ、と師匠は舌打ちして前を向き直った。
ブレーキ掛ける気だ・・・
俺は真っ青になって、めったやたらにシャッターを切った。

トンネルを出た時には生きた心地がしなかった。
後日現像された写真を見せてもらうとそこには窓と、そのむこうのトン
ネル内壁のランプが写っていた。
師匠は不機嫌そうに言った。
「俺から見て右の窓だった」
よく見ると窓にうつるカメラを構えた僕の肩の後ろに、うっすらとタクシー
帽を被った初老の男の怯えた顔が写っていた。

東山ホテル

強烈な体験がある。
夏だからーという安直な理由でサークル仲間とオカルトスポットに
行くことになった。
東山峠にある東山ホテルという廃屋だ。
俺はネットで情報を集めたが、とにかく出るということなのでここにきめた。

とにかく不特定多数の証言から
「ボイラー室に焼け跡があり、そこがヤバイ」
などの情報を得たが特に
「3階で人の声を聞いた」
「何も見つからないので帰ろうとすると3階の窓に人影が見えた」
と、3階に不気味な話が集中しているのが気に入った。

雰囲気を出すために俺の家でこっくりさんをやって楽しんだあと
12時くらいに現地へ向った。
男4女4の大所帯だったので、結構みんな余裕だったが東山ホテル
の不気味な大きい影が見えてくると空気が変わった。

隣接する墓場から裏口に侵入できると聞いていたので、動きやす
い服を来てこいとみんなに言っておいたが、肝心の墓場がない。
右側にそれらしいスペースがあるが広大な空き地になっている。
「墓なんてないぞ」
と言われたが、懐中電灯をかざして空き地の中に入ってみると
雛壇のようなものがあり、変な形の塔が立っていた。
「おい、こっち何か書いてある」
言われて記念碑のみたいなものを照らして見ると
「殉職者慰霊塔」
ヒィィー

昭和3×年 誰某 警部補
みたいなことが何十と列挙されていた。
もうその佇まいといい、横の廃屋といい、女の子の半分に泣きが
入った。
男まで「やばいっすよここ」と真剣な顔してい出だす始末。

俺もびびっていたが帰ってはサブすぎるので、なんとかなだめ
すかして奥にある沢を越えホテルの裏口に侵入した。

敷地から、1ヵ所開いていた窓を乗り越えて中に入ると部屋は
電話機やら空き缶やら様々なゴミが散乱していた。
風呂場やトイレなど、汚れてはいたが使っていたそのまま
の感じだ。
部屋から廊下にでると剥がれた壁や捲くれあがった絨毯で
いかにもな廃屋に仕上がっている。
懐中電灯が2個しかないのでなるべく離れない様にしながら
各個室やトイレなどの写真をとりまくった。
特に台所は用具がまるまる残っていて、帳簿とかもあった。
噂だがここはオーナーが気が狂って潰れたという。

1階を探索して少し気が大きくなったので2階へ続く階段を見つ
けて、のぼった。
2階のフロアについて、噂の3階へそのまま行こうかと話していた
時だ。

急に静寂のなかに電話のベルが鳴り響いた。
3階の方からだ。
女の子が悲鳴をあげてしまった。
連鎖するように動揺が広がって何人か下へ駆け降りた。
「落ちつけ。落ちつけって」
最悪だ。パニックはよけいな事故を起こす。
俺は上がろうか降りようか逡巡したが、ジリリリリリという
気味の悪い音は心臓に悪い。
「走るな。ゆっくり降りろよ」
と保護者の気分で言ったが、懐中電灯を持っている二人は
すでに駆け降りてしまっている。
暗闇がすうっと下りてきて、ぞっとしたので俺も慌てて走った。

広くなっている1階のロビーあたりで皆は固まっていた。
俺が着いたときに、ふっ、と電話は止った。

「もう帰る」
と泣いてる子がいて、気まずかった。
男たちも青い顔をしている。
その時一番年長の先輩が口を開いた。
俺のオカルト道の師匠だ。
「ゴメンゴメン。ほんとにゴメン」
そういいながらポケットから携帯電話を取り出した。
「こんなに驚くとは思わなかったから、ゴメンね」
曰く、驚かそうとして昼間に携帯を一台3階に仕込んでおいたらしい。
それで頃合をみはからってこっそりそっちの携帯に電話したと。
アフォか! やりすぎだっつーの。
もうしらけてしまったので、そこで撤退になった。

帰りしな師匠が言う。
「あそこ洒落にならないね」
洒落にならんのはアンタだと言いそうになったが師匠は続けた。

「僕たちが慰霊塔見てる時、ホテルの窓に人がいたでしょ」
見てない。あの時ホテルのほうを見るなんて考えもしない。
「夏だからDQNかと思ったけど、中に入ったら明らかに違った。
10人じゃきかないくらい居た。上の方の階」
「居たって・・・」
「ネタのためにケータイもう一個買うほどの金あると思う?」
そこで俺アワアワ状態。

「あれはホテルの電話。音聞いたでしょ。じりりりりり」
たしかに。
みんなを送って行ったあと、師匠がとんでもないことを言う。
「じゃ、戻ろうかホテル」
俺は勘弁してくれと泣きつき、解放された。
しかし師匠は結局一人でいったみたいだった。

後日どうなったか聞いてみると、ウソか本当かわからない表情で
「また電話が掛かってきてね。出ても受話器からジリリリリリリ。
根性なしが!! って一喝したらホテル中のが鳴り出した。
ヤバイと思って逃げた」

失踪

寝れないので、再度登場。

師匠との話をまだいくつか書くつもりだが、俺が途中で飽きるかも
しれんし、叩かれてへこんで止めるかもしれないので先に一連の
出来事の落ちである、師匠の失踪について書いておく。

俺が3回生(単位27。プw)の時、師匠はその大学の図書館司書の
職についていた。
そのころ師匠はかなり精神的に参ってて、よく
「そこに女がいる!」とか言っては何も無い空間にビクビクしていた。
俺は何も感じないが、俺は師匠より霊感がないので師匠には見える
んだと思って一緒にビビっていた。

変だと思いはじめたのは、3回生の秋頃。
師匠とはめったに会わなくなっていたが、あるとき学食で一緒にな
って同じテーブルについたとき
「後ろの席、何人見える?」と言いだした。

夜九時前で学食はガラガラ。後ろのテーブルにも誰も座っていなかった。
「何かみえるんすか?」というと
「いるだろう? 何人いる?」とガタガタ震えだした。
耳鳴りもないし、出る時独特の悪寒もない。
俺はその時思った。
憑かれてると思いこんでるのでは・・・・・
俺は思いついて
「大丈夫ですよ。なにもいませんよ」
というと
「そうか。そうだよね」
と安心したような顔をしたのだ。
確信した。
霊はここにいない。
師匠の頭に住みついてるのだ。
『発狂』という言葉が浮んで俺は悲しくなり、無性に泣きたかった。

百話物語りもしたし、肝試しもしまくった。
バチ当たりなこともいっぱいしたし、降霊実験までした。
いいかげん取り憑かれてもおかしくない。
でも多分師匠の発狂の理由は違う。

食事をした3日後に師匠は失踪した。
探すなという置手紙があったので、動けなかった。
師匠の家庭は複雑だったらしく、大学から連絡がいって叔母
とかいう人がアパートを整理しに来た。
すごい感じ悪いババアで、親友だったと言ってもすぐ追い出された。
師匠の失踪前の様子くらい聞くだろうに。
結局それっきり。
しかし俺なりに思うところがある。

俺が大学に入った頃、まことしやかに流れていた噂。
「あいつは人殺してる」
冗談めかして先輩たちが言っていたが、あれは多分真実だ。

師匠はよく酔うと言っていたことがある。
「死体をどこに埋めるか。それがすべてだ」
この手のジョークは突っ込まないという暗黙のルールがあったが
そんな話をするときの目がやたら怖かった。
そして今にして思い、ぞっとするのだが
師匠の車でめぐった数々の心霊スポット。
中でもある山(皆殺しの家という名所)に行ったときこんなこと
を言っていた。
「不特定多数の人間が深夜、人を忍んで行動する。
そして怪奇な噂。
怨恨でなければ、個人は特定できない」

聞いた時はなにをいっているのか分らなかったが、多分
師匠は心霊スポットを巡りながら埋める場所を探していた
のではないだろうか。
俺がなによりぞっとするのは、俺が助手席に乗っているとき
あの車のトランクのなかにそれがあったなら・・・・・・

今思うとあの人についてはわからないことだらけだ。
ただ「見える」人間でも心の中に巣食う闇には勝てなかった。
性格が変わった、あのそうめん事件のころから師匠は
徐々に狂いはじめていたのではないだろうか。

師匠の忘れられない言葉がある。
俺がはじめて本格的な心霊スポットに連れて行かれ、ビビリ
きっているとき師匠がこういった。
「こんな暗闇のどこが怖いんだ。目をつぶってみろ。
それがこの世で最も深い闇だ」

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