『邪教』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

『邪教』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】洒落怖・怖い話・都市伝説 祟られ屋シリーズ
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邪教

476 邪教 ◆cmuuOjbHnQ sage New! 2007/11/03(土) 02:44:24 ID:EOkTHTFc0

 

ある日、俺は在日朝鮮人の友人Pに呼ばれて郷里に戻った。
Pはガキの時分からの悪友で、一緒に悪さをして回った仲だ。
地元では一番仲の良い友人だったが、Pとはある事件以来距離を置いていた。
P絡みで俺は酷い「祟り」に遭い、韓国人の「祟られ屋」の元に半年も身を置く羽目になったからだ。
そして、その時から俺の人生は狂ったのだ。

表向きの用件は前年に胃癌で亡くなったPの親父さんの法事のような儀式だった。
Pの親父さんは俺のオヤジの友人でもあり、俺はオヤジの名代として顔を出した。
儀式の詳細はわからないが、テーブル一杯にたくさんの料理が並べられており、
家督を受け継いだ儀式の主催者であるPが、その料理を一箸づつ先祖に捧げるといったものらしい。
夜、方々から客が集まり、その料理を肴に酒宴が開かれた。

「祟られ屋」の元に行って以来、俺もPも酒も煙草も飲まなくなっていたので宴会の時間は長く感じられた。
そろそろ日付も変わるかと言う時間になって宴会はお開きになった。
客が帰ると広いPの家はしんと静まり返った。
両親が亡くなりマンションを引き払ったPはこの家に一人暮らしだ。
片付けは明日で良いと言ってお手伝いさんも帰してしまっていた。
俺とPは無言のままリビングのソファーに向かい合って座っていた。

日付が変わり、1時を過ぎた頃か?
表で車が止まる音がした後、インターホンが鳴った。
Pは玄関に出ると来客を招き入れた。
Pがリビングに連れて来たのは白髪頭の男と30歳前くらいの女だった。
男とは面識があった。
俺とPが祟られ屋の元に行った時の世話役だったキムさんだ。
俺は腹を括った。

祟り騒ぎの時に職を失った俺は、キムさんや祟られ屋の「マサさん」に繋ぎを付けてくれたシンさんの紹介の仕事で食っていた。
Pに呼び出されたのもシンさんの仕事絡みだったのだ。
仕事の内容は、要するに女のボディーガードだった。
しかし、話はそう簡単ではないだろう。
単なるボディーガードなら、一部で非常に有名な「アカ空手」の猛者がキムさんのところに何人もいるからだ。
「祟られ屋」マサさんの所で修行した俺やPが必要な話しなのだろう。

女は帰化した元在日3世だった。
日本人の夫と5年前に結婚し、将来子供が生まれたときのこと等を考えて帰化したのだと言う。
それならば、マサさんやキムさんの出番はないはずだ。
女は「イニシエーション」が済んでおり、日本の神々の加護が受けられるので、
トラブルが何であれ、普通の僧や神官、拝み屋で事は足りるはずなのだ。
以前に書いたように、朝鮮民族は日本の神々の加護を受ける事は出来ない。
それは朝鮮人の「血」の宿命であり、日本で生まれた在日でも変わりはない。
しかし、「イニシエーション」を通過した朝鮮人は日本人として日本の神々の加護を受ける事が出来る。
男の場合は日本と言う国の為に血を流すこと、女なら日本人の妻となり子を産むこと。
今の日本ならば、日本国に帰化して日本の「公益」の為に働く事。
日本人としての意識を持ち、その意思を示す行動が必要なのだ。
そして、関門を越えた者の子孫は日本人として、生来的に日本の神々の加護を受けられるのだ。

女の異変は父親の死去から始まった。
彼女の父はある宗教団体でかなり高い地位に在ったらしい。
地元の信者をまとめる大物だったようだ。
優秀だった兄は上京して某国立大学を出て、朝鮮籍のまま某大企業に入った。
その企業グループの上層部には教団信者が多数入り込んでいるのだ。
女の嫁ぎ先も彼女の父親が仕切る教区?に属する資産家一家だった。
彼女の父親が生きている間は全て旨く行っていたようだ。
しかし、父親の死後暫くして彼女の母親が倒れ、兄の人格が激変した。
横領により解雇された兄が実家の資産を浪費し、多額の負債を負うまでに没落した。
その兄は詐欺事件と傷害事件を起こし長期収監中なのだという。
さらに、嫁ぎ先も不幸が続き、彼女は第1子を流産。
夫は愛人を作って蒸発したのだと言う。
彼女の父親の死を基点に両家は僅か数年で没落してしまったのだ。

仕事の内容は簡単だった。
キムさん達が仕事をしている間、妨害を排除し、彼女と彼女の母親をガードすることだった。
期間は1週間。ギャラは通常の3倍だった。
キムさんは同様の事案を何件も処理した経験があったようだ。
キムさんと彼女がどうコンタクトしたのかは不明だが、キムさんは過去の経験と自分の見立てを彼女と彼女の母親に話した。
キムさんの指摘に思い当たる節があったのだろう、彼女の実家と嫁ぎ先両家は教団を脱会した。
彼女の実家の家屋敷は教団の「教会」として教団名義になっていた。
彼女が生まれる前に教団に「布施」として寄進され、教会長として彼女の一家が住み続けてきたのだと言う。
脱会した今、教団は彼女の一家を追い出しに来る。
彼女の父親もそうやって信者の家屋敷を収奪してきたのだ。
しかし、今回の目的は違う。
キムさんの「仕事」を妨害してある物を奪い取りに来るというのだ。

約束の日、俺はキムさんに伴われて彼女の実家に向かった。
近くの路上には離れた位置に短髪の男達が乗った車が2台停まっていた。
キムさんの会社の社員だろう。
門をくぐって屋敷に入った。
3・400坪はあるか?
門をくぐった時から嫌な感じがした。
確かに尋常ではない、何かがあるようだ。
キムさんと共に俺は仏間に入った。
其処には大きな仏壇があった。
初めて見るタイプの仏壇だった。
俺に宗教の知識は乏しいが、その宗派の「本尊」は仏像の類ではなく、所定の地位に在る僧の書いた書付なのだ。
仏壇の中には書付の入った箱?が入っている。

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