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寺生まれのTさん 全50話 / Part 3/3

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寺生まれのTさん 全50話 寺生まれのTさん
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寺生まれのTさん』 全50話

 

【1話 – 20話】

 

【21話 – 40話】

 

【41話 – 50話】

 

 

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41.洗脳

同じ画像なりマークなりを
毎日見せることによって、
それがあっても、
それが目に付いてもおかしくない、
不自然ではない状態にすることは
洗脳の第一歩だよ。
仮に君の部屋の壁紙に
普通では視認できないメッセージが刷り込まれていたらどうする?
連日連夜、気づかれないように少しずつ少しずつメッセージを刷り込んでいくんだ。
時々、突然気分が悪くなったり、めまいがしたことはないか?
金縛りにあったことは?
お昼ごはんを食べたのを忘れたことは?
大きな都市が丸ごと停電する夢を見た経験は?
球形プラズマ、蜃気楼、観測気球、写真に撮るとしたらどれ?
マンテル・チャイルズ・ウィッティドその次は?
『アルミホイルで包まれた心臓は六角電波の影響を受けない』というフレーズ知ってる?
螺旋アダムスキー脊髄受信体って言葉に聞き覚えはある?
さっきからずっとあなたの後ろにいるのは誰?

「俺だ」
振り返るとそこには寺生まれで霊感の強いTさんが!
するといきなり「破ぁ!!!」と叫んだ!
粉みじんになっていくマンテルとチャイルズとウィテッドとその次!
「人の恐怖感に入り込んで自分の結界を広げていく小悪党め!!!」
部屋に響く断末魔が鳴り止んで、Tさんははにかみながら
「アルミホイルで心臓は包めない、覚えておくんだな。」
寺生まれってすごい、改めてそう思った

 

 

42. シャムネコ

個人デザイン事務所にアルバイトしていた時の話。

3LDKマンションが事務所で、シャム猫が1匹飼われていた。
元々は社長の愛人が飼ってた猫だったが、愛人と別れる際、
「この猫を私と思って一生面倒を見なさい」と押しつけられたらしい。

働き始めて半年ぐらい経った頃、事務所で社長と二人で残っていた。
夜食のピザが来る間、
社長は自分の部屋でエアブラシ作業、俺は各種資料をコピーしていた。
シャムがコピー機の上に乗ってきた。

「ほら、邪魔だよ」と俺が言った瞬間、ボタンを操作していた俺の手に激痛!
シャムが突然、噛みついてきた!
甘噛みではない、本気で肉を食い千切るような噛み方!
っつーか、肉が一部裂けた! ピュゥッて血が吹き出てるし!?
「うあっ!」と声を上げた瞬間、またも激痛!
腕に牙を立てながら、思いっきり爪を立てている!
俺は思い切り腕を振り上げてシャムを投げた。

しかし、シャムは身を翻して再び立って襲う構えを見せる。
「シャアアアあああああああああああーーーーーーーー!」
シャムの鳴き声が徐々に変化してきた。まるで、人間の泣き声だ!
こんな大きな声なのに隣の社長は全く気付いていない。

よく見るとシャムの影が大きくなり、人の形になってきていた。
そして、下顎が外れそうなくらいに口をあけ、何かに狙いをさだめた様だ。
おそらくは俺の首筋・・・逃げなきゃ!しかし体が動かない!!

「そこまでだ」
聞いたことのある声、寺生まれで霊感の強いTさんだ
Tさんは俺とシャムの間に立つと、あるものを振り回した・・・

”ねこじゃらし”だ!

シャムがねこじゃらしに飛び掛った瞬間、Tさんが「破ぁ!!」と叫んだ。
するとねこじゃらしが光り、シャムの影を引き裂いてゆく!

ついにシャムの影はもとの猫の影となった
その瞬間シャムの首輪がパァンと弾けた。
「この首輪に念を込めてたんだな」
シャムは人?が変わった様に大人しくなっていた。

「なんでTさんがここにいるんですか?」
「テリヤキコンビとあつあつグラタンピザですね」
寺生まれはスゴイ、俺はピザを頬張りながら思った。

 

 

 

43. 飼い犬

俺は彼女から深刻な相談をされた。

最近、自宅の老いた犬が
誰もいない玄関に向かってけたたましく吠えるというのだ

俺が彼女の家に挨拶に行った時も、
俺を見ても全く吠えなかった人なつっこいあの犬が
突然ものすごい剣幕で吠えるのだという、しかも時間を問わず。

不安がる彼女が霊を引き寄せやすい体質だったことを思い出し、俺は
寺生まれで霊感の強いTさんに相談する事をすすめた
ファミレスで3人で食事をしながら事の話をするとTさんは
「大丈夫、その犬は
帰ってきた先祖に挨拶してるんだよ、この時期だし」とのこと
すっかり安心した彼女を送り返すと、Tさんから連絡が・・・
「彼女の言っていた事だが、確認したい事がある
あの子の家の前まで案内してくれ」

深夜2時、彼女の家の前に行くと
確かに駐車場に繋がれた犬が吠えている。
「やはりな・・・」
そう呟いてTさんは彼女の家の向かいにある電柱に手を添えた
するとそこからスッと青白い光が走り
幾つもの亡者が彼女の家を通り抜けようとしているのが見える
しかし犬の抵抗に遭い、上手く通り抜けられない模様

「大した犬だ・・・ずっと家を守っていたのかい」
そういいながら犬の頭を撫でるTさん
「破っ」
Tさんの声と共に道は家を避け天に伸び、
虹のように遠くの空に伸びていった・・・

「何故彼女に嘘をついたんですか?」の問いに
「他人の女とはいえ、
可愛い子を無駄に恐がらせるのは男の仕事じゃないぜ・・・」

寺生まれはスゴイ、俺は久しぶりにそう思った。

・・・数日後、彼女の家の犬が老衰で亡くなったと聞いた。
悲しみにくれる彼女を励ましてやると
「ワン!」と元気なあの犬の声が聞こえた気がした
きっと犬はまだ家族を守っているんだな・・・
線香をあげながら俺は思った

家族を見守る犬はスゴイ、俺はその夜ちょっと泣いた

 

 

 

44. テンソウメツ

一週間前の話。
娘を連れて、ドライブに行った。
なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って。
で、娘を脅かそうと思って舗装されてない脇道に入り込んだ。

娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ。
そしたら、急にエンジンが停まってしまった。

山奥だからケータイもつながらないし、車の知識もないから
娘と途方に暮れてしまった。飯食ったドライブインも歩いたら何時間かかるか。
で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝から歩いてドライブイン
行くことにしたんだ。

車内で寒さをしのいでるうち、夜になった。
夜の山って何も音がしないのな。たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで。

で、どんどん時間が過ぎてって、娘は助手席で寝てしまった。
俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた。

今思い出しても気味悪い、声だか音だかわからん感じで

「テン(ケン?)・・・ソウ・・・メツ・・・」って何度も繰り返してるんだ。

最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてたんだけど、
音がどんどん近づいてきてる気がして、たまらなくなって目を開けたんだ。

そしたら、白いのっぺりした何かが、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいて
くるのが見えた。形は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、頭がないシルエットで
足は一本に見えた。そいつが、例えるなら「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに
振り回して身体全体をぶれさせながら」向かってくる。

めちゃくちゃ怖くて、叫びそうになったけど、なぜかそのときは
「隣で寝てる娘がおきないように」って変なとこに気が回って、叫ぶことも逃げることも
できないでいた。

そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。
通り過ぎる間も、「テン・・・ソウ・・・メツ・・・」って音がずっと聞こえてた。

音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして
娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。
近くでみたら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。思い出したくもない
恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。

俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!!」って
叫んだんだ。
叫んだとたん、そいつは消えて、娘が跳ね起きた。

俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘にあやまろうと思ったら、娘が
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」
ってぶつぶつ言ってる。

「出ろ」

声のする方を見ると、車の前にTさんが仁王立ちしていた。
パニクった俺は、自分に向かって言ったんだと思い、思わず車のドアを開けてしまった。
しかし「自分だけ逃げちゃダメだ、娘を連れて行かなくちゃ、でも娘は今」とも思い、
慌てて助手席を見るとなんと娘はすやすやと眠っている。

俺は混乱してしまってTさんを見たが、顔がTさんの顔じゃないみたいになってた。
頼れる人間がいなくなった俺はもう泣きそうになりながらドアを閉め、何とかこの場を
離れるためにダメ元でエンジンをかけようとした。

その途端Tさんが車のボンネットに飛び乗ったかと思うと
「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」
ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見ながらつぶやきはじめた。
このときにはもう手が震えてエンジンなんてかけられなくなってた。

「出ろって!」
つぶやきの途中で突然怒号を発したかと思うとTさんは自分の顔面をぶん殴った。
するとTさんの身体からジャミラみたいなやつが勢いよく飛び出した。
Tさんは「破ぁ!」と叫ぶと、そいつに向けて青白い光球を投げつけ距離をとった。
光球はそいつの身体に触れたかと思うと激しい光を発して炸裂。
右腕を失ったそいつは山の奥に逃げていった。
「危ないところだったぜ。あんなもんがいやがるとはな。
遊び半分で山には来るもんじゃねえ。女連れなら特にな」
そう言って鼻血をぬぐうTさん。
俺たちを麓まで送り届けると山菜採りに戻っていった。
寺生まれはやっぱりスゴイ、俺は娘を抱きしめながら思った。

 

 

 

45. PC

少し前に体験したお話。
夢、だと思うんです…しかし、あまりにも生々しかった。

確か夜中の3時頃だった、はず。いろんなサイトで怖い話を読んでおりましたところ、ある瞬間、PCモニターの上部に「何か黒いもの」があることに気がついたのです。

人の頭。
黒髪の頭がPCモニターの上部から出た状態。
PCモニターの裏側に人の顔があり、裏側から頭を出しているんです。

しかもそれは、少しずつ、少しずつ、上へ上へと上がってきています。
恐怖で体が動かず逃げ出すことが出来ません。前髪が見えてきて、目が見えてきて、そのままの状態で止まりました。

「目は絶対に合わせてはいけない」と感じ、PC画面だけを見てはいたものの
視界には入っています。

声の主はその黒髪の頭でしょう。

「大人になるまで、このことは話しちゃだめだよ?」

少女が、友達と他愛もない約束をする、そんな口調でした。
目が不気味に、細まっていました。きっと笑っていたんですね。
その瞬間、モニターに人影が映っていることに気づきました。
目の前に生首、背後に人の気配。
私は振り返る事が出来ずに、ただただモニターを凝視するしかありませんでした。
すると、背後の何者かがおもむろに声を発しました。

「大人になるってどういういことだい?二十になればそれで大人か?
それとも夢を捨てることか?」

聞き覚えのある声にびっくりして振り返ると、そこに立っていたのは寺生まれで霊感の強いTさんだったのです。
Tさんはこちらを見ずに、窓の外を眺めていました。
星を探しているように。あるいは何かを思い出しているように。

しばらくTさんに奪われていた視線を元に戻すと、PCの後ろの生首が
いつの間にか消えていました。

なんだかよく分からないけれど、Tさんが助けてくれたようなので
丁寧にお礼を言うと、Tさんは
「俺が大人にしてやろうか?」
などとのたまい、そのまま警察に連れていかれました。

「寺生まれってやっぱりスゴイ」
慣れた様子でパトカーに乗り込むTさんを見て、本当にそう思いました

 

 

 

46. 山の怪

今は昔。
頃は秋。友人Aと上高地へ行った時の事。

休日でもあり、そこは我々も含めた観光客でいっぱいだった。
その賑わしさをものともせず、梓川、河童橋の向こうに見える穂高は
相変らず凛として美しい。
少し早い食事を済ませ、遊歩道へ行ってみると、初めて穂高を見て感動モードに突入しているAはもう何を見ても“嬉しい状態”である。
「あ、さかな!」
歓声を上げ、私より先に2、3歩川に近づいたAがふいにその場にしゃがみ込んだ。
「どうした?」
あわてて駆けより、その体に手をかけると異様に冷たい。
振り仰いだAの顔は青白く、唇に至っては紫色に近い。
「なんか、腹へって、寒いんだ…」
か細い声でAはそう言ったが、食事をして未だ20分もたっていない。
あれほど人がいたはずなのに、なぜか周囲には誰もいない。
「だめだ…」
そして、へたり込んでしまったAの不気味なしゃがれ声。
「ひもじいよォ…」。
私はぞっとした。

違う、いつものヤツじゃない。
これはダルだ!子供の頃、年寄から聞いたダルに違いない。
「山へ入った時、何でもいいから食べ物は一口残せ。山にはダルがおる。
ダルに取っ憑かれたら腹が減って動けんようになって死んでしまう。
そん時にな、何でもいいから口に入れたらダルが離れて助かるんじゃ。
だから、山で弁当使う時は必ず一口残せ」
そう、言聞かされた。
本当か嘘か知らないし今までそんな目に遭った事はなかったので本気にしていなかったので予備の食べ物は持ち歩いていなかった。
これが多分それだ。とにかく急いでリュックを探すも飴玉の一つも見つからなかった。
「ひもじい…ひもじいよォ…」。
まるで死人のような青白い顔でつぶやく友人を前に恐怖と焦りで呆然として何も出来なかったその時。

「破ぁーーー!!」と言う叫び声とともに勢いよく振られるフライパン。
強火の炎に炙られ黄金色に輝くパラパラに炒められたご飯が宙を踊る。
焼けた鍋肌から回し入れられたしょう油の焦げる匂いが食欲をそそる。
「できたぞ」とTさんがフライパンから出来立て熱々の炒飯を皿に盛りつける。

ご飯の一粒一粒がパラパラに炒められ黄金色に輝くその炒飯をAはまるで蛇のように一飲み。
「………」
人間業ではない。
恐怖に駆られた私は、フライパンに残っていた残りの炒飯もAの口に放り込み、それが飲込まれるのも確かめないまま水筒を彼の口に押しつけた。
大きく喉が動き、やがてAは自分の手で水筒を掴んで茶を飲み始め、次第に飲み干す速度がゆっくりとなって、ついにそれが止った。
「ああー、旨かった」
満足げに笑ったAの声が妙にダブって聞えた。

Tさんは「危なかったな・・・」というと満足げな表情で帰っていった。
台湾の中華は美味い、改めてそう思った。

 

 

47. ポイントカード

目覚めたら夜三時くらいで、空腹だったので近くのコンビニへ。
店内うろうろしてたら、店員が裏から飛び出してきて、俺の手を掴んだ。
すっごい必死で、「警察呼びますから!」とか言いながらレジ裏へ。もう一人の店員もなんかスプレー持ってた。
事情がわからないまま裏へ連れてかれた。

「救急車呼びますか」と言われて、キョトンとしていると首を示された。
首に特徴があるので普段隠してるのだが、夜中だしと気にして無かっただけにショックを受けた。

でも、反射するPC画面を見て驚いた。首に絞められたような痕がある。
店員の話だと、入口の防犯カメラからずっと女が背後から俺の首を絞めていたらしい。
それで助けにきてくれたそうだ。ありがとう。(カメラにも映ってた。店長の許可出たらupだそうな)

結局そんな女はいなかったが怖い……が家もストーブつけっぱなしだし警察も呼べない状態だしで帰る事にした。

部屋に戻ったら、何だかほっとしてそのまま横になった。

気づいたら朝日が少し射していたので、朝だなぁ……と夜中の出来事が夢みたいに感じてた。
でも、窓から射す光が、床に形を作ってるのに気づいた。
肩くらいまでの髪、小柄な身体がしゃがんでるような影がゆっくり動いてて、気持ち悪い。
幽霊って朝も出るのかよ!とか内心叫びつつ、玄関へと向かうのに横目で影みながら匍匐前進。
不意に肩を叩かれた気がしたので、何故かそのまま寝たふりをした。

しばらくしそうしてたけど何もおきない。
事なきを得たように思い、少し安心した刹那だった。

耳元で「コロしてやる・・・」と知らない女の声で宣言された。

「うわぁぁあぁぁ!!」叫んだ俺が目を開いた瞬間。

「破ぁ!!」
がしゃーーん!!

盛大に窓が割れるヒステリックな音と同時に重いものが落ちるドスッという振動が響いて、黒い影が飛び込んできた。
「お客様。Tポイントカードをお忘れでしたので届けにまいりました!」
そこにはさっきのコンビニの店員が。。そして勢いよく俺に向かって投げつけられる俺のTポイントカード。
それを、何を思ったのか俺の頭めがけて店員が投げつける。

ザクッ!

俺の頭を掠め背後の壁に刺さった。
と、同時に
「ぐぎゃぁぁぁあぁぁ!!」
押しつぶしたような女の声が背後から響き渡る。
俺が振り返ると鬼の形相の女が煙を上げながら消滅していくのが見えた。

コンビニ店員が続ける。
「Tポイントカード、俺も使ってますよ。もうすぐ30000ポイントたまりそうです。」
白い歯をきらりと光らせ微笑みながら、店員は玄関の鍵を開けて立ち去っていった。

Tポイントカードをもっていてよかった。
扉の隙間からもれる朝の光をぼんやり見つめながら、俺は心からそう思った。

 

 

48. 赤ちゃん

小学生の頃の話。

夕方家に帰る途中、近所の飼い猫のユキコが路地に入っていくのを見ました。
私は良くその家に行ってユキコと遊んでいたので、
「ユキちゃん、遊ぼう」と声をかけながら路地に足を踏み入れました。
まだ空は明るく、高い建物なんて周りに全然無いのに、路地は暗く、
名前の由来になったユキコの白い身体が薄ぼんやり見えるだけでした。
私は何か嫌な感じがしたので、引き返そうとしましたが
「ふぎゃー!」
ユキコの悲鳴のような叫びに慌てて路地の奥へ向かいました。
二度、右に曲がった(今思えば、何故そんな風に走ったのかわかりませんが)先の光景に
私は足を竦ませました。

まだハイハイしかできないような赤ちゃんが、ユキコの腹に齧りついて、内臓を食べていたのです。
明らかにこの世のものではないと分かり、早く逃げなきゃ、と思いましたが
金縛りにあったかのように動けませんでした。
やがてユキコは内臓を全部食べられ息絶えましたが、赤ちゃんはまだ満足していないのか、
無邪気な笑顔でこちらに這いよってきます。
顔の下半分と産着がユキコの血で真っ赤に染まって、なのに赤ちゃんは可愛らしい笑顔で。
そのギャップがひたすら恐くて、「助けて助けて」と何度も心の中でお祈りしました。
赤ちゃんはとうとう私の足を掴み、大きく口を開けました。
歯がびっしりと生えていました。
上下じゃなくて、口の中全体に360度喉の奥まで歯です。
その歯の一本一本が別の生き物のようにウネウネ動くのです。
今思い出しても気持ち悪くなるような、化け物の口が私の足に噛みついて……

「そこまでだ! 破ァ!!」
寺生まれで霊感の強いTさんの放った青白い光弾が赤ちゃんの口の中に吸い込まれ、
その頭部を粉微塵に粉砕しました。
すると、ワァアアアアアアアアアアアアアアアンンンンンンとスピーカーが壊れた時のような音がして
路地全体が歪み出しました。
「この路地そのものが奴らだったのか!? 早く、ここから逃げるんだ! 急いで!」
動けない私をTさんはその太くたくましい腕に抱えあげました。
生まれて初めて男の人の逞しさを感じて、自分の鼓動が速くなっていくのがわかりました。
なんとかその路地から逃げだした時にはもうすっかり夜になっていました。
「猫ちゃんは可哀想だったけれど、君を助けられよかった。家まで送っていくよ」
私を落ち着かせるために何度も頭を撫でてくれるTさんの、優しげな笑顔を見て
寺生まれって年下でも好きになってくれるのかな? と切ない気持ちになった私でした。

 

 

49. 七不思議

私が教師になって初めて赴任した小学校には7不思議があった。
テケテケ、夜になると目が光るベートーベンの肖像画、赤いチャンチャンコと青いチャンチャンコ、誰もいないはずの体育館からボールの弾む音がする、風が無いの揺れるブランコ、プールで泳いでいる子どもを引きずりこもうとする霊。
6つまでは私もよく聞く話だが7つ目は少し珍しいものだった。
夜、学校にいるとお化けに会う、そのお化けの姿は誰も知らない。なぜなら、そのお化けに会ったら魂を奪われてしまうからだ。
これも他の6つと同じように多感な子どもたちが信じる迷信だと思っていた。(だいたい、遭遇した人間が死ぬのなら、なぜその存在が伝わっているのだろう。)
ただ子ども達には内容のおどろおどろしさのせいか非常に恐れられていた。私もなぜだか妙にこの怪談は印象に残った。

秋も深まったある夜、私はひとり職員室に残って23時近くまで仕事をしていた。ようやく終えて帰る準備をしていると突然、内線電話が鳴り響いた。
3階にある教室からだ。ありえない、今、学校には私一人しかいないはずなのに。だれかいるの?
何が起きているのか確かめるため私は真っ暗な廊下を走りその教室へ向かった。
行ってみるとだれもいない静まりかえった教室があるだけだった。
念のため明かりをつけてみたがやはり誰もいない。機械の故障か何かかな、私はそう思い教室を後にしようとした。
すると廊下から足音が聞こえてきた。

足音からしてこの教室から少し離れたところにいるらしい。
しかしだんだんとこちらに近づいてくる。きっと不法侵入した何者かだ。急いで近くの階段を私は駆け下りた。それと同時に足音が速くなる。
逃げなきゃ、逃げなきゃそれだけを考えひたすら走った。一階に降り玄関の近くまで来る頃には足音がしなくなっていた。

振り切れたかな、そう思い走りながら後ろをみた次の瞬間、何かにぶつかり倒れてしまった。
その感触は明らかに人だった。驚き、地べたに尻餅をついたまま、前を見上げるとそこには
私が立っていた。服装も髪型も、そして顔も。恐怖とショックで呆然としている私に向かってもう一人の「私」がかがみ込み顔を近づけそして囁いた。
「ネエイノチチョウダイ イノチチョウダイ」
その時だった。
「破ア!」「はあ!」という二人の声が聞こえると同時に青白い光がもう一人の「私」をつらぬいた。「ギャアアアアアアアアア!」という獣の叫び声のような悲鳴を上げ「私」は消滅した。
「危ないところでしたね。」そういって私の前に現れたのは寺生まれのT君のお父さんだ。
「先生大丈夫?」と隣にいるその息子、そして私の生徒でもあるT君が不安そうに言った。

「奴はいわゆるドッペルゲンガーってやつの一種で姿をまねた相手の魂を持ち去ってしまうんですよ。
ただ、力が弱かったので自らの噂をばらまいてそれを聞いた子ども達の恐れという気持ちをエネルギーにして力を蓄えていやがったんだ。まったくやっかいな奴だ。
ちなみに今、隣にいる息子には退魔師として私の後を継がせるために修行させているんですよ。」
そして彼は隣にいるT君にお前の大好きな先生が助かって良かったな、と声をかけた。
Tくんは慌てふためいた様子でうるさいな、といいながら光弾を放ったが父親にはじき返されたあげく、逆に光弾で吹き飛ばされてしまった。
その後、残っている6つの不思議も彼らは退治した。

あれからもう何年も立ってしまった。
私に淡い恋心をもっていた少年はもうすっかり大人になり退魔師として活躍している。
彼が悪霊を除霊したという話を風の便りできくたびに「寺生まれってすごい」と思う。

 

 

50. ママからのビデオ

サキちゃんのママは重い病気と闘っていたが、死期を悟ってパパを枕元に呼んだ。
その時、サキちゃんはまだ2歳。
「あなた、サキのためにビデオを3本残します。
このビデオの1本目は、サキの3歳の誕生日に。2本目は小学校の入学式に。
そして3本目は…○○○の日に見せてあげてください」
まもなく、サキちゃんのママは天国へと旅立った。

そして、サキちゃんの3歳の誕生日。1本目のビデオがかけられた。
(ビデオからつないだテレビ画面に、病室のママが映し出される)
「サキちゃん、お誕生日おめでとう。ママ、うれしいなぁ。
でもママはね、テレビの中に引っ越したの。だから、こうやってしか会えない。
パパの言うことをよく聞いて、おりこうさんでいてね。だったら、ママ、また会いに来ます」

サキちゃんの小学校入学の日。2本目のビデオ。
「サキちゃん、大きくなったネ。おめでとう……。ママ、うれしいな。どんなにこの日を待っていたか。
サキちゃん、ちゃんと聞いてね。
ママが今住んでいるところは、天国なの。だから、もう会えない。
でもね、パパのお手伝いがちゃんとできたら、ママ、もう一回だけ、会いに来ます。
じゃあ、魔法をかけるよ。 エイッ!
ほうら、サキちゃんは料理や洗濯ができるようになりました」

そして3本目のビデオ。そのタイトルは、こう書いてあった。
「新しいママが来た日のサキちゃんに」

そしてサキちゃんが10歳の時、パパは再婚し、新しいママが来た。
3人いっしょに、3本目のビデオを見つめた。
なつかしいママの顔が映し出された。
「サキちゃん、おうちの仕事、がんばったね。えらかったね。
でも、もう大丈夫。新しいママが来たんだから。
……
サキちゃん。今日で本当にお別れです。
……
サキちゃん、今、身長はどれくらい?ママには見えない。
(泣き崩れ、カメラを抱え込む姿が映る)
ママ、もっと生きたい…。
あなたのために、おいしいものいっぱいつくってあげたい…。
あなたの成長を見つめていたい…。
じゃあ、サキちゃん、これがママの最後の魔法です。
それは、『ママを忘れる魔法』です。
ママを忘れて、パパと、新しいママと、楽しい暮らしをつくってください。
では、魔法をかけます。1、2、3、ハイッ!」
そこでビデオは終わった。

しかし、サキちゃんに、この魔法は効かなかった。
パパと、新しいママにも効かなかった。
ママは、みんなの心の中に、ちゃんと残っていた。
その時Tさんが現れこう言った。「やれやら…死んでからもビデオに残って現世に残ろうとするとは…」
「破ァァァーーーーーーッッ!!!!!!! 」
Tさんがそう叫んだ直後、テレビとビデオは壊れ、親子は自分が何を見ていたかも忘れていた。
「死んだ人間のことには、あまりかまうんじゃないぜ。そういうのは俺の担当だ。」
寺生まれは凄い。俺は改めてそう思った。

 

寺生まれのTさん』 全50話

 

【1話 – 20話】

 

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