山にまつわる怖い話【76】全5話
墓石
ウチの実家周りは鬱蒼とした竹藪に囲まれている。
小学校の頃には基地とか作って竹藪で遊んでた。
ある日思い立って竹藪の丘を奥まで探検してみた。
どこまでも続く竹林と枯れ笹に埋もれた地面の上を
踏み分けて行くと窪んだ場所の崖っ淵に出くわした。
覗いてみると墓石の山・山・山
何層にも積み重なった墓石が無造作に淵の底にあった。
何だか薄気味悪いなぁと思いつつ踵を返して家に帰った。
後日、友達が二人遊びに来た。話が弾むうちに何となく
この前の探検の話をしだしたら友達Aの顔色が悪くなる。
友達Bも何かそわそわし始めた。相変わらず普通の漏れw
「ねぇ、やめようよ」
Aが必死で止めようとするのが面白くて話を続けていると
Bは何だか寒いと言い出し、ついにAが恐怖の形相で叫んだ。
「窓、窓の外に何か居るうっ!」
昼下がりの日当たりの良い東向きの二階の窓からは
漏れには見慣れたいつもの景色しか見当たらない。
つまり、何にも無いし何も見えないwという訳である。
「えー何もみえないじゃんw何か居るの?」
からかい半分で窓を開けようとしたらAがいきなり
「おげええぇ!」
とゲロを吐き出した。それを見てBも漏れも唖然とする。
尋常ではない様子を見てBがパニックに陥ってしまう。
「嫌だ、嫌だ、どうしよう!何とかしてぇ~」と半泣き状態。
そこで万が一、と思って用意しておいた般若心教を取り出し
何度もお経を唱えていたら、やっとAが落ち着きを取り戻した。
階下にタオルを取りに行きゲロの始末をしていると
Aが真っ青な顔色をしながらボソボソと話し出した。
「竹藪の話をし始めてから窓の外にびっしりと霊が
張り付いて来て埋め尽くされていた。怖かったよ~。
なのに窓を開けようとするからもう、気持ち悪くって」
Aは霊感があったらしい。Bは普通の感覚の持ち主。
…では漏れは?
父から聞いた話では竹藪一帯の丘は昔は寺院があったとか。
墓石はその名残なのでは、という事で一応納得はしたけれど。
現在、その竹藪一帯は開発されて新興住宅地になっている。
出るのか、出ないのかは知らないが漏れにはきっと見えないなw
百物語
ボーイスカウトで山小屋に泊まった時の話
夜、消灯後も起きていてトランプ等やってた連中が百物語でをやり始めた。
懐中電灯を蝋燭代わりにして話をしたら懐中電灯を消し、話をする前にまた明かりを点けるって感じで怪談話をしていった。
百話目が終わり懐中電灯を消した途端「ガタガタガタ」って音が壁・天井・床から鳴り続けたそうで。怪談話をしていた連中はびびって寝袋を被って「ごめんなさい。ごめんなさい」
とかお経を唱えたりしていた。
でも怪談話をしてなかった俺や他の連中はそんな音を聞いておらず、消灯後も騒いでいた連中がいきなり寝袋被ってブツブツ言い始めたな位しか思ってなかった。次の日になって山小屋の近くの坂を上り山小屋を見下ろすと山小屋の屋根に泥で輪が書かれてました。
薄っぺらいヒトのようなもの
俺がリア小4年の頃だから、もう20年くらい前のことなんすけど、
1コ上の友達に、ちょっとキワイ感じのノエ君(本名は忘れた)って子がいたんですよ。
彼は山の生き物が大好きで、レア種をゲットするためには手段を選ばない。
ヒラタクワガタを捕まえるために山火事を発生させたり、
コウモリを集めるためと称して有線放送をジャックし、集落をパニックに陥れたりと、
ほとんどテロ行為に近い無法者っぷりで町中に悪名を轟かせてました。
そんなノエ君が、ある時期を境に狂気のコレクションをピタリと止めてしまったんです。
「××ため池の水を抜くらしいぞ。スッポンや鯉の掴み取りパーティーだぜ!」
そんな誘い水を撒いても一向に乗ってこない。
今までのノエ君なら、学校を早退しかねない位おいしい話なのに…
「ノエ君日和っちまったんじゃねー?」「ちょっとガッカリもんだよな」
「見たくねーよ、そんなノエ君」「何があったんだよ?」「ママに止められたってか?」
俺たちが軽く煽りを交えつつ尋問してもノエ君はなかなか話したがりません。
ギリギリの交渉の末、銀のエンゼル3枚でようやくオトしました。
「…このあいだから、大城の森に行ってたんだよ…」
そこはマムシ多発地帯で、大人でも立ち入る者は少ないデンジャーゾーンです。
穴場探しのためだけに一人でそんなところへ行くノエ君はやはりハンパねェー。
「…したら、でっけー水たまりがあったんだよ。昨日まではなかったんだぜ」
ノエ君が近づいてみると、水面下で何かがうねうねと蠢いている様子。
覗き込んでみると、真っ黒なイモリが数え切れないくらい折り重なってました。
「見たことないくらいデカいイモリでさー、思わず両手でガバって掴んじまって」
すぐさまひっくり返して赤と黒の斑模様が毒々しい腹を確認。ノエ君うっとり。
「でさ、この場所を秘密にしようと思ってさ、罠仕掛けて隠したんだよ」
この辺の思考回路は何となく判るんですが、そこからが本領発揮です。
森を出たノエ君は、畑から盗んだ有刺鉄線を巻いて水たまりの上に被せました。
その上から木の枝や葉っぱで覆ってトラップ完成。
全ての作業を素手でやったので両手は血だらけになったみたいですが、
ノエ君は全く気にしていない様子。
「手大丈夫だったの?」
「いやーそれがイモリ触ってゴム臭くてさー、洗ってもなかなか取れないんだよな」
当然、誰かが間違って踏んだらどうなるんだろう?みたいな懸念は眼中無しです。
万全のセキュリティ対策を終えたノエ君は、森を出て家に帰りました。
次の日の放課後また森にやって来たノエ君は、警備システムに異常を発見。
「木の枝なんかが退かせてあって、鉄線の棘に布や血みたいなのが付いてたんだよ」
ここは誰かに狙われてる……そう思いこんだノエ君は矢も楯もたまらず、
無我夢中で有刺鉄線をひっつかんで退かせました。やっぱり素手で。
水たまりの底には……いました。昨日と同じように無数のヤモリの群がうねうねと。
安堵のあまり兵士のように膝を突いたノエ君の耳にあらたな異変が
─wwヘ√レvvw^ ピ──ヘ√レvv────!!
まるで短波ラジオをチューニングしているかのような、耳をつんざく高周波音!
誰かが有線放送を使ってコウモリを捕まえようとしている!!
特許を侵害された憤りもあらわに、後ろを振り向くノエ君。
その目に奇妙なものが飛び込んできました。
森の入口に、一見ヒトのようなものが立っている。
ヌーンと突っ立ているそいつが高周波の発生源のようですが、口が閉じてます。
無表情、と言うかノッペリした顔は、まるで選挙のポスターのよう。
──wピwヘ√レvw^ ──ヘ√レvキュル───!!
さすがに気味が悪くなって脇に退くと、
そいつはノエ君の目の前をスーッと横切って水たまりの方へ向かいました。
その時、そいつが異様に薄っぺらいのに気が付きました。
厚さは5センチくらいしかない体のツルリとした表面に、
ヒトの姿、服や手足、顔などが印刷されたように描かれています。
薄っぺらいヒトのようなそれは、水たまりの縁で止まると、
急に音を出すのを止めて、ゆっくりと溶けはじめました。
イモリの群れがビチビチと暴れだしたのが見えます。
それを見たノエ君の勇者魂に火がつきました。
「オレのイモリに何するんだ!」
こんな状況下で堂々と既得権を主張する人類代表ノエ君。
しかし、そんなド根性っぷりもそいつには通じませんでした。
──wケwヘ√レvw^ オレ──ヘ√レvするんだ───!!
そいつは鳴き声?をノエ君の声に変化させながら、
ヌヌヌ──ンと伸び上がり、こっちへ向かってくる様子…
さすがにヤバイと感じたノエ君は、身を翻すと一目散に逃げ出しました。
──wレwヘ√レvw^ヘ√レvにするんだ───!オレのイモリニナニスるんだ───!
後ろから甲高い自分そっくりの声が追いかけてくるのを振り切って、
ノエ君は森を脱出しました。
「…で、次の日に行ってみたんだけど、水たまりなんて跡形もねーんだ」
それでガックリきたノエ君は、しばらくは大人しくしていようと誓ったようです。
「だって、そんなのと競争したって勝てねーだろ」
なんだかイイ加減な説明だし、聞いて損したみたいな空気になって、
銀のエンジェルは2枚しか渡しませんでした。
ノエ君は平気で嘘を付くような人間だったので、
本当のところ何があったのかは分かりません。
案外、ママに止められた、というのが真相のような気もします。
そんなノエ君も、翌年には堂々復活。
××ため池の水を抜く際にフライングで池に入り、排水溝に詰まって溺死しました。
古寺
古い寺の跡がある山に登った時の話。
山道歩いてて、道端に仔猫のきれいな死骸を見つけたんだけど、
夕暮れに下山するときにはもう内臓とかグチャグチャになってた。
鳥や獣に食い荒らされたんだなぁと思い、手を合わせた途端に
山上の寺の鐘がいきなりガンガンガンガンガンとありえない速さで連打されて鳴り響いた。
僕は無性に恐ろしくなって逃げるように下山した。
多分どこかの馬鹿がいたずらで鳴らしたんだろうけど、タイミング悪すぎ。
駅に着く頃にはもう日が落ちていて、電車のシートに座ってやっと安心できた。
で、動き始めた電車の窓から山の方角を見て思い出した。
確かに寺の跡はあったけど、もう廃墟になっていて、鐘は取り外されていたのだ。
納屋
薪を切らしていたので家の旧式風呂にくべる枝を拾いに森に入った、
それほど奥までは行かず家が見えるくらいのあたりで
薪代わりの枝を拾い集めた
ふと顔を上げると
目の前に出来立ての小さな納屋があった
家の者は納屋を作るなどとは
誰も言っていなかった、
不審に思い引き戸を開けてみると
作り付けの棚の上に小さな陶製の
お稲荷さんが五十体以上づらりと並んでいる
分けがわからないので薪拾いを続け
先ほどの場所へもどった
今度は納屋が無くなっている、首をひねりつつ家へ帰ると
祖父が庭で落ち葉を燃やしていた、
納屋の事をたずねてみたら
お前もおねだりされたか
と笑った
先々代のころから家の者が森に入ると
納屋が現れる事があったと言う
社でも建ててほしいんだろう
また祖父が笑った
狐に化かされたのは初めてだ…orz
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