A坊主
災難ですね
昨年の夏、バイクでツーリングに行った。
三人で飛騨高山の山道をのんびり流して、休憩所の小屋みたいなのがあったのでそこで休んだ。
誰も居なかったのでAがベンチに横になり少し寝かせろと。
俺とBは景色を見に遊歩道に進み、滝がある所に出たのでそこに30分位いた。
黒い雲が出てきたので降るかも知れない、すぐ出発しようと小屋に戻る。
Aが爆睡してたので揺さ振って起こそうとするも起きない。
とうとう雷雨になってしまいそこで雨宿りする事に。
Bと談笑してると傘をさした夫婦が入ってきた。
Bが「こんにちは、災難ですね」と話かけると旦那が「ええ、ほんとに」と。
俺とBが話をしている間その夫婦はずっと黙ったまま、寝てるAのほうを見てた。気味が悪いのでそれ以上見ないようにしてた。
大きい雷がどこかに落ちて俺とBがビクッとした。
突然Aがむくっと起き上がってこう言った。
A「今の顔見たか?」
何言ってるかわからず見回すと夫婦が居ない。
Bが慌てて外に出ると俺たちの三台のバイクしかない。凄い山奥なのに・・・。
A「もう大丈夫、感じない。寝てたら、ヤバそうなの2匹入って来る気配がして起きた。ずっと見られてたから寝たふりしてた。」
B「おれ話かけちゃったよ」
A「災難ですね、だろ。奴はええ、ほんとに、と答えたよな。あれお前の事を言ってたんだよ・・・」
Bはかなりビビッてたが
A「大丈夫、俺いつもこんな体験するから寝た振りしながら俺たちに憑かないよう念送ってたw」
Aの職業が坊主でほんとよかった・・・。
幽霊画
Aの家は寺なんだが倉みたいなのがある。Aの家に泊まった時の話。
夜、Aが面白いもん見せてやると倉に連れてかれた。
中は電気も通ってなく、懐中電灯で埃っぽい中を進む。
A「これこれ」と細長い箱を指さして開けてみろと言う。
箱はそんなに古い物じゃなかったが札で封印されてあった。よく見ると札は刃物で綺麗に切られており蓋は開けられる状態だった。蓋を開けると古い掛け軸が出てきた。
A「見てみろよ」と促されて紐をといて伸ばすと柳の絵が書いてあり下のほうは焼けてしまっていた。
A「この絵、おかしいだろ。火事にあってうちが引き取った絵なんだがこの絵には足らない物があるんだ。」
A「この絵、火事に遇う前は柳の下に女の幽霊が書かれていたらしい。」
背筋がゾっとした。何で夜中にこんなもん見せるんだよ・・・
A「幽霊画って奴だな。それにはお前が恐がる霊的なもんはないよ。本当に面白いのはこっちだ」
そう言うと一番壁際に置いてある白い布をかぶった額縁を指差し、開けてみろと手でジェスチャーを送る。
本当にビビッたが意を決して布を取った。
・・・普通の油絵だった・・・林檎と花瓶の奴。
Aは必死に笑いを堪えていたので俺は担がれたと思いAに「びびらせんなよ・・・」と文句を言う。
A「悪い悪いwビビりすぎだよお前wで、その下にもう一枚額縁があるだろ?そっちも見てみろよ」
頭に来た俺はその下にある絵を何の気なしに見た。
絵は縄で縛られており、縄にお札が数枚貼られてあった。
絵には青い空と草原の絵が描かれており、青い空の所には洋風の絵には似付かわしくない墨で描いたような女の幽霊が浮き出ていた・・・・。
A「な、面白いだろ?ちゃんと布かぶせとけよ。そっちはマジでやばいモンだからw」
・・・(‘A`)
欲のバランス
Aの話もう一個投下。
Aは生臭坊主を地で行く男で飲む打つ買うを一通り嗜む。合コンとかキャバも普通に一緒に行った。
ある日、キャバの帰りにAがこんな事を言った。
A「今日付いたサリナって子。」
俺「この生臭、キャバ嬢に惚れたか?w」
A「やっぱお前気付かないか。そうじゃなくて変なもんに憑かれてる。良いモン、普通のモン、悪いモンで分けたら別格、最悪の部類だな」
以下Aの話。
人の欲ってのは色々あるがどれもバランスで成り立っている。
腹が減るのは当然で、女とヤりたくなるのも当然。金が要らない奴なんか居ない。様々な欲のバランスが重要。
このバランスが崩れた時に悪いモンに憑かれる。あの子はバランスが偏りすぎて最悪のモンに憑かれている。
良いモンは妙にツキがある時とか。普通なのは毎日普通に暮らせる。お前みたいにな。
悪いモンは病気や事故を導く。最悪なモンは破滅に導くんだ。
あの子は薬物中毒。悪い男も集まりやすい。相乗的に悪いモンが集まりまくってる。ほっとけば自殺か何かして確実に死ぬ。
助けてあげたいが、本人は憑かれてる自覚が無いから病院も寺も神社も教会も行かない。いきなり俺が「お前悪いモンに憑かれてるぞ」と言っても多分話にならない。
俺「じゃあどうすんの?」
A「どうにもできん。」
翌月、Aは行かなかったが友達とそのキャバ行ったらサリナは辞めてた。付いた嬢にサリナの事聞いたら風の噂だが騙されて借金抱えて自殺したとの事。
後日Aに話したら「そうか」とだけ返って来た。
寄ってくる
洒落にならないくらい恐くないのばかりでスマン(‘A`;)
Aと男女8人キャンプ行った時の話。夜バンガローの中で酒盛りがはじまり自然と恐い話になった。
美香って子の番になり携帯電話の恐い話をはじめ、これが結構恐かった。
話が終わった瞬間、全員の携帯が鳴りだした。
俺やAも含めこれにはビビッた。慌てる俺達を見て美香が笑う。
美香「メールのグループ送信w」
そんなこんなで盛り上がり、寝るって時にAが真剣な顔で切り出した。
A「今夜はイヤな気配がする。多分何か起こるけど絶対に相手にするな」
この発言に女性陣がビビり全員このバンガローに泊まる事になった(Aの性格を考えるとエロい方に持ち込む方便だと思ってたw)
飲んで騒いで深夜一時を過ぎてた事もあり次第に全員眠りについた。
二時過ぎ位だろうか。突如ドアがノックされる。隣で寝てた美香が起きたらしく顔を引きつらせる。
数回ノックされた後、気配が消えた。
美香の安堵の表情も束の間、窓ガラスがコンコンと叩かれる・・・。
今にも泣きだしそうな美香。俺も顔が引きつる。Aの悪戯かと思ったがイビキかいて寝てる。
窓を叩く音が少し強くなると数人起きてヤバい状況だと認識したみたい。
美香が俺の手を握る。緊張しているのか汗ばんでた。
突然全員の携帯が鳴りだす。
ヒッ!と悲鳴を押し殺して全員無意識に携帯を探す。
A「出るな!!!」
突如Aが叫ぶと携帯は鳴り止んだ・・・
暫らく静寂が包み、美香は泣いてた。
A「ん、もう大丈夫。寝ようぜ」
と言うとAはまたイビキをかいて寝始めた。他の奴は寝付くまで時間がかかったが俺と美香は寝れずに手を握ったまま朝になった。
朝、携帯を見てもメールも着信も履歴が無かった。
A「あんだけ怪談してりゃ集まってくるよw」
・・・だそうです。
やばいモノ
A(坊主)の話投下します。ただの恐い話だけど。
一緒に静岡の友人宅に遊びに行き、帰りは夜中になった。戻るのは東名使うのだけど、なんとなく富士五湖使って帰ろうと言う話になった。
沼津(だっけ?)で一度下りて富士五湖有料道に入った。この道ほんと真っ暗でやな感じです(‘A`)霧も出てた。
トンネル抜けて長い下りになった時、Aが助手席から後ろを見ながらこう言った。
A「変なの来るから広い所あったら寄せて先譲れ」
ちょっと先に避難帯みたいなのがあったのでそこに一時停止して後ろの何かを待つ・・・
・・・来ました。見ちゃいました。
まんま自衛隊の幌付きのトラックです。運転席は見えませんが、幌の部分がボロボロで後ろの積み荷が丸見え。
スーツ姿の人、赤ん坊抱えた女、もう明らかに平成の人じゃない格好の人も居た。
霧の中をライトも点けずに走り過ぎて行った。俺もAも絶句。何あれ・・・状態。ラジオもノイズ入りまくり。
A「車出せ。すぐに」
俺「え、追い掛けるのかよ?」
A「違う、ヤバいのが居る」
何の事かわからずパニくったがアレ以上にヤバいのが居るのだと悟りすぐ本線に戻り出発。
料金所まで来たが例のトラックは見えなくてホッとしたw
談合坂で夜食を食べながらAから聞いた話。
あのトラックは何だかわからないが、まあ理解を超える物だろうなwそれより、俺達の車が止まったすぐ後ろに青白い顔した女が立ってたんだ。右のドアから後ろの席に入り込もうとしてたので車を出せと言った。
おいおいおいおい・・・マジかよ・・・。
なんとか飯食って車に戻り、後ろのドア見て固まったわ。車は霧で濡れてたんだけど、窓にくっきり手形が付いてた。
Aに手をあわせて貰って安全運転で帰りましたw
ふくしゅう
A坊主の話投下します。恐くないけど不思議な話。
その日は子供会の肝試しがAの寺であって、青年団の俺とAは手伝いに参加。
俺は明美さん(優太君の母親で旦那を交通事故で亡くしている)とオバケ役。
明美さんは白装束で口から血を垂らすメイクをしていて、本人ノリノリで少し着物をはだけさせ、この方が雰囲気出るとか言ってる。
20代後半だが美人なのでその姿が非常にエロく感じて俺もAも鼻の下伸びまくりw
明美さんと蚊取り線香と懐中電灯を持って配置につく。
Aが子供達に恐い話をしていよいよ肝試しスタート。
遠くでノリノリの明美さんが驚かす度に泣き叫ぶ子供達の声が聞こえるw
んで、最後の組が終わり明美さんが俺の居る場所に来た。
明美さん「優太泣いてなかった?w」
そういえば優太君来てない事に気付き青くなる俺。
俺「来てない!」
明美さん「え、だって私の所は通ったよ?」
慌てて逆戻りしたが居ない。ダッシュでコースを全て探す。やっぱり居ない。
半泣きの明美さん。
だが寺に戻るとAが優太君抱きかかえてたのでホッと一安心。
明美さんが泣きながら優太君に話を聞く。
優太「ママの所をすぎたら、パパがいてお話してたの。」
A曰く「本堂の裏で話し声がしたので行ってみたら優太が寝てた」らしい。
明美さん「優太、パパ何か言ってた?」
優太「うん、ママの事頼むよって言ってた」
この言葉で明美さん号泣。
A「お盆だしね、優太がいい子にしてるかなって会いに来たのかもね」
優太「違うよ、パパこれからふくしゅうにいくって言ってたよ」
・・・その場が凍り付く。
半月後に聞いた話では交通事故の加害者の会社が滞ってた慰謝料を全額振込んできたそうだ。
心から御冥福を祈ります。
呼び込む
A坊主の話
その日はAの檀家の法要で、たまたま俺が休みで暇だったので一緒に行った。
夕方に法要を済ませ帰りは俺の運転だったのだが、この土地に不慣れな俺とAは狭い道に入り込んでしまい迷ってしまった。
まあ西の方とはいえ都内だし適当に進めば幹線道路に出るだろう、と適当に車を走らせる。
しばらく進むと踏み切りがあった。
踏み切り前で一時停止すると、カンカンカンカンと遮断機が作動。
ほんの数秒ボーっとしていると中学生くらいの女の子が車の脇を通り、遮断機をくぐって線路内に入り込んで行くのが見えた。
真ん中くらいでこちらを振り返り、笑顔で手を振っている。なんか、呼ばれているみたいで何でだか知らないが車を降りる俺。
(電車くるな・・・あの子危ないな・・)とかぼんやり考えてたと思う。俺が危ないとは全く考えず、ただその子を連れ戻そうと遮断機をくぐる。
Aが何か言ってるが全く耳に入らなかった。
いきなり足を掴まれて遮断機の外に引っ張り出される俺。次の瞬間、電車が警笛を鳴らし頭の先2mくらいの所を走り抜けた。
A「馬鹿野郎、何やってんだ!!」
ハッと我に返って女の子がどうなったか線路内を見回す俺。居ない。
A「ここに花が供えてあるよな。つまり、ここはそういう場所だ」
見ると踏み切りの脇に花やらお菓子やらが供えられてあった。しかも一ヶ所じゃなくて、よく見るとお供えが点在してた。
前にAから聞いた話が頭に浮かび、背筋が冷たくなった。
A「霊に直接殺されるなんて物理的にあり得ないwだから人を惑わして『呼び込む』んだ」
はじめてその言葉の意味がわかったわ。Aが居なかったら、間違いなく呼ばれるままに進んでいただろう。
恥ずかしながら腰が抜けてしまったので運転代わってもらい帰りました。
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