『幼馴染』全3話|洒落怖名作まとめ【シリーズ物】

『幼馴染』|洒落怖名作まとめ【シリーズ物】 シリーズ物
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幼馴染

 

 

8週目

 

俺には、幼馴染の女の子がいた。
家も近くて親同士の仲も良く、俺とその子も同い年ってこともあって小さいうちから一緒に遊んで(遊ばされて)た。

まぁだいたいそういう関係ってのは、歳をとるにつれて男の側が気恥ずかしくなって疎遠になってくものだけど、例に漏れず俺もそうだった。小学校の高学年ぐらいになると、道ですれ違っても

「よう」
「やあ」

ぐらいのあっさりした関係になってた。

で、中学2年のときの夏休み、その子が突然、うちに来た。
とうもろこし持って。
たぶん、向こうの親に、うちに届けるように頼まれたんだろう。
俺はそう思ったし、向こうもそんな雰囲気だった。
あいにくその時、うちの親は外出してて、俺一人だった。
とうもろこしもらってハイさよなら、ってのもなんだかなー、と子供ながらに気を利かせて「あがってく?」と彼女を家に入れた。

麦茶を出して、まぁあたりさわりのない会話をした。担任がどうとか夏休みの宿題がおわんねーとか。だんだん打ち解けた雰囲気になってきた時、彼女が不意に「今度○○神社行かない?」と言い出した。

□ □ □

○○神社は、うちから自転車で10分ぐらいのところにあって、周りが木々で囲まれてて昼でも薄暗い、用がなければあんまり入りたくないところだった。当然俺は「え、なんで?」みたいな感じで聞き返した。そしたら彼女は「あ、怖いんでしょ。」と、ちょっと馬鹿にしたような顔で笑いながら俺をみてきた。

そーなると、「そ、そんなことないやい!」的なノリになり、まぁ結果的に彼女の術中にはまってしまったわけで。
さすがに夜は怖いんで、何とか理由つけて(夜は家族で外食するから、みたいなバレバレの嘘)、次の日の昼間行くことにした。

で、当日。現地集合ってことで、俺が神社に着くと、彼女はもう着いてて俺を待ってた。真っ白いワンピースと真っ白い帽子。
普段絶対しないカッコで、恨めしそうに石段に座ってた。

「おっそーーい」

昨日とはうって変わってフレンドリーな第一声をもらいつつ、神社の前まで二人で歩く。石段を登る途中、彼女は俺にいきなり「○○君は、霊って信じる?」と聞いてきた。

□ □ □

普段しないようなカッコで、人気のない神社に誘われ。
多少なりとも別のことを想像してた俺は、安心半分、がっかり半分(幼馴染とはいえ、目がおっきくてちょっと釣り目で、猫みたいな感じのかわいい子だったからちょっとがっかり)ぐらいの気持ちで

「信じるわけないじゃんw」と即答。

「じゃあ、今日で信じるようになるかもよ?」

ととんでもない事を言い出す彼女。

「私、霊とかそーいうの、好きなんだ」

おいおい電波ですか。

「会いやすいように、白ばっか着てきたんだ」そーゆーことですか。

唖然としながらとうとう神社に到着。快晴ならまだしも、ご丁寧に石段を登り出したあたりから曇り出し、嫌ーな暗さの神社一帯。

「じゃあ始めようか?」大きな目を更に大きく開いて、彼女が笑う。
彼女が言うには、神社の周りを二人が取り囲むように走って回る。
二人の合流地点で、すれ違いざまに霊が見える、といううわさがあるらしく、実験の相手を探してたんだと。

「1周ぐらいだと見えるかどうか微妙らしいんだけど・・・」
けど何ですか。

「8周回ると、二人とも連れて行かれちゃうんだって」
勘弁してくれ。

□ □ □

とはいえ、男と女、幼馴染、同い年。断れない条件は揃っている。
引いたら負けだ。という心理には勝てず、結局やることに。

神社の入り口を出発点に、互いに時計、反時計回り。ちょうど神社の裏に松の木が生えていて、そのへんが合流地点となる。

「行くよ・・・よぉーい、どんっ!」なんでそんなに明るい。

内心半ベソ状態で走り出す。神社の脇を抜け、松の木へ。
反対側から彼女が走ってくる。手を振ってるし、笑ってる。
周りには何も見えない。霊の姿なんてどこにもない。
彼女とすれ違いざま、彼女の「全然(見えない)」という声だけが聞こえた。1周目はつつがなく終了。

そのまま2周目、3周目に突入。1周目で何も見えなかったこともあり、俺も心に余裕ができ、向かってくる彼女に手を振ったり、「いねーじゃん!みえねーじゃん!」と笑いながら叫んだりしていた。

対照的に彼女は、2周目、3周目と数を重ねるごとに笑顔が消え、すれ違うときも無言になっていた。

「このぶんだと、8周したって全然おk」

そう思いながら迎えた7周目。彼女が俺とすれ違う瞬間、強烈なラリアットを俺にかました。

□ □ □

不意の急襲に喉をやられ、悶絶する俺。
彼女は苦しむ俺の手を強引に引っ張り、「早く!」と神社から逃げるように走り出した。
わけもわからず一緒に走る俺。石段を下り終え、止めた自転車もそのままにして更に走る。

神社が見えなくなったあたりで、彼女はようやく足を止めた。

喉の痛みと走ったあとの息切れが収まり、ようやく彼女に文句を言った。
「何でラリアット???」

彼女が答える。「見えてなかったの?」

は、何がですか?別に何も、と答える俺。彼女は首を振りながら

「○○君の後ろ、2周目あたりから手とか顔とかが追いかけてきてたの。 だんだん数が増えてって・・・7周目には○○君に絡みついてた。 ○○君がそんなだったから、8周目はやめとこうと思って。」

もし8周してたら・・・ と俺がつぶやくと同時に、俺の背後から小さく

「ちくしょう・・・」呻くような声がはっきり聞こえた。

その声を聞いたかどうだか、彼女は

「私はともかく、○○君はやばかったね。家帰ったら、背中みてみな?」

と、笑った。

彼女に言われるまでもなく、帰ったとたん、母親に

「あんた、どーしたのその背中?」

どーしたもこーしたも、シャツには手形がびっしり。
その一件以来、彼女にはいろいろと協力をさせられている。

 

 

いるよ

 

俺が高校生の時の話。

幼馴染の女の子が、「相談がある」ともちかけてきた。

改まってそんな話する間柄でもなく、どうしたのかと聞くと、「気持ちが知りたい」とか「どう思ってるのか知りたい」とか。

ああこれが恋の悩み相談てやつか、としみじみ思い、彼女の付き添いって形でその相手のいるとこへ向かった。

「ここなんだけど」
着いたところはただの道路脇。
誰もいねーじゃん、と半笑いで彼女に聞くと

「いるよ?○○君には見えないかもしれないけど」

ま  た  か  !

中学時代に、妙な心霊体験に付き合わされて以来、しばらくそっち系の話なんてしてなかった(意識的に避けてた)から、油断していた。
ノコノコついてきたことを後悔しつつ、恐る恐る

「じゃあ、気持ちが知りたいって・・・?」

「ああ、この人?の気持ちが知りたいの。なんでココにずっといるのかな、って。」

□ □ □

じゃあ俺じゃなくてもいいじゃん。

そう言い掛けると、彼女はにぃっと笑って
「ほら、○○君は『聞こえる人』じゃん?私、『見える人』だけど
聞こえないの。」

つまり俺にその見えない相手の声を聞いてくれということですかそうですか。
しかも俺が「聞こえる人」だと決め付けている。何を根拠に。

何もない空間をぼんやり見つめながら「その人ってどんなカッコ?」
と彼女に聞いてみた。

「うーん。言わないほうがいいかな」聞くんじゃなかった。

「一言で言うとね、カタチとして、ありえない。」どんなだよ!

「人の身体のパーツがめちゃくちゃについてる感じかな」あああ・・・

「だいたいこの辺にいるから、何か言ってるかどうか、聞いてみて」

嫌だ!とは言えない男子高校生。はいはいわかりましたよ。

彼女が指し示すあたりに(嫌々ながら)近づく。
特に何も聞こえない。見えないし聞こえない。

□ □ □

「悪いけど、なんもきこえねーwだって俺、聞こえる人とかじゃねーしww」
そういうと彼女は残念そうに
「そーかぁ、○○君ならイケると思ったんだけど・・・かえろっか」
「帰るべ、どっか寄ってく・・・・・・ぅ!?」

ふと、視線をさっきの道路脇に移した途端、凄まじい寒気と、全身の感覚が研ぎ澄まされたような、針でつつかれたような、痛みにも似た感覚が走った。

何かいる。さっき彼女から聞いたそのものがいる。
人だった、ということが辛うじてわかる程度に、パーツは確かについているがどこが顔で、どこが胴体で、どこが四肢で、なんてわからない。
人の残骸、とでも言えばいいのか、とにかくそいつがふらふらと動いている。

「○○君、見えちゃった?もしかして」彼女が驚いたような、嬉しそうな顔で俺を見る。それに答える余裕もなく、俺はただそいつを見ていた。

いや、正確には、俺が見られていた。そいつの「目」が、俺をはっきりと視界に捉えたのがわかった。だんだんと、そいつの目は俺の足元から上へ上へ目線を上げてくる。目を逸らしたいが、俺は固まってしまったかのように身動きひとつ取れずにいた。

□ □ □

そして、とうとうそいつと目が合ってしまった。高速で震えてブレている感じでぼんやりと見えるそいつの目。濁っているのか、空洞なのか、黒目だけなのか。
とにかく真っ黒だった。ただ、目が合った、という感覚が確かにあった。

その瞬間、そいつの「声」が脳に飛び込んできた。

「見るな。殺すぞ」

声が聞こえてすぐ、そいつは消えた。俺はその場にへたり込む。

「いなくなっちゃったね。あいつ、何か言ってた?聞いたんでしょ?あいつの声」
彼女が嬉々として俺に聞いてくる。

「見るな。殺すぞ。だってさ・・・」呆然としながら呟く俺に、彼女は笑って、「あ、でもいなくなっちゃったから、これはただの警告だね。そっか、見られなくないのか、あいつ。」

こっちは睨まれて、目が合って、大変だったんだぞ。彼女に愚痴ると、彼女は急に真面目な顔をして言った。

「あいつ、目なんかついてたっけ?」

え。見えてなかったんですか。驚く俺を横目に彼女はため息をつきながら

「○○君には見えたのに、私には見えなかった。なんか嫌だなぁ。私、負けてるなぁ。」

こんな調子で、彼女に付き合わされる機会が徐々に多くなっていく俺だった。

 

 

ころしてるの

 

高校3年の夏休み、幼馴染から電話が来た。

「勉強手伝って・・・」
死にそうな声だ。

人の手伝いをする余裕なんかないんだが。

「ううう・・・化けて出てやる・・・」

彼女が言うとなんとなくリアルなので、渋々行くことに。図書館にいるってことで、そんなに遠くもないので歩いて行く。

クソ暑い昼下がりに、クソ重いカバンを背負ってだるそうに歩く俺。

途中、道路脇で子供が一人、地団駄を踏んでいる。
小学1年ぐらいの男の子だ。

ああ、このぐらいの歳の子は飛び跳ねたり、わけもなく一人行進みたいなことするのが好きだものなぁ、としみじみ思いながら微笑ましい気持ちでその子を眺める。

そのうち、その子の動きがでたらめでなく、一定の連続した動きになっていることに気づいた。

□ □ □

空中をつかむ→つかんで地面に投げる→バンバン踏む

この動きの繰り返しだ。なんとなく楽しそうに、一心不乱に続けている。
何してるんだ?ちょっと気になって、男の子に話しかけた。

「こわいおじちゃんをねぇ、ころしてるの。」

暑さの吹っ飛ぶ答えに、聞き返すこともできずその場を去る俺。
図書館に着き、幼馴染に早速報告。

「あのねー、全部そっち系に結びつけるのって、どーかと思うよ?」
お前の影響じゃ!

「子供って、そーいうのあるじゃん?一人遊びっていうか、空想で楽しむっていうかさ。その子もそれじゃないかな・・・・・あ・・・。」
あ、って何よ。

「それってさ、どのへん?その子がいたとこ。」
あ。

あの道路脇。
俺が「人間パーツ寄せ集め」に睨まれたとこだ。

俄然、元気になった幼馴染。ふむふむ言いながら、一人納得のご様子。
「ちょっと休憩。行ってみよか、そこ。」

休憩て。俺着いたばっか・・・

□ □ □

今来たばっかの道を今度は二人で辿る。

「なんでその時点で気づかないかなー?○○君は才能あるのにさー」

知らんうちに才能まで芽生えさせられてる俺。
そうこうしてるうち、問題の場所へ。男の子はまだいた。

「この子がやってたんだ・・・」彼女が宝物でも見るかのように潤んだ瞳で男の子を見つめる。

彼女が男の子に近づいた途端、男の子が脱兎の如く逃げ出した。
ご丁寧に、逃げる間際も、念入りに地面をバンバン踏みつけて。

「あーあ、逃げられちゃった。聞いてみたいこといっぱいあったのに。」

どゆこと?残念がる彼女に聞く。

「○○君はホント、理解力が乏しいねー。あの子の動き、見てたでしょ?」

□ □ □

何かをつかんで(ちぎって?)は投げつけ、踏みつけ・・・

まさかあの子が、「人間パーツ寄せ集め」をあんな姿に?

「そゆこと。子供にこんな姿にされたんじゃ、そりゃ見られたくないもんねー」

「こんな姿」って。まだ見えてんの?

「うん、もうバラッバラだけどね。そのうち消えるんじゃない?」

どこからともなく「見るな・・・」という声が聞こえたような気がした。

「○○君、やっぱ才能あるよ、うんうん。」

彼女が腕組みしながらしきりに頷く。
何でだよ。そのバラバラのやつも今回は見えなかったし。

「へ、充分だよ?あの子が見えたんだから。」

彼女があっけらかんと答える。

あの子、見ちゃいけないもんだったのか

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