【長編- 名作】スカッとする話
転職したら夫の年収を上回ってしまった
数年前、転職したら夫の年収を上回ってしまった。
と言っても80万くらいのもので、月々にしたら大したことはない。
夫の性格上気にするのはわかっていたから黙っていた。
でも源泉徴収票を見られてばれた。
たまたま今は私がちょっと上なだけで、
またすぐ夫の方が抜くよ、って言ったけど
不機嫌になられてだめだった。
無視される日が続いた。
やっと口きいてくれたと思ったら「家事に手を抜いたら仕事なんてすぐ辞めさせるからな!」
「俺が許してやってるんだから働けるんだぞ!」と言われた。
その時は「うんそうだね」って返事をして、家事を頑張った。
1年くらい経った頃、急に家事をやりたくなくなった。
夫が言った言葉が遅効性の毒みたいに効いてきたようだった。
自分の分だけきっちり半分やるようになったら夫が文句を言ってきたので
「私だけ負担が多すぎる。私の方が勤務時間が長くて、通勤時間も長いのに
家事100%ってよく考えたらおかしいよね」
と反論した。
夫は「俺より稼ぐと思って調子に乗りやがって!」と、私の通帳を燃やした。
稼ぎのことは口に出さないようしたのに、夫の方から口に出されてああもうだめだと思った。
通帳は翌日に再発行した。
夫はいつものように「無言の不機嫌アピール」をしていれば
私が折れると思い込んでいたようで、無視を貫いていた。
夫が無視してくれているうちに荷物をまとめ、義両親と話をつけ、弁護士を探した。
舅はミニ夫のようなモラハラ爺だが姑以外には強く出られない。
姑は私の味方になってくれた。
有責にするには弱いが、モラハラや小突かれた痕、経済DVの証拠をとっておいたので
弁護士はゴネられてもまあ勝てるでしょうと言ってくれた。
その日も夫は「無言の不機嫌アピール」をしていた。
目の前に弁護士の名刺を置いて、私も無言で家を出た。そのまま帰らなかった。
夫はあっぱれなことにその後も「無言の不機嫌アピール」を貫いた。
貫いたまま離婚になった。
本当に離婚すれば私が困ると思っていたようで、
夫は目の前でニヤニヤしながら見せ付けるように離婚届に署名した。
もらってすぐ提出した。不受理届も出した。
2ヶ月後「メシでも食いに行くか?」とメールが来た。無視した。
さらに翌週「カラオケ行こう」とメールが来た。無視した。
夫は私が逆に「無言の不機嫌アピール」をしはじめたのだと思い込んでいた。
「ガキかよ」「ふてくされてんじゃねーよ」と自己紹介乙なメールが来たがそれも無視した。
離婚して4ヶ月後、忘年会の時期、偶然二次会のカラオケで遭遇した。
「バツイチになってからモテちゃって」と話しかけてきたので、スルーして部屋に入った。
こちらの部屋に入りたがっているようで、廊下でウロウロしていた。
「別れた夫なんです、気持ち悪い」と言うと、離婚のいきさつを知っている上司が追い払ってくれた。
夫の同僚らしき男性が、夫の代わりに上司に謝罪している姿が見えた。
夫はドアのガラス越しに私を睨みつけて「怒ってるんだぞアピール」をしていた。
怖いもの知らずの若い女子社員がドアを開けて
「ストーカーきも~い☆」
と酔った勢いもあってか、夫に向かって言った。
私以外の女には強く出られない舅そっくりの夫は、真っ赤になってトイレへ逃げた。
その夜夫からロミオメールが来た。
テンプレか?と言いたくなる様な、歌詞みたいなポエムが書いてあった。
「どこで間違えたんだろう」とか「ボタンを掛け違えただけ」とか「すれ違いの日々が俺たちを遠ざけた」とか。
その瞬間、なぜかわからないけど
「終わった。勝った」という気持ちがこみあげてきて、離婚後はじめて泣いてしまった。
夫に対する未練ではなく、純粋に「やりとげた」という勝利の涙だった。
泣き終えて、夫を着信拒否した。
あんな泣き方はもう二度とできないだろうと思う。
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