『目覚まし隊を結成』スカッとする話【長編- 名作まとめ】

【長編- 名作】スカッとする話

 

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【長編- 名作】スカッとする話

 

目覚まし隊を結成

以前働いていた職場に、ものすごく時間にルーズなやつがいた
縁故なのか上の方針なのか知らんが、月の半分以上も遅刻するくせに首にならない
ぶっちゃけ新人にやらせるようなルーチンワークを、入社3年以上たつそいつにやらせ続けてたから
まあ何か事情はあったんだと思う

だけどもし事情があったにせよまったく下には説明がないので、下は下でフラストレーションためてた
俺の隣の席のやつは、そいつの同期という理由だけで毎日モーニングコールをやらされてたんだがそれで病んだ
留守番電話サービスに接続します・・・という音声が流れるまで、毎朝何十回もかけ続けりゃそりゃ病むと思う

そこで同僚何人かで交代してかけようと提案し、俺も何度かかけたけど、全然出ない
本人に言ってものれんに腕押し状態だし、上に直訴しても何も改善されなかったうえ、
「しっかり起こすのも仕事」と叱られた

仕方ないので、そいつが住む寮の部屋まで行ってドアを叩いたが、当然それくらいで起きるタマじゃないので
こっちが遅刻しそうになった
で、こちらの遅刻には上司はきっちり叱責してきた

そこで、遅刻魔の同期の1人が発案し、周囲の連中と協力して目覚まし隊を結成した
前提として、その遅刻魔は独身寮に住んでた
そこの独身寮はもともと大きな部屋を壁で仕切って3部屋にしたもので、
しかもその壁というのが厚み1cmあるの?というくらいうっすいベニヤ板

当然、行政からは何度も指導が入っていて、近く改築が予定されていたが、その当時はまだ着手されていなかった
どんくらい薄いかと言うと、極端な話、夜中に勢いよくティッシュを箱から抜くとそれが隣に聞こえるとか
うっかり壁に手をついたら穴が開くんじゃなくてドリフみたいに壁ごと倒れるとか、本当に怪我人が出るレベル

俺も新卒時代に入居したが、2週間で頭おかしくなって出たくらい
両方からの騒音もすごいんだが、上や下からもバカみたいに響くから、安心できる時間が皆無だったわけ

で、遅刻魔の部屋は、幸いと言うかなんというか、3つに仕切ったうちのど真ん中の部屋
遅刻魔には皆辟易してたから、喜んで目覚まし隊に協力してもらえた

そいつは毎日7時に携帯のアラームを鳴らすが、まあまずこれでは起きない(両隣がこれで起きる)
何度かスヌーズして、やっととまるが、恐らく単に携帯の機能の限界でとまっているだけだと思う
そこで、まず6時55分に右隣が、7時に左隣がホームセンターで購入した「超強力目覚まし」を鳴らし始める
音量とスヌーズ時間を最大に設定して、20分くらいはずっと鳴らしっぱなしにする

ついで、そのアラームの音を聞いた上の階の3部屋ほどが室内で「朝の体操」を始め、軽やかなステップを繰り返す
同じくアラーム音を聞いた下の階は「朝の掃除」を始め、うっかり天井をクイックルの柄で突いてしまう


ちなみに寮の管理人も目覚まし隊の一員なので、アラームに「ちょっとうるさいねぇ」というだけであとは全部黙認

それどころか時々「うるさいんだけどね!」と、いかにも「目覚ましが鳴っている部屋を間違えました」というていで
遅刻魔の部屋のドアをガンガン叩いてくれた

1週間もしないうちに遅刻魔が両隣の部屋のやつにキレてたが「ごめーんなかなか起きれなくて」とスルーされてた
上下階のやつにも抗議に行ったそうだが、「朝の体操(掃除)ってすごくいいよ!一緒にやろうよ!」と勧誘されたらしく
「そんなんできるか!」と喧嘩して、すごすご帰ってきた
2週間くらいで憔悴し始めて、遅刻じゃなくて欠勤が目立つようになってきた

そのへんでまずモーニングコールで病んだやつが辞表を提出し、1週間後に俺が辞表を提出し、その1週間後に・・・
というふうに、目覚まし隊のメンバーで次々に辞表を提出していった

当然引き止められるが、「2週間前に出せばいいんですよね?労基に聞いてみましょうか?」と返したら
後ろ暗いところでもあるのか、それ以上は何も言われなかった

ただいきなり10数人もやめると取引に支障が出るというのは理解したので、退職日は多少ずらしてやった
ちなみにこの頃には遅刻魔は「休職」ということで、実家に帰っていた

で、退職者全員の転職先というのが、最初に目覚まし隊を発案した人の親の紹介先
「その会社はおかしすぎる。全員うちでなんとかしてやる」と言ってくれて、実際にいくつも就職先を紹介してもらったので
全員きっちり転職先を確保できた(もともと会社経営者だそうで、そのツテらしい)
こういう後ろ盾があったからこそ、あそこまではっちゃけられたんだと思う

従業員の4分の1が半年の間に退職してしまったせいか、取引先も徐々に離れていって2年後には不渡りを出した
最終的に同業大手に吸収される形で買収されたのは不幸中の幸いかも(雇用的な意味で)

 

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