『院長の娘』スカッとする話【長編- 名作まとめ】

【長編- 名作】スカッとする話

 

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【長編- 名作】スカッとする話

 

院長の娘

個人医院勤務です。

最近院長の娘さんが跡継ぎとして入職しました。

小児科医として最高の資質を持ってるというか、とにかく優しくて穏やか。

白衣の変わりにアニメ柄のエプロン着用、看護士も白衣をピンクやモスグリーンに移行、診察室にポスターを貼り、ぬいぐるみや花を飾り恐怖感を出来るだけ失くし、おりこうさんにしてたごほうびにと、帰りに飴を一つ。

夜中だろうが朝だろうが昼休みだろうが往診もするし小さいぬいぐるみをもってあやしながら診察して、患者さんからの評判も最高。

眠りかけの猫似のおっとり系お嬢様で、職員にも気配りを忘れない良い人です。

ある日どっかの団体の人が

「日本人は働きすぎ!休まなければいけません!」
とロビーで騒ぎ始めました。

なんかゆとりがどうのこうのと言って、

「土曜日も仕事してるなんて、週休二日が当たり前の世の中になってるのに」

「労働者のプライベートなくつろぎの時間を削り、家庭生活の崩壊を招く」

「少年犯罪が増えてるのも親が子と過ごす時間が減っているからで、過酷な労働条件を強制する事で、犯罪の増加に加担している」
と、ゆんゆんな事を熱弁。

20人くらいの観衆(患者さんと保護者)がいる事が余計活気づけた様です。

仕事の邪魔だからと帰ってもらおうとしたのですが、院長に話をさせてくれの一点張り。

その日院長は学会でいらっしゃらなかったので、副院長が登場。

お嬢の副院長じゃ太刀打ちできまいと踏んだ怖めの師長が駆けつけたのですが、なんと鮮やかに撃退してくれました。




大体こんな感じ。

「後を見てください。あなたにはあそこで真っ赤な顔をしてグッタリしてる子供が見えませんか。

私は働きすぎなので今日の診察は中止するので帰れとあの子に言えますか?

あなたの子供が夜中に高熱を出して苦しんでいる時、もう休んでますからと診察を断られてもあなたは納得してお帰りになるんでしょうね。

その結果最悪の結末を迎えたとしても、あなたの意見が認められた結果ですから満足でしょう。

ですが私はあなたの言う事はバカの世迷言にしか聞こえませんし、苦しんでいる子供を放置する事を薦められても、医者としてではなく人間としてそんな鬼みたいなことは出来ません。

他人に仕事するな、なんて余計な事を言ってまわる暇があれば、働いたらいかがです?

そんな独りよがりな寝言を聞かせるよりもその方がよほど建設的で世の為になるでしょうに。

あなたと話してると頭痛がしてきます。

ここは病気を治す所なので、あなたのせいで病人が増えたら余計仕事しなくてはなりませんから、とっととお引取り下さい。

くだらない話を聞かされている間、具合の悪い患者さんたちが待たされてるんですよ。

つまり「存在自体」が迷惑なんです。ですからお帰りください」

私達はちょっと呆然。あのお嬢が……

なおも食い下がろうとするヤツに有無を言わせぬ口調で

「お 引 取 り 下 さ い」。

そしてきびすを返して診察室に戻り、何事も無かったように「次の方どうぞ?」。

これだけきつい事を言いつつも冷静な口調で、かむ事も無く言ってのけ、睨みつつも口元には冷ややかな微笑み…実は強かったんだ副院長…

ヤツはスゴスゴと退散、保護者からは拍手が出ましたが、いつも「お姉ちゃん先生」と呼んで副院長に懐いていた子供が、神妙に診察を受けていてちょっと笑えました。

ちなみに事の経緯を聞いた父親である院長は

「あれは昔からなあ…冷静に怒るからなあ…普段めったに怒らない分……なあ?…うん…」

とちょっと微妙な感想を漏らしてましたw

 

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