【長編- 名作】スカッとする話
キレまくりの受付おばちゃん
会社に沸点がとても低い受付のおばちゃんがいるんだ
何にキレるか解らず皆逃げるから若い受付の子が育たなくて、
会社もなんとかしなきゃとは思うものの、一応おばちゃんが主力だから切るに切れない
しかもおばちゃん、先人が作ったマニュアルとか仕事で使うデータ、
自分がいらないと思ったら全部捨てちゃう
だから新人が自分のために作ったマニュアルも捨てちゃってそれを指摘されたらキレる
平社員はみんな資格持ちの職場だし「どうなっても知らねーぞ」と自分の逃げ道だけ確保して遠巻きにみてるだけ
触らぬ神に祟りなし状態
じゃないとこっちに向かってキレまくるから
おばちゃんのせいで一同常に神経を張ってた
あまりに新人がいつかなくて(てかおばちゃん以外全員辞めて)漸く上が危機感を覚えるも、
数年誰一人後釜が見つからないまま、4月に一人、他の支店から応援として
新しい子(以下、新人。23歳、短大卒なので職務4年目)が入ってきた
おばちゃんのキレっぷりは他の支店でも有名で、誰一人応援に駆けつけようとしなかったからかなりの異例
しかし、この子がまたぶっ飛んでる
なんていうか、明るいコミュ障っていうのかな
よく喋るし笑う子なんだけど会話が地雷というか、攻撃力高いというか
例えば髪の毛切った人に「わぁ!髪減りましたね(にっこり」
朝忙しくてアイプチ忘れた人に「瞼がいつもの2倍ですね!」
などなど、言い方に問題がありまくりで人のこめかみをピクピクさせるのがうまい子だった
そんなんだから受付のおばちゃんキレまくりなんだけど、新人の子、笑顔で爆弾ぶっ放すのよ
「ブッチ切れです!カムチャッカ島がインフェルノです!」
「どうしたんでしょう!更年期でしょうか!」
「本日5度目の大噴火、高血圧が疑われます!」
仕事でミスしたわけではないから、
周りも迷惑かかるわけでもないし(どちらかというと仕事がスムーズになった)、
むしろあまりの堂々たる言いっぷりに周りは吹き出すの堪えるのに必死
そのうちおばちゃんは体力が尽きてきて、
キレるんだけどあっという間にガス欠するようになった
それが4月中ずっと続いて、ついに5月に入り、
「私、あの子といると倒れそう」となんとしおらしくなってしまった
相変わらずキレるのはキレるんだけど、
キレたところで新人にはノーダメージだし、むしろ煽られるし、
おばちゃんのキレは一瞬で噴火して一瞬で鎮火する感じになった
GW中は目の回る忙しさに毎年おばちゃん大噴火の連続(それこそ電話鳴るだけでブチ切れる)だったのに、
今年は恐ろしいほど静かだった
電話が鳴っても「キィ!このクソ忙しい時に誰がかけてんのよ!…っあー!もしもし、○○です」みたいな
その時見ちゃったんだけど、おばちゃんが噴火すると新人、すんごい悪い顔で目を見開いてパアッと笑っておばちゃんを見るんだ
昔見てたネウロってアニメのネウロが目を点にしてた笑い顔とソックリ
新人可愛らしい顔してるから、実際は可愛い笑顔なんだけど、見え隠れする邪悪さがネウロソックリ
おばちゃん、軽く新人のネウロ笑顔恐怖症になってるっぽい
で、月曜仕事終わりロッカーで着替えてると新人と鉢合わせ
「お疲れ様ー」と言いつつ、何か爆弾発言されるかなと思いきや
新人「最近だいぶ受付も静かになりましたよね。皆さんには騒がしくして迷惑ばっかりかけてしまって、きちんと謝らないとなって思ってたんです」と普通の発言
アレ?パンチが効いてない、と拍子抜けしてると
「やっぱりおばちゃん更年期でしょうかね!すごいですよねキレっキレ!超キレっキレ!いつ血管までブチ切れるのか私ドキドキしちゃいながら見守ってます!」とにっこり笑顔
不意打ちを喰らい「お、おぅ…」とそんな情けない声しか出せなかったが、新人は気にならなかったようで
「もう少し体力削ればもっと静かになりますかね」と呟いて帰っていった
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