ちょっと切ない話『再就職らしきお爺さん』【短編】全5話 Vol. 23|切ない話・泣ける話まとめ

ちょっと切ない話『再就職らしきお爺さん』【短編】全5話 Vol. 23|切ない話・泣ける話まとめ
スポンサーリンク

切ない話 Vol.23

 

運動会

 

俺、中学の頃、運動会の時にさ、「こなくていいってば!昼飯は仲間と食うからよ」って言って、適当になんか買って出かけて、ほら、田舎の学校の運動会ってさ、
父兄も参加のメニューがあったりして親が見に来るなんて当たり前だったし、中学でも。

でも、かーちゃん、弁当持って来ちゃったんだよ。

俺が昼飯何にも持たねぇで出かけたのを心配してさ、「だってお前、何にも食べ物持たないで行っちゃったもんだから、母さん心配で」ってさ・・・。

その頃ちょうどワルがかってた俺は、仲間に、てめぇんとこかーちゃん来たの?って馬鹿にされるのが恥ずかしくて、かーちゃんに 「食いもんぐれぇ買って
来たからいいよ!帰れよ!」って言っちゃったんだ。

でも、その後、作ってきた弁当校庭の隅に広げて、独りで座って食ってるかーちゃん見ちゃってさ・・・。それをこの歳になるまでずっと気にして
生きて来たから、悪ぃことしたなって。免許とって車ころがせるようになってからは、割とかーちゃんの買い物の荷物持ちとかしてやってる。

運転の途中で季節的に桜なんか咲いてると、「わあ、綺麗だねぇ。今度弁当持って花見に来ないとね・・・」 って言うんだよ、かーちゃん。
それ聞く度に 「ああ、そうだな」 って言うんだけどさ、この歳になってまさか本当にお袋といっしょに行くわけねぇじゃん。
お袋だって分かってるとは思うんだよ。

・・・だから余計に、何で中学の頃のワルガキだった俺は、かーちゃんが作ってくれた弁当を一緒に食ってやれなかったんだろうって思うと、もう、
切なくて・・・。切なくて・・・。

かーちゃん、あん時本っ当にごめんな。今度また重てぇ荷物ちゃんと持ってやっからよ・・・。

 

 

ゴミ玩具

 

3歳の娘が、週末の公民館での開放プールを楽しみにしてる。
プールは一人に一つ玩具持ち込みOKなので私も娘に玩具を…

ケチなのもあるがプールの為だけに買うのも何だしなぁと、家にある小さいペットボトルで、いわゆるゴミ玩具を作った。
ゴミ玩具とはいえ私なりに手をかけ、ビーズを中に入れたりして可愛らしく作った。
娘もとても気に入った様で、お風呂でもそれで遊んでいた。
で週末プールにそれを持っていった娘、楽しく遊んでいたのに、どこぞのギャルママに

『何それ?手作り?ダサいね~、あんたのママ買ってくれないの?ダサイダサイ…』

と言われ。娘はキョトン…。しかもそのギャルママの子までが、ダサイダサイ騒ぎだした。
娘は無視して私の方にやって来たが、その子がついてきて、ダサイダサイ連呼。
娘は半泣きになって、自分の玩具をプールの外に投げ出してしまった。
娘はその日、今まで無い位におとなしくなって、何も話したがらなかった。
私は少々心が痛かったが『新しい玩具買いにいく?』と聞いた。
しかし娘は無言で、首を横にふった。

そして夜、娘が『ママの玩具、投げたりしてごめんなさい…また遊んでいい?』と言った。
嬉しかった。
少し泣いてしまった。

 

 

再就職らしきお爺さん

 

近所のマックで外壁の塗装してた時偶然昼食時間帯に通りがかった。
日陰で職人さん5人が弁当広げて食べようとしてたとき、一番年寄りの再就職らしきヨボヨボのお爺さんが自分の弁当を落とした。
泥やペンキがいっぱいの地面にぶちまけてた。
ご飯とチクワだけだった。
落としたショックと見られたくないのとで無言で必死に手でかき集めてた。

その時、
棟梁らしき中年のオッサンが若いのに1000円渡して
「サンクス行ってきてやれ、ついでにみんなのプリンもな。」

若いのはすぐ走って行き、全員食べるの待ってた。
年寄りと食事が切ないのは誰でも同じなのでは、と思った。

 

 

感謝の言葉を言おう

 

鬱病みたいになって、責任感と義務感だけで大学行ってた頃、あまりにもツラくて死のうと思った。

一緒に帰ったやつに、「もう俺死にたい。俺みたいなのでも、死んだら誰か泣いてくれるのかな」って言ったんだ。

そしたらそいつは、「○○が死んだら、私は泣く。だから死ぬなんて言うな!」って、電車の中で泣き始めてしまった。

その時に、俺は生きていこうと思った。そいつを泣かせないために頑張ろうと決めた。

今思えば、親のことも忘れた、あまりにもバカらしい、子供の考えだけどな。

今ではまったく会わないけど、元気にしているのは知っている。

今度、飲みにでも誘って、感謝の言葉を言おうと思う。

俺が生きてるのは、お前のおかげなんだと。

 

 

おはぎ

 

会社が棚卸しで振り替え休日があったので
会社の若い連中、男女3:3で海にドライブに行った
私は途中で腹が減ると思ったので
人数分×3個のおはぎを、前の晩からこしらえた。
「気のきく人」と思われて好感度アップ間違い無しと確信して
寝不足ながらウキウキ気分で出発。
ひそかに思いを寄せるN男さんもお洒落な服で張り切っている。
10時ごろ、ブサイクな同僚♂(29才喪男)が
「ソフトクリームがたべたい」と言い出したので
私は「お、おはぎならありますけど・・」とやや控えめに
18個の色とりどりのおはぎ(あん・青海苔・きなこ)を紙袋からとり出した。
一瞬「しーん」となって、ブサイクな同僚♂が
「喪女さんが握ったの?うわwwおばあちゃんみたいwww」と言った。
他の女が「ちゃんと洗った手で作ったの?今の季節雑菌は危ないよ、ほら、ここやばくない?」と言った。
爆笑が起こった。18個のおはぎは誰の口にも入らなかった。
私はほぼ半泣き状態で、おはぎをしまった。
人づてに聞いた話だけど、N男さんも「ちょっとあれは食べらんないw」と言っていたらしい。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
切ない話
kaidanstをフォローする

コメント

error: Content is protected !!