『呪いの器』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】

『呪いの器』|【名作長編 祟られ屋シリーズ】洒落怖・怖い話・都市伝説 祟られ屋シリーズ

俺はその事をマサさんたちに伝えた。
マサさんは「そうか、判った」と答えた。

俺がマサさんのレクチャーに従ってイメージを操作した瞑想法は、供養法の一種なのだそうだ。
俺には呪術や祈祷の儀式についての知識が無く、「調伏」のイメージが無かった事が成功の鍵だったようだ。
また、長い間神社に封じられて浄化が進んでいた、鉄壷の呪力がまだ余り戻っていなかったことも幸いしたようだ。

春分を待って、鉄壷の本格的な供養が行われた。
花や酒、果物や菓子を供えた祭壇に僧侶の読経の声が響き渡る。
俺は手を合わせて、瞑想で観た壷の中の人々に、「どうか成仏して、あの世で幸せに暮らして下さい」と祈った。
日を改めて俺達はキムさんのチャーターした漁船に乗って海上に出た。
やがて、船は停船した。
空はよく晴れ、波も穏やかだった。
マサさんが「これで終わりだ。最後はお前の仕事だ」と言って鉄壷を俺に渡した。
ズシッと来る鉄壷を俺は両手で持ち、できるだけ遠くへと海に放り投げた。
大して飛ばなかった鉄壷は、あっという間に海の底へと沈んで行った。
鉄壷を沈めた海に俺達は花束を投げ、酒を注いだ。
手を合わせ、しばし黙祷をすると、再び船のエンジンが始動した。

俺たちを乗せた船は、港へ戻る航路を疾走し始めた。

[完]

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