ほっこりする話『一番大切なお金はどれですか』など短編5話【7】 – 優しい話・体験談まとめ

ほっこりする話『一番大切なお金はどれですか』など短編5話【7】 - 優しい話・体験談まとめ ほっこりする話

 

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ほっこりする話 短編5話【7】

 

 

一番大切なお金はどれですか

知的障害のある女の子が両親と暮らしていましたが、お母さんが病気で亡くなりました。
父娘で一緒に暮らしたかったのですが、周りの人の勧めもあり、女の子は施設にあずけられて、お父さんと別々に暮らすことになりました。
施設では、社会に出ても通用するように、お金の訓練をします。
女の子も一円から五百円までの硬貨を順番に並べてお金の価値を勉強していました。
試験の時、先生が「一番大切なお金はどれですか」と女の子に聞くと、女の子は笑いながら十円を指しました。
先生が何回も、「五百円が一番大事だよ」と教えても、女の子は繰り返し十円を指しました。
困り果てた先生は、「どうして十円が大事なの?」と聞くと
女の子は、
「だって、この十円をあの公衆電話に入れたら、 大好きなお父さんの声が聞けるから!」

 

 

四十年近く連れ添ってくれて有難う

昨年の十月、女房が胃潰瘍の手術の為に入院した。
後で分かったのだが、意を決しての入院だったようだ。
女房は手術室へ向かう直前、ベッドの枕の下から 一通の封書を私のポケットにねじ込み、寂しそうに笑っていたのが少し気にはなった。
手術は一時間足らずで終わったが、その間、待合室で先ほど渡された封書を開けてみた。

「お父さん!
私は潰瘍ではなく、癌だと思っています。
この先あまり長くは生きられないと思うので、今のうちに言っておきます。
四十年近く連れ添ってくれて有難う。
良妻だったとは思っていません。
我がままばかり言って迷惑のかけっ放しだったと自分でも思います。
でも、 あなたのお陰で、私は結構楽しい人生が送れました。
私が先に逝くことになりますが、『三途の川』は渡らずに、あなたが来るまでじっと待っています。
来た時には、他のいい女に目移りすることなく真っ先に私を探してください。来世でも夫婦として一緒に暮らしてあげますから・・・」

「なん じゃ!これは!遺書か?ラブレターか?」

思わず吹き出した。
術後、医師から告げられた。

『単なる潰瘍です。三週間ぐらいで退院できるでしょう。』
その言葉を聞いて一安心すると同時に、あの、内弁慶な女房の本心の一端を図らずも垣間見たことで思わず苦笑した。
四~五日して病院に行くと手を出すので、「なんや!」と聞いたら、あの手紙を返せと言うのでした。
私は、「そんなもん、知らんで!」と言うと、背中をおもいきりたたかれました。
その力は、元気な時と同じぐらいの強さまで回復していました。

 

豹変した盲導犬

毎朝、私が通勤する途中に、見かけていた盲導犬。
交通量の多い交差点で、いつも彼が信号待ちをしている時間、私は、
「やっぱり盲導犬は凄いなぁ。素質があるよねぇ。」
と思いながら、ニコニコと、その横を車で通過します。
獣医と言えども、盲導犬を見る事は、なかなかありません。
それはとても印象的な、それでいて毎日続く、不思議な風景でした。
出会いは、突然やってきました。
ある日、そんな盲導犬の彼が、ひょんな事から私の患者になりました。
盲導犬の管理は非常に厳しく、月に一回の健康診断、爪の確認、足裏の毛刈り、肛門腺に予防関係に・・・・
とにかく、飼い主さんに危険が及ばないよう、完璧な状況下で、 任務がこなせるように、メンテナンスされています。
もちろん優秀な盲導犬。
爪切りでも自分から足を差し出すほどで、全ての診察は、非常にスムーズに進みます。
ところがある日、彼の本当の姿を見ることになるのです。
それは、正確に体重を測ってみましょうか・・
と盲導犬の補助器具を、全て外した時の事でした。
豹変した彼。

彼は一目散に、病院を駆け巡りました。
そして、病院内の看護士、獣医一人ひとりに挨拶をするように、じゃれて、グルグル回って、伏せをしたと思いきや飛び掛ってきて、また次の人間のところへ・・・
そう、これが彼の本当の姿だったのです。
本当は、人間と一緒に、思い切り遊びたくて、走り回りたくて、普通の犬としての暮らしに憧れを持っていた。
そんな彼に与えられた使命、盲導犬。
長い間、ずっと抑えていた感情だったのでしょう。
そんな彼の本当の姿を露(あらわ)にした原因、それは・・・
間違いなく、彼に付けられていた補助器具でしょう。
それを付けている間、彼は「プロ」なのです。
何があっても、飼い主さんを守り、自分の使命を果たさなければなりません。
飼い主さんの
「いつもごめんなぁ・・ごめんなぁ・・
先生、少しだけ、この子を自由にさせてあげても良いですか?」
と言う言葉が、重く心に残っています。
飼い主さんは、きっとこの子の気持ちに、ずっと気づいていたのでしょう。
信頼で結ばれた強い関係。
本当は遊びたいし走りたい・・・
けれども誇りを持って、毎日仕事を続ける盲導犬に、強く感銘を受ける事となりました。

それから・・・
今でも、毎朝彼の姿を、交通量の多い交差点で見かけます。
しつこいですが、「素質」などと安易な言葉で、彼を評価していた私自身に、今でも苛立ちを隠せません。
そんな簡単なものでは無いのです。
彼は毎月、病院に来た時だけ、補助器具を外し、ほんの数分だけ、みんなに挨拶しに行く、自由を与えられています。
私たちも精一杯、彼と挨拶をします。
犬は本当に凄いです。
獣医になって良かったと思います。

 

 

3人の血

腹違いの兄貴が居る。
俺小学5年、兄貴大学生の時に子連れ同士の再婚。
一回り近く年が離れていたせいか、何だか打ち解けられないまま。

大学入試の時、入学金の事親に言えないでいたら、兄貴が知らない内に払っていた。

俺「気を遣わないでよ。いざとなれば働けば…」
兄貴「馬鹿野郎。俺はお前の兄ちゃんだ。」

後でちょっと泣いた。

姪っ子が大怪我した時、限界まで輸血した。

兄貴「もういい止めろ。死んでしまう」
俺「うるさい。俺は○子の叔父さんだ」

義姉共々泣かした。
お返しだ。ザマミロ。

姪っ子の結婚式の時、
「私にはお父さんとお母さんと、叔父さんの血が流れています」
って言われて図らずも号泣。

兄貴夫婦以上に号泣。大恥かいた。
○子綺麗だったなあ…。

 

 

父親としての不甲斐ない

もう10年も前の話妻が他界して1年がたった頃、当時8歳の娘と3歳の息子がいた。
妻がいなくなったことをまだ理解できないでいる息子に対して、私はどう接してやればいいのか、父親としての不甲斐なさに悩まされていた。
実際私も、妻の面影を追う毎日であった。
寂しさが家中を包み込んでいるようだった。
そんな時、私は仕事の都合で家を空けることになり、実家の母にしばらくきてもらうことになった。
出張中、何度も自宅へ電話をかけ、子供たちの声を聞いた。
2人を安心させるつもりだったが、心安らぐのは私のほうだった気がする。

そんな矢先、息子の通っている幼稚園の運動会があった。
“ママとおどろう”だったか、そんなタイトルのプログラムがあり、園児と母親が手をつなぎ、輪になってお遊戯をするような内容だった。
こんなときにそんなプログラムを組むなんて・・・
「まぁ、行くよ♪」、娘だった。
息子も笑顔で娘の手をとり、二人は楽しそうに走っていった。
一瞬、私は訳が分からずに呆然としていた。

隣に座っていた母がこう言った。
あなたがこの間、九州へ行っていた時に、正樹はいつものように泣いて、お姉ちゃんを困らせていたのね。
そうしたら、お姉ちゃんは正樹に、
「ママはもういなくなっちゃったけど、お姉ちゃんがいるでしょ?」
「本当はパパだってとってもさみしいの」
「だけどパパは泣いたりしないでしょ?」
「それはね、パパが男の子だからなんだよ。まぁも男の子だよね。」
「だから、だいじょうぶだよね?」
「お姉ちゃんが、パパとまぁのママになるから。」
そう言っていたのよ。

何ということだ。
娘が私の変わりにこの家を守ろうとしている。
場所もわきまえず、流れてくる涙を止めることが出来なかった。

10年たった今、無性にあの頃のことを思い出し、また涙が出てくる。
来年から上京する娘、おとうさんは君に何かしてあげられたかい?
君に今、どうしても伝えたいことがある。
支えてくれてありがとう。
君は最高のママだったよ。私にとっても、正樹にとっても。
ありがとう。

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