– しみじみ - グッとくる話 短編10話【4】
薬屋さんの前で
さっき走りに行ったら、24時間空いてる薬屋さんの前で中学生二人が
弟「風邪薬・冷えピタ・のど飴・ポカリ・・・・後は?」
兄「ゼリー飲料・お粥」
弟「お兄ちゃん、お金足りる?」
兄「念のために、お年玉持ってきた。
後お前の弁当、今日はお兄ちゃんが作るけど不味くても我慢しろよ」
弟「えっ?作ってくれるの(超嬉しそう)?!
・・・・・・・でもコンビニのパンでも良いよ」
兄「いらん気を遣うな。
お兄ちゃんは薬選ぶから、お前はお父さんとお母さんにお粥選んでやれ」
多分、両親が風邪を引いたっぽい。
お兄ちゃんが、弟の頭をポンポンってしてて仲良さそうで可愛かった。
あれくらいの男兄弟で、仲良しって珍しい気がする。
フォローしてくれる
職場復帰して間もない頃。
子供がしょっちゅう熱を出し、それが終われば水疱瘡だのロタウイルスだのと仕事を休む日々が続いていた。
職場に迷惑をかけまくりで申し訳なくて退職も考えていた頃、上司に言われたこと
「いいか。お前みたいな若いのは子供のことで休まなきゃならない。
でも俺達くらいの歳になると、今度は親が病気だの何だので休まなきゃいけなくなる。
だからそんなに気に病むことはない。お互い様なんだよ。
お前が休んでも他の奴がフォローしてくれる。その分、誰かが休んだ時はお前も精一杯フォローしろよ。
世の中ってのはそういう風にできてるんだから。」
涙が出そうなくらい嬉しかったし、心がすっと軽くなった。
この人が上司で本当によかったと思ってる。
お母さん、私は元気です
医者に死にますよ、と言われても、夫や実家の家族の反対を押し切って産んでくれた母
「俺は子供は諦める。子供よりお前が大事だ。俺と息子のために諦めてくれ」と言った子供好きで、妊娠をとても喜んだ父
「お前が死ぬくらいなら子供は諦めなさい。もしもの時に、長男は誰が育てるの」と言った母をとても大切に育てた情の深い祖母
母は以前に流産をしていたから、妊娠がわかった時にみんなで泣いて喜んだ。だが、日を追う毎に母子ともに危険な状態であると判明し、幸せの絶頂にいながらも子供を諦めるよう促す家族の辛さはいかばかりだったろうかと胸が詰まる
お母さん、私は元気です
じいちゃんが作った弁当
小学校時代、母ちゃんが作ってくれる弁当をいつも学校に持っていってたんだが、ある日持ってくのを忘れた。母ちゃんも作るの忘れていた。
四時間目が終わって、思い出したオレはとりあえず家に電話。
じいちゃんが出た。当時、両親共働きで、頼みの綱だったばあちゃんも公民館に出払ってるとのこと。
じいちゃんが茶碗に飯を盛ってるのすら見たことがなかったオレは
『こりゃ今日の昼飯諦めるべ…』と落胆して『弁当が無いんだけど…まあいいや』てじいちゃんに言って電話を切った。
で、空腹のまま昼休みが終わろうとしていたんだが、正門からオレを呼ぶ野太い声が…。
見てみると、じいちゃんが軽トラに飼い犬乗せて、片手にタッパー掲げて叫んでた。
恥ずかしくてすぐ駆けつけたんだが、タッパーには焦げてぐちゃぐちゃになった冷凍餃子と冷や飯と梅がなんの仕切りも酢醤油もなくみちみちに突っ込まれてた。
恥ずかしくて軽トラの助手席で食べたんだが、なんかすげえウマかったんだよな。
じいちゃんはその数年後に末期癌で逝っちゃったけど、あの日に戻れるなら『弁当作ってくれてありがとう』ってちゃんとお礼言いたい。
本当に美味しかったよじいちゃん…
俺のジャージ
彼女は会いたいとか寂しいとか言わないかなりドライな人。前にうちに泊まった時、俺のジャージを貸してあげたら気に入ったらしく、そのまま持ち帰ってしまった。
で、昨日
俺「あのジャージはいてる?」
彼女「うん、はいたり…枕にしたりしてるかな…」
俺「えっ?なんで枕なの?そんなに生地が良かったの?」
彼女「いや…生地は普通のジャージじゃん?」
俺「じゃあなんで枕にしてるの?」
彼女「えっと……いや、その……」
俺「なんで?なんで枕ー?」
彼女「………そ、そばに○○がいるみたいになって安心するの!はいもう!この話終わり!なんだよっ!ニヤニヤすんなよっ!ばかっ!」
いつも照れると顔真っ赤にしてバシバシ叩いてくる。
口には絶対に出さないけど、愛されてるんだなーって実感する。
もうホント可愛い。
結婚してよかったと思う瞬間
俺はやっぱり仕事行く時と仕事から帰った時かな。
職場がちと遠方なもんで朝この時期だとまだ暗いうちに出勤なんだが玄関で見送ってから窓から手を振ってくる。
玄関閉めた後窓まで小走りしてるんだろうなと想像すると、出勤が億劫な日でも気持ちが和らぐ。
仕事帰りにミネラルウォーター買って帰るのが日課。ただいま~って玄関あけると家事とかしててもお帰り~って飛んできて荷物受け取ってくれる。
んでたまに菓子なんかを買って帰るんだが、袋の中身を出しながら生菓子の日は見つけるといにこにこしながらそいそと冷蔵庫に入れてるのをこっそり見るのが結構好きだったりする。
だから帰った時嫁さんが風呂とか入っててお帰り~が聞こえないとくだらないかもしれんが軽く凹む。
結婚して数年経つがずっと変わらず毎日見送ってくれて出迎えてくれる嫁さんに感謝。
坂道を幼児が突っ走ってきた
ゆるやかな坂道を幼児が突っ走って下ってきた。
「××ちゃあああああん止まってえええええ」とおっかけてるたぶんおばあちゃんは
大荷物のうえにかなりお太目。
坂の終わりは広い車道につながってる。
自分だけじゃなく居合わせた人みんなが立ちふさがってくれて
人の壁ができてた。
まだまだ日本もカコイイ!
初給料で
某有名ゲームをやりたいやりたいと思いつつ、結局手を出さないまま数ヶ月が過ぎた
しかし近日そのゲームの続編が出るという事で、ついにソフトとハードを購入
弟に、ゲーム買おうかなーどうしようかなーといつもぼやいていたので、早速報告した
すると弟は物凄く残念そうな顔をして黙ってしまった
弟は現在就活中。そんな中ゲームの話をしてしまったので悪い事したと思った、が
弟「実は職決まったから、初給料でそのゲームとハード、プレゼントしようと思ってたんだ」
色々お世話になったから、と照れくさそう言った
あの時は言えなかったけど、兄ちゃん部屋で泣いた
母が作るミートソース
うちの母が作るミートソースは、目茶苦茶旨かった。
家族全員大好物だったんだが、そのレシピを聞かないうちに急性白血病で亡くなった。
亡くなって数年経った時、父が「あのミートソース食いたいな」と急に言い出した。
私も弟も食べたかったので、あの味の再現をしてみようという事に。
ベースは某メーカーの缶詰ミートソースだというのは知ってた。
が、そこに何を足せば母の味になるのかがわからない。
私と弟で色々とブレンドし続け、三日くらい連続で夕飯ミートソーススパゲティ。
朝もミートソーススパゲティ。
そろそろ飽きが来る……って時に、弟が作ってみたミートソースが、偶然母のと同じ味になった。
最初は皆で「コレ!コレだよ!」と絶賛しながらがっついてたが、
次第に言葉が無くなり、食べ終わる頃には皆して泣いてた。
今でも母の月命日には、絶対にそのミートソースを食べる。
笑ってる方が魅力的だよ
仕事で色々なトラブルが重なって
体も壊すし精神的にもダメージでかくて、今後どうしようかなって悩んでた。
仕事関係でカナダに行って、他の人たちはグループで観光とかしてたけど
自分は最低限の用事が終わったら逃げるように一人で離脱して旅に出た。
モントリオールで、当時そこが本拠地だったエクスポズのスタジアムにふらっと立ち寄った。
試合はしてなかったけど、タワーみたいのがあって観光客が登ってた。
入場券買う時に身分証見せたら、窓口のおっちゃんが身分証の写真と実物の私を見比べて
「この写真ほんとに君かい? 別人に見えるよ」なんて言ってくる。
身分証の写真は元気だったころのにっこり穏やかな顔。それに引き替え今の自分は疲れた顔。
チケットもらって立ち去ろうとしたらおっちゃんが言った。
「Keep Smiling! 君は笑ってる方が絶対に魅力的だよ」
一人でしょぼくれた顔して野球場に立ち寄った小柄な東洋人の女をからかってみただけかも
しれないし、誰にでも同じこと言ってるのかもしれないけど、タワーに上って見た
モントリオールの景色が滲んで滲んで仕方なかった。
そうだよな、ずっと沈んだ顔してるより笑ってる方がいいに決まってるよ、って。
その後しばらくして転職した。仕事も楽しくて体調も戻った。思い切ってよかった。
エクスポズはもう移転してしまったけど、今でも時々思い出す。おっちゃんありがとう。
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